盛り上がりを見せる「VR元年」のトレンドとは

司会者:本日は「Fashion VR Night」にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。さっそくパネルディスカッションに移っていきたいと思います。

まずは、みなさんご存知の方が多いと思うんですけれども、「VRってそもそもどんなもの?」「なぜ今、VRが話題になっているのか」みたいなことをPsychic VRの八幡さんを中心にご説明いただければなと思っています。

八幡純和氏(以下、八幡):みなさんたぶん、ここにいらっしゃっているということは、VRにご興味があって、だいたいどんなものかというのはわかっていらっしゃると思うんですけど。

今年こういったHTCの「Vive」といいますけれども、こういったヘッドマウントディスプレイやヘッドセットと呼ばれるものが発売されるということで、「VR元年」というふうに騒がれてますけれども。

まずここで、バーチャルリアリティは、このヘッドセットをかけるウェアなんだという話があると思うんですけど、そうじゃないという話をシェアしたいなと思います。

Virtual Realityは、「仮想現実」と訳されますけれども、今バーチャルなものって考えると、これが出る前から、もう世の中で、目の前にあふれてるということがあると思っているんですね。

どういうことかというと、例えば電子メールとかLINEとかSNSでコミュニケーションを取っているということがあります。

Virtualにはもともと、「本来の姿かたちはしていないけれども、実質的に感じられる」という意味合いがあります。

これはどういったことかというと、電子メールでやりとりしてるのって、昔は手紙でやりとりしていたことが、コンピュータやスマートフォンを介してコミュニケーションをしている。手紙のかたちは成していないけれども、実際にコミュニケーションができている。

「手紙を手渡しているようなことと“実質的”に同じことである」ということが言えると思うんですけれども、これがバーチャルであるところ。バーチャルな現実ということで、バーチャルリアリティ。なので、別にこれ(ヘッドセット)ばかりがVRということじゃないということをまずシェアしておきたい。

今年は「Vive」もそうですし、「Oculus Rift」、それから「PlayStation®VR」が発売されるので、「VR元年」ということで非常に盛り上がりそうだなということで、今、各メディアで騒がれている状況ですね。

VRで体感する迫力のライブ映像

林直孝氏(以下、林):今年はとくにVRを体験させてもらえるスペースが増えたなと感じてるんですけれども。

仕事で体験したのは、今年の3月に渋谷のパルコのほうでゲリラライブを……Underworldという世界的に活躍されているアーティストの方に来ていただいて、渋谷のパルコのPART3というビルの屋上でゲリラライブをやったんですね。

そのときには、みんなヘッドフォンをして非常に盛り上がってるんですね。屋上で迷惑になるので、音を出せないんですね。音が出ていないので、ちょっと宗教的な感じ(笑)。

また、隣のPART1というビルの別会場に、「2.5D」というスタジオも兼ねている多目的スペースがありますので、そこでライブをバーチャルリアリティでリアルに体感していただくというのをやりました。

私はこの日、会場を行ったり来たりして、両方試したんですけれども、ものすごいんですね。目の前でライブが繰り広げられているのを実感して、これでハマったというんですかね。すごい可能性を感じました。

司会者:用意するのって大変だったんですか?

:まあ……僕が用意したわけじゃないのですいません(笑)。相当大変だったんですけれども。

小林:お客さんの反応もかなりよかったんですかね?

:そうですね。まずアーティストの方が見られるという近さもあるし。コンテンツと言うと失礼かもしれませんけど、ものすごく良いものを見ているということで、満足度も高かったと思うんですけれども。

年吉聡太氏(以下、年吉):みなさんのなかでヘッドセットをつけて体験されたって方はどれぐらいいらっしゃるんですか?

(会場挙手)

:多いですね。

年吉:けっこういらっしゃる。 (僕も)Oculusをつけてみたり、PlayStation®VRを体験をしてみたりとか。おもしろかったのが、やっぱりVRコンテンツの表彰式があって、「今年、日本でこれがおもしろかったよね」というのを。

ライゾマさんとかもおもしろかったですし。あとはゲームクリエイターの水口哲也が作られた「Rez Infinite」も体験して、あれもおもしろかったですね。

ヘッドセットとヘッドフォンをつけて、というのはもちろんなんですけど、そのときはさらに体感するためのスーツを着て、ゲームのなかで動いて、音とか振動を体感できるという、さらに臨場感を増してくれる体験がすごくおもしろかった……という、一般ユーザーレベルの体験しかないです(笑)。

AR・MRデバイスによる没入感

司会者:お二人が体験しているようなものも、かなり没入感があるなと思うんですけど、VRはこれからもっと精度高くというか、もっとリアルな感じに進化していくんですか? 八幡さんから見てどうですか?

八幡:単純にデバイスの解像度が上がったり、視野が広がったりということで体験性が上がるという話もありますし。

あとVRは、ARとかMRとか、「MicrosoftのHoloLens(ホロレンズ)」とかの話が出てくると思うんですけれども、将来的にはあっちが絶対メインになると思うんですね。

メインというか、VRと性質は違いますけれども、VRデバイスとMRデバイスという、どちらの性能も兼ねたものが必ず出ると思っています。そういったときに、体験性が上がる、VRとMRのスイッチングできる、そういう将来性とか。

あとはさっきの補足というか、タイムリーな話題でいうと、「Pokémon GO」がついに日本にきましたね(笑)。

:このへんにピカチュウいますよ(笑)。

八幡:「Pokémon GO」やってる人、このなかにもいる?

(会場挙手)

八幡:ああ、すごいですね。「Pokémon GO」とか、これ(スマホ)でやってると事故とかすごい起こってますけど。ヘッドセットをかけてというか、眼鏡みたいなグラスをかけてやったほうが絶対自然じゃないですか。なので、スマートフォンを持つよりも、VRデバイスやMRデバイスを常にかけてる状態で生活している状況が出てくるなというのは考えてます。

海外で展開するVRビジネス

司会者:次の話題にも設定したんですけれども、海外ではとくにVRが進んでるイメージがあるので。八幡さんと年吉さんのほうで、こういうVRがあって、しかもコンテンツだけじゃなくてこういうビジネスモデルであるとか。「VRのビジネスモデルってどんなのが考えられるんだろう?」みたいなことを教えていただけるとうれしいです。

年吉:僕がVRビジネスの使い方でけっこう好きなのは、不動産の話はおもしろいなと思っています。

さっきもちょっと見てたら、オークションのサザピーのreal estateの部門が、世界に向けて海外の豪邸をオークション販売してるわけですね。

real estateはアートよりもさらに見ないとわからないみたいなところがあって。その豪邸がどういう作りになっていて、どういう部屋があって、というのはやっぱり体験しないとわからないので。そこにみんな世界中からオークションで巨額のお金をビッティングするわけですから。

詳細はまだちょっとわかってない部分はあるんですけど、おそらくはロボット的なものを豪邸に置いておいて、みんな忙しいからわざわざ1軒1軒見に行けないけれども、世界中の投資家がみんなVRゴーグルをつけるのか、ヘッドセットつけるのかして、見回るわけですよね。

おもしろいのは、ただVRだけが単品で成り立つわけじゃなくて、インターネットをちゃんと活用して、例えば、世界中でいろんな金持ちがいろんな思惑をもってそこにお金をビッティングしていって、リアルタイムで(価格を)釣り上がっていったりもするんでしょうし。

そういうかたちで、うまくVRと既存のビジネスと今のテクノロジーを組み合わせる。VRがちょうど橋渡しというか、それが実現するツールとして機能しているというのは、1つの活用事例としておもしろいなという気がします。

司会者:パルコの店舗にも、こういうロボットを置いて、VRで見るとかってできないんですかね?

:やりたいですね。ロボットでいうと、この間仙台のパルコができた時期に、Pepper君とNAViiというシリコンバレーから来た2台のロボットに直接会話をさせて。

Pepperは動けないので、実際にお客さんが行きたいとおっしゃったお店まで、自走式のNAViiさんが連れて行くというのをこの間やりました。

おっしゃるように、進化系としてロボットにカメラがついていたら、こういうことができるんだろうなって思いますね。

司会者:八幡さんはどう? ビジネスという部分でいくと。

八幡:ビジネス。う〜ん、そうですね……。

小林:例えば、今「STYLY」で考えているビジネスでもいいですし。

八幡:海外でいうと、同じショッピングというところでいうと、eBayがオーストラリアの百貨店Myerってところと組んで、実際に扱っている商品をVR上で探して買えるというサービスを、実際にアプリが配信されて、実験的にVRで買い物できるというところまでやっている事例があります。

年吉:けっこうメディアだと、VRを取り入れているところは増えてきつつあります。

小林:相性がいいですもんね。

年吉:うん。「The Guardian」とか、そういう海外の大きなメディアはVR専用のラボみたいなのを作って、これからどうVRをジャーナリズムに取り入れるかを研究してるという話もあるので。けっこうそのへんの、どういう表現ができるのかというのはおもしろそうですよね。

八幡:360度動画、いわゆる映画みたいな感じで、尺はもしかしたら短いかもしれないですけど、 ショートフィルム みたいなかたちで有料配信したりというのはあると思いますね。