元CTOが読み解く、現役CTO100人の実態調査

松尾康博氏(以下、松尾):「元CTOだからこそ言える、あの時〇〇したから今がある」というタイトルで、カーディナル合同会社、代表社員の安武さんと、East Venturesのバタラさんにご登壇いただきたいと思います。

今回は元CTOのお二人。しかも、これから会社を立てようとされている安武さんと、今200社以上のスタートアップを見て投資をされているバタラさん。そのお二方から見て、今参加されている約100人のCTOの実態がどう映ってるのかコメントをいただきながら見ていきたいと思います。

スタートアップのCTOは何歳くらい?

さっそくQ1、「年齢は?」ということです。今回は、けっこう20代後半と30代後半が多いかなと思いました。

松尾:そこらへんは、波が2つあるような感じなのかなと思ってますけども。これはバタラさんが見られてるスタートアップと同じような感じでしょうか?

衛藤バタラ氏(以下、バタラ):そうですね。私が見ているスタートアップだと、20代とか30代前半ぐらいが多いかなっていう。この(スライドの)36~40歳、28パーセントって、ちょっとびっくりですね。もうちょっと若い感じが……。

松尾:そうなんですね。安武さんは?

安武弘晃氏(以下、安武):クロス集計ができればと思ったんですけど、なんとなく推測で、26~30歳の方が創業CTOが多くて、年齢が高い方が後から入った人が多いんじゃないかなって。

松尾:そうですね。

安武:そこで二山あるのかもしれない。

松尾:この後の質問で、後から入ったか、創業CTOかという質問もあるんですけど、そこのクロスを出してないので、こういった山が2つあるのかなって。

安武さんもいろいろとM&Aやられてたと思うんですけども、そういったスタートアップってどういう傾向があると思われますか?

安武:楽天のM&Aは比較的海外が多かったんですけど、2種類ですね。小さなスタートアップは下のグループで、比較的大きくなった会社で後から買ったやつは上が多かったですね。

松尾:その場合、やっぱり下のほうだと創業CTOが多いとか?

安武:ただ、海外はいずれもけっこう創業系で、雇われの人もいたけれども、やっぱり創業系のほうばっかりでしたね。だいたい残ってる人が多かったです。

会社のCEOはコードを書ける?

松尾:なるほど。今のお話の流れでQ2です。「どのような属性のCTO?」ということで見たところ、創業CTOがこの中の約3割ですね。後からジョインしたCTOが約6割。その他というのが、ちょっとよくわかんないんですけど(笑)。

(会場笑)

松尾:創業メンバーだけど、後からCTOに繰り上がったとか、そういう感じですかね? このへんも肌感覚としてどうですか?

バタラ:後からジョインしたCTOの人たちに、もう1つ聞きたいのは、「そのCEOはプログラミングできるんですか?」という。(もしそうであれば)たぶんCTOがジョインするまでに、経営陣にコーディングわかる人が1人もいなかったことになるんですよね。

松尾:なるほど。じゃあ挙手してもらいましょうか。後からジョインしたCTO、この会場に6割弱いると思うんですけども。

参加者1:僕は後からジョインしたCTOなんですけど、前にCTOみたいな人がいたんですよ。その人たちが諸々支えてたんで、一応社長も代表もコードは書いてたっぽいんですけど、後から見るとそんな大したことはないんで(笑)。

(会場笑)

参加者1:誰か周りが支えてたんですね。

松尾:ありがとうございます。ちなみにCEOがコードを書くという方は、どれぐらいいらっしゃいます? 今は書いてないかもしれないんですけど、コードを書くよという。

(会場挙手)

松尾:だいたい3割、4割ぐらい。逆にCEOはまったく書けませんという方。

(会場挙手)

松尾:あー、やっぱりこんな感じですね(笑)。日本の感じです。これって海外はどうですか? USとか東南アジアとか。

シリコンバレーとアジア・ヨーロッパの違い

安武:うーん……。ヨーロッパは比較的同じような傾向を見せるときがあるかもしんないですけど、アメリカは違いますね。とくにシリコンバレーは違いますね。

バタラ:そうですね。東南アジアもけっこう日本に近くて、シリコンバレーのスタートアップとなにが一番違うかというと、テック会社かどうかっていうことになると思うんです。

社長がコーディングもできなくてというと、やっぱりテック会社で走るとなかなか難しいかなという感じですね。とくに経営陣に1人もコーディングがわかる人がいなくて。

アメリカはほとんどがテック会社なので、たぶんCEOもコーディングできるようなイメージかなと思います。

安武:CEOと技術の話で意思が通じなくて困ってるという方は、どれくらいいらっしゃいますかね?(笑)。

(会場挙手)

松尾:2割ぐらいですか(笑)。そんな感じなんですね。テック会社とそうじゃないスタートアップといったときの、その差というのは。

バタラ:その会社の強みが、営業部隊が強いのか、すごいエンジニア軍団がいてリリースがめちゃめちゃ早いのかとか。たぶんいろいろあると思うんですけど、あるいはマーケティングめちゃめちゃうまいとか、どこにコアを置くかという問題だと思いますけどね。

松尾:ありがとうございます。今のバタラさんの仮説だと、後からジョインしたCTOって、今までCEOが(コードを)書いてて、後からCTOがジョインという感じなんですけど。

たぶん(元)はてなの田中(慎司)さんみたいに、2代目CTOという方もいらっしゃるのかなと思ったんですけども、2代目CTOの方ってどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

松尾:けっこう多いんですね。2割、3割ぐらい、2代目CTOはそういう感じなんですね。そういうCTOがどんどん代替わりしていくのは、海外ではどんな感じなんですか? 多い? 普通?

バタラ:たぶんそんなに多くはないと思いますけど、たまにいますね。

松尾:わかりました。ありがとうございます。みなさん、こんな属性でいらっしゃるということですね。

CTOが取締役会に出る重要性

Q3のほうに移りたいと思います。「取締役ですか?」という質問に対して、35パーセントが取締役で、65パーセントがいわゆる社員ということになっていらっしゃいます。

私もマイネット時代は取締役ではなかったので、65パーセント側に入るんですけども、この結果を見てどうですかね?

安武:経営の責任を持っているという認識があるためにも、今の日本社会だったら取締役であったほうがいいんじゃないかなとは思うんです。

例えば、取締役会に出てるか出てないかとか、重要な意思決定するときに意見が反映されてるかされてないかというのは、けっこう大きい気がします。

(会場挙手)

松尾:どうぞどうぞ。

参加者3:MonotaRO(モノタロウ)の安井です。僕は取締役じゃないんですけど執行役で、会社法上は役員なんです。取締役会も毎回出ますし、最終決定は取締役なんですけど、重要な意思決定に対するアドバイスというか、意見は当然取締役会で言っています。

安武:さっき「今の日本では」って枕詞を置いたのは、今の日本においては、だいたいの会社が取締役になった人が経営の判断をしているというのが大雑把なコモンセンスだと思うので、MonotaROみたいなケースのほうがまだ少ないんじゃないかなと思うんですよね。

本当は、取締役は外部が多くて、実際の執行役が会社を経営していく会社のほうが、私はいいとは思うんですけど、今の日本においてはまだマイノリティじゃないですかね。

松尾:執行役員の方ってどれぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

松尾:3割ぐらい。結局それでいくと、3割ぐらいが取締役、3割ぐらいが執行役、あとが普通の社員って感じなんですかね。

安武:会社の重要な意思決定に関わっていて、引っ張れているという自信があるほうにお願いするのか、そうではないほうにお願いするのかというのは難しいんですけれども、どうしようかな。自分は会社の経営の大きな意思決定に、ずっと関わっていると言える方はどれぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

安武:よかった(笑)。

(会場笑)

松尾:多いですね。取締役会に出る出ないというのは、非常に重要なところなんですかね。たぶんこの分布だと出てない方もそれなりにいらっしゃると思うんですけど。

おそらくバタラさんとかだと、社外からVCという立場で取締役会に関わったりすると思うんですが、そのときにCTOがいないケースはやりづらかったりするんですか?

バタラ:そうですね。CTOというのはあくまでも呼び方だけであって、結局、経営陣側に立ってるかどうかというのが大事かなと思ってるんですよね。

これを見ると、たぶん35パーセントぐらいの人は経営陣じゃなくて一般社員側に立ってることになってるんですけど、それは呼び名は何にしようが、一般社員は一般社員ですよねという感じですよね。

そうなると、経営判断は難しいのかな、セットで考えることはなかなか難しいのかなという。技術とかはやっぱり検討されなくなる可能性が出てくるかなと思っています。うちも投資するときは必ず、経営陣に技術がわかる人がいないと、なかなか投資しづらいかなと思います。