なぜ若者は動画でコミュニケーションをするのか

古川健介氏:今日は、「なぜ若者は動画コミュニケーションに強いんだ?」という話をしたいなと思っています。

簡単に自己紹介ですが、Supershipというインターネット会社の取締役をしている者です。

とくに若者について詳しいとか、動画のプロではない私がなぜここでお話しするかというと、インターネット上でコミュニケーションに関係するサービスを15年間ぐらいやっているんですけど、サービスを作る時に、「こういう感じじゃないかな?」とか、「こういう仮説がある」みたいなところから作ったりしてるんですね。

なので、私が何かを教えるというよりかは、「僕はこういう仮説を持っています」という話をした後に、パネルディスカッションで紹介する方々とお話しして、「なぜ今の若い人たちは動画を使うのか?」というところを深めていければなと思っております。

ちなみに、このなかで、日常的にSnapchatを使っている人ってどのくらいいます?

(会場挙手)

古川:1人……なるほど。Instagramのストーリーを日常的に使っている人はどのぐらいいますか?

(会場挙手)

古川:すごい少ないですね。なるほど、わかりました。ありがとうございます。じゃあちょっと、そのへんの「なぜ若者は動画でコミュニケーションするのか」というところを話したいなと思います。

テキスト→写真→動画への変遷

まず第1の仮説として、「コミュニケーションはどんどんリッチを求めている」ということがあるかなと思っております。

どういうことかというと、昔のコミュニケーションというのは、ほぼテキストだったんですね。インターネット上でやり取りする時は、パソコン通信の時からテキストでやっていたんですが、これは当たり前で、テキストは容量が少ないんですね。通信の関係で、どうしてもテキストから入らざるを得なかったという流れがあります。

ただ、だんだん写真とか動画ができるようになってくると、ほとんどのコミュニケーションのスタイルはどんどんリッチなほうに寄っていってるんですね。

昔のFacebookもほぼテキストばっかりだったんですけど、写真が増えていって、今は動画が増えていっているという流れがあると思います。

基本的に、どんなコミュニケーションもよりリッチなほうがあったら、だんだんそっちに移ってくるということがあると思っております。

例えばSNOWとか……。SNOWを使ってる人はいますか?

(会場挙手)

古川:なるほど、少ないっすね。いわゆるARですね。今、リアルを飛び越えたようなものまでいっているという状況があります。

360度動画もそうなんですけど、だんだんリアルに近づくという流れと、Facebookのライブ動画みたいな、リアルタイム性のあるものとか、ARのような現実を飛び越えるようなものとか、いろんなものが出てきてますが、すべてこれは(コミュニケーションが)リッチになっているという流れだと思います。

コミュニケーションがどんどんリッチになっていくので、今、一番普及し始めているのが動画にすぎないということを思っています。

理論上、今後は全部ライブでやるだろうし、そのライブもだんだんAR化していくだろうなと思っています。

おそらくFacebookのフィードも、半分ぐらいがライブになる時代というのが3年後ぐらいに来るんじゃないかなと思っています。

動画を発信するのは「自分の価値が高い人」

仮説の2つ目は、若い人のほうが「自分の価値が高い」ということを考えております。この中で、30歳以上の男性の方ってどのぐらいいます?

(会場挙手)

古川:あ、なるほどなるほど。そういう人たちって、だいたいの興味が社会とか経済だったり、政治だったり、会社だったり、自分からもうちょっと遠いところの話に興味があると思うんですね。30代のおじさんで「自分大好き」みたいな人って、ちょっと気持ち悪いじゃないですか(笑)。

(会場笑)

古川:みたいなことがあるんですけれども、10代が自分に興味あったら、「まあ許せる」と言ったらあれですけど、普通のことだなと思います。

なので、年齢が上がれば上がるほど、話題の興味が自分じゃなくなってくるというのがあるんじゃないかなと思っています。

それで、先ほど手を上げていただいた方というのは、基本的にあんまり価値がない人なんですね(笑)。おじさんはあんまり価値がない人だと思っています。若い女性は価値があります。すごいざっくりした図で申し訳ないんですけど。

やっぱりおじさんが動画で自分を写したところで、みんなが見たいかというと、そうではないだろうなと。ただ、若い女性とか若い男性だと、自分の価値があるので動画で発信していくんじゃないかなと思っております。

やっぱり動画で見る時って、どうしてもインターフェース的にかなりの場所を取るんですね。こういうふうになっていくと、ほとんどが価値の高い人に独占されていくというのがあるので、必然的に若い人たちに寄るんじゃないかと思っています。

Facebookとかになると、おじさんもライブ動画に投稿するんですけれども、それはやっぱりフロントではなくて、外の旅行の写真とか動画とか、価値の高いものは上げていくと思うんですけれども。

コミュニケーションにおいて、そのへんはあんまりやり取りにならないので、そういうことが起きてるのではないかなと思っています。これが仮説の2つ目ですね。

テキストはネガティブな感情が長続きする

仮説の3つ目としては、「動画のほうが幸せになれる」ということがあります。これはどういうことかというと、チームラボの猪子(寿之)さんが取材で言っていた話で、すごいおもしろいんですけれども、「テキストのほうがネガティブな感情が長続きする」という説があるんですね。

例えば、ボクシングの試合の前って、お互いにののしり合ったりするじゃないですか。あれがないと本気で人を殴れないという話があるんですね。なぜかというと、ネガティブな感情を長続きさせる時って、言語を介さないと覚えてられないらしいんですよ。

なので、テキストはネガティブな感情を持続させるのにけっこう向いているということを言っています。

想像しやすいのが、戦争する時に指導者がすごい演説をするんですね。演説をして、言葉によって怒りを煽ったりすることが非常に多くて、こういう言語とかロジックで、ネガティブな感情、怒りとか悲しみを引き起こすというのが多いらしいんです。

ただ、例えば愛情とか、そういったものはどうかというと、ほとんど言語がいらないんですね。猫とか犬を飼っている方はわかると思うんですけど、猫とか犬と接している時って、愛情を感じたり、わかり合えたりするじゃないですか。あれって、言語を介してなくても、愛情が長続きするんですね。

ただ、怒りの感情というのは、言語がないと長続きしません。なので、言葉がわからない同士のケンカって、ほとんどすぐ収まるらしいんですね。一説によると、怒りの感情というのは理論的に言語を介さないとだいたい90秒ぐらいで収まるらしいんです。

なので、言語がいらないほうが、コミュニケーションとしてはだんだんポジティブになっていってるんじゃないかというのが仮説としてあります。

もちろん使ってる側の人はこんなこと意識しないと思うんですけれども、使ってるうちに、「Twitterはギスギスしてんな」とか、「LINEでひと言こういうことを言われると、すごいムカつくな」みたいなのがあるけど、動画でコミュニケーションしてると、「そんなに嫌な思いしないなみたいな」ことが、だんだん蓄積していってるのではないかなと思っています。

動画コンテンツは人を幸せにする?

この3つの仮説をまとめると、若者が動画コミュニケーションするのは、リッチで楽しいというのもありますし、自分の価値が高いので、それを発信するのに抵抗がなかったりするし、あとは動画のほうが幸せになれるからなのではないかなと思っています。

とくに個人的に一番気になっているのが、この「動画のほうが幸せになれるんじゃないか」というところです。Twitterを使ってる方ってどのぐらいいます?

(会場挙手)

古川:Twitterは多いっすね。やっぱりTwitterってすごい炎上とか、ネガティブなものに向いちゃっているというのが、アーキテクチャ的にあると思ってるんですね。

やっぱりテキストのメッセージなので、そういう悪いことを言ったり、人を煽ったり怒らせることに非常に向いちゃっているというのがあるんじゃないかなと思っています。

逆に、YouTuber同士がケンカするとか、Vineのユーザーさん同士がケンカするって、あんまり聞かないですよね。Snapchatでも、友達と動画を送り合う時って、だいたい悪い話ってほとんどないんですよ。かわいい子供の動画が来たり、犬の動画が来たり、自分の自撮りが来たりして、そういうネガティブな感情が起こらないのが、非常におもしろいなと思っています。

今Supershipという会社でSunnychatというアプリを作っているんですが、これは「動画のほうがハッピーになれるから、そういうのをやろう」ということで作っていたりします。

なので、動画を基軸にすると、コミュニケーションがどんどんポジティブになっていって、世界がよくなっていくというのがあるから作っているんですけど、このへんが若者が使っているきっかけになっているのではないかなと、僕は仮説として思っています。

ただこれは仮説にすぎなくて、かなり感覚値に近い話なので、この後実際に、10代20代の方々が、どうして使ってるのかとか、どういう気持ちでいるのかということをパネルディスカッションで深掘りしていくことで、「本当にこういうことなのかな?」というのを知っていきたいなと思っております。私からは以上になります。ありがとうございます。

(会場拍手)