座るよりもしゃがんだほうがいい?

マイケル・アランダ氏:ネットをご覧のみなさん。みなさんにいただいたご質問に、お答えしようと思います。うんちについてです。

それは、人が年がら年中するもの。通常は1日3回から3日に1回ぐらいの頻度でするものです。

みなさんは、自分の方法が間違っていると聞いたことがあるかもしれません。その意見に従って、座らずに、しゃがんでしている人もいるかもしれませんが、確かにしゃがむと排便が少し楽になるのは本当のようです。

しかし排便が少し楽になるということをのぞけば、姿勢を変えても消化の問題を解決してくれるわけではありません。

人は何千年もの間、しゃがんで排便をしていました。欧米の人々が立体的なトイレを作り、座ってし始めたのは、ここ数百年の間だけです。

つまり、この排便の姿勢についての議論は、人の体はしゃがむ姿勢に合わせて進化したのだから、しゃがむことは体の歪みを整えてくれる、という考えが根本にあるのです。

体外へ出る道のりで、大便は直腸を通り、肛門管から出ます。

この2つの器官の間にある消化管の周りを囲んでいる、恥骨直腸筋と呼ばれる筋肉があります。それが、いきんでない時に、便を体内に押しとどめるのを助けてくれます。

そして基本は、直腸と肛門管の間にあり、直腸に圧力を加えることで便を体外に出したり、逆に体内に出ないよう押さえたりもします。

そして恥骨直腸筋がゆるんだ時は、直腸と肛門管が、ほかの弛緩している筋肉や縮小している筋肉を連動させ、体内のものを外へ引っ張り出すのです。

信ぴょう性はそれほど高くない

排便に関わる解剖学の研究がそんなに行われていないのは、驚くことではないかもしれません。しかし、いくつの小さな研究では、しゃがむ方が座るよりも、直腸と肛門管がより一直線になりやすいそうです。

また別のいくつかの研究では、座らずにしゃがんだ場合、力みも少なく、排泄に時間もかからないようです。

ただし以上の研究の規模は小さいものです。ある研究には28人のボランティアが参加し、もう1つの場合はたった6人しか参加していないものでした。

ですから、これらの研究結果以外になにかあるか考える余地はありますし、この結果が科学的事実だと決定づけられる前に、より大規模で慎重に管理された研究を行う必要があるでしょう。

しかし……しゃがむほうが楽な姿勢だとすれば、そのぶん痔になりにくくなる可能性があります。

痔は、肛門と直腸に近い拡張された静脈が痛みを伴い、かゆみや出血を起こさせることもあります。排便時に、いきみすぎると、よく発症してしまうのです。

しゃがむことで、いきみやすくなるのなら、あまり痔になりそうにないですね。しかし、基本的にこれが知られている潜在的利益のすべてなのです。

排泄物(ストゥール)を出すのを手伝ってくれる便座(ストゥール)を売っているメーカーはいくつかあります。

そういった会社は、ときどき誇張された宣伝を行います。たとえば、しゃがむことで、過敏性腸症候群を治せる、大腸ガンですら防げると言ったりするのです。

これらの宣伝に確かな証拠はまったくありません。胃腸の専門家は、たとえ排便に異常がなくても、しゃがまなくてはいけない、はっきりした理由はないと見ています。

なので、しゃがんでもなんの害もないでしょうが、今までのやり方で問題ないのならば、わざわざ方法を変える必要はないのです。