DeNA赤川氏が辞表を持って行った日

中俣博之氏(以下、中俣):お三方ともわりとマッチョなエピソードが多くて。ちょっと逆に振ってみようかなと思うんですけど。「いうても人間だもの」というトークをしたいんですけど。

「こんな僕でも辞めたくなるときはある」と。辞めたり、転職とかしたら、別に今こうはなってないですと。結果、踏みとどまったために頑張れたと思うんですけど。

「いや、俺マジでクソだったな」みたいなときとか。「もう辞めたかった」みたいな、そういうような……ちょっと親近感を持ちたいので。

赤川隼一氏(以下、赤川):じゃあ、また僕から。僕、実は入社して1年半のタイミングで1回辞表を持って行っていて。

それは、1年半営業で成果を出せたあと、マーケティングの部署に移って、そのマーケティングの責任者が、今横浜ベイスターズで社長をやってる池田(純)さん。ものすごく仕事ができる人なんですけど。

そのときの僕は、仕事を楽しくやれていたんですけど、さっき言ったみたいに「3年本気でやれば力もつくし、またバンドやるかな」とか思ってた、まだ世の中を舐めてたところがあって。

初日に池田さんと飲みに行って、「君なにしたいの?」みたいな話をされて。「僕、3年くらいいたら、ミュージシャンやろうと思ってます」って言っちゃったんですね。

そしたら、池田さんがものすごく怒って。「お前に教えることはなに1つない」と。「ミュージシャンやりたいなら、明日からさっさとやりな」みたいな話になり。今思うと当然だなと思うんですけど。

本当に小さいチームだったんで、「まぁいろいろ叩き込んでやるか」と思ってた若造が、「いや俺、ちょっと覚えたら会社辞めますよ」とか言ってるという状況だったので、そりゃ怒りますよね……。

中俣:悲しかっただろうね。

赤川:あんまりログミーしたくないですけど(笑)。

その晩号泣して朝まで寝れなくて、一晩中考えて、池田さんの言ってることはどう考えても正しいし、「俺、結局人生逃げてるだけかもな」と思って、翌日辞表持っていったんですよね。

でも、何を言われたのか今まったく覚えてないぐらいよくわからない流れなんですけど、なぜか説得されて残ったんです。

(会場笑)

そういう人心掌握も含めてすごいできる人なので、そうなったと思うんですが。やっぱりそのあと、仕事に対するスタンスがまた一段変わりましたね。自分の人生をかけてやることに、その瞬間から変わったというか、ポイントが変わったというのもあって。

だから、1年目すごい成果出してましたけど、なんだかんだ世の中舐めてた若造だったのが、本当に事業とか仕事をするということがファースト・プライオリティになって、変わった瞬間というのがその辞表を持って行った日ですね。あ、意外と湧かない感じ?(笑)。

中俣:ここで「おおー」って泣くとか(笑)。

心が折れそうなときに、まず考えること

海野慧氏(以下、海野):辞表ってなかなか持って行かないですからね。「辞めます」っていうことはあっても、紙……。

中俣:「はい」みたいなね。

海野:ググるんですよね。「辞表の書き方」みたいな(笑)。

中俣:そういうことあります? ないですか?

海野:ないです。今のところないです。常に……。

中俣:どうでした? 「辞めたい。いいや」っていう。

海野:でも、それはもう辛いことはたくさんありますからね。たぶん、みなさんが想像してる100倍あるんじゃないですか? ハハハハ(笑)。

(会場笑)

中俣:平尾(丈)さんが強烈だから(笑)。

海野:強烈ですね(笑)。

成田修造氏(以下、成田):板挟みだから。

海野:でも、それはネガティブなことに捉えてほしくなくて。ある種当然だと思うんですよ。だって、すごい楽して、なにか新しいことできたりとか、なにか楽してチャレンジできたりとか、あるわけないじゃないですか。

だって、みなさん部活やってて「県大会勝とう」とか「全国目指そう」みたいに思ってるときに、練習しんどいじゃないですか。当たり前ですよ。練習もせずに大会だけ出て勝つなんてありえないじゃないですか。

それと一緒で、しんどいことはいっぱいあるんです。そういう意味でいうと、僕のガラスのハートは粉々ですよね(笑)。もう心が粉々……。

成田:意味がわからないです(笑)。

海野:人間みんなそうだと思っていて。でも、別に心は折れてもいいですよ。折れればいいじゃないかと。また折れればいいじゃないかと。それで折れ続けて粉になったら、もう折れなくなるので、粉々になるまで……。

(会場笑)

中俣:今のいいね。

成田:鉄板ネタ?

海野:いや、違う。

中俣:4回ぐらい使ってるやつじゃない?

海野:そうだね。使ったこともあるかもね。

赤川:折れ過ぎるともう……。

海野:そうなの。だんだんともう折れなくなるんです。でも、そうだと思っていて。でも、それでいい。いろいろチャレンジして、壁にぶちあたって「どうしよう?」って頭かかえて頑張ればいいと思うんです。

そのときに、「じゃあ、なんでまだいるの?」ってなったときに、いろいろそれはしんどいときとかもありますけど、いろいろ考えるんですよね、冷静になって。

今このまま頑張ることと、外に出ることとかっていうのを、冷静になって自分のなかで考えたときに、どっちのほうが未来の自分にとってためになるのかとか、どっちのほうが未来の自分にとって楽しいのかとか、チャレンジングなのかとか、誰とやりたいのかとか。

人間なので、感情的になる瞬間は誰にもあると思うんですけど、そこで絶対冷静になってほしくて。

本当に冷静に考えて、それが一番のチケットなのかというのを考えたうえで、やっぱり僕はずっと残ることを選んだんですね。

だからこそ今があるし。そういう機会も与えていただいたし。だからこそ、チャレンジもできたし、今があると思ってるので。

そこは一時の感情だけに流されないみたいのがすごく僕は大事だと思うんですよね。まあ、そんな感じで今もね。

中俣:特定のエピソードが出てこないと。常に辛いみたいな。

ベンチャーは修羅場の連続

海野:特定のエピソードはありますけど。常に辛いとは言わないですけど。でも、やっぱりものによってとか、たぶんお三方も絶対あると思うんですよね。

中俣:でも、成田くんなさそうだよ。

成田:修羅場きた、修羅場。

海野:修羅場シリーズありますよね、絶対。

仲俣:修羅場シリーズに変えましょうか。

成田:修羅場シリーズ……ですか。

(会場笑)

海野:やばい。なさそう。

成田:台本にないからわからない(笑)。

中俣:たぶん大手企業よりもベンチャーのほうが修羅場が多いじゃないですか。本当に死にそうな。だけど克服すると、サイヤ人みたいに強くなっていてというところが、ベンチャー企業のすごい好きなところで。本当に人生レベルで辛いじゃないですか。

成田:はい、辛いです。

中俣:そういうこといっぱいあると思うんですけど。

成田:毎日辛いです。ぶっちゃけ辛いですね。

(会場笑)

中俣:その修羅場。

成田:辛いし、やっぱり毎日憂鬱ですよね(笑)。

(会場笑)

海野:そうじゃなくて(笑)。ちょっと話が変なほうに向かってる。

上場前の修羅場を乗り越えたモチベーション

成田:でも、どうなんでしょう? 3年ぐらいはなかったですね、辞めたかったというのは。全速力で走っていたし、エキサイティング過ぎた。

海野:それはそうですよね。

成田:なんだろうな。3年ぐらいは本当に毎日寝れないですけど。上場前の1年間とかって本当に寝れなくて。もう気持ち的にも寝れないし、物理的にももう仕事量が多すぎて寝れなくて。

だけど、やっぱりそれを上回る熱量みたいのが会社のなかにあるんです。そういう場にいられるかどうかというのは、実はとても重要な経験です。そこを探しにいったほうが人生楽しいのかなというのは思っていますね。

そのあとは、どうでしょう、今の規模になってくると、やっぱり方針とか大きな意思決定をするタイミングが増えてくるので、そのタイミング、タイミングでやっぱり、大変なことはありますよ。

これはログミーはちょっとしてほしくないけど……例えば、代表の吉田(浩一郎)とか、言ってることよくわからないことがたくさんありますよ。よくわからないです、ぶっちゃけて言うと。

(会場笑)

そういう意味では大変なんですけど、ただ、やっぱり今はもう上場企業だし、その上場企業が持ってる社会的使命を達成することのほうがもう断トツ優先度高いですね。

今クラウドワークスで「働き方革命」というキーワードで、新しい働き方を世の中に根付かせるというようなビジョンを持ってるわけですけど、そっちのほうがぜんぜん重要なので。

個人の辛いとか、社内の関係性がどうとか、そういうことを言ってるステージじゃなくなってきたかなという感覚はあります。毎日本当に大変なこともありますけど、ビジョン実現のために乗り越えてるわけです。

海野:それは間違いないですね。

仕事の痛みは成長が癒やす

赤川:あとはね、成長がすべてを癒すみたいな。成長してる限りにおいては、組織のなかでよくわからない熱量が渦巻き続けるし、そのあと必ず踊り場、修羅場が来るんだけど。それを乗り越えると、またそれでエキサイトメントが増えていって、みたいな。

成田:そう思ってやっておくことが重要ですよね。踊り場が来たらちょっと楽しいって。

赤川:踊り場は最高に楽しいですよね。

成田:これはホップ・ステップのこのタイミングなんだよね。「ジャンプ前だ」みたいな。

中俣:はい、みんな変態ですね。

(会場笑)

成田:辛いときこそ今が勝負というか。それが一番楽しめるかどうかというのが重要かもしれないです。

中俣:マイルドなコメントないですか? 海野さん。

海野:マイルドなコメントないですね(笑)。

(会場笑)

でも、さっきと一緒で筋肉痛ですよね。絶対その筋肉が強くなる前に痛みが。なぜかわからないけれども、成長の前に痛みというものを神は置いたという。

成田:海野さん、すごい会場がじわじわきてる。海野さんがしゃべるとみんな楽しそうにしてる(笑)。

(会場笑)

赤川:ただのドM集団みたいになってる(笑)。

成田:破壊と創造というね。破壊と超回復か。破壊と超回復ってやっぱりありますよね。

海野:そうそうそう。

成長産業には悩んでる暇がない

赤川:いや、でも、けっこう重要なのは、仕事って楽しいことばっかりじゃないですよ。そのなかで成長とかブレークスルーとか、あとはさっき成田さんが言ったミッションみたいなものとか。

僕は今、スマートフォンで世界中から孤独をなくそうと思って、「1人じゃないスマホライフを」というビジョンでプロダクトをやってますけど、そういうものとか。やっぱりなにか突き動かされるものがあるかどうかがすごい重要だし。

ここって選択なんですよ。仕事をファーストプライオリティに置かずに、効率的に給料をもらって楽しく過ごす人生も僕はぜんぜんいいと思います。

でも、仕事でなにかエキサイトメントを味わいたいんだったら、やっぱりそれ相応の痛みとかしんどいところがあるという。そういうことかなと思いますけど。

成田:その 燃える対象を見つけられるか、というのがけっこう重要ですね。それがないと燃えないので。

赤川:モヤモヤしてるときに大事なのは、成長産業のなかにはよくわからない熱量があるので、悩んでる暇がない。だからこそ、スタートアップとかいわゆるIT産業ってやっぱりまだまだ伸びていく。

今も毎年スマホが世界中で10億台以上出ていくという、明らかに伸びてるマーケットのなかにいると、新しい機会がどんどん出てくるんですよね。

そういう機会のなかで、自分が燃えるポジションが結果的に生まれてくるというのが、この産業で一番熱いところだと思っていて。

成田:FacebookのNo.2やってるシェリル・サンドバーグも、なんでGoogle、Facebookにジョインしたのかというと、恩師に言われたらしいんですよ。「とにかく成長産業に行け」と。だからやっぱり、インターネットセクターで一番伸びてる会社を選んだ。

たまたまGoogleとFacebookがそのとき世界で最高に成長してたから、そこに行ったという、その場に自分を置いたというのが一番大きかったということですよね。その視点は非常に大事だと思います。

赤川:僕も意識低い学生でしたけど、結果的に伸びてる産業で、自分が裁量を持てるところに飛び込んだというのが、今思えば正しい選択をしたなというか。結果的に環境が自分を変えてきてくれたという感じですよね。

中俣:そうですよね。よく言う、波が来たときに岸にいないとそもそも波に乗れへんから。どこに波が来るかをちゃんと見ておけということですよね。

成田:そう思います。