順張りと逆張りの使い分け方

中原良太氏(以下、中原):こんにちは。株式予報の中原良太です。今回は、「順張りと逆張りの使い分け方」というテーマについて、お話ししていこうと思います。

今回の講義の目的は2つあります。

1つ目は、「順張りと逆張りのアプローチの違いを理解する」ということです。相場には、順張り投資と逆張り投資という2大投資法があるわけですが、アプローチの仕方がそれぞれぜんぜん違います。株の買い方はほとんど真逆です。

なので例えば、逆張りの知識を順張りに使おうとか、順張りの知識を逆張りに使おうとかすると、たいていうまくいきません。知識をごちゃ混ぜにすると、ぜんぜんうまくいかないので、このアプローチの違いをぜひ理解していただきたいと思います。

2つ目は実際に使えるいくつかのテクニックと分析のヒントをご紹介していきます。これは本当に使えるので、テクニカル分析をする投資家が周りにいる方は、ぜひ紹介してあげてください。ものすごく役に立つ知識なので、これを押さえるだけで、成績をグンと伸ばせるようになると思います。

今回ご紹介するコンテンツの目次です。

まず最初に、「順張り投資と逆張り投資というのはそもそも何なのか」。こちらを復習していきます。

その次に、この講座の肝になってくるアンカリング効果についてご紹介していきます。

その次に、このアンカリングを使った、順張り投資と逆張り投資の使い分け方をご紹介していきます。

最後に実践編として、アノマリーとか日中足を使った、順張りと逆張りの使い分けの方法についてもざっくりとご紹介していきます。

順張り投資と逆張り投資

ではさっそく、一番最初の順張りと逆張りの定義を復習していきましょう。

まず、順張り投資とは何か。こちらは株価がグーッと上がってる一番最初の初動をつかんで、さらなる値上がりを狙うというのが順張り投資の特徴です。

主に、上がった株がさらに上がるのを狙う投資法なので、上がってるときに株を買うのが普通です。例えば成行注文や逆指値注文といった注文方法を使って取引することが多いです。

もちろんこれは株を買う時だけではなくて、株を売るときにも使います。なので、株価が下がったときの初動をつかんで、さらなる値下がりを狙う。こういう空売りのテクニックもあるので、こちらもご参照ください。

逆張り投資は、順張り投資とはまったく真逆の投資方法です。何をするかというと、下落相場で株を買い、リバウンドを狙う。つまり、一番下がってる間に株を買って、グンとリバウンドしたところで利益を稼ぐ投資法になります。

逆張り投資においては安く買うことが正義なので、安く買うために指値注文という注文方法を使うのがメインになってきます。

例えば、「いくらいくらになったら株を買います」とか、「いくらいくらまで安くならないと、株を買いません」という注文方法を使って、より安く株を買って、リバウンドを狙うというのが主な戦略になってきます。

この投資法はどちらが良いとか悪いとかいうのは一切ありません。どちらも有効な投資法だと考えられていて、どちらも統計的に有効性が実証されています。ということで、この順張りと逆張りの投資法の違いについてご理解いただければと思います。

アンカリング効果とは何か

では次に、実際に順張り投資と逆張り投資を使い分けるときに肝になってくる心理効果についてご紹介していきます。その名もアンカリング効果、こちらについて確認していきましょう。

アンカリング効果とは何か、「提示された特定の数値や情報に印象が残って、基準点(アンカー=いかり)となり、判断に影響を及ぼす心理傾向のこと」。

この説明だけ見ても、「なんのこっちゃ」「ぜんぜん訳わかんない」と思うと思うんですけど、具体例を見れば簡単にわかると思います。

本当によくある例なんですけれども、昨日は3万円だった株が、今朝になったら2万円になっていたということがあったとしたら、すごくお得感がありますよね? 昨日まで3万円なければ買えなかった株が、今ならもう33パーセントオフだと。もうものすごい安売りされてるんですね。

このように、「今まで高くなったものが、安くなってお買い得だ」と考える心理効果です。ただ、実際にお得かどうかというのは過去の株価ではなくて、その株を買って得られる価値で決まるものじゃないですか。それこそ配当利回りや優待内容などで決まるはずなんですけれども。

実際はそれだけではなくて、このアンカリング効果のような心理的な錯覚。安くなったから「割安だ」と感じてしまう感情によって、株価が大きく変動するということがよくあります。

それで順張り投資や逆張り投資をするときに、このアンカリング効果がものすごく役立ちます。これを知らないと、効果的な投資ができないというぐらい、ものすごい重要な心理効果なので、必ず押さえておくようにしましょう。

順張り投資とアンカリング効果の関係性

このアンカリング効果というのは、順張り投資にも逆張り投資にも適用することができます。つまり、アンカリング効果を使ってこの2つの投資法を説明することができます。

まず一番最初に、「順張り投資とアンカリング効果」。この2つにはどのような関係があるのかをご紹介していきます。

一般的に、順張り投資をするときには、アンカーのない株を狙うのが王道です。アンカーというのは1個前のページで説明したように、「3万円だった」と心に残っている目安となる数字ですね。こういう目安の数字がない株のほうが、順張りでは利益を出しやすいと考えられています。

逆にそれを裏返すと、アンカーがある株は順張りには向かないということなんですね。順張りでは、アンカーのある株は不利だということになります。

これはなぜかというと、例えば、株を買うときに、5万円以上上がったことがない株があったとして、今の株が4万8,000円だとします。今まで5万円になったら必ずと言っていいほど下がってた株が、今は4万8,000円ですと。

「その株買いたいですか?」と言われて、まあ買いたくないじゃないですか。いつも5万円になったら下がってるし、すでに4万8,000円で、あと2,000円ぐらいしか鞘がないと。「そんなもん買ったってしょうがない」と思いますよね。

このように、明らかに天井がある株というのは、順張り投資には不適切なんです。なので、順張りをするときには、アンカーのない、天井や底の目安のない株を狙うのが非常に重要になってきます。

順張り投資で狙い目の株

つまり、順張りにはどういった株を狙えばいいのかというと、極論を言えば、狙い目なのは極端な価格帯にある株を狙うのが大切です。

例えば、超高値圏にある株で、もう天井を突き破って、年初来高値を更新したような株というのは非常に狙い目です。

なぜかというと、例えば、「今まで5,000円までしか上がらなかった」という天井がなくなってしまったので、どこまで上がるかわからないワクワクする状態というのに、雰囲気がガラッと変わってくるんですね。

こういった株は、天井知らずでグイグイ上がっていくという傾向がつかめています。これは統計的にも実証済みです。

もちろん、損切りや利益確定のタイミングは別途設定する必要がありますが、買うタイミングとしては天井を突き破った瞬間とか、そういうときに利益を出しやすいと考えられます。

これが超高値圏の株を買うときの話なんですけど、逆に超安値圏にある株を狙うのも1つの策なんです。

なぜかというと、すごい高い位置に天井があって、今の価格帯はものすごい低い位置にありますと。もしここ(天井近くの高い位置)にあったら、買いたくないですよね? 今すぐにでも下がっちゃいそうな価格帯にある場合は、株を買いたい人はほとんどいないんです。

しかし、天井までまだまだたくさん距離がある場合、それこそ20パーセントとか30パーセントぐらい距離がある場合というのは、アンカリング効果で不利になることはとくにないですよね。「むしろこれだけ幅があるんだから、十分な利鞘が取れるじゃないか」と考えられるわけです。

こういったこともありますので、超安値圏にある株というのも順張り投資には向いてると。つまり、安値圏にある株がちょっとだけ上昇したあたり、リバウンドしたあたりで株を買うと。こういうことをすると、利益を出しやすいと考えられます。

ということで、順張り投資とアンカリング効果。順張り投資にアンカリング効果を適用したときには、高値圏にある株と安値圏にある株、アンカーがない株、あるいはアンカーが遠い株を狙ったほうが利益を出しやすいと考えられます。