1人あたり1日2キロのゴミを出している

ハンク・グリーン氏:アメリカでは毎年2億2,600万トンのゴミが発生しており、1人あたり1日2キログラムのゴミを出している計算になります。

その約3分の1はリサイクルやコンポストに回され、その量は30年前に比べ約6倍に増えています。

しかし、捨てられたゴミの大部分は埋め立てに回され、フードラッパーやペーパータオル、電球のことなど、捨てた瞬間に簡単に忘れてしまっています。ですが、ゴミの科学については、質問が尽きることはないでしょう。

例えば、ゴミや分解されるまでどれくらいかかるのか、またはゴミが原因でどんな危険なことが起きるのか、といったことです。

まず初めに、ゴミの埋め立てがなかった時は、どのようにゴミを処理していたのかをみていきましょう。うまくいっていたとはいえないですが。

数世紀にわたり、ほとんどの人たちがゴミを路地であろうと裏庭であろうと好き勝手に捨てていました。自分の家の中でさえ、そうでした。

防衛に影響が出るまでは、ゴミ問題は話題にさえなりませんでした。例えば、紀元前500年のアテネでは、リーダーたちが町外れにゴミを捨てることを決定しました。それにより侵略者は、ゴミの山を利用できなくなりました。

最近では19世紀後半、多くの米国の街でゴミ用の樽を公共の場所に置き、人々や動物が拾えるようにしました。また1896年シカゴの議会で、未舗装の道が潰されたゴミや排泄物などでひどく汚染されていると報告されています。

ゴミにより生じる深刻な問題

ついに、人々は病気と汚い街との繋がりを認識し始め、ゴミ処理の方法に変化が現れだしました。それは大地に大きな穴を掘り、その中に投棄するという方法で、これで1900年代の米国人のほとんどのゴミを処理してきたのです。

職員は時々ゴミを土でカバーしましたが、分解されたゴミから出る液体などの環境問題が発生しました。

液体は重力や雨の助けで穴の底に流れ込みました。この汚染液体の混合は浸出液と呼ばれ、穴にカバーがないために、水銀、クロム、ニッケル、鉛などの重金属の危険な物質を含んだ液体は大地や地下水を汚染したのです。

1970年代、アメリカ政府の調査により、ゴミ処理場の穴から毎年900億ガロンの浸出液が地下水に入り込んでいることがわかりました。また、腐食した大量のゴミは、二酸化炭素の20倍温室効果のあるメタンを大量に排出することになります。

メタンと二酸化炭素はゴミから発生するガスの90~98パーセントを占め、残りは窒素、酸素、アンモニア、水素です。それらのガスはバクテリアがゴミを分解することで発生し、ガスの量はゴミの種類によって変わってきます。さらに、ゴミの湿気と温度が高くなると発生するガスの量も増えるのです。

以前は古新聞とヒ素を区別していなかった

一昨年のゴミが満杯になると、スペースを確保するため街はゴミを焼却します。そうすると先述したものとはまったく別の毒性物質が放出されることになります。例えゴミ処分場の土壌の上層を取り除いたとしても、メタンの影響でそこには植物は育たなくなってしまいます。そして言い忘れていましたが、メタンの爆発性は非常に高いのです。

適正な通気を確保しなければ、メタンなどの埋め立てられたガスは、土壌の中から近くの建物などのオープンスペースを求めて逃げ道を探します。それは“蒸気侵入(Vapor Intrusion)”と呼ばれ、メタンが地下室など通気の悪い場所を見つけると、そこに充満し火災や爆発の原因になります。

例えば2000年に、ミシガン州ロチェスター・ヒルズの長年閉鎖されていた住宅で、メタンの蓄積による爆発が起こり、家が破壊されました。

1976年まで、議会がゴミの処分に本腰を入れることはありませんでした。資源保全回収法はゴミの埋め立てに新たな基準を導入しただけでなく、初めてゴミの分類についても決定しました。危険物とそれ以外の2種類だけでしたが、これは重要な決定でした。

そう、それまでは古新聞と下水の樽、さらに100万ガロンのヒ素を区別していなかったのです。それらはほかのゴミと一緒に、埋め立て処分場に捨てられていました。

法律が制定されてから30年以上、国の埋め立て処分場は厳しいガイドラインに従わなければなりませんでした。例えば、高密度粘土層や濃縮ポリエチレンなどの層を作る必要があったのです。

埋め立て地では20年前のパンがそのままに

さらに、ゴミから出る液体を安全に下水に送るための浸出液回収用パイプの設営も義務化されました。現在の埋め立て地でも、ゴミの穴が爆発するのを防ぐため、メタンを回収したり換気したりできるデザインになっています。

しかし、ゴミの埋め立て処分には、永久にゴミが分解されないというデメリットもあります。土壌を圧縮し酸素を抜いているため空気のない環境になっており、今日捨てたオムツが数十年後も同じ状態のままなのです。

考古学者が埋め立て地を調査したとき、15年前のホットドッグや20年前のパンを完全に認識できる状態で発見したという話もあります。半世紀経った新聞の文字も判別できるほどです。

さまざまな試算はありますが、ガラスや石油ベースのプラスチックの分解には数百万年かかるという考えは概ね一致しています。

現在の埋め立て地が満杯になり、もっと埋め立て処分場を建設するためにアメリカ中の空き地が与えられたとしても、同じものを作るのではなく、より効率のよいものか、発電のためにゴミを使うという方法もあります。

ゴミを有効利用する廃棄物発電

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ではないですが、“ウェースト・トゥ・エネルギー”、つまり廃棄物発電(WTE)施設が世界中で、とくに土地が貴重な地域で注目を集めています。

廃棄物発電のプロセスは、ゴミを焼却した熱で蒸気を作りタービンを回すことで発電させるだけ。基本的には石炭火力発電の仕組みと同じですが、適切にゴミを焼却することで、空気汚染は思いのほか少なくなるのです。

新世代のWTE施設では、ダイオキシン、二酸化硫黄、塩酸、二酸化窒素、重金属などの有害物質を取り除くことができます。

焼却後の重金属や抽出された酸は、工場に買い取ってもらうこともあります。また、ゴミの焼却は、埋め立て地に蓄積されるメタンの排出を抑える効果もあります。

しかしアメリカでは、テクノロジーの進化が追いついていない現状もあります。国内87のゴミ焼却施設で、ここ15年以内に建設されたものはありません。総量2,540万トンのゴミの焼却で作られる電力は、年間2,700メガワットで、総電力使用量の約0.3パーセントに過ぎないのです。

ヨーロッパでは、450のWTE施設が7,300メートルトンのゴミを毎年焼却しており、1,300万人以上分の電力をまかなっています。EU規制により、ゴミの埋め立て施設の新設は制限されています。

バイオリアクターがゴミ問題解決のカギに?

アメリカの話に戻りますが、埋め立て施設はいまだに存在します。少なくともこれらを有効利用できないものでしょうか?

アーサー・C・クラークはかつて「ゴミは資源に過ぎないが、我々はそれを利用できるほど賢くない」と言いました。しかし現在、バイオリアクターと呼ばれる埋め立て施設があり、これはクラーク氏も誇りに思うかもしれません。

バイオリアクターは、古い埋め立て施設を改修したものもあり、バクテリアが活発に活動できる環境にすることで、ゴミの分解を促進する施設です。

主なバイオリアクター埋め立て施設には嫌気性と好気性の2種類があり、2種類を組み合わせたハイブリッド施設もあります。

好気性バイオリアクターは、空気を送り込んで汚い浸出液をかき混ぜ、酸素呼吸のバクテリアを活性化させます。しかし、ゴミをもっとも分解するバクテリアのなかには、酸素のない高湿度の環境で活発に活動するものもいます。

嫌気性劣化のベストな環境は湿度が35~45パーセントのため、リアクターのポンプが下水のスラッジを汲み上げたり水を投入したりして、おいしいゴミのスープを作るのです。デリシャス!

唯一の問題は、分解により埋め立て地にガスが溜まることです。しかしこのガスは燃焼性です。なぜ電力を作るのに利用しなかったのでしょうか? 可能性のある答えは、アーサー・C・クラークの発言にあります。「人々は自分たちの廃棄物に関しては無知である」。

ゴミの山が燃えているように見えたことはないでしょうか? それは、メタンの燃焼により発生した二酸化炭素から逃れた埋め立て施設のガスが炎をあげているからです。二酸化炭素はメタンより温室効果が低いですが、未来の施設では、メタンや副産物を補足・再利用できる可能性もあります。

現在では、これを実現するため少数のバイオリアクターで初期のテストを行っていますが、結果が出るまでに数年を要するでしょう。

科学はゴミの分解を早めたり、エネルギーに変換したりするために努力を続け進化しています。少なくともアメリカでは、この動画を見るためのエネルギーは必要ですからね。

現在みなさんができることとしては、できるだけリサイクルに努め、ゴミ処理場に捨てるゴミを減らすことです。