ケンカスタイルより、共存スタイル

西野亮廣氏(以下、西野):いつからそんな……子供のときから? 子供のときもそういう、歌を歌ってとか、やっていたんですか?

前田裕二氏(以下、前田):そうですね、わりと貧乏な時代が長かったんで。「今日夜ご飯食えないぞ、どうする」みたいなところから始まっていたので。

やっぱりお金に対しての恐怖心というか、もう「圧倒的に稼ぎたい」みたいな、その当時からすごいありましたし。その一環として、弾き語りを始めたんですよね。

もう、おばさんとか泣きながら1万円とかくれるんで。「これだ」って思いましたね。

西野:そういうことをするじゃないですか? 既存の仕組みがあって「こうじゃなくてここ、こうやったほうがいいんじゃないの?」っていうのやられてますけど、それに対して「やめろや」みたいに思う人っているんですか? それをやられるとちょっと困っちゃうみたいな。

前田:たぶん、既得権益っていう言い方はよくないかもしれないですけど、すでに権力をもっている方に関しては「やめろよ」って思うかもしれないですけど。

でも、そこは必ずしも相反するものではなくって、「一緒にくればシナジーがあって、業界全体が大きくなるよ」っていうストーリーを構築することによって巻き込んでいけるっていう感じですかね。

西野:なんか、それけっこうおっしゃるんですよ。各界のはみ出し者というか、イノベーターの方をお呼びしてお話させていただくと。

みなさん言うのが、やっぱりそこの……変なほうにいっちゃったら、「こっちのほうがいいんじゃね」みたいなことで、「こっちのほうが世の中よくなるじゃん」みたいなこと言ったら、やっぱりある程度の抗議は食らっちゃうんです。

どうしたって食らっちゃうんですけど、それに対して「つぶしてやれ」って言っているのって僕ぐらいで(笑)。

僕が一番未熟なんですけど、(僕)以外の人は、やっぱその共存のほうにいきますね。「共存だ」と。「先輩方と一緒に」っていうのを。

前田:単純にそっちのほうが、成功確度が高いからなんじゃないのかなと。自分がやってることをより大きくたくさんの人に知ってもらおうと思ったら、ケンカスタイルよりも共存スタイルのほうが。

日本企業同士でつぶし合ってもしかたない

西野:すごい反省しました。僕3日前ぐらいに番組の収録があって、その翌日のFacebookには「共存」って書いてましたからね(笑)。自分の意見のように。

前田:ケンカスタイルのほうがかっこいいなと思うんですけどね、生き方としてはぜんぜん(笑)。

例えば、我々でいくとテレビだったりとかマスメディアとかって、もしかしたら相反するものかもしれないですけど。なぜなら、マスメディアがなくっても食っていける人たちっていうのはたくさん生まれてるので。

なんですけど、もしかしたらマスメディアが今、悩みをかかえているとして、その悩みを解決できるかもしれないなとも思うわけなんですよ。

とするとマスメディアから僕らがうまく得たいものを得て、向こうが得たいものを提供してあげて、そうすると全体がもっと大きくなるんじゃないかっていう。

西尾:偉っ! なるほどね。

前田:(笑)。そうなんですよね。あんまり日本国内だけでケンカし合ってても、それは縮小均衡というか、お互いをつぶしあってしまうことになるので。

もともとの考え方としては、日本初の世界一の企業とかサービスを作りたくて。とすると、「日本企業同士でつぶし合っててもいけないよね」ってすごい思うので、僕はもう完全に共存スタイルを貫いていますね。

西野:なるほどね。

前田:ただGoogleとかを倒したいですけど。

西野:そういうことですよね。

前田:Googleでさえ、共存することによってもしかしたら成功確度が高めになれば、気づいたときにはそれを上回っている、みたいなことを目指したいなと思いますけど。

西野:それおもしろいですね、Google倒したいって思ってるんですね(笑)。

前田:Google倒したいって超思ってます(笑)。

西野:それいいなぁ。僕、ディズニーなんですよ。僕はウォルト・ディズニーを倒したいんですよ。いつからですか? Googleを倒そうかなと思ったの。

前田:「Google倒したい」ですか? トヨタとかホンダ以降、胸張って「世界一だ」みたいに言える会社があんまり出てない気がするので。

まず「Google倒す」って言ってみる

西野:まず言って欲しいですよね。世界一取る前にまず、「Google倒す」とか。アホみたいじゃないですか。

アホみたいだけど、でも『少年ジャンプ』の主人公ってみんなそれで。だから物語が終わらないっていうのがすごくいいなぁと思って。

それでGoogleを倒すとか言ってて、そこに向かっててつまずいてるのもいちいちおもしろいなと思って。「お前、『Google倒す』から遠のいてるやないか」みたいな、それがいちいち物語になるし。「言っちゃう」はいいですよね。

前田:言っちゃうっていうのも、本当に言霊ってあるなと思ってるんで、まずは言うようにしています。

西野:「まず言う」はいいですよね。それに対する反発が絶対にあると思うんですよ。

でもそういうことしたら、基本的には自分のこと嫌いな人がどれだけ増えてもゼロじゃないですか? つまりライブの動員とかCDの売上って、自分のことを好きな人しか買ってないじゃないですか。

だから嫌いな人が10人いようが1億人いようが一緒で、そんなことよりも自分のことが好きな人のことを増やしたほうが絶対に。

だったらまず、自分のことを嫌い、好きっていう人の割合が9対1だったとしたら、この1を大きくしていこうと思ったら、単純に分母をデカくしちゃえば。

こうやってコソコソ言うよりかは、もうスピーカーで「Googleを倒しますよー!」って言って10億人に聞かせたら、1億人が好きになってくれるわけじゃないですか?

西野:そっちのほうが効率いいんじゃないかなと思って。言うのはいいですよね。

前田:人って人に対して本質的にそこまで関心がないというか、基本的には自分にしか関心がないので、「流れゆく車窓の景色みたいなものだ」ってある人が言ってましたけど、いわゆるクレームだったりとか、有名人に対して嫌いだと思う感情とか。

だからおっしゃる通り、嫌いな人っていうのにそんなに意識を向けずに、自分のことを応援してくれる、好きな人に対して意識を向けるっていうのは、本当におっしゃる通りだなって思いますよね。

西野:でも気持ちいいな。いけそうですか、Google?

前田:いきます(笑)。

西野:(笑)。

前田:いけそうかどうかわからないですけど、絶対いきますよ。

西野:それ気持ちいいなぁ。

日本の人・サービスは世界で通用する

前田:ぜんぜん程遠いですけど、でもわかんないですけどね。まだ残された時間はぜんぜんあるんで、やっていきたいなと思います。

西野:でも、本当に出てないですもんね。

前田:出てない、本当に出てない。

西野:日本から、そういう世界的な企業っていうのが。

前田:それはもともと僕、アメリカでずっと仕事してたから、そこで感じたことがすごい大きかったんですよね。

「あれ? こいつら、そんなにたいしたことないな」と。みんなハーバード大卒とか、ものすごいやつらが周りのデスクに座ってるんですけど、言ってもそんなにたいしたことないんですよ。

どういう文脈でたいしたことないかっていうと、「今日1日でいくら稼ぎましたか」とか、具体的にビジネスの成果におけるその横比較でいくと、僕は絶対に負けなかったんですよね。

なので、「日本人、ぜんぜんいけるじゃん」った当時から思っていて、「いけるじゃん」って思う日本人の勤勉性が、世界視座で見たときに強みなんだって思ったんですけど、結果はそうなってないじゃないですか?

西野:そうですね。

前田:というのが悔しい。もともと、あまり日本に対して僕、強いこだわりはなかったんですけど、アメリカに行って日本を客観視するようになってから、こんなに素敵な国はないし、こんなに強い国民性ってないのに、なんか日本人って奥ゆかしいから。

「自分のすごさみたいなものを前面に出していかないよな」と。僕は本当に、世界レベルで戦える人たちってすごいいると思っていて、だから出したいんですね。日本発で、「世界一のなにか」を生んでいきたいです。

西野:SHOWROOMを、それこそ世界にもっていくと。

前田:もっていきます。アメリカもそうですし、アジアもそうなんですけど、このモデルって別に日本だからうまくいってるってわけじゃないんで。

西野:そうですね。それこそストリートライブなんか、世界中でありますもんね。

前田:新しい個人間送金の取組みとか、もともと、ティッピングの文化みたいなものってアメリカのほうが頻繁にあるしって思っていますね。