バフェットの投資術の活かしやすい点・活かしにくい点

益嶋裕氏(以下、益嶋):ここからは4つ目の論点。最後になるわけですけれども、バフェットの投資術を私たちの投資に活かすにはどうしたらいいんだろうというところでご紹介してまいりたいと思います。

今日はいろいろな点、例えば「理解しやすいビジネスに投資する」とか「長期的に安定した事業実績がある」とか、いろんなご紹介してきたんですけれども、やはり私ども、そしてみなさま個人投資家のみなさまには、活かしやすい点と難しい点というのがあるかなと思います。

活かしやすい点というのは、この(スライド)左側に書かせていただきましたけれども、理解しやすいビジネスに投資することですとか、事業実績を長期的に確認すること。

例えば、日本株であれば、『会社四季報』ですとか企業の有価証券報告書を見れば、無料で過去の事業実績の確認ができますので、このへんは簡単にできるのかなと。もちろん同様に、ROE(株主資本利益率)を測定することも可能です。

それで、長期投資ですね。「短期投資をしなさい」と強制されることはまったくありませんので、ご自身のペースで資産を築いていただくために長期的に投資をしていただくというのも活かしやすい点なのかなと。

事業価値の測定というのは、なかなか概念としては難しい点かなと思うんですけれども、先ほどご紹介したような書籍なんかを読んで学んでいただければ、その考え方というのは投資に活かしやすい点ではないかと思います。

ただ、(スライド)右側に書かせていただきましたけれども、そのビジネスが長期的に利益を稼ぎ出す展望というのはなかなか難しいと。プロにも難しいわけですので、なかなか難しいと。

経営者の資質判断。これも難しいですよね。投資家向けの説明会をやっている企業もありますので、そこに参加したりですとか、各メディアでの経営者の発言なんかがあれば、人柄とか経営の考え方を推し量ることはできるかもしれませんけれども。具体的な資質判断というのはなかなか難しいと。

先ほども少し申し上げましたが、「資産を集中的に投資するんだ」とバフェットは言ってるわけですけれども、やはり私どもはなかなか集中的に投資するのは怖いというのはあると思いますし、実際その目論見が外れたときというのは大きなリスクもあるわけですので、このあたりは難しいのかなと。

ただ、全部をみなさまの投資に取り入れていただく必要はもちろんないと思うんですね。左側に書かせていただいた活かしやすい点のなかでポイントを取り入れていただければ、考え方に活かしていただければいいのかなと思っております。

個人投資家へのアドバイス

今日ここまでセミナーを行わせていただきまして、すべてのちゃぶ台をひっくり返すようで恐縮なんですけれども。個別株の情報を徹底的に分析するというのは時間もかかります。

ある程度財務分析とかそういった知識もいると。なかなか難しいと。さらに米国株ですと、情報があったとしても英語ですので、もっと難しいということになると思います。

じゃあどうしましょうということなんですけれども。バフェットはこんなことを言っています。

「多くの投資家は、ビジネスや経済見通しを優先させて生活してきたわけではない。そういった投資家は特定のビジネスについて将来の収益力の予測の仕方がわからないと結論づけるだろう」と。

「多くの投資家には将来の利益のことはわからないでしょうね」と。さっきまで散々「将来の利益が大事ですよ」と言ってたバフェットなんですけれども、「まあわからないですよね」と、べフェット自身がちゃぶ台をひっくり返しましたと。

「じゃあどうすればいいんですか、バフェットさん!!!」ということで、もちろん個人投資家の方すべてに無理だと言ってるわけではないですし、私もそうではないですね。

もちろんしっかりと勉強をされて、時間をかけて学ぶことができる方にはできるとは思うんですけど、ただバフェットは多くの投資家、プロではない方には難しい点はあるだろうというふうに言っていると。

じゃあどうすればいいのかというと、バジェットはそのソリューションを言っております。

「プロの投資家ではないみなさんに良い知らせがある。投資家に将来の収益を予測するスキル、実は必要なんだよ。米国のビジネスは過去にすばらしいパフォーマンスを達成してきたし、今後もそれは続くだろう」と。

バフェット何が言いたいかといいますと、多くのプロではない方には、「この企業が将来伸びる」「この企業は伸びる」という米国企業を一つひとつを探し出すのは、難しいでしょうと。

でも、米国というのは全体で見るともうずっと長い間利益を稼いできた。そして将来も利益を稼いでいくでしょうと。

さっき投資手法のなかでいろいろ言ってきました、将来の利益の展望が大事ですと。過去の実績が大事ですと。ただ、この米国のビジネス全体というのはまさにそういうものですよとバフェットは言っていると。

これバフェットが言ったのはすごく昔ではありません。2013年「株主への手紙」ですので、最新の「株主への手紙」でこれを言っているということになります。

インデックス・ファンドへの投資のメリット

バフェットはさらにこう続けます。

「利益をあげる個別株を追い求めることは個人投資家にとって賢明ではない」実は「S&P 500に連動する低コストのインデックス・ファンドこそ個人の投資には最適だろう」と言っています。

このS&P500というのは、先ほども少し言いましたけれども、米国企業の全体、代表的な500社を切り取った株価指数、日本でいうとTOPIXのうち500社を切り取ったようなものとお考えいただければよいでしょうか。

その指数に連動する低コストのインデックス・ファンド、それに連動する成果を狙う投資信託。ETFといったものですね。それに投資するのが最適だろうねとバフェットはソリューションを言っておりますと。

これ実際S&P500、冒頭でもすごくいいパフォーマンスをしていると言いましたけれども、日本株の代表的な指数であるTOPIXとの比較なんですが、これ1985年の年末を100として、2つの指数を指数化してるんですけれども。

この緑の線がアメリカのS&P500。右肩上がりで今900ぐらい、9倍ぐらいになっていますと。日本はずっと低迷して100そこそこ行ったり来たりというのは、みなさまご存知のとおりかと思います。

じゃあ、なんで日米の株価にこんなに大きな差が出るんだと。その大きな理由としては、これではないかと私思うんですけれども。これIMFが出しました「日米の名目GDPの推移」というものなんですけれども。

緑の線のアメリカというのはGDP、経済全体の規模がずっと大きくなり続けているわけですね。それに対して日本というのは、1995年あたりからもう停滞が始まってしまっていると。

失われた20年。デフレによって失われた20年だというふうによく言われたりもしますけれども、日本はもう経済のパイ自体が広がっていっていないわけですね。

米国はそれに対してどんどん大きくなっていると。これが企業の利益、そしてその株価の差が出てる大きな理由ではないかと思います。

バフェットは今後も米国というのは伸びていくであろうと。IMFの点線というのはIMFの予測なんですけれども、IMFの予測でも米国のGDPは今後伸びていくであろうと予測されております。

1つの考え方なんですけれども、今後も堅調な経済成長、IMFの予測によればですが、そういった米国というのは低コストのETF、例えばバフェットが言ったようなS&P500に連動する低コストのインデックス・ファンドで、そのリターンを狙っていくと。

逆に市場全体の成長がなかなか期待しづらい日本株というのは、みなさまにとっては、日本株というのは地の利もあるわけですので、それをバフェット流なんかも活かしていただきながら個別株を厳選して、例えば長期投資を狙っていくというようなことで、考え方をみなさま自身が投資に活かしていただけるんではないかと思っております。

ETFの種類と特徴

どんなETFがあるのかということで、バフェットが紹介したS&P500に連動するETFというのはこんなようなものがございます。S&P500 ETF。

まず1つ目がバンガードという運用会社が出しているもの。2つ目がiシェアーズというシリーズ。ブラックロックさんという会社が出しているシリーズなんですけれども。

どちらもS&P500に連動するものなんですが、経費率はそれぞれ年間で0.05パーセントと0.07パーセントということで、非常に低いという特徴がありますので、例えばこういったところを狙って投資をしていくというのも1つの方法かと思います。

さらにETFにはいろいろおもしろいものがございまして。ご紹介している1つ目が、金融セレクト・セクターSPDRファンド(ティッカー:XLF)ということなんですけれども。

このETFはこのETFが同じパフォーマンスを狙う指標というのが、その指標自体が金融セクターの株のパフォーマンスを取り込んでいるものなんですね。

この表を見ていただきますと、その指数の構成として、バークシャー・ハサウェイですとか、ウェルズ・ファーゴですとか、アメリカン・エキスプレスとか、本日ご紹介してきたような銘柄が組入上位に入ってきている。ということで、こういうETFもございます。

ちなみにこんな価格の推移をしております。

さらにさらに生活必需品、そういったところのセクターの指数に連動するETFというのもありまして。生活必需品セレクト・セクターSPDRファンド、XLPというファンドなんですけれども。

こちらもバフェットが投資しているプロクター・アンド・ギャンブル、P&Gですね。それからコカ・コーラとか、スーパーのウォルマートですとか、そういったところが組入上位に来ている。こんなETFもございます。

こちらはこのように最近右肩上がりの推移をしております。

というわけで、このようなETF、もし今後マネックス証券にご投資いただける機会があるとするならば、かなりお安くコストを設定しておりますので。

最低手数料は5ドルから、今、500円強ということになりますけれども、そのあたりからご投資いただけますし、マネックス証券ではオンライン証券で唯一特定口座にも対応をしておりますので、ぜひご活用いただければと考えております。