ダ・ヴィンチ・恐山氏のプロ作家デビュー

田中圭一氏(以下、田中):そんなわけで、みなさんと共に後半戦、頑張って盛り上げていきたいと思います。

まず、恐山さんのほうからですね。今まで「コミPo!」を使って作品をいろいろ発表されてきたんですけれども。

ダ・ヴィンチ・恐山氏(以下、恐山):本当に助けられてます。

田中:いえいえ。とくに最初に商業出版で連載を取ったっていうね。これがちょっと作った側としても「うわー、遂にプロ作家が!」って思ったんですけれども。あの辺の経緯、当時の裏話とかあります? 

恐山:本当に田中先生に助けられて、連載までこぎつけたという経緯が。

田中:売り込み行きましたよね。

恐山:田中先生にいろいろ、どこでやるべきなのか。S社とかK社とかいろいろ。

田中:行きましたよね。今でも忘れない、「ふーん」っていう感じの出版社もあって。「この野郎!」と思いましたよね。

「なぜ、このコミPo!という先進性とダ・ヴィンチ・恐山という才能に気づかないんだ、お前らは!」というのがあったんですけれど、「わかりました」って。でも、やっぱり一番アンテナがビビっと立ったのは、スクウェア・エニックスさん。

恐山:そうですね。スクエニさんには本当にお世話になってます。未だにですからね。

田中:後もたらたら、漫画家さんと組んで。

恐山:でも、本当に雑誌で連載になるって思ってなかったし、今も思ってないんですけど。だってほかの人、信じられないんですけど、どうやら手で漫画を描いてるらしい。

(会場笑)

「絵って、そういうふうにできるの?」っていうような、そんなレベルの認識のやつが、巻末のオールカラーなんですよね。

コミPo!の特性上、あまり白黒向きではないから、カラーで載せなきゃいけなくて。カラーページをもらい続けるという。絵も描けないやつが貴重なインクを使って……。

なんか本当にプレッシャーで。だって周りがみんな、彫刻家たちが揃ってる中で、感覚としては自分だけレゴブロック持って。

田中:前衛芸術と考えれば、それもありな気もするんですよね。

スクエニの連載をつかみ取った『くーろんず』

田中:これですね。『くーろんず』。

さっきも話に出たんですけれども、コミPo!って、みんな同じモデルを使って、いろんな方が漫画を作るんだけれども。

やっぱり個性がにじみ出るなというのは、もうこの4人が揃った段階でおかしいですよね。『くーろんず』読んでる人からするとね。もうなんか「おもしろいものが始まる」みたいな。

とくに好きなのは、この眼鏡の龍野みみ。眼鏡の……いつも曇ってますよね。

恐山:そうなんですよね。

田中:これはなにか意図があるんですか?

恐山:いや、これは最初になんとなく曇らせたら、もう後に引けなくなって。「面倒くさいなー」と思いながら、後から追加するようになっちゃって。

田中:手間かけながら(笑)。

恐山:やんなきゃよかったっていう(笑)。

田中:よく漫画家さんでも聞きますよね。このキャラクター、こんなにいっぱい装飾つけたらずーっとレギュラーでみたいなね。そういうのと同じノリですよね。

あと、忘れもしない、『4コマくーろんず』というのもやってましたよね。

恐山:Webのほうでも連載してて。それが4コマだったんですよ。

田中:オンラインでね。あれはちょうどダ・ヴィンチさんが連載始めるんで、なにかキャラクターを作ろうと。

既存のキャラじゃない「漫画にしか出ないキャラクターを」という編集さんからの要望があって。ダヴィンチさんに「何がいいかな、デザインしてくれ」って言ったら、アルパカみたいな。

恐山:アルパカ的ななにかが、ですね。

田中:アルパカのようで、蝶ネクタイがついてるし。学校の先生は「新しい転校生だ」って紹介しながら、必ず家畜扱いっていうやつですね。

恐山:そうですね。キャラをめちゃくちゃ動物として扱うという、作者もあまり人権を認めないまま終了していった。

田中:一応クラスの女の子たちはちゃんと友達として捉えてるんだけど、先生だけが家畜みたい(な扱い)になってるんだよね。

恐山:そうですね。これを連載してて「やっちゃったなー」っていうのは、「FireAlpaca」っていう海外製の画像編集ソフトがあるんですけど、それのマスコットが蝶ネクタイをつけたアルパカなんですよ(笑)。

田中:被ったんだ。

恐山:完全に被ってるっていう。コンセプトから被ってしまって。

田中:よくその会社からクレームが来なかったですよね。

恐山:そうですね。目立った活動を自粛した甲斐がありました。

連載の反響と担当編集者の差別

田中:実際、連載の反響とかどうでした? 4コマにしろ、本誌にしろ。

恐山:一部でなんですけど、ページが勝手にネットに流れて。それで、コミPo!の存在を知ってる人がけっこういたらしくて。

だから、ほかのちゃんとしたストーリーのある漫画を見て「この『くーろんず』、なんかいつもと違うな」とか言われてることがたまにあるらしくて。なんか申し訳ないというか。

自分がコミPo!を、変な使い方って言うとあれですけど、みなさんみたいな感じで「コミPo!のキャラクターにちゃんと人格を込めて使う」みたいな真面目な使い方をまったくせず、マネキンみたいに乱暴に扱っている。その変なノリを定着させてしまったなという感じがあります。

田中:確かに『くーろんず』によってコミPo!ってこういうギャグ漫画のツールみたいな方向が1つ決まったのもあったりもしましたよね。

恐山:ああ、そうですね。

田中:まあでも、単行本が3冊? 2冊?

恐山:はいはい。

田中:出ましたよね。1巻目と2巻目の表絵がぜんぜん違うんだけども。

恐山:そうなんです。あれは担当編集の指示で「あんまり漫画だと思われないような感じの表紙にしろ」って言われて。

やったら、読者の方から「漫画の表紙とは思わなくて、ぜんぜん本屋でわからなかった」って大不評を。従わなきゃよかった(笑)。

田中:僕も昔、角川さんで、『サラリーマン田中K一がゆく!』っていうのを出したんですけど。「これは新書っぽくしましょう!」って言われて「いや、漫画なんだけど」って言ったら、新書コーナーに置かれちゃって。

新書コーナーにあんなもん置いたって、誰も買わないじゃないですか。結果、売れなかったっていう。従わなきゃよかったです(笑)。

恐山:うちの担当さんは『くーろんず』を「漫画」って表現してくれなくて。「ネタ本」っていう言い方をして。明らかにこう1段階下に。

(会場笑)

田中:差別だよね(笑)。

恐山:差別を受けてる。

田中:今コミPo!じゃなくて、漫画家さんと組んで連載してますよね。

恐山:それでも、コミPo!を未だに使ってて。ネームを作るのに使ってるんです。

田中:コミPo!のネームでいって、ちゃんと漫画家さんが作画をするという。

恐山:コマとセリフ置くだけでもけっこう体裁は整うし、コミPo!ってそれのために使ってもすごく使いやすいんですよね。

田中:もっともです。私もネームに使ってたのでよくわかります。あれですよね。やりとりしてる中で、担当さんから「ここのセリフ直して」とか「ここのコマ広げて」っていうときに、紙で描いたネームだと全部消しゴムで消すとか、紙を新しくして描くでしょ? コミPo!だと、ちょいちょいってできちゃいますもんね。

恐山:その側面はわりと押していけるかもしれないです。

田中:だから、ネームエディターとしてのコミPo!というのもあるんだけども。なかなかそうは言っても、漫画家さん、なまじ絵は描けるからネームは描いちゃいますよね、普通ね。

ちょっとそんなこんなで。今日は恐山さんに、後ほどいろいろとネタ的なことを1つ。

セブ山:ネタ本。

恐山:ネタ本はやめてください。ダメですよ。それ、ヘイトスピーチです(笑)。

田中:コミPo!を使ったネタをやっていただきたいと思います。

次に、谷沢川コウさん。ちなみに、谷沢川ってどこを流れてるんですか?

谷沢川コウ氏(以下、谷沢川):世田谷区です。

田中:世田谷なんだ。へー。

谷沢川:等々力。

セブ山:もう工事は終わってるんですか?

谷沢川:工事はもう半年ぐらいで終わりましたね。

田中:等々力っていうことは多摩川に注いでる川ですね。

谷沢川:多摩川につながってますね、谷沢川で。

セブ山とコミPo!の関わり

田中:後ほどセブ山さんとお二人で、こちらもコミPo!を使った、「ネタ本」と言っちゃうとまた差別になるんですけれど、おもしろコーナを1つやっていただこうと考えております。

この辺はまだトークで広げたいなとは思ってはいるんですけれども。というのは、みなさんお楽しみの前に少し、コミPo!を使った人たちがどういうふうに扱って、今どう考えているかというのも、ちょっと気になったりして。

とくに、セブ山さんは今まではコミPo!を触っていなくて。出始めの頃にちょっと触られてたんですよね。

セブ山:そうですね。ちょうど「オモコロ」というところでいつもやらしていただいてるんですけど。そこに「オモコロの人たちで、いろいろおもしろくいじってください」みたいなオファーをいただきまして。そこでちょっと使わせてもらってたという感じですね。

だから、本当にそれだけなんで。これ10年なんで、まさに5年ぶりぐらいに今回イベントに出してくださるってオファーが来て。なんで呼ばれたのかなと思ってますし。

みなさんも思ってると思ってますし、大丈夫です。僕も思ってます。「なんで呼ばれたんだろう」って。

(会場笑)

恐山:部外者(笑)。

セブ山:「部外者」ですしね。なんで呼ばれたのか。上でも「なんで今日呼ばれたんですか?」って聞かれまくりましたし。「なんでいるんだろう?」って。

田中:ほら、宇宙戦艦ヤマトでもアナライザーは最初乗る予定じゃなかったのに、一緒に古代進とついてきて「乗せてください」って言ったら沖田艦長が「いいだろう」って言って。そういう故事にも習って、今日はアナライザーポジションでぜひよろしくお願いしたいと。

セブ山:ああ、なるほど。