ポスティング制度についての考え

記者3:ポスティング制度の質問なんですけど、2007年あたりに、松坂大輔が西武からボストン・レッドソックスに移籍して、その際に50ミリオン以上のお金が球団に入ってきたんですけど、そこから制度が変わって、今、上限が20ミリオンになってしまいました。その現在の制度に関しては、どう思われますか。球団的な視点からしても、監督からの視点として。

栗山:そうですね。個人的には、これは僕の意見ではなくて、仮に僕が大谷翔平だったら。

翔平ってお金にまったくこだわりのない選手なんですけど、もし彼がファイターズにお世話になって、そのおかげでメジャーリーグの夢が果たせたというふうに彼が思うんであれば、僕はいらないけれども、球団のみなさんになにかプラスになってほしい、恩返しがしたいというふうに彼が思ってると思うんですね。これは僕の勝手な想像ですけど。

であれば、それはフリーになっていて、たくさん、「必要なところがこれだけ出します」っていうほうが、球団も翔平も喜ぶかなって。すみません。人の意見になってますけど。

記者3:NPBの視点からして、今現在のポスティング制度は正解だと思われますか?

栗山:いや、まだいろんなことを考えていくべきだと思います。なにが答えかっていうのはまったくわからないですし、いろんな試行錯誤をしながら、アメリカにとっても、日本にとっても、Win-Winになる状態を早く探さなければいけないというふうには思います。

今のポスティングで、例えば20何億っていうお金が高いのか安いのかって、僕らからしたら見たこともないものすごい大きなお金なんですけど、でももっとたくさんもらう選手が(メジャーには)いるので、それがただ小さく見えてるだけだと思います。

だから僕は、そのお金の価値がいいとか悪いとかではなくて、アメリカの球団のみなさんだったり、日本の球団のみなさんが喜ぶようなかたちがどこにあるのかっていうのは、いろいろ試行錯誤しないとわからないのかなとは思ってます。

質問者6:2日後に、正力松太郎賞が決定するんですけど、昔はけっこう、選手と監督半々ぐらいに与えられてたんですけど、タフィー・ローズが受賞して以来、日本シリーズ優勝した監督に与えられてるんですけど(注:タフィー・ローズは受賞していない)、監督的には、やっぱりもっと選手の方にも、まああげてもいいのかなっていう気持ちはありますか?

栗山:僕ちょっとそれ、全然わかんないんですけど、そうですね。本当に、誰にあげるとかじゃなくて、プロ野球の将来のために、プロ野球のために、本当にプレイヤーが頑張ったケースっていうのは多いと思うんでね、まあそれは本当にそういうふうに思いますけど。

すみません。ごめんなさい。それがどういうふうに決まってて、どういうふうになってるか、全然僕わかんないんで、なんとも言いようがないんですけど、正力松太郎賞ということではなくて、すべての、たとえばベストナインであったり、ゴールデングラブだったり、MVPだったり、そういったものをどういうふうに決めていくことが一番価値のあるものになるかっていうのは……現場の監督だと「この選手にこれをあげたい」とかありますよね。だからまあ、それはいろんなことが考えることがありますけど、それはもう、宿題として、僕らもそういったものをちゃんと勉強して、コメントを出していけるようにちゃんとしていきます。

あんまり個人の賞って気持ち的に……自分もそうですし、選手たちにも、それよりも優勝しよう、ファンの人に感動してもらおうと思ってやってたので、ちょっとそれは。

ピオリアでキャンプを行うメリット

質問者7:今年のピオリアキャンプの質問なんですけれど、今回ピオリアキャンプして、実際どうでしたか? 優勝に貢献はされましたか? 実際、ピオリアに行かずに沖縄で今までどおりにキャンプしてたらなにかが違ったか。今後も、ピオリアでキャンプする予定はありますか?

栗山:はい。すごく大きな意味があったと思います。もちろん、そのすばらしい環境のなかでも、例えばちょっと土の硬さとかが、僕らがイメージしてたものとは多少違ったりするところはあって、来年のキャンプでしっかりやってかなきゃいけないことはもちろんあるんですけど。

球団と僕がなにを……実はアリゾナキャンプを聞いた時、今年の春ですね。今年の春はいいんだけど、その前の年は「だめだ、もう少し待ってください」って僕は言ったんですね。

あまりにも選手のこれからっていうのが若すぎて、ベースの基礎を作らなきゃいけない。去年はそういう状態だったんですけど、今年は、世界にはこんなにすばらしい環境、こんなにすごい野球があるっていうのを(見てほしかった)。

そういう気持ち的な部分で絶対チームが前に進むと思ったので、ぜひお金がかかっても連れていきたい、見てほしい、若い人たちに見てほしいと思っていました。

なんかすごく子供っぽいかもしれないですけど、選手の中の夢とか、あこがれとか、野球少年だった思いみたいなものを、もう1回呼び起こす作業っていうのが必要だと思ったので、それは優勝にものすごく大きな意味があったと思います。

野球に限らず、プロスポーツがどういうふうに見えているのかっていうのは、客観的に見る機会ってあんまりないんですけど、NBA見たり、NHLを見た時に……ちょうど夜中の12時ぐらいにフライトだったんですけど、練習して食事して、みんな何時間も待ってる間に、また翔平たち、もう1回NHLの試合を「これ飛行機遅れねえか」っていうぐらいわざわざ見に行ったんですね。

要するに、そのくらいなにかこう、やらなきゃいけないこととか感じるものがやっぱりプロスポーツマンとしてあったはずなんですね。だから、それでもう1回見に行って、なにかを、まあ、楽しかったと思うんですけど、そういう感じ方をしている。

で、そういう環境も、日本にではないので、やっぱり見られる側が自分をどう見てるのかっていうのも客観的にわかったと思いますし、そうしたらどうがんばらなきゃいけないのかっていうのも感じてくれたと思うので。

で、ファイターズって人の成長を促そうとするチームなので、そういう意味ではすごく大きな意味があったと思います。

ハンカチ王子こと斎藤選手について

質問者8:私、経済ジャーナリストなんで、野球はそれほど詳しくないんですけど、今、栗山さんが言ったように、ファイターズっていうのは、若い選手を育てていくチームです。そのなかで、私はハンカチ王子の斎藤佑樹ね。早稲田から行った。彼が今、つぶれて出てませんね。僕は、早稲田の時代から、彼、高校時代からずっとファンで、女房もそうなんだけど、ハンカチ王子の斎藤がいかに活躍するか、みんな期待してるんです。

まあ、かなり栗山さんも苦労して使ってるのはわかってるんだけど、どうしようも、もうないんですかね。彼は。なんとかもう1回、がんばってやってもらいたいなと思うんで、それに関して、どうしてだめなのか。どうして。それについて栗山さんに、まあ、変な厳しい質問ですけど、それにちょっとお返事願えたらと思います。

栗山:まずは、僕が悪いんですね。もちろん、スピードが斎藤投手よりも速いピッチャーはたくさんいる。でもそれは、高校時代も同じだったはずで、それであれだけの実績を残している。

僕が一番、なにをいつも信頼してるかって言うと、やっぱり勝ち方を知ってるっていう彼の特別なピッチャーとしての能力があること。僕が一番信頼してるし、信じてる部分なんですけど、そのなかで、プロのレベルになった時に、佑樹が自分が思ったような内容のピッチングができる時とできない時があって、その確率を高めてあげなければいけない。

そのためには、1軍で数を投げていかなければいけないとは思ってるんですけど、そこがなかなかこの2年間ぐらい、本人自身もそれが整っていないと思ったこともあったと思いますけど、ただ、こっちは、本当になんとかしなきゃいけないというふうには思ってるんで、もうちょっとだけ時間ください。

必ず、この前も、この2日ぐらい前に、全体練習終わる前に、本人とゆっくり話しましたけど、こっちが思ってることをしっかり伝えましたし、本人も、本当になんとかしなきゃいけないということを今、感じてると思うので、来年、がんばります。

「楽しい」ということがスポーツのベース

質問者9:ハクマタイムズの大谷と申します。私も、監督にソフトボールを教わったことがあります。質問なんですけれども、今、小中高ともに野球人口が減っているようなことも報じられておりますし、あとは高校野球で残念なことながら、非常に暑い中プレーをしていることとか、あとは投げすぎの問題みたいなことも、高校野球でとくに報じられるようになっているんですけれども。

監督は、子供たちとか、高校生とかの野球のプレーの環境とか、そういうことを今後、ゆくゆくプロとして育っていくことも考えますと、どのようにあるべきだというふうに考えてらっしゃいますでしょうか。

栗山:僕、少年野球に行くと、子供たちが野球が楽しいと思ってくれることしか考えないで、技術を教えようと思うことはないんですけど、自分が本当に楽しければ、もっといいプレーしたい、楽しみたい(と思う)。

今のうちの選手もそうですけど、いろんなことをするよりも、「大観衆の前ですごいプレーをした」これ以上楽しいことはないだろうと思ってもらうように、やってもらってます。なので、基本的にはそれが、スポーツのベースかなって僕自身は思ってるところがあります。

ですから、高校野球も、その指導者がこうするんではなくて、「俺、これでもう終わってもいい」と。「でも仲間のために投げ続けるんだ」って本当に自分が思えば、投げることもそれはそれで、そこの経験の人生においての意味というのは僕はすごくあると思っていて。

自分がそう感じてやるべきものだと思ってるんで、そういうものが野球を通して自分が考えて、決断できる場所が野球の場所だと思ってるんで、そういうふうになってくれたらいいなと思ってるだけです。

プロ野球は、高いレベルを目指してもらうのは、なんとか僕らが現場で、本当に漫画みたいな、それこそ翔平みたいな選手がいっぱい出てくればね、子供たちはああいうふうになりたいと思ってくれるはずなんで、ちょっと変な言い方ですけど、よく「漫画みたいな選手を俺が作る」っていうふうにずっと言ってやってますけど、これからも、なんとかそこに向かって僕自身は今、努力していきたいと思います。野球のベースはそんなふうに考えています。

「大谷翔平は世界一の選手になる」

質問者10:大谷翔平の質問なんですけど、夏場に雨でローテーションから2ヵ月ぐらい離脱してますよね。その間に、なぜそのバッターとして使い続けたか、なぜもっと早くピッチャーとして戻さなかったか。雨の影響もあったと思うんですけど、そのあたりの心境をお願いします。

栗山:はい。そうですね。あと1週間か10日ぐらい早められましたかね。無理すれば。まあ、そういう状況だったんですけど、まず、大谷翔平にとって、僕がやってあげなければいけないことの、いくつかの残ってるパターンがあるんですけど、長くずっとバッターで試合に出続ける。これはピッチャーやってる限り、なかなか難しいテーマではあったんですけど、僕にとってはすごくいいチャンスだったんです。

バッターをやりながら、調子を整えていく、試合に出ていくってことがなかなか難しかったし、長く出続けると、やっぱりこう、相手との攻め方の違いみたいなものも起こってきていて、そういうものはいつか経験させてあげなきゃいけないと思っていたので、まあ、そのことは頭にありました。

ただ、みなさんも野球を見ていただければ感じると思いますけど、翔平がラインナップからいなくなると、非常に相手が楽になる。で、そこのうちのピッチャーとの兼ね合いを考えながら、一番最後まで1つでも勝ちやすいかたちを最後のほうは考えていたので、そういうふうにしました。

で、トータル的に言うと、世界一の選手になると思って、我々、僕もそうだし、球団もスタートしてます。なので、できるだけ早い段階で、レベルを引き上げるっていう作業は、それがチームが一番勝ちやすい、日本一になるということだと思ってやってきたので、その手を打ち尽くすというようなことを、まあ、あの時だけじゃなくて、ずっとこの4年間、考えてます。

まあ、それが、今年はいいかたちで結果につながったというふうに思います。