目標と現状のギャップを可視化する

司会者:ありがとうございます。お2人がおっしゃっていた「失敗の分析をする」ってけっこう難しいと思うんですね。芦名さんもおっしゃっていたみたいに、お客様の本当の反対の理由というのをどういうふうにして見分けたのかというのを、お1人ずつ教えていただいていいですか? 福山さんからお願いします。

福山敦士氏(以下、福山):うまくいかなかった理由を自分なりに言葉にすることをしています。言語化というか。正直、そこに正解はないと思うのですが、僕が唯一頼りにしているのは、自分の感覚です。「あ、なんか違和感があるな」と思ったら、だいたいそれが理由です。

それは痛みを伴う作業だと思います。自分で体重計に乗るみたいな話に近いかなと思っています。たぶん自分の見たくないところだと思うんですね。ヨミ表を見て、売上の数字を見て、今月足りないなって。たぶん見ると一番自分の心が痛むタイミングなので、あんまり見ないようにしたいと思うんです。

逆に僕がコンサルティング営業とかをさせていただく時って、逆のことをお客さんにしていたなということにある時に気づいて。「目標はなんですか?」「課題はなんですか?」と言って。「現状どんな感じですか?」って聞いて、「あっ、じゃあこのギャップを埋めれば成功しますね」みたいな。

ちょうど半年前ぐらいに、ライザップの営業を受けたことあるんですけれども(笑)、ライザップもすごいそんな感じで、体重を測る。それで、「どんな体型になりたいですか?」って。それで、「体脂肪率20パーセントがこんなお腹です」って写真を見せられるんですよ。「15パーセントがこれで、10パーセントがこれで、5パーセントいくとここまでいきます、ジャニーズはだいたいこのへんです」みたいな話をされる。

「今だいたいこのへんですね」みたいな話をされて、「どうなりたいですか?」って目標を握られて、「今の体重と体脂肪はこれぐらいで、皮下脂肪と内臓脂肪はこれぐらいです」みたいな。「あっ、結局これなんだな」というわかりやすい例だなと思いました。

それを見ると、あとはやるかやらないかで、「やる」って言ったら30万払うというのがライザップなんですけども(笑)、本当にそこだなと思って。ちゃんと目標と現状のギャップを可視化するというか、それがいちばん辛いことなんですけれども。それをどう続けられるようにするか、習慣化させるかがポイントだと思います。

今、ダイエットで例えた理由がもう1つあって、達成感というか、それが近づいた時に、心の底からというか、頭ではなく体が動くというか、体が反応してもっとギャップを埋めていきたいとか、これが自分の武器になったなと思います。

それこそ、転職するかわからないですけども、自分がどのサービスでも、どの商品でも売れる営業マンになるためには、たぶん自分の中に再現性を持たなきゃいけないと思うので。

会社の経営者とかは、たぶん会社の中に売れる仕組みとか売れるサービスを作るんですけれども、これからの営業マンって、どこに行ってもなにを担いでも売れるような営業マンが求められる時代なのかなと思っています。そういった意味で、自分に再現性を持つという覚悟があると、分析をする気になるかなという。まじめな話で恐縮です。

一番売れている営業マンを“完コピ”した

司会者:あはは(笑)。ありがとうございます。では芦名さんお願いします。

芦名佑介氏(以下、芦名):はい。僕は最初、失敗の分析というのはぜんぜんできなかったんですよ。というのは、初めてやったことなんで、なにがわからないか自分もわかってないんですよね。だから、もうわかんないわけですよ。

その時に思ったのは、その時に支社で一番売れてる営業マンがいて、その方の完コピですよね。完全にセリフを……。保険の営業って最初から最後まで全部含めるとたぶん2時間か3時間ぐらいあると思うんですよね。

で、3時間分を全部、一言一句メモを取って、「今の『ですか』ですか? 『ですね』ですか? どっちですか?」というのをずっと、もう一言一句書き写して。先輩がそろそろ帰ろうとするんですけど、「まだ僕ができてないんで」って言って、こう……(先輩を引き留めるジェスチャー)。

(会場笑)

芦名:先輩を拘束して、夜中の3時、4時ぐらいまでやっていました。それは先輩の文字だけを完全にコピーするんじゃなくて、笑うタイミングとか、仕草とか、振る舞い方とか、全部コピーしました。

で、僕のロジックは、その人がそれで売れてるんだから、この人とまったく同じことやったら売れるだろうという単純なロジックです。

で、それをなんとかこうコピーしてコピーしてコピーして、やっとコピーできたぐらいの時に、だんだんこう、やっぱり「僕だったらこう言われたら嫌だな」とか、「もっとこうしたらいいんじゃないか?」という自分なりの解みたいなのが見つかってくるわけですよ。

それを僕は先輩に言って、「先輩はこうしゃべってますけど、こうやったらもっと売れると思います」って、初めてこういうディスカッションに入るという。その先輩もすごく素直だったんで、「そっちのほうがいいね」なんて言いながら、すり合わせをしていました。

で、そんな時期が続いていて、僕も彼と同じような結果が出たわけですよ。まあ結果的には彼を越えたんですけど。拍手!

(会場拍手)

一生かけたら1億円稼げる。それを1年でやるからすごい

芦名:そしたら今度聞かれる立場になったんですね。「どうやって売るんですか?」とか、「なんて言ってるんですか?」って聞かれる立場になったんで、その時に初めて僕の中でもいろいろ頭の中で体系化して、教えて伝えることができました。

「こうでこうでこうだから売れる」という。それで、売れない人は「こうでこうでこうだから売れない」ということが、まさに言語化できたというところがあったんで、自分の中で次からはもっと失敗しないように分析できるようになったという、そんなイメージです。

司会者:ありがとうございます。今たぶんみなさん聞きたかったと思うんですけど、「売れる営業マン」と「売れない営業マン」って、芦名さんから見たらどういう方だと思いますか?

芦名:一言で言うと、営業力という方程式が僕の中にあるんです。「営業力=信頼力×行動力」だと思うんですね。「営業力=信頼力×行動力」。

要は、売れない理由というのは一言で言うと、「お前いいこと言ってるけど、お前のことは信用できない」という、ただそれだけだと思うんですよ。

例えば、僕が今、神様レベルの信頼感があるとしたら、僕が今飲んだ飲みかけの水を「これ1万円で買ったら人生変わりますよ!」って言ったら、買うわけですよ。神様ぐらい信頼していたら。でも、「いや、そんなわけねぇじゃねーか!」って信用されないから買わないわけです。つまり信頼されればいいという話なんです。

じゃあ信頼されるためにはどうすればいいのかというのは、また後でお話しできればと思うんですけど。

あともう1個は行動力ですよね。例えば、この中に1億円稼げるという方は? 1名。1名おられますか。僕、みんな稼げると思うんですね。これはお世辞とかそういうことではなくて、一生かけたら1億円ぐらい稼げるわけですよ。

今、日本の生涯収入というのは2億ちょっとぐらいなんで。ここにいるみなさんはそれ以上稼げると思うんですね。それを一生で稼ぐのは普通なわけですよ。でもそれを1年間でギュッとやるからすごいわけですよ。

つまり短期的にすること、スピード感を持ってギュッとやることというのが一般的にすごいって言われるわけなんですよ。

例えば、まぁそれぞれの会社に営業のノルマみたいなのがあるとして、1ヵ月に10件やったらすごいって言われるわけですよね。でも1年間で10件ぐらいは誰でもできるとするじゃないですか。そしたら1年でやってることを1ヵ月でギュッとやればいいだけなんで。それを1週間でギュッとやったらすごいって言われるわけですよ。

1年間で10件アポが取れるんだったら、それを1ヵ月で取れるって僕は思うんですね。じゃあそれが1ヵ月で取れるんだったら、1週間だったらものすごいじゃないですか。

つまり営業力というのは自分の信頼感を上げるということと、自分の行動力というのをもっと回転率を上げていくということ。だから、営業力を上げたいんだったら、手帳に入ってるアポを埋めるという、ただそれだけです。ギュッとするだけです。

がんばらなくても成果が出る営業の仕方を探す

司会者:めちゃめちゃわかりやすいですね。ありがとうございます。福山さんお願いします。

福山:そうですね、いろんな尺度があると思うんですけども、無理してない営業マンというか、力が入ってないほうが意外といいんじゃないかなと思います。逆に無理してる時ってあんまり決まらないという所感があって、たぶん納得される方が多いと思うんですけども。

野球でまた例えちゃうんですけども、落合監督という元中日ドラゴンズの方がいて、彼が監督じゃなかった時にいろんなチームにアドバイザーとして行った時に、春のキャンプとかで、元横浜ベイスターズの多村選手という、一時期活躍して、最後ソフトバンクにいた方がいるんですけども。

彼がブレイクする時に、落合監督にアドバイスを乞うたと。「打ち方を教えてください」と言って、彼はテクニカルなアドバイスを求めたんですけれども、「うーん、じゃあちょっと振ってみて」と。

朝からだいたい夕方ぐらいまでずーっと振らされて、1,000本ぐらい振ったらしくて。それで、1,000本目ぐらいで、「あー、そのスイングだね」って(笑)。

(会場笑)

福山:という話がありまして、これを僕は学生の時に聞いたんですけれども、やっぱり「量質転化ってこういうことだ」というのをこの時に感じました。一番力が抜けた、必要最低限の力でシンプルなスイングができた時、完成度が高まるというか。

スポーツの世界では「1万時間ルール」というのがあると思うんですけども、どんなトップアスリートも、1万時間やるとトッププレーヤーになるというのは、あながち間違いじゃないかなと思っています。

そういう意味で、100件アポというのも、実は冒頭で話した「無理してない」という話につながっています。

無理に100件入れるというのは多分やめたほうがよくて、実はそれで潰れてしまったメンバーもいました。自分が役員の時にいたんですけども、メンバー自身が無理せずが気持ちよく成果を出すためにどうしたらいいかという。

わかりやすい例で言うと、僕の場合は、ヨミ表を作らないとか、目標を追わないとかいうのを決めてやっていて。それが一番自分を苦しめていて、「毎月毎月達成することってなにか意味があるんだっけ?」みたいな本質的な話をした時に、年間の目標を達成したらいいんじゃないかとか。

「だったら早めに達成しちゃって……」とかいうのをいろいろ考えた時に、無理にヨミ表を……毎週毎週ヨミ会やるとかいうは、自分も苦しかったし、メンバーもすごい嫌な顔して、新卒の女性営業とかけっこうそこで「お腹痛いです」みたいな感じで休んじゃったりとかいうのもあったので、自分が嫌なことはやめて、好きなことだけやろうという。モチベーションの浮き沈みはパフォーマンスを不安定にさせてしまうので。

なかなかそれって難しい決断なんですけども、自分が楽して、というか、自分が呼吸するようにできることが、もしかしたら一番得意なことで、自分ががんばってるつもりはないけれども成果が出る営業の仕方というのがたぶん自分の得意領域というか、強みで戦ってるところかなと思うので。そこを目指しているし、メンバーにもそこを探してもらっています。

気に入られる営業マンもいるし、すごくロジカルに戦う営業マンもいると思うんですけど、自分に合ったやり方というのを探しながらやっていくというのが非常に重要かなと思います。

感銘を受けたのは『至高の営業』

一概に「できる営業」「できない営業」というのはないと思うんです。とくに今日芦名くんと私の大きな違いとして……。もともと実は高校1年生の時に同じクラスだったという。一番最初に友達になったのが彼だったんですけど、当時から体は大きくて(笑)。

で、彼は大企業に入って、プルデンシャルも大きい会社で、先輩がいて完コピをする相手がいたというのがあったんですけど。僕もサイバーエージェントという会社だったんですけども、子会社に配属されて、先輩がある意味いない状況というか、先人がいない状況だったので、もう自分で探すしかないという状況だったので、ある種野性的に、いろいろ試しながらやっていったというタイプでした。

なのでこういうセミナーもそうですし、営業の本というのも本当にたくさん買って、お金がなかったのでブックオフで100円の時にバンバン買ったりして、いろんな本を読んで、もうなるべく1冊から1文は抜き出して、自分の血肉にしようということをやってた時に、一番感銘を受けた本が、『至高の営業』という本で。

至高の営業

『至高の営業』の話が、僕のブログでもいちばんPV数高いですけども(笑)。そこに営業ノウハウとかは1つも書いてないんですね。リコーのプリンターをがんばって売り込むという物語なんです。この時代って、プリンターの営業なんか飛び込みで行ってもなかなか聞いてくれないというか、「じゃあパンフレット置いといて」って言われてる時代で、どうやって営業トップの組織を作ったかみたいなストーリーで。

本当にいろんな要素があるんですけど、1つだけ覚えてるのが「営業マンの仕事はお客さんのところに行くことだ」って書いてあって。「お客さんのところに行くこと」というのがいまだに腑に落ちずに、でもなんとなくわかって。最初に一番それが違和感があって、その答えが知りたいなと思って、わりと足を使って動いてたんです。

だんだんとお客さんのところに行くことというのが腑に落ちたのが、「課題を見つける」というか。売りに行くんじゃなくて、とりあえず行ってみたと。とりあえず六本木に行ったので、「近くにいるので行っていいですか?」って行ってみたら、その時に急に仕事をもらえるとか。

急に相談事が始まって、「10分だけいいですか?」って言ったのに2時間ぐらい経っちゃって。「あ、いつの間にかこんな時間になってましたね」みたいな話になったりとかいうのを繰り返しているうちに、「あっ、お客さんのところに行くと意外と仕事になるんだな」と思って、これは行かないといけないと。

オフィスが渋谷だったんですけれども、もう1回オフィスから出たら帰ってこないというか、夜まで、それこそ仕事取るまで帰ってこないぐらいの気持ちで、自分で決めてやってたら、たまたまアポの数が増えたというか。

もう六本木ヒルズに行ったら、そこにいる会社全部あたろうみたいな感じでやっていくと、アポって(事前に)取らなくても取れたりとかするんで、そういう感じでやっています。

最初の回答をすると、無理をしないというか、自分に合ったやり方を見つけるというのが1つ、正解を見つけるポイントかなと思ってます。

司会者:ありがとうございます。『至高の営業』が好きっておっしゃってたので、なんか福山さんの営業スタイルがなんとなく私はわかりました。ありがとうございます。

信頼を得るための2つの自己紹介

でもお2人、さっき芦名さんもおっしゃってたんですけど、「信頼力」。信頼されるということは、お2人はお客様からすごく支持されてるのかなというふうに聞いてて感じたんですけども。

先ほどおっしゃっていた信頼って、みなさん上げたいと思われてると思うので、どんなふうにしてお客様からの信頼を得ることができたと感じますか? じゃあ芦名さんからお願いします。

芦名:信頼の得かたってすごく難しいと思うんですけど、僕が営業の時に一番やっていた信頼の得かたというのは2つあって、大きく言うと自己紹介だけです。1つは「肩書きの自己紹介」です。もう1つは「価値観の自己紹介」という、この2つです。

「肩書きの自己紹介」というのは、肩書きを言っただけでその人がどういうバックボーンだったかというのがわかるので、もう信頼に即効性があるんです。一瞬で伝わります。

それで、肩書きがある人はあるし、ない人はないんですよ。ない人がどうすればいいんですかって言われるんですけど、ないにはない理由があるので、それを価値観でしゃべるわけです。

で、自分の「価値観」という、こっちのほうがすごく大事です。じゃあなぜ今営業やってるのか、なぜ今この会社にいるのか、なぜここに来たのかという。それを普通に、ただ自分の自己紹介をすればいいんですよ。

「いや、なんとなくなんです」という人に信頼はないですよ。「僕がここに来た意味はこうこうこういう目的で、これをしようと思って」って。「あっ、なるほど」となったその価値観で「この人に任せたい」となる。それだけのことなんですよ。だからそんなことを意識してほしいです。「肩書きの自己紹介」と「価値観の自己紹介」です。

で、信頼ということに関して、営業にもつながるんですけど、営業というのは、なにかを売り込むことじゃないって僕は思ってるんですよね。けっこう営業のゴールが「これを売ることだ」というゴールである人は、けっこう辛いと思うんです。なんでかって言うと、売れる人を探しちゃうんで。

これ売れるよな、この人売れる、これは売れないか、となって、行動できないんですよ。誰にも会えなくなります。

アポイントが入らないというのは、人がいないわけじゃないじゃないですか。「人に会えないです」「アポイントが入らないんです」、それは僕は嘘だと思っていて。その人がおそらく言ってるのは、「金になる奴がいないです」と言ってるように聞こえるんですよ。それはなかなかいないでしょ、という。

で、僕が思ってる営業のゴールというのは、「決断してもらうこと」だと僕は思ってるんですね。「僕が話します。あなたはそれをいいと思っているのか、いいと思っていないのかというのを決断してください」という、これだけなんです、営業って。

それで「よくない」「いいと思ってない」って言われたら「ありがとうございます」って言って帰ればいいだけの話です。相手がいいと思ったら、「あっ、ありがとうございます。なんでいいと思ったんですか?」ってひょっこり聞けばいいですね。そしたら相手が勝手に契約する理由を言っているという。

それを「いいと思ってない」って言う人に対して、「いやいや、まぁまぁまぁ、とは言ってもですね……」みたいなのをやるから、すごく嫌われたりとか、友達をなくしたりとか、人間関係が悪くなったりするという。相手の決断をしっかり尊重してあげるという、そんなことを意識してほしいです。