「盲点」の不思議

ハンク・グリーン:ちょっとした実験をしてみましょう。まず全画面でこのビデオを見て下さい。左目をつぶるか、隠すかし、「+」を見てください。

黒丸があることを認識しつつ、そちらは見ずに、「+」を見続けてください。

頭を少し後ろに下げるか、顔を近づけるか、もしくは画像を動かしてみてください。すると、ある一定の所で黒丸は消えてしまうでしょう。

次に、右目をつぶって丸を見て下さい。「+」サインが消えるところまで、頭を後ろに下げたり、近づけたりしてみてください。

これで、それぞれの目の盲点となる場所が分かるでしょう。普段、私たちはそんなこと意識しないでしょうけど。

人類の目には根本的な欠点があります。網膜にある光感覚細胞は神経を経由し、脳に信号を送ります。

神経は光感覚細胞の前に存在します。神経は目の後ろを通り、脳へと到達していて、神経が通っている網膜の一部には光感覚細胞は存在しません。そこが盲点となるのです。

通常、盲点が日常生活に何らかの支障をきたすことはありません。それぞれの目の盲点は微妙にずれた場所に存在していて、何かを見て、その全体像を認識するときには両方の目で補い合っているからです。

しかし、たとえ片目をつぶった状態でも、つぶっている目のほうにブラックホールを見るようなことはないでしょう。脳がそこにあるものの全体像を認識させようとするからです。黒丸が見えなくなった時に背景の色が見えるのはその為です。脳がそう推測しているのです。ですが、それは本来見えているものではありません。

ある研究によると、訓練すれば盲点の幅は狭くすることができるのだそうです。

研究者たちは10人の実験参加者に彼らの盲点に入るように画像を見せ、何の画像なのかを聞いたのですが、実験の終盤にはその画像に関する答えが始めよりも少し鮮明になっていたのです。

研究者たちは盲点のふちにある光感覚細胞が敏感になり、光の信号を受けやすくなったからなのだと考えています。

まあ、その能力は生死に関わる状況に陥った時に役立つ能力ではないでしょうけどね。私たちが目というものを持ってからずっと長い間、人には盲点があったのですから。しかし、脳を研ぎすましたいなら、もってこいの方法なのかもしれないですね。

盲点の問題が一切ない、私たちとはまるで別の生き物も居ます。頭足類です。タコやイカなど、頭足類の神経は光感覚細胞の後ろに通っていますので、盲点が要らないのです。

なぜ私たちはそうではないのでしょうか? 進化でしょうか。私は触手の大君主は大歓迎ですけどね。