シェアリングエコノミーの新たな狙い目は?

藤井宏一郎氏(以下、藤井):みなさんこういった事業を立ち上げられたわけですけど、先ほども申し上げましたように、シェアリングエコノミーって本当にいろいろあるんですよね。そのなかで、とくにここ(の事業)に目をつけたのはなぜか。

今、新しい起業家さんが「次は何をシェアできるかな?」ってすごく考えていると思うんですね。なぜここをシェアしようと思ったのか、言いたくないかも知れないんですけど、次にシェアできそうな物があるとしたらどなたか教えてください。じゃあ、重松さん。

重松大輔氏(以下、重松):スペースマーケットはちょうど2年半ぐらい前、ずっと事業アイデアを考えていたときに、Y Combinatorとか500 Startupsが出資しているリストを丹念に見ていったら、1つの大きなトレンドとして、シェアリングエコノミーがあることに気づきました。当然AirbnbやマイコンのOBというか、一番大当たりした方ですから、これはおもしろいなと。

「日本で何かできないかな?」と考えたときに、Airbnbに関していうと、当然旅館業法というそびえ立つ大きなハードルがありました。これはないなと思いまして。

ただ、私自身が前職でフォトクリエイトという、イベント写真のビジネスをやっていて、結婚式の写真の販売サービスを立ち上げて、平日の結婚式場へ営業に行ってたんですね。

結婚式場は当然のことながら、土日祝日はフル稼働してますけど、平日はガラガラだったので、「みなさん、平日の稼動もったいなくないですか?」と。そこで、企業法人の宴会を持ってきたり、会議も絶対こういうガバナンスでやったほうがいいじゃないですかと。「絶対儲かりますよ」と話したら、みなさん「ぜひやりたい」と言ってまして。

一方で、成長企業って(オフィスを)大きめに借りますよね。例えば、1年後に100人になるんだけど、今50人までしか埋まっておらず、空きスペースはそのまま3ヶ月空いていると。

「これも誰かに貸したらいいんじゃないか」といろいろ聞くと、「いや、転貸禁止の覚え書きがあります」と返されて、「なるほど」と。でも、そこも不動産会社にとってメリットがあれば、絶対貸すんじゃないかなと思って。

そうやっていろいろ考えてみると、結婚式場は土日祝日フル稼働してますけど、普通の会社の会議室は当然土日祝日は空いてますから、「アンマッチを埋めるようなAirbnb的なサービスをやればいけるんじゃないかな」と思って、サービスを設計して考えた経緯があります。

福祉・介護業界に広がるチャンス

これからシェアリングエコノミーのサービスをやるとするなら、日本限定で考えた場合、介護がこれから間違いない。

今ですら介護で疲弊して倒れちゃうとか、絶対にこれからもどんどん出てくると思うので。うまく自治体を巻き込みながら、若くて元気な大学生がおじいさんおばあさんをちゃんと介助する仕組みがうまくできて、学生のお小遣い稼ぎになれば。その辺ができたらおもしろいのかなと思ってます。

大見周平氏(以下、大見):スペースマーケットって、BtoBっぽいところの営業でしっかり積み上げてる感があると思うんですけど。

個人的にはラクスルとかもそうですけど、シェアリング系のベンチャーでいうと、けっこうBtoBで営業で日計を積み上げられるところってチャンスがあるんじゃないかなという気はしますね。キャッシュフローを生みながら。スペースマーケットもそんな感じ。

重松:そうですね。CtoCはいきなりブランドを立ち上げられないというか、やっぱり怪しいじゃないですか。

なので、BtoBで信用をまず作ると。今うちの会社も、BtoBの割合が15パーセントぐらいで、スモールBtoCみたいなことも増えてきてるんですね。なので、だんだん比率を下げたほうがいいかな。サービスを拡大させていけば、どっちみち伸びていくというのはあると思います。

髙橋正巳氏(以下、髙橋):私も福祉は非常に可能性があると感じてます。ある意味すごいチャンスだと思うんですよね。

日本はシェアリングエコノミーが後発で、やっとここ1、2年で盛り上がってきたみたいな状況なんです。海外だともっと早い段階からそういったサービスを開始していて、いろんな議論になってきてるところですけど。

日本が抱える高齢化だったり過疎化みたいな問題というのは、いずれほかの国でも起こるようなことですよね。

それをある意味先駆けて、日本でこういったシェアリングという概念に基づいて先行して出せれば、世界に対してもインパクトを残せるようなサービスになり得るんじゃないかなと思っています。

AirbnbやUBERの存在は知らなかった

藤井:ありがとうございました。金谷さんは、スペースのなかでもあえて駐車場に絞ったのは何かあるんですか?

金谷元気氏(以下、金谷):「akippa」の場合はちょっと違いまして。シェアのサービスを作ろうと思って、「akippa」を作ったわけじゃないんですね。

ずっと営業会社でやってて、クレームが多くてしんどかったことに加えて、世の中の不便をなくすようなものを作ろうということで、会社の全員で壁に悩み事や困り事を200個書いたんですよ。そこで「駐車場は、現地に行って満車を知る」という悩み事をある女性社員が書いていて。

そこから、「そういえば月極とか個人宅の駐車場ってけっこう空いているよね」という話になって。じゃあ、それをインターネットでつないだらいいんじゃないかという話から始まっています。

当時は営業会社だったので、正直AirbnbやUBERすらも知らなかったという(笑)。インターネットをぜんぜん知らなかったので、初めてピッチコンテストに出たときにそういうのを聞いて「そうか」と。

まさにリアルで需要があるところをただ単にスマホでつないだだけで、シェアリングエコノミーという言葉も後々知ったというか。そういうイメージなんです。

藤井:シェアリングエコノミーに独自に行き着いたと。すごいですね、それは! やはりアントレプレナーならではと思うんですが。

UBERがユーザーに広まった経緯

今BtoBなのか、CtoCなのかという話が議論の中で出てきたんですけど、「最初にBtoBをやったほうがやりやすい」という話で終わったのかなと思うんですね。

CtoCというのは、やっぱりマスマーケティングみたいな空中戦が大きいところがあったりするんですよね。

そこで、CtoCを立ち上げたい人へのアドバイスとか、あるいはCtoCのユーザー獲得はどこまでプラットフォーマーがハンズオンで営業するべきなのか、もしくはアプリを出せばハンズオフで自動的に拡大していくのか、どうやってそこにもっていくのか、そこらへんのアドバイスはありますか?

髙橋:弊社は本当にCtoCがベースとなっているサービスでして。振り返ってみれば初めは創業者のギャレット・キャンプとトラビス・カラニックの2名が2009年にパリへ行って、「イベントの後に交通手段がない」と言ったことがあって、ふとポケットを見るとiPhoneが入っている。

「これでボタンを押して、車が来たらクールじゃん!」と言ってサンフランシスコに帰って作ったのがUBERなんですね。

初めは2人とその友人100名ぐらいで限定的なサービスとして始めたんですけど、ボタンを押したら、黒塗りの車が現れるというクールなエクスペリエンスって、けっこうみんな自慢したがるんですよね。

そこから結局バイラルに広がっていって、「ユーザー同士が紹介する」という考えから現在に続くリファーラルのシステムもやって。

例えば、UBERを使ってくれたらその人が10ドルオフになって、自分にも10ドルクレジットが付くというので、そこでどんどん人に広がっていったり。

ドライバー側も実際のところ、UBERには非常にフレキシビリティがあるからということでさらに広がっていって、供給が集まっていきました。ワード・オブ・マウスなところがCtoC拡大の肝なんじゃないかなと思っています。

藤井:ありがとうございます。大見さん、何かありますか?

CtoCサービスは口コミが肝心?

大見:僕もあります。本当にCtoCの立ち上げは大変というか。

藤井:口コミにどうやってもっていくかなんですよね。売買って当たるも八卦みたいなところがあるじゃないですか? 最初のギアを入れることろをどうやってやるかという。

大見:やっぱりUBERみたいに今までタクシーサービスがあまりイケてない地域で、「ボタンを押したら来てくれる」みたいな激烈な体験の良さみたいなのを出せれば一番いいんですけど。

AirbnbやAnycaが劇的にいいかというと、たぶんオーナーさんやホストさん次第のところもあるので、口コミを起こすときの人間ホスピタリティーがエンドユーザーの感じる付加価値に割合が大きいサービスって、とくに立ち上げを慎重にやらないと難しい。

今もけっこう悩んでいるのは、「維持費軽減」とか「稼げますよ」と言ったほうが当然車が集まるんですけど、それをやっちゃうと、本当にビジネスライクにシェアする人ばっかりになっちゃうんですよね。

そうすると、プラスアルファでいいことが起きないんですよね。そこらへんのバランス、コミュニティ温めつつ、数も稼いでいくところはけっこう難しいなと思いますね。

藤井:わかりました。重松さん、何かあります?

重松:そうですね。DeNAさんって力業ができるじゃないですか。広告ビシビシ打ったりとか。

大見:できないですよ(笑)。

重松:うちはどちらかというとできないので。力づくで最初の物件のホストを集めるところをド営業、昔から今までの人脈を駆使して登録していただいて。

あとはサイトの賑わってる感というか、「いっぱいあって、盛り上がってるな」みたいな感じを作っていって。あとは、ユーザーの友達にも使ってもらって、(感想を)言ってもらったり。

とはいえ、最初に時間はかかるものの、ある一定のラインを超えてくると、急速に両方がぐるぐる回ってくるかなという感じですね。一番最初の大変なところに、ティッピングポイントというかキャズムがあると思うんですけど、そこをどうやって超えるかというのが肝かなと思います。

藤井:食べログは1万件を超えたら、世界が変ってきたみたいな。そういう話ですよね。

重松:そうですね。ぐるなびは1万店舗で一気に世界が変わったみたいな。

シェアリングエコノミーは一過性のバブルに過ぎない?

藤井:そうですね。今おっしゃった「ニワトリが先か、卵が先か」問題は何の話かというと、まずデマンドとサプライがあるわけですね。

貸主と借主がいて、じゃあ「貸主を最初に集めるのか、借主を最初に集めるのか」という話なんです。

みなさんの意見では、「貸主を先に集めろ」と。サプライサイドがあって、商品を棚に並べて初めてマーケットプレイスなんだからという話ですよね? 

そんな感じでいろいろシェアリングエコノミーは盛り上がっていくんだと思うんですけど、一方で「バブルなんじゃね?」という話もあって。

アメリカでかなり加熱してきていて、クリーニングサービスの「Homejoy」のように問題を抱えて倒産するようなところも出てきただけでなく、「もういいところは全部取られた」という議論もよく聞くんですよね。

みんなが持っている遊休資産で、トランザクションの情報コストを下げる余地があり、資産の利用自体は簡単で、決裁もオンラインで可能な領域って、宿泊と場所と移動サービスが典型なんだけど、そういう一番おいしいところはもう取られちゃって、後はもうあんまり残っていないという話を聞いたりするんですけど。

そこら辺はどう思います? ここから先のマネタイズ難しいんじゃないかという。

重松:でも、今日の(Launch Padに出た)「nutte」さんとかあるわけじゃないですか。まだまだいっぱいあるような気はしますよね。

藤井:まだまだいけると。わかりました。そういう方向にもっていきたいんですよ(笑)。ここで「ありません」と言われちゃうと、このセッションが終わっちゃうので。

西海岸のメディアでも、けっこう「バブルじゃないか?」という論調があったので、そこを一応確認してみたかったというわけですね。

交通手段の変化とサービスの成長

髙橋:1つコメントすると、弊社のバリュエーションについて最近もニュースになったりしてますが、自分でも思うのは、シェアリングのサービスというのは置き換えじゃないんです。本当にパイの拡大なんですよね。

既存のマーケットをべースに考えてしまうと、なんでこんなバリュエーションがつくんだって必ず議論になるんですけど、アメリカに行けば、人々の移動の仕方が明らかに変わっているんですよね。

私も先月ロサンゼルスに行って、初めて自分で運転しないで、全部UBERで移動しました。現地では、UBERがサービスを開始した後、トア・トゥー・ドアの交通市場が変化して、乗車回数が約4倍ぐらいになったというデータがあります。

人々が自分で運転する代わりに、こういうサービスを本当に使い出す。空き時間、空きリソースの貸し借りなので、そういう観点から見るとまだまだ可能性があるんじゃないかなと思います。

藤井:わかりました。まだまだいけるということで。まさに今、髙橋さんがおっしゃった、人々の移動の在り方が変わるとか、社会が変わっていくというところを次のテーマにしたいと思います。

大見:UBERさんの時価総額が正当化されるのが、ライドシェアサービスはもちろんなんですけど、たぶん物流とかを将来的に牛耳りうるみたいな。

たぶんその先の世界もけっこう(視野に)入ってそうだし、Airbnbが最近リリースした現地でのツアーガイドみたいな付加価値提供みたいなのもあったり。

一面のシェアをブワーって取っちゃったときのバリューチェーンを伸ばしていける感というのも、グローバルだと時価総額にかなり加味されているんじゃないかなという気はしますけどね。

藤井:そうですね。コアサービス以外のバリューチェーンを伸ばしていく、浸み出しの話というのは、最後にまとめで入れ込もうとしたんですけど、言っていただいてありがとうございます。