2017年12月14日のFOMCで何が起きるか

広瀬隆雄氏(以下、広瀬):次の話題、12月14日に、FOMC(連邦公開市場委員会)があります。「今回はどうなる?」ということなんですけれども、まず政策金利自体は0.25パーセント利上げになると思います。つまり、現行のFFレートが0.50+0.25=0.75パーセントというのが新しい政策金利になると思う。

それは100パーセント、マーケットに織り込まれているので、それ以外のシナリオはないです。もし今回利上げしなかったら、ジャネット・イエレンは大バカタレだと思いますね。そんなことしたら無責任です。

利上げしなかったらマーケットが無茶苦茶になります。ぐちゃぐちゃになると思う。でも、必ず利上げすると思います。

ポイントはそこじゃないんですよ。ポイントはどこかというと、FOMCの声明文に添付される経済予想サマリー、略してSEP(Summary of Economic Projections)、というものがございます。これは「ドット・プロット」と言われることもある。

それはFOMCメンバー参加者によるFFレートの予想ですよね。現在では、9月に出された経済予想サマリーでは、来年末のFFレートのコンセンサスは1.1パーセントになっています。

これを見てもらうとわかるように、2.6、2.4、1.9、1.6というふうに、経済予想サマリーが出されるたびに、予想はガクンガクンと下がってきてるわけね。

だけど、今回も「もう1回下がる」と言うエコノミストが多いんですよね。僕は今回はこれが横ばいか、ひょっとしたら1.2あるいは、1.3ぐらいに上げるかもしれないと見ています。ここが大事なところね。

だから14日にFOMCがあったら、経済予想サマリー、SEPを見てください。見る場所は2017年末のFFレート。現行のコンセンサスは1.1だけれども、これが1.2ないしは1.3になるかもしれない。そこが見どころです。

「じゃあそうなったらどうなるんですか?」と、「読み方を教えてくださいよ」とみんな感じると思うのね。

それに関していうと、FRBが今やらなければならないことというのは、なるべく早く将来のFFレート、つまり、あと12ヶ月後には1.1、24ヶ月後には1.9、2019年末には2.6、そういうペースで上げていきまっせというロードマップが、今回ぐちゃぐちゃに崩れちゃったわけですよ。わかります? 

そうすると、FRBが今やらなければいけないこというのは、「もうこれは現実的じゃないから、このプランはひったぶきます(破ります)」と。ビリビリビリと破いちゃう。

「白紙でやり直します。新しいプランはこうです」というふうにして、新しいリズムをポーンポーンと、「こういうイメージでいきますからよろしく」という。それをなるべくなるべく早く打ち出す。

それをジャネット・イエレンはやらないといけません。だから、彼女は忙しい。わかりますかね。

今回のFOMCは正念場です。今まではヌルいことをやっていてもマーケットは許してきた。だけども、今回イエレンがピシッとしたところを見せないと、大変なことになると思うよ。つまり、彼女はインフレに対して後手に回ってるんですよ。

うさぎと亀のレースでいうと、イエレンはうさぎですよ。それもグースカグースカ寝てたうさぎ。それが今、大統領選挙が終わって、突然目が覚めて、それで「あれ、亀さんどこ行ったの?」というふうに見たら、亀さんはもうゴールまであと3歩ぐらいのところで、こういうふうに行っているわけですよ。それでジャネットはこれから走らなきゃいけないわけですよね。

それをどういうふうにインフレのエクスペクテーションに対してFFレート追っつけていくんだということをコミュニケートしなきゃいけないということです。だから今回は難しいと思うよ。

トランプ相場で買うべき銘柄は?

「じゃあ銘柄は何なんですか?」と。「早く結論を言えよ」ということなんですけれども。

金利がどんどん上がっているので、短期金利と長期金利の間の金利差というのは今開いています。そうすると、銀行というものは、短期で資金を調達して、それを長期で運用することによって、その2つの金利差、利ざやで儲ける。これが銀行業の基本です。

そのことを純金利マージンと言うんだけれども。今後、純金利マージンが増えていくと思うので、銀行株が王道。トランプ相場のね。

その銀行株が王道のなかにあっても、王道中の王道はJPモルガン・チェースです。ティッカーシンボル「JPM」。非常にしっかり経営されています。

トランプが大統領になった直後に、真っ先にJPモルガン・チェースのCEO、ジェイミー・ダイモンのところに「財務長官どうっすかね?」という打診があったわけ。

それに対してジェイミーは、パシーンと「俺がトランプ政権に入閣する? そんなの、お前、あるわけないだろ!」と即座に撃ち落としたわけね。だから、たぶんしょぼい人間が財務長官になると思うけれども。まあそれはいいんですよ。

JPモルガンは、今、時価総額で世界No.1だし、それから投資銀行業務で世界No.1だし、それからクレジットカード業務でも今ガンガンマーケットシェアを伸ばしています。ということで、弱い面というか、穴がぜんぜんないということですよね。これがイチオシですね。

機関投資家はニュースが出たあとに買う

次。さっきOPECの話ちょっとしましたけれども、ひょっとして今回減産合意があるかもしれないし、ないかもしれない。僕は減産合意があると言っているんじゃないよ。確率は五分五分だと言っているわけですよ。

だから、OPEC減産が必ずあると確信して、先回りして買わないでほしいということをお願いします。いいですか。

ただ、「減産きたー」となったら何をやるか? それに関するアイデアが僕はある。それはキャロン・ペトロリアム。ティッカーシンボル「CPE」という銘柄がございます。

減産合意が発表されたあとで慌てて飛び乗る。そういう買い方をしてください。なぜそういう買い方でいいかというと、もし減産合意したのであれば、そのときにポーンと跳ねても、そこから先でもまたずんずんとこの株が上がると僕は思うのね。

だから、そういう買い方でも構わないんじゃないかと。逆に言えば、減産が発表されなかったら株価が下がるからね。

だから、機関投資家というのは……ニュースの前に先回りして投資するというのは、実は素人のやり方なんですよ。機関は、ニュースが確認されたあとでどっこいしょって重い腰を上げて、そこから気合で買いにいく。それが機関投資家の買い方なんですよね。

だから、みなさんも少しそういうのを参考にされるといいと思うんですけれども。だから、キャロンはそういう買い方をしてください。

「じゃあこの会社、どんな会社なの?」ということなんですけれども。今、アメリカで一番元気のいいシェールの産地はパーミアン・ベイシンというところです。これは西テキサスですけれども。

そのなかでも、一番ローコストにシェールオイルが採れる地域のことをハワードと言われます。そのハワードで最近たくさん鉱区を取得しているのがキャロンですよね。

GEが力を入れている「インダストリアル・インターネット」

先いきます。ベーカー・ヒューズ。これはオイルサービスの会社ですけれども。ドリルビットですよね。消耗品のドリルビットなんかのリーディングメーカーです。

最近、ゼネラル・エレクトリック(GE)の石油事業、これはキャロンという、ブローアウト・プリベンターというバルブを作ってるビジネスがゼネラル・エレクトリックにあるんだけれども、それなんかと石油関連事業をもう全部一緒にしちゃおうと。新会社にしてね。

GEはキャロンを供出する。ベーカー・ヒューズは自分の会社の資産を供出する。2つの会社を一緒にする。それで特別配を出すと。それで、会社を分離して。そうすると、新会社、新しいベーカー・ヒューズの過半数オーナーはGEになるということですよね。

なんでこんなことをやっているのかというと、IoT(Internet of Things)というのがこれからどんどん出てくる。モノのインターネットということでね。とくにゼネラル・エレクトリックは「インダストリアル・インターネット」というのものに力を入れています。

これは「Predix」というソフトウェアがあるんだけれども。例えば、ボーイングの旅客機にGEのジェットエンジンがついている。その旅客機が成田から飛び立ってサンフランシスコに向かって飛んでいると。

「どうもエンジンの調子が悪いよね」「ちゃんとエンジンが働いているけれども、なんか機嫌悪いよね」というのを、センサーでもって機械が自主診断するわけですよね。その自己診断したデータをインターネットでもって連絡するわけですよ。

そうすると、サンフランシスコ国際空港では、もう交換部品を用意して、そのジェット機が着陸すると、すぐにその交換部品に付け替えるとかね。そういうことを「インダストリアル・インターネット」と言います。

航空機エンジンみたいな値段の張るもので一番威力を発揮するわけだけれども、同じ意味で、石油関連というのも非常に値の張るツールがたくさんあるわけなので、この分野というのはIoT、インダストリアル・インターネットのバカでかい市場なんですよね。だから、それを取りにいくのにベーカー・ヒューズが便利だよねということで合併したわけです。

防衛関連、公共事業にも注目

次、グラニット・コンストラクション。ティッカーシンボル「GVA」。

これは鹿島建設とか大成建設みたいな建設会社ですよね。でも、GVAの場合はほとんど土木です。高速道路とか大きな橋、インターチェンジ、そういったものが得意です。

ポイントは、エンジニアリング会社というのはアメリカにいくつもあるんだけれども。例えばフルーアとかね。あとKBRとか。そういう銘柄でもいいんですけれども、それらの銘柄は世界中でビジネスをやっているんですよね。

それに対して、グラニットコンストラクションはアメリカのみです。国内のみ。しかも、施主、つまりクライアントはほとんど政府。

だから、トランプのインフラストラクチャ工事というのが発表されたら、たぶん必ずGVAはプロジェクトに入ると思うんですよね。施工実績が一番あるから。そういう銘柄です。

次、ノースロップ・グラマン。これ防衛関連ですけれども。ドナルド・トランプは防衛予算も拡大すると言っています。それでノースロップ・グラマンは、爆撃機B‐2という、ヒラメというかエイみたいな形をした爆撃機がありますけれども、それを作っている会社です。

その次世代の新型の爆撃機のプロジェクトを受注したばっかりです。「B‐21 Raider」という機種なんだけどね。

それに加えて、戦場での統合司令情報システム、それのことを「C4ISR」と呼ばれているんだけれども。要するに、電子機器とかそういうのをいっぱい使って、それで兵隊さんもゴーグルをかけて、そこにディスプレイでいろんなものが出るわけですよね。

それとかナイトビジョンとか。あとはレーダーとか。そういうのでいろいろなかたちで特殊部隊をアシストする。そういうシステム統合システムを作っているのがグラマンですよね。

だから、イスラム過激派との戦い、それは情報戦争になるわけれども、その時に威力を発揮するシステムを作っているのがこの会社ということですよね。