絵本を無料で公開するメリット

絵本作家のぶみ氏(以下、のぶみ):僕はニコ生に出たときに、『ママがおばけになっちゃった!』を読んだんですよね。その読んだ画像をアップ……。

西野亮廣氏(以下、西野):あー、そうっすよね。それも0円で出してるんですよね。

のぶみ:うん。0円で出して、『スッキリ‼』とか『とくダネ!』に出た後に、再生回数がもうぶっちぎりでドーンって上がったんですよ。たぶんタダで見てる人たちもいっぱいいるんだけど、それにしても「買おうか」という感じにもなるんですよね。

西野:そうですよね。

のぶみ:だから、絵本というのは、書店でずっと見てたんだけど、お母さんが1回立ち読みしてから買ってるんですよ。

西野:はいはいはい。

のぶみ:だから、あながち間違ってなくて。

西野:結果、立ち読みも0円で。

のぶみ:0円でやってるんです。

西野:そうですよね、1回届けてるわけですもんね。

のぶみ:子供が(隣に)グワーッているときは、「あんまり読めないわ」みたいな感じで買うしかないんだけど。YouTubeにアップしてると、1回確認してからやるんですよ。「絵本ナビ」というサイトがあって、1,000万人ぐらい見てるんですけど、それは1回だけ読める機能がついてるんです。

西野:それいいっすよね。

のぶみ:すごい大事なことですよね。

西野:本当にそうで、本ってそもそも立ち読みができるんだから、だったら世界中の人に立ち読みさせたほうが……分母をでかくして。結局、買う買わへんは比率があるかもしれないけど、世界中の60億人に立ち読みさしたら、「まあ1億冊ぐらい売れるんじゃね?」みたいな(笑)。「60人に1人ぐらい買ってくれるんじゃね?」みたいな。

山口トンボ氏(以下、トンボ):うんうんうん。

90年代にCDがバカ売れした理由

のぶみ:よく歌手の人たちが、YouTubeに1番だけアップするじゃないですか。それで、2番をアップしないじゃないですか。

西野:なんか古いんですよ。

トンボ:(笑)。

のぶみ:あれって、やっぱり全部フルのほうが。

西野:僕は絶対フルのほうがいいと思う。CDの話をしたばっかりで申し訳ないんですけど、それはいろんなやり方があって、CDを売られる方もいらっしゃって、それはすごいと思います。僕がやるんだったら、もうCDでマネタイズはしないです。

トンボ:そもそも、そこはあきらめるってことですよね。

西野:そこはあきらめる。なぜなら、90年代のCDに勝てないから。90年代にGLAYさんとか、ラルクさんとか、浜崎あゆみさんだとか、安室ちゃんとかがやってたあのCD、あのときの競争に勝たないと意味がないから。

そうなったときに、あんときのCDがすごく売れた理由って、まず歌がすごくよかったのはもう当たり前の話で。

トンボ:当たり前の話なんだよね。

西野:そう、みんな超いい。クオリティの話は1回置いといて、あんときはやっぱりCDがインテリアとして機能してたというのがすげー強くて。

トンボ:そうですよね。

西野:要は、「CDがいっぱいある部屋かっこいい」みたいな。つまり、みんなCDを買っていた。

トンボ:本当にね、見せる飾り方してた。

のぶみ:本当だよなあ。

西野:見せCDみたいな。

のぶみ:昔のレーザーディスクとかもそうだったもんね(笑)。

西野:そう! 姉ちゃんの部屋にこんな長いCDラックが。

トンボ:俺もあった!

西野:あった? お前、かっこええ部屋やな!

トンボ:はい。

西野:こういっぱい入ってるのが、「オシャレだね~」みたいな。

トンボ:それこそ本当に、ジャケ買いですよね。

西野:そうそうそう。要は本当に、CDがいっぱいある部屋がイケてるってなってた。

トンボ:なってたなってた。

西野:CDを買うまでの距離がすごく近くて、今はもう断捨離みたいになっていて、物がない部屋のほうがイケてるみたいになっちゃってきたから、あまりに分が悪い。でも、僕がミュージシャンだったら、安室ちゃんに負けたくないし、GLAYさんに負けたくないし。大ファンですけど。

でも、やっぱり競争相手だから、そこに勝とうとしたらどうしようかなと思ったら、やっぱり違うアプローチを……CD0円ですね。本当に0円でばらまいて、ライブに来ていただいて、違うところでマネタイズするという。

のぶみ:だけど、例えばCMでかかってるヒット曲がiTunesでタダだったらびっくりしますよね。

トンボ:びっくりする。

西野:あー。

のぶみ:ダウンロードして、「えっ!? これタダじゃん!」ってなったときに、「こいつ、何なんだろう?」ってちょっと思うかもしれないですよね。

きゃりーぱみゅぱみゅの成功例

西野:きゃりーちゃんとか、PVどうしてるんだろ。フルでやってんのかなあ。

トンボ:フルで見せてると思いますよ。

西野:たぶん、きゃりーちゃんって、みなさんが思ってるほどCD売れてないと思うんですよ。

のぶみ:そうなんですか?

西野:きゃりーぱみゅぱみゅちゃんって……言いにくいなあ!

のぶみ:言いにくいですよ。

トンボ:今?(笑)。

西野:どうやったら言いやすくなる……(ドラえもん風に)きゃりーぱみゅぱみゅ〜!(笑)。

のぶみ:ドラえもん!

トンボ:今それやる?(笑)。

西野:4年前にこれ言った(笑)。そもそも、そういうやり方をしてないと思うんです。売れてないってことは決して悪いことではなくて、知られてPVが広まって、アイコンとして成立して広まっていって、CMだ、ライブだ、ファッションのアイコンだというところでマネタイズして、歌をまた。

トンボ:そうですね。

西野:大切なことは歌い続けられることだから。だから、あっちになってくんじゃねーかな。

のぶみ:今の若い人たちって、YouTubeを繰り返し流してるから、買わないんだよね。

トンボ:いや、単純にそうなりますよね。

のぶみ:だってフルで見れるから。

トンボ:でも逆に、フェスの動員って上がってるはずなんですよ。

のぶみ:そういうことか。

西野:そう。だからフェスの動員を上げたほうがいいじゃないですか。そうなったときに、1番しか流さないミュージシャンの曲は、好きになる前にバーンって終わるから、フェスに行こうとも思わないし、ライブに行こうとも思わない。

だから、ライブに行く理由があんまないんですよね。YouTubeで1番聞いちゃったからまずCDは買わないし、ライブに行こうってなるぐらいハマる前に切られてしもたし。

トンボ:どっちの可能性も殺してるっていう。

のぶみ:あー、そっか。

西野:だから、あれは90年代の売り方なんですよ。

売れるモノ・売れないモノの境界線

のぶみ:あとなんか……今って、「売れるか・売れないか」のどっちかなんですよ。

西野:はいはいはい。

のぶみ:中途半端に売れるものがなくって。

西野:なるほどなるほど。そのへんがないってことね。

のぶみ:これはなんでなのかなと思って。もちろんクオリティが高いのは当たり前のことで。例えば西野さんが本出します。それで、今はその本を誰かが紹介するか、テレビが紹介するかしないと買わないんです。だから例えば西野さんが、「これすごいいいよ」ってずっと言い続けても、売れない時代なんですよね。

課題図書がなんで売れてんのかなって見たら、おもしろいおもしろくないじゃなくて、勉強になる感じだったんですよ。それでおもしろくないから、子供がもう1回読んでという感じじゃないから、なんなんだろうなって思ったら、「なるほど」と思ったのは、「青少年読書感想文コンクールがあるからなんだ」と思ったんですよ。

トンボ:なるほどなるほど。

のぶみ:コンクールやってるから出そうというのは、もうコンクールが先じゃないですか。買う買わないの話じゃなくて、もうその先に1個立ててるわけだから。

西野:本当にそうだな。

のぶみ:そういうの大事だなというのは感じましたね。