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「義足ランナーがウサイン・ボルトを超える日」 2020年、東京五輪・パラリンピックで”逆転現象”は起こるか?

「義足ランナーがウサイン・ボルトを超える日」 2020年、東京五輪・パラリンピックで”逆転現象”は起こるか?

友人が脚を切断したことがキッカケで、義足エンジニアとしての道を歩み始めた遠藤謙氏。彼は近未来の現実的な目標に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの陸上100mにおいて、義足のランナーが健常者の金メダリストの記録を抜くことを掲げました。(TEDxTokyo2014より)

スピーカー
ソニーコンピューターサイエンス研究所 義足エンジニア 遠藤謙 氏
参照動画
遠藤 謙 at TEDxTokyo2014

失った部分には「技術が入り込む余白」がある

遠藤謙 氏(以下、遠藤) みなさん、こんにちは。遠藤謙と申します。エンジニアです。今日は技術を使って人体をハッキングする話をします。 人体というのは筋肉、脳、骨、内臓などなどから構成されています。それらの相互作用が働いてはじめて、人間は外を自由に移動できるようになります。もし人間が身体の一部を機能的、物理的に失うとなると、その人は障害者と分類されてしまいます。しかしこれは、私には全く受け入れられません。 ではまず、私の友人をご紹介いたします。 013_001 この分野で私が働いている理由は、個人的な経験に強く基づいています。この友人は吉川和博といいます。21歳のときに膝関節でガンが発見されまして、手術を受けました。1年間の化学療法を経ましたが、その後、肺転移が見つかりました。もっと残念なことに、もう一つの転移がまた肺で発見されました。別のところに転移が見つかったガン患者の生存率は非常に低いんですけれども、彼は生き延びました。 そして彼が3年も4年も病院でずっと寝ているのを見て、そして副作用の酷さで苦しんでいるのを見まして、エンジニアとして助けたいと思ったのです。ということで彼のために義足を作りたかったのです。そこで、私は義足について研究を始めました。 013_002 その後、ヒュー・ハー教授に会いました。MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディア・ラボの教授です。先生は膝下両足切断をされている方です。17歳のとき、凍傷のために両足を失いました。だけれども、ロッククライミングは諦めませんでした。自分の義足を自分で、しかもロッククライミング用に作っています。そして実際、義足のほうが部分的に自分の足よりも良いということです。 彼のお話を聞いて本当に刺激を受けました。こういった経験を受けて、私は障害に関する考えを変えました。例えば、この人を見てください。両足が無いです。この人もまた両足膝下切断者ですね。ヒュー先生と同じです。失った足のところに余白が見えます。大きな余白ですね。でも、私としてはこれは「技術が入り込む余地のある余白」と見ています。 013_003 例えば、歩行を考えてみましょう。歩行というのは人間の基本的な動きです。歩行は2本の足を交互に動かして、A地点からB地点に行くものです。この時、地面を蹴るときには大きな力が要ります。だけれども、普通の義足ではこれができないのです。非常に受容的で、筋肉がありません。 013_004 ですので、私は解消策としてモーターを足首に付けました。地面を蹴るためにです。私の場合は平行スプリングを入れてモーター出力を減らし、足首のモーターのサイズを小さくすることにしました。ほんの数日前にこれを友人に試してもらいました。始めてのテストなんですけれども、彼にこのロボットアンクルを付けて歩いていただきました。そして、足首にモーターを入れ込むことが非常に良い、非常にベネフィット(効果)があるということをしっかり体感できました。 もう一つ事例を挙げたいと思います。走る動作を考えて見ました。 013_005 ご存知かもしれないですけれども、パラリンピックで走るための義足のことを聞いたことがあるかもしれません。これはカーボンファイバーの板でできているものなんですけれども、板バネですね、これは人間の持っている足の形とはずいぶん違うんですけれども、あまりにも美しく走っています。 というのは、人間の筋肉とスプリングが体系的にうまく協調して相互的に動いているからです。なので、彼らはあまり見かけには気にしていないですけれども、パラリンピックでこの技術は貢献しました。 013_006 これは、100メートルの短距離走のオリンピックとパラリンピックの記録です。赤はパラリンピックの記録、青いカーブはオリンピックからの記録です。どちらもどんどん年々良くなっていますね。だけれども、健常なアスリートの最高記録は、ウサインボルトの2006年の記録、9.58(秒)でした。それに対して、パラリンピックのアスリートの最高は10.57(秒)、アラン・オリベイラの記録です。去年の記録です。 ですので、こうした技術の改善や向上が私に対して、こう思わせるようになりました。もしかしたら、普通のオリンピック金メダリストの記録よりも良い記録が、パラリンピックのチャンピオンにもたらされるんではないかと。2020年にはです。 (会場拍手)

パラリンピックがオリンピックを超える日

enken1_R 遠藤 この画像、私がジャンプをしています。なるべく、出来るだけ高く跳ぼうとしています。私はエンジニアでアスリートではないですけれども、スプリングを入れてみました。 enken2_R これが商業化しようとしているものなんですけれども、足と板のところにスプリングを入れています。スプリングを使うとどんどん高く跳べるようになっています。地上と足の間にスプリングを入れますが、それが8キロくらいの重量です。モーターが重くても、パフォーマンスはとても良いのです。 enken3 これが、パラライザーを使った前と後の記録の違いです。パラリンピックのアスリートたちにも使っていただきたいと思います。これにいろいろ付けるともっと高く跳べるようになります。 足を切断をされたアスリートたちにとってはどうでしょうか。本当により軽いスプリング、より軽い足を入れるということで、もしかしたらより良いパフォーマンスが出てくるかもしれません。そうすると、彼らはもはや障害者ではありません。非常にいろいろなことができるような人になります。 enken4_R これが始めてのプロトタイプ、実験機です。足を切断した方に装着してテストをさせていただきまして、これはあまりうまくいっていないんですけれども、チームとしては最大限の努力はしまして、プロトタイプを改善して、またアスリートにもトレーニングをしてもらって、2020年の東京パラリンピックで金メダルを獲得したいと考えています。 ただし、異論もあります。障害者がオリンピックに出るか出ないかといったような議論があります。でも、私としては出ないほうが良いのではないかと思います。というのは、義足を付けたほうが健常者よりも圧倒的に強く、速くなる可能性があるからです。パラリンピックは普通のオリンピックを超えたものになるんじゃないかと思っています。私はそう願っています。 (会場拍手) 013_007 これが最後のスライドです。私の本当の始めの動機に戻ります。私にはいろいろなビジョンがあります。でも元々、この人のために良い義足を作りたかったのです。今日みなさんに私の友人、吉川和博さんをご紹介したいと思います。 enken5 (会場拍手) ありがとうございます。でもこれは本当にまだ始まりです。まだ単なるプロトタイプです。まだまだやることがたくさんあります。だけれども、いろいろな技術を使って、足りない余白をワクワクした気持ちで埋められるようなエンジニアになりたいと思っております。みなさんの助けになりたいと考えております。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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