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今までの成功者が書いたのは“普通の本”だった–ヤフー小澤氏がビジネス書大賞『HARD THINGS』のすごさを力説

今までの成功者が書いたのは“普通の本”だった–ヤフー小澤氏がビジネス書大賞『HARD THINGS』のすごさを力説

2016年7月4日、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン主催の「ビジネス書大賞2016」授賞式が行われ、受賞3作品が発表されました。授賞式のあとに行われたトークセッションでは、日経BP社・中川ヒロミ氏とヤフー・小澤隆生氏が大賞『HARD THINGS』の魅力について語り合いました。

シリーズ
ビジネス書大賞2016授賞式
2016年7月4日のログ
スピーカー
日経BP社 出版局 編集第一部 部長 中川ヒロミ 氏
ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長 小澤隆生 氏

ビジネス書大賞『HARD THINGS』受賞記念トーク

th_NAKAGAWA 中川ヒロミ氏(以下、中川) 日経BP社の中川です。今日はビジネス書大賞を受賞させていただいて、本当にどうもありがとうございます。 日本語版の序文を書いていただいた小澤さんに、『HARD THINGS』にまつわるお話をいろいろうかがっていこうと思っています。 『HARD THINGS』はすごくいい本で、私も日本で出したいと思っていたんですけれども、正直これほど売れるとは思っていなくて。賞もいただけるというのも、いい意味で意外でした。小澤さんは、最初読まれたときどうでしたか? th_OZAWA2 小澤隆生氏(以下、小澤) 小澤でございます。よろしくお願いいたします。ベン・ホロウィッツさんじゃなくて申し訳ない気持ちなんですけど(笑)。 (会場笑)

小澤 序文のよしみで登壇させていただいております。みなさん、この本を読むまでにベン・ホロウィッツをご存知だった方がいらっしゃるかどうかわかりませんけど、シリコンバレーを中心に、日本でもインターネット業界ではもう本当に大変なスターでございます。 Andreessen Horowitzというベンチャーキャピタルをやってるんですけど、その「Andreessen」というのはマーク・アンドリーセンという人で、こちらのほうが有名なので、影に隠れてしまってるんですけど。 やっぱりマニアからすると、「ベン・ホロウィッツはなに考えてるんだ?」というのは本当に知りたかったわけですね。そして、マーク・アンドリーセンがパートナーに選んだと。「なんでだ?」と不思議だったわけです。 それを私は、この本を読んで「なるほどな」と。そもそも経歴から含めて概略しか知らなかったので、「こういうことなのか」と。本の内容は、本当に驚きの連続。この手の本としては確実に異例、明らかにおかしな本です(笑)。 中川 Andreessen Horowitzにも興味を持たれていたと思うんですけど。小澤さん、こういった解説や序文を書かれることはほとんど初めてですよね? 小澤 はい。本はちょっと書けないです。

ヤフー小澤氏が『HARD THINGS』の序文を引き受けた理由

中川 こんなところであれなんですけど、私は小澤さんに何度も「本を書いてください」ってお願いをしていて、そのたびに振られていて。うちの素晴らしい記者の人が「小澤さんの本を書きたい」と言っても振られて……。何度も振られてるんですけど、この本の序文だけは引き受けてくださったんですね。その理由はなんですかね? 小澤 ちょっと、本を書くのって恥ずかしいじゃないですか。 中川 そんな……(受賞した)お二人の前で(笑)。 (会場笑) 小澤 いやいや、アカデミアの人はいいと思うんですよ。僕は事業家なので、すごくカッコいいこと書いてるのに、やってるサービスがしょぼいとか。 中川 いやいや、立派じゃないですか。 小澤 いやいや、我々は失敗するわけですよ。筋道を立てて素晴らしいことを書いてるのに、蓋を開けてみたら「あいつ倒産してる」みたいなこともあるわけです。 また経営者って正直、朝令暮改なんですよ。今日言ってることは、明日変わるんですね。本を読むと悲しい気持ちになるんですね。なので、私は講演も滅多に引き受けないんですけど、やっぱり朝令暮改が相当にすごいので、自分で読むに耐えない部分があるんですね。 でも、「序文だったらまあいいかな」みたいなところと、この本にあまりにも感動したので。(あとは)ベン・ホロウィッツが好きだったので。 中川 そうなんですか? 小澤 はい。 中川 どのあたりが好きだったんですか? 小澤 読んで好きになったのが一番ですけど。やっぱりAndreessen Horowitzってこの業界では伝説すぎる。最近できたんですけど、いきなり伝説になっちゃったので、「なにがどうなってるのか!?」というところなんですよ。「本当にどういう考えでやってるのかな?」 と思っていたというところですかね。

伝説のVC「Andreessen Horowitz」

中川 Andreessen Horowitzをあまりご存知ない方も多いかなと思うんですけれども。今までのベンチャーキャピタルは、どちらかというと投資だけをしてきたベンチャーキャピタルが多かったそうなんです。 けれどもAndreessen Horowitzは、マーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツという2人の創業者が作った、ベンチャーキャピタルなんです。どちらも起業家で、そのあとに投資家になっているので、実践的なアドバイスをされるというのが一番の違いですかね。 実際に小澤さんも起業家をされていて、そのあとエンジェルや投資家をされていて、小澤さんに序文を書いていただきたいなと思った理由はそこだったんです。やっぱりそこに共感されたところが大きいですか? 小澤 そうですね。みなさんも投資した株式を持ってたりする経験はあると思いますけど。僕は今、ヤフーにおいて、肩書き上Yahoo!ショッピングを担当させていただいてますけど、その前はヤフーが作ったベンチャーキャピタルで、230億円ほど運用して、「新しく会社できました」という未公開株に投資する仕事を今でもしております。 そういう立場からすると、Andreessen Horowitzは何倍もの規模で、何倍もパーフォーマンスを上げてる……質問なんでしたっけ?(笑)。 (会場笑) 中川 「共感されたところは同じ立場だったからですか?」です(笑)。 小澤 そうだそうだ。それで、何倍もの規模でやってるわけですけれども。投資家の業界は、わりと投資の専門家が幅を利かせてらして、投資の専門家の立場で「あなたの会社はこうしたほうがいいよ」「こうしたら大きくなりますよ」と言うんですけど。考えによっては、野球を経験したことない評論家が野球選手を指導してるようなものなんですよ。 いろんな選手を研究した結果、「こういう打ち方がいいと思うよ」と。それはそれで理論上は正しいんですけれども、聞いてるほうからすると、「君、野球やったことあったっけ?」と。(それは)私も前々から投資を受けてる立場としてあったんですね。 それでいくと、マーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツは、もう起業家としても超スター。なので、長嶋茂雄が監督になりましたというようなものなんですよ。優秀な選手が優秀な指導官になれるかといったら、そんなことはないんですけど、(2人は)確実に優秀なんですね。 実は日本ではそういう事例がほとんどなくて。投資家と事業家というのはピターっと分かれていたんです。ここ5〜6年、私自身も投資するようになって……起業家としての実力も投資金額もアンドリーセンとホロウィッツの何10分の1の規模ですけれども。なので、そういうやり方の大先輩なんですよ。 もう「どうやってやってるのかな?」「どういう経験に基づいてるかな?」って。あとは、本を読んでくださった方はわかると思いますけど、そもそも投資とかいうレベルの問題じゃないんですよね。生き様の話でして。 「人とどうやって折り合いをつけていきますか?」「プロジェクトを回すにはどうしたらいいですか?」という話なんですけれども。なんせびっくりするくらい変わってる本なんです。

本に書かれているのは、経営者の失敗の対処法

中川 本人も最初のところで、「うまくいった話じゃなくて、本当に自分が人をクビにしたり、辛いときにどうしたらいいかを書いてる本がなかったから書きます」って宣言してますもんね。 小澤 そう。料理でいったら、おいしく作る料理本はいくらでもあるんですよ。「これとこれを組み合わせてこうだ」と。今回の本は、料理の本でいったら、料理の世界にはないんですけど、「煮過ぎちゃったらどうしますか?」という本なんですよ。 (会場笑) 小澤 肉を焼き過ぎちゃったらどうしますか? 実はこれ、ほとんどの人が最初の料理のときに犯すミスなんですよ。でも、それに対するレシピ本はないんですよ。 でも料理と違うのは、煮過ぎちゃった肉でもやっていかなきゃないんですよ。焼き過ぎちゃった肉でも、砂糖と塩を間違っちゃっても、継続させなきゃいけないんですよ。 そういうミスは、ほとんどの経営者が最初のほうに集中的にやるんですね。残念ながら、砂糖と塩を間違えたときの対処方法というのは……。 今までは自分で間違えて、「まずい。でもどうしよう……」とやるしかなかったんですけど。僕が読む限り、この本には砂糖と塩を間違えたときの対処法というのが初めて書いてある。むしろそればっかりなんですよ。 まったくもっておいしい料理の作り方は書いてないです。「まずい! 料理間違えちゃった!」というときのことばっかり書いてある。一番最初に(序文で)「吐き気と悪寒」と書いたのはそういう意味ですよ。私の1行目は、「吐き気と悪寒」。「こんなまずい料理食えるかい」という感じです。 中川 序文の中でも、小澤さんが「新しいことをやったら9割くらい失敗するんだから」って書かれてましたけど。失敗すると嫌になったりしないんですか? 小澤 私もみなさんもそうだと思いますけど、事業だけじゃなく新しいアイデアというのは、「これはうまくいくぞ」と思って、人にアドバイスを聞いて……。まあ悪いことは耳に入ってこないですよ。いいことを言ったら「だよね」とか。悪いことを言ったら「この人は……まあいいか」という(笑)。蓋を開けてみると、ほとんどのことがうまくいかないんですけど。 基本はやっぱりうまくいかないんですね。だって、人口1億人ぐらいいらっしゃって、世界を見たらシリコンバレーまであるなかで、新しい事業ってそうはないわけですよね。 自分だけが思いついてることはあまりにもないわけで。前の人がやっていないのは、9割9分9厘うまくいかないからやってないんですよね。 だから、そういう事情というか、事実にもとづいてスタートしてるか。つまり、失敗する前提でスタートさせてるか、絶対にうまくいく前提でスタートしてるか。失敗を考えないでやるかというのはかなり大きな違いなんですね。 先ほど申し上げたように、この本は、失敗しそうになったら数々犯すミスを前提に書いてくださっているので、わけのわかってることこの上なし。

成功者が書いてるのは“普通の本”

中川 小澤さんが「うまくいくパターンはいろいろあるけど、失敗するのはだいたい同じなんだよね」とおっしゃってたのがすごくおもしろいなと思ったんですけれども。書いてあるような話というのは、小澤さん自身もほかの後輩の起業家の方たちも、だいたい経験するものなんですか? 小澤 そうなんです。結局、本のなかで代表的な例がいくつか出てるわけですね。例えば、人を雇うときに、知り合いを雇って、その人が使えなかったらどうしようということなんですよ。これは使えれば最高だし、使えなきゃ最悪という二者択一でしかないんですね。必ずどちらかが起きるんですよ。 どちらかが起きるというんだったら、ダメだったときのことを考えておこうよということなんです。失敗する前提というのはそういうことなんです。ほとんどの人は、「あの人はいいよな~」「ナントカちゃんすごい性格よかったし」とやるんですけど。それなら離婚ってしないでしょう。男女間でもね(笑)。 そういうことなので、失敗のパターンというのはあまりにもありふれている事象です。「給料あげすぎちゃったらどうしよう」「あげるべきじゃない人に株を割り当ててしまったらどうしよう」と。 ほとんどのケースはうまくいかなくて、同じことをやってもうまくいくケースが10パーセント、ダメなケースが90パーセントですという、それだけなんですね。  ある事象に対して、ある事象というのは一緒なんです。その先うまくいかないかというだけなんです。友達を雇う、株をあげる、親戚を雇う……全部事象としては一緒で、うまくいくかいかないかだけの差の問題ですね。 中川 そのときに、失敗したらどうするかというのを書いてあるのがこの本ということですよね。 小澤 そうそう。うまくいったという。友達を雇ってうまくいった。やっぱり仲間って身の回りにいるもんだよね。灯台下暗しみたいなほうが多いわけですよ。だから学生時代にネットワークを広げておこうよということなんですけど。 その結果、雇って失敗したから、「こうですよね」という、その先の話がこの本。その前段階、下ごしらえの話が普通の本。成功者が書いてるのは普通の本。でも、その9割ぐらいが間違ってる。適当に言ってますよ(笑)。 失敗するんだけど、その失敗したあとに挽回策があるんですよ。事業というのは宝くじと違って、番号が外れてきたなと思ったら当てにいく方法があるんですよ。 中川 この本が出たあとに、起業家の方たちが「もっと早く知ってたらよかった」というお話しをすごくされたんですけど。小澤さんは、後輩の起業家の方たちにこういったアドバイスを実際にされてるけれど、あんまり外では言わないというものなんですか? 小澤 基本は起きてから相談されるんですね(笑)。起きる前にはうまくいくと思ってるから。あとは、僕が「やめたほうがいいよ」と言っても、先ほど申し上げたように、聞く耳を持たないですから。起業家というのは自信の塊ですからね。 悪くなってから、仲裁に入ることはものすごくあります。「もうどうせ当事者同士じゃうまくいかないでしょう」「私が決めますから」ということはよくありますけど、それを講演の場では言えないですよね。「あの人とあの人がなんで離婚したか」みたいな話ですよね。 (会場笑) 中川 実はあるんだけど、あまり外には出てこなかったという内容なんですね。 小澤 そうですね。なので、ベンさんは自分の体験だけに則って書いてるんです。事業家としてあらゆる経験をしてるから自分の体験として書けるけど。人の体験を書いたってあまりリアリティがないわけですよ。話すほうは悪く思われたくないから話すしね。

  
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