ジブリ初の師弟対談

藤巻直哉氏(以下、藤巻):みなさん、こんばんは。今日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。むかって右側に座っている石井朋彦さんが『自分を捨てる仕事術』という本を出されました。

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド-

これは何かというと、『鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』ということで、鈴木敏夫っていうんですけど、この人。

一同:(笑)。

藤巻:ジブリの代表取締役プロデューサーとの師弟対談ということで。初めてらしいですね? 師弟対談は。

石井朋彦氏(以下、石井):はい。もう、びっくりです。

藤巻:ということで、今日はLINE(注:LINE LIVEで生中継されている)でもご覧になっている方がいらっしゃるそうです。私は今日、司会を務めさせていただきます、藤巻といいます。たぶん覚えてないとは思うんですけど、2008年に『崖の上のポニョ』で主題歌を大橋のぞみちゃんと歌わせてもらいました。一応、紅白歌手でもあります。

一同:(笑)。

藤巻:たぶん、みなさんの頭の中では「大橋のぞみちゃんしかいなかった」と記憶が書き換えられてんじゃないかと思うんですけども、隣で歌ってたおやじです。今日は鈴木さんからご指名で「司会をやれ」ということで、こういうの本当に誰かに話を振るとかそういうの大の苦手なんですけども、長い付き合いということで司会をやらせていただきます。

お見苦しい点はご容赦いただきたいと思います。では、さっそく紹介から。スタジオジブリの鈴木敏夫さんです。

(会場拍手)

藤巻:一言ご挨拶を。

鈴木敏夫氏(以下、鈴木):今日は会場(注:DNPプラザ)が、この大日本印刷? その一角にある場所で。僕、実を言うとです、学校を出て初めて働いた場所がここなんですよ。

藤巻:徳間書店じゃなくて?

鈴木:徳間書店時代に、なんてったって雑誌を作るってことは印刷しないといけないでしょ?

藤巻:はいはい。

鈴木:それが大日本印刷だったんだよ。その校正室ってのがあって、週刊誌だったんで1週間に2回だか、3回だか、毎週、丸1年間通ったんですよ。だから今日ここへ来た時、ちょっと懐かしかったんだ。

藤巻:それでさっき控室でご挨拶なさってたのは、その当時からいらした?

鈴木:その時のご担当の人がね、まだいるんですよねー。

藤巻:(笑)。

鈴木:さっきちょっと、びっくりしちゃいましてね。

石井:30年以上前ですよね?

鈴木:うん。もう定年でいなくなっているはずなのに、まだ会社に残っているっていうね(笑)。

一同:(笑)。

藤巻:役員ってことですか?

鈴木:いや、役員、いや。偉くならない方が長生きするんですねー。会社ってのは。

一同:(笑)。

鈴木:今いますね。クワバラ君っていうんですけど。本当にいろいろお世話になりました! ありがとうございます。これからもよろしくお願いします! もうすぐだよね? 本物の定年が。

一同:(笑)。

藤巻:ま、今日はクワバラさんの話じゃない。

一同:(笑)。

鈴木:今日は僕はここへ何しに来たかというと、とにかく石井が初めて本を書いたというんで。要するに今日こういう企画を立ててもらった時に、これを断ると後で石井に何言われるかわかんない(笑)。

それは悪い冗談として、とにかくこの『自分を捨てる仕事術』。そろそろ1刷り2刷り3刷りと来て、今度4刷り? なんか売れてるらしいんですけど。この本が売れるといいなと思って、それでやってきました。

石井:ありがとうございます。

鈴木敏夫氏も新著を出版

藤巻:鈴木敏夫さんです。本当は、鈴木さんがこのあいだ7月に、『ジブリの仲間たち』という本を新潮新書というところから出したので、この本の宣伝も、ということだったんですけど、鈴木さんが「今日は石井の本のだけでいい」ということで、今日は『ジブリの仲間たち』については割愛させていただきます。

(会場笑)

藤巻:一応(笑)。新潮新書のみなさん、すみません。

鈴木:読んでらっしゃる方は少ないかもしれません。少しジブリのことに詳しい方が、みなさんこう思われると思うんですよ。ジブリの仲間っていうと、当然、隣にいる藤巻さんなんて、さっき自己紹介してましたけどポニョも歌ってもらってるわけですから。「たぶん、この中にいっぱい登場するだろう」と思われると思うんですけど。藤巻さんは実はジブリの仲間ではありません!

(会場笑)

鈴木:ということを最初にきちんと言っておきたいです。

藤巻:ひどいじゃないですか(笑)!

鈴木:(笑)。

藤巻:あんなに。ひどいことばっかりいっぱい書いておきながら。

石井:いっぱい登場しますよね(笑)。

鈴木:(笑)。

石井:すごい、おもしろいです。

藤巻:そういうことなんで、『ジブリの仲間たち』あらためて買ってみてください。今日の主役は、『自分を捨てる仕事術』を書いた石井朋彦さんです。一言。

名プロデューサー鈴木敏夫氏の弟子、石井朋彦氏

石井:石井と申します。今日は本当に夜遅くに、みなさまありがとうございます。この本は、僕が書いた本というよりは、鈴木さんがおっしゃったことをずーっとメモにためていたらダンボール2、3箱分くらいになってたんです。

藤巻:すごい(笑)。

石井:それを1回引っ張り出して、全部整理してまとめた本です。なので9割9分9厘、鈴木さんの本なんですが。

藤巻:論語みたいなものですよね? 今週の言ったこと書きとめて。

石井:そうです。弟子たちが鈴木さんの言ったことを書きとめて後世に残す、という目的で書いたものですので。

藤巻:本当は、「もうちょっとしたら俺がこれ書こうかな」と思ってたんだよね。

石井:ぜひ(笑)。

(会場笑)

藤巻:先を越されちゃったんでね。二番煎じになっちゃうんで、できませんでしたけれど。

石井:よろしくお願いします。

藤巻:こちらこそ。この対談は、後半でここにいらっしゃるお客様とか、LINEをご覧になっている方々からの質問をお受けするそうなんで、質問をどしどし、LINEの方は送っていただければ。後で、それに対してこの2人がお答えをする仕組みになっております。じゃあ、『ジブリの仲間たち』はカットすると。

一同:(笑)。

藤巻:進行台本ってのがありますんでね。ちょっと本のタイトルが覚えきれないんだけど、『自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』に関してのお話です。

ジブリに入ったきっかけ

藤巻:もともと石井君の経歴をたどると、お父さんが大学教授なんですよね?

石井:はい。

藤巻:そういう中にあって、「大学なんか行かないで、お前、世界を見てこい」って言って。世界を放浪してきたんですよね?

石井:はい。その後に鈴木さんの下に入れていただいて。

藤巻:どういうきっかけでジブリに入ろうと思ったんですか?

石井:『となりの山田くん』の時に、中途採用の募集がジブリの公式ホームページにあったんです。そこに応募して作文を書いて。面接がいくつか、それこそジブリの方々に面接していただいて、最終面接が鈴木さんだったんですね。

藤巻:ふーん。

石井:鈴木さんは「そうじゃなかった」っておっしゃるんですけど、けっこう怒鳴り合いみたいな面接だったんですよ。

藤巻:(笑)。なんで怒鳴り合うの? 面接で。

石井:後になると僕が浅はかなんですけど、いろいろ面接ってアピールしたいじゃないですか。今、若い人も面接でどう自分をアピールするかっていうのが大事になってくるんですけど。

藤巻:それ何歳の時?

石井:21歳? か22歳ですね。

藤巻:まだ若かった。

石井:はい。そしたら僕が言うこと、アピールすべて、(鈴木さんが)「違う!」と言って、その場で否定してしまうので。さすがに僕も当時若かったんで、ちょっとムッとして。「そんなことないです」みたいな言ってるうちに、だんだんヒートアップしていって。終わった後に鈴木さんが「うん、わかった。じゃあがんばってねー」と言って手を振って、そのままパタパタパタパタと部屋を出ていって。

藤巻:ああ、雪駄で?

石井:はい。「これはだめだったかなー」と思ったら、後日「採用になりました」っていうご連絡をいただいて。今に至るというか、ジブリに入れていただいたというのがきっかけですね。

300倍の選考を突破してジブリへ。しかし……

藤巻:その時に入ったのは1人だけ?

石井:1人だけでした。300人くらいいたんですって。

藤巻:応募が?

石井:応募が。後から知ってびっくりしました。いろんな方に通していただいたんですけど、最後は鈴木さんに面接をしていただいて。

藤巻:その時、鈴木さんはどういう人材が欲しかったんですか? プロデューサー?

石井:制作進行ですよね? 鈴木さんの下ではないです。現場が忙しくなるんで、現場の制作進行が必要っていうことで急きょ募集がかかったんですよね。

藤巻:今の就活中の方たちもいるかもしれないんで、何が決め手で石井君を採ったんですか? 鈴木さん。

鈴木:僕? そんなん覚えてないよ。

一同:(笑)。

藤巻:ちょっと今日の主旨。覚えてないんですか(笑)

鈴木:いや、やっぱりそういうもんじゃないかなあ。選ぶほうって、大概何を基準に選んだかって覚えてないんですよ。でも選ばれたほうはね、いろいろ覚えてるんだと思う。世の中ってそういうもんだと思うんですよ。

藤巻:でも、その300人の中でも、なんかあった?

鈴木:僕にとって石井っていう存在は、ジブリで300人の難関をがんばって入ってきたんでしょうけれど、実はその後のいろんな事件の方が印象深いですよね。それはなにかというと、制作進行。監督をはじめ、絵を描く人たち、いろんなスタッフいますよね、そのお尻をたたくっていうのが(制作進行の)仕事になってくる。

つまり映画っていうのは当たり前なんですけど、良いものを作る一方で、スケジュールの中でやっていかなきゃいけない。お尻をたたくってのは大きな仕事で。石井1人じゃなくて他にもいろんなメンバーがいたんですけど、僕の耳にちょっと聞こえてきたのは「こないだ入った石井が、みんなと一緒にやる適応能力に欠けてる」(笑)。

藤巻:(笑)。

石井:これ本当そうなんですよ。僕クビ寸前だったんです。

藤巻:ええー!?

鈴木:そうなんですよ。

入社してすぐクビ寸前に

藤巻:協調性がない?

鈴木:協調性がなかったんですよ。これで実は、入ってどのくらい?

石井:すぐですよね。

鈴木:すぐだよね。3ヶ月か4ヶ月たったその頃ね、実をいうとタカハシっていう制作部長がやってきて。僕は制作部の中では何がどうなっているかわからないからタカハシからいろいろ話を聞いていて。タカハシは、僕が徳間書店からアニメージュ、ずっと一緒にやってきたやつなんですけど、彼は極端な物の言い方をするやつで。

僕の部屋へ来て「ちょっと話がある」と。なにかなと思ったら、「鈴木さん、相談がある?」と。「何」って言ったら、「こないだ入れた石井のことなんですけれど」。「ああ、がんばってんの?」って言ったら、「いや、そうじゃない」と。

「完全に浮いていて、このままではみんなと一緒にうまくやっていけない。選択肢は2つしかない。1つは鈴木さんの下で引き取ってくれないか」と。「引き取ってくれるんなら、石井にも鈴木さんがいろいろ考えて仕事をやるだろう」と。「引き取らなかったらどうするの?」って言ったら、「あ、クビにします」って言われたんですよ(笑)。これ本当なんですよ。

石井:本当です、これ。

藤巻:へえー。

鈴木:そこまで言われると、「じゃあしょうがないな。様子見てみるよ」って。そういうことになったんです。いろんな人が入って来たけれど、そんな入ってすぐ、みんなから総スカンくらう、ってやつはいなかったんですよ。

石井:(笑)。

鈴木:まあ、それはいまだにたぶん続いてると思うんですけど。

一同:(笑)。

鈴木:じゃあ面倒見るかってことですよね。

石井:200パーセント事実ですね。

「俺は再生工場だからな」

藤巻:そこで石井君的に、ちょっと自分の人間性とかを変えようという気持ちになった感じ?

石井:当時の僕はわかってないわけですよ。何が悪いかを。やってるつもりでいたし、仕事もする気でいたし。

藤巻:なんで責められるのかがわからない?

石井:だから最近の若いやつらとか、よく言うじゃないですか。僕もご多分に漏れず、それでね。世界が間違っていて、僕が合っていると思っていたわけですよね。たぶん周りの人からすると、たまったもんじゃなかったと思うんですけど。

藤巻:(笑)。

石井:それを鈴木さんに本当一から叩き直していただいたんですよね。

藤巻:そこから鈴木さんに弟子入りしたかたちで、僕は「鈴木メソッド」って呼んでるんですけど、それを学んだってことですよね?

石井:そうですね。

鈴木:僕はそんなこと何も考えていなかったんですけどね。とにかく僕が面倒見なかったらクビにしちゃうってわけでしょ。タカハシ自身も「僕の手には負えない」と。そうすると、どうしようかなーってやつで。僕が覚えている石井の印象っていうのは、人の言うこと何も聞かずに自分の思ったことどんどんやろうとする。そりゃみんなに嫌われるのも当たり前だよっていうね。

一同:(笑)。

藤巻:そうですね。

鈴木:だから僕が思いついたのは、まず人の話を聞く。そしてそれを理解するっていう。これがもしかしたら大事かなと。

石井:最初にそう言われたんです。2つあって、1つは「俺は再生工場だからな」って言われたんですよね。

藤巻:そんなこと言われたんですか?

石井:僕、野球も知らなかったんで、これは野村さんの「再生工場」(が元ネタ)なんですけど、アニメージュ時代もどちらかというと、あんまり組織に馴染めないやつを、いつのまにか100人くらい集めてアニメージュ作ってたんだと。今からそれを教えるからなっていうことで始まって。

若いことの最大の価値は誰にも必要とされていないこと

石井:最初に言われたのが、この本にも書きましたけど、「とにかく自分の意見を1回捨てなさい」と。「自分がなにか言おう言おうと思ってると、人の話が入ってこないから、お前の意見なんか誰も必要としてない」のだと。ただ鈴木さんのすごいところは、普通だったらそこで「大人はわかってくれない」となるじゃないですか。そこを「若いことの最大の価値というのは誰にも必要とされてないことなんだ」と。

その時にちゃんと自分の意見を捨てて、ノートにみんなが言うことを全部書いて。身振り手振り、すべて書き残して、会議が終わった後読み返せ。寝る前に読み返せ。しかも「それを俺に送れ」というふうにおっしゃって。その議事録を毎晩送ってたんですよね。

それをしてるうちに、だんだんみなさんが言っていることが入ってくるわけです。そうすると、「こんなに仕事っておもしろいんだ」という一方で、「自分にこだわるとこんなにちっちゃい世界しか見えてなかったんだ」ってことがわかってきたんですよね。

藤巻:すごいですね。

鈴木:すごいですね。

一同:(笑)。

鈴木:今あらためて、そうやって言われるとね、その鈴木さんってどこにいるんだろうって(笑)。

一同:(笑)。

藤巻:だれ? どこの鈴木さん?

石井:いや、当時のノートをちゃんと洗って書きましたからね。

大切なのは「読み・書き・そろばん」

鈴木:ただね、僕、持論なんですけど、人間が生きていくうえで何が大事か。「読み・書き・そろばん」。

石井:ああー、おっしゃいましたね。

鈴木:読み書きの「読み」ってなにかと言ったら、読んで理解することでしょ? それで理解したことを今度は書く。ほんで、もう一方で算数が出来る。この3つがあれば人間って生きていけると思うんですよ。

ところが、その後いろんな若い人たちと付き合って、石井のみならず「読み・書き・そろばん」が弱い人が多かったんですよね。だからそれがすごい気になっていたことは事実ですね。

藤巻:いわばクビ寸前だった石井君をここまで立派に。

石井:ぜんぜん立派じゃないですけども。

鈴木:話先行っちゃうんだけど、僕としては石井がどういう人であるかというのは、はっきり言うと関係なかったんですよ。僕が頼んだことをやってくれるかどうか。アニメーション映画って作ってく時、シナリオもさることながら、絵コンテっていうのが最終的に画面を決めていくんで。

これは作品によって違う人もいるんですけど、宮崎駿、高畑勲の場合は必ずそうなんですけれど、絵コンテが絶対なんですよ。「そこに書かれた絵、そこにどういうセリフがある、これ全部覚えてよ」って。「暗記してよ」って。なんでかっていったら、自分で読んでも忘れることって多いじゃないですか。そうすると、そういう人がそばにいたら僕としてはすごい助かるわけで。

そういうことでいうと、外部記憶装置として機能してくれたら。その1点に関しては、石井は本当に、こういう場であることではあるけれど、実に(すぐれていた)。最初のそういうきっかけがあったのかもしれないけど。人の言ったことを正確に第三者に伝える、その能力と同時に、自分が読んだもの、それを正確に伝える能力っていうのはすごい身に付きましたね。

僕はそれは、すごい助かった。だから今の『(となりの)山田くん』からだったんですけれど、一番石井の力が発揮されたのは、もしかしたら『千と千尋』かなと。

石井:もう本当に突然、「明日から宮さんのとこに毎日行け」って言われたんですよ。とんでもない話ですよね。本当にもう。足が震えて行けないわけですよ。じゃあ他のスタッフが行ってるかっていうと、他のスタッフもなかなか行けない中で僕が怖気づいていたら、やっぱある日怒られて。「ばか!」って言われて。「俺の代わりに行くんだから、お前が恐縮する必要はない」って言われたんですよね。

一同:(笑)。

藤巻:なるほど(笑)。

鈴木:そうそうそう(笑)。

大監督との話し方

石井:そこでも「お前は宮さんに良く思われようとか思ってるかもしれないけど、関係ないから」と。「だから俺が言ったことを宮さんに伝えなさい」と。「で、宮さんが言ったことを俺に伝えて」っていうふうに。

藤巻:ただの伝令役だけだからっていうことね?

石井:そうです。そこの情報の伝え方っていうのをすごく教えてくださって。最初に結論を言え、とかね。あと、必ず行く前に、宮崎さんはせっかちなんで、すぐ反論されちゃうわけですよ。だから3つに、言ったことを小分けにして。最初に「3つあります、ご報告が」とかね。

鈴木:ない時も言っちゃえって(笑)。まず「3つあるんです」って言っちゃうんです。そういう時って大概1個くらい出てくるんですよ。その1個しゃべってる間に2つ目考えるんです(笑)。

石井:あとね、高畑さんの時は……、これちょっとごめんなさい。LINE LIVEで言っちゃうと意味がないですけど、実はそういう項目あったけど全部カットしてあるとこがあって。「高畑さんとしゃべる時のコツ、教えてやろうか?」と。

藤巻:そんな偉そうなの(笑)?

一同:(笑)。

石井:あ、教えようと(笑)。

藤巻:これ、みなさん、高畑さんも宮崎さんも……。

石井:見てないですもんね。

藤巻:実態は知らないじゃない。

石井:高畑さんは本当に日本一の知識人なので。

藤巻:東大出なんですけどね。『火垂るの墓』とかね。『おもひでぽろぽろ』とかの監督です。

石井:宮崎駿さんの先輩なんですけど。「何か言われたらすぐ返事するな」と。本当に頭のいい人はすぐ返事するとね、「お前、ちゃんと俺の言ったことわかってないだろう」と思うんだと。「わかってなくてもいいから、斜め上を見て3秒考えたふりをしろ」って言われたんですよ(笑)。

(会場笑)

鈴木:有効だねえ(笑)。なるほどー(笑)。

石井:それをやってから高畑さんが僕のことを評価してくれるようになった(笑)。

(会場笑)

藤巻:でもね、それ久石譲さんも言ってましたね。

石井:ええ。

藤巻:久石さんが『崖の上のポニョ』の楽曲のオーダーを受けた時に、鈴木さんと宮崎さんから、こういう物語でこんな曲を作ってほしいんだって言われた時に、もう頭の中には「ターンタターンタタタタタタタタン」ってメロディが浮かんだんですって。

2人から言われた時に「こういうのどうだろう」って言おうかなと思ったんだけど、ここで言っちゃうとたぶん安っぽく、「何も考えてねえだろ」って思われるから、1週間たってからそのメロディを伝えたら「おお、いいじゃん」って言われたって言ってたから。それ重要なことなのかもしれない。

石井:結論は先に言うな、とかね。

鈴木:なるほど。

藤巻:ちょっとそんなことをプロジェクターにまとめて、いくつかのキーワードを出してもらえることになってるので、それに即して。

石井:この本のキーワードも入ってると思うんですけど、鈴木さんの本の。

藤巻:『ジブリの仲間たち』は今日はいいんで。

一同:(笑)。

鈴木:タイトル連呼してくれてる(笑)。

石井:そうです、それが1番(笑)。