日本発のグローバルベンチャーは生まれるか

琴坂将広氏(以下、琴坂):(会場に向かって)さて、そろそろ佳境となってきましたが、なにかほかに聞いてみたいことはありますか?

質問者5:東京から来ました一橋大学4年生の〇〇と申します。本日は貴重なお話をありがとうございます。

みなさんにお聞きしたいんですけど、例えばTwitterやFacebook、Google、Amazon、Appleなど、すごいグローバルベンチャーといいますか、非常に大きな会社が世界を席巻してるわけですけれども。日本からそういった企業が出てくるというのは、なかなか今までなかったと思うんですね。

琴坂:メルカリがもしかしたら……。

質問者5:みなさん、グローバルで活躍されてると思うんですけれども、何がそういった差を生んでいるのか。アメリカや中国もそうだと思うんですけれども。日本との差になっているのは環境であったり、もしかしたら人材の流出という観点からかもしれないですけれども。みなさんにお聞きしたいなと思いました。

小泉文明氏(以下、小泉):僕が明確に思っているのは、人材というよりは、会社としての資金調達能力がぜんぜん違っているところが、まず一番問題かなと思っています。

結局、会社というのはお金がないとなにもできないんですよ。アメリカや中国というところについては、リスクマネーのボリュームが圧倒的に大きくて、参入に対してすごい資金が入ってくるわけです。

成功する確率はどの会社もだいたい一緒なので、結局、何回失敗できるかが重要だったりするんですよね。それで成功したときに、あとはどんだけ張れるか。成功したら思いっきり張って、さらに拡大しているかというところで……。日本はそういう意味でいうと、まだ僕らでさえ2周目とかですよね。

アメリカはやっぱり7周目とか、そういう人たちがいるので、先ほどの(話の)「なるほど」じゃないですけど、投資家がもう「またこういう会社が出てきたから、張ってみよう」と言って、どんどん好循環が回ってるんですよね。日本はまだそこは少ないので。

ただ、これも時間が解決していくこともあるので、どんどん日本もリスクマネーが増えているので、いずれそういうタイミングに。

僕らみたいな、会社を作って1年半ぐらいでトータル42億円ぐらい集めるのとか、たぶんちょっと前の日本ではありえなかったんですけれども。

僕なんかは、ミクシィのときの経験もあって、けっこうVCから信頼してもらって、お金を出資していただいたりもしているので。そういう層が厚くなっていけばなっていくほど、近づいていく。ただ、向こう(アメリカ)は向こうでまた離れていくという感じなので、延々なんですけど。

そうは言っても、日本はグローバルで見たら、リスクマネーのボリュームとしては悪くはないなと思っています。まだまだ増やしていきたいと思いますけれども。それは僕らが正しく経営していって、成功体験をやって、次のみなさんにバトンタッチしなきゃいけないので、その責任は重いかなとは思ってます。

千葉功太郎氏(以下、千葉):(小泉氏の)補足で、お金の量がもうぜんぜん違います。もうお金は経営の力なので。プラス、シリコンバレーだと、それをサポートする体制が完璧ですよね。起業して成功したメンターたちもそうだし。

大きくなったときに、いざとなればCEOを外からパッと引っ張ってくるとか。もうすべてのグローバルカンパニーを作るフルセットが用意されてるんですよね。だから、「大量に打席に立ち、ちょっとでも芽があるところに全員プロたちが集まって、一気にグローバルカンパニーにする」というモデルがもう(できている)。体制が整ってるというのはやっぱり強いんですよ。

日本は5年前にはまったくなかったんですけど、本当にここ1〜2年で徐々に。僕も個人で投資家やってますけど、徐々に増えてきたかなと思ってます。

日本にAppleやGoogleが生まれない理由

赤坂優氏(以下、赤坂):僕も最初に「お金」だと思ったので、同じなんですけど。ただ間違いなく、さっき小泉さんが「2周目」と言いましたけど、今、業界的に2周目感があるんですよ。

2周目って、みなさん意味がわからなくないですか? 「何が2周目なの?」と思いません? 何が2周目かというと……今、確実にお金持ちが増えてるんです。

要は、僕もM&Aによって、お金を持ったんですよ。お金を持ったということは、今度はお金の使い先が必要になってくるので、インターネット業界とか起業家を応援することにつなげていく。そうすると、またその人たちが成功するんですよ。それで、お金が動く。そうなっていくと、二乗でお金持ちが増えていくと。お金持ちが増えていくと、サポート体制ができあがっていくという話を今お二人がされてたわけですね。

なので、2周目というのを3周目にしていかなきゃいけないし、4周目にしていかなきゃいけないので、みなさんがたぶん3周目とか4周目に登場してこなきゃいけないというのが、今一番重要です。それが、(日本に)AppleやGoogleが生まれない理由ですね。本当にそうだと思う。

あとは、もう1個あるとしたら、本当に国のサポートだと思います。例えば、シンガポールと日本はまったく違うし。それこそフィンランドみたいな産学協同とか、まだそういうところもないと思うので。

日本という国自体がもっともっとインターネット産業を通じて、イノベーションを起こして、国策として「でかくなっていこう」というのが変わっていくと、たぶん一つひとつ変わっていくんだろうなと。それがたぶん、ちょっとずつできてる。例えば、福岡市などが少しずつ変わってきたりもしてるんで。そういうものの繰り返しなのかなと。

敷かれたレールを歩くより、レールを敷くほうの人生に

琴坂:なるほど。そろそろ時間になってしまうんですけれども。この3周目、4周目を行く未来のグローバルな起業家に、ひと言応援メッセージをいただいて締めたいと思います。いかがでしょうか。

小泉:じゃあ、僕から。みなさん3年生、4年生ですよね。さっき言ったように、僕はみなさんの頃はほとんど成績「可」で。(入学したのが)指定校推薦だったので、卒業しなきゃいけないので、ギリギリ取りまくってたという。本当に勉強してなかったんですね。

僕が一番最初に入った会社が、実は大企業なんですよ。金融、投資銀行なんですけどね。僕は投資銀行で3年半、ディー・エヌ・エーとかミクシィとか。けっこう名だたる企業のIPOだったり、ファイナンスのアドバイザーをやっていて。

そこで、大企業のなかでいくという人生が見えすぎちゃって困ったんです。当時、郵政民営化とかやっていたので。そこでサラリーマン人生が見えたときに、「これはもうやばいな」と思って。未来を、敷かれたレールを歩くんじゃなくて、レールを敷くほうの人生にやっぱりいきたいなというのがあって、そのあとミクシィに入ったんですけれども。

グローバルという話も大事だと思うんですけれども、その前に一個人として、未来を自分で切り開く力を強く持ってほしいなと思っていて。その先に日本制覇もあれば、グローバル制覇もあるということなので。

まず、自分の突破力をどこまで磨けるかというところに、卒業含め、これから2〜3年注力してもらえると、けっこう今ぐらいの年代だとすごく吸収力も強いですし、いろんな学びのなかから突破できることもあるので、トライしてほしいなと思ってます。どうもありがとうございました。

琴坂:ありがとうございます。

(会場拍手)

英語とエンジニアリングの重要性

千葉:今日いろんなお話が出たので、逆に出てないところを2つお伝えしたいんですけど。英語を学んでおいてください、やっぱり時間がかかるので。短期集中でもいいから、とにかくしゃべる。

たぶんみなさん、書いて読むことはできるんですよ。日本人のなかでそこそこ学歴も高いのでできるんですけど、やっぱりしゃべるというところにヘジテーションがあると絶対にダメなので。

実は僕も英語ヘタなんですけど、この1年ちょっとがんばって、ぜんぜんもうしゃべる、しゃべる。学内にもいっぱい留学生いるはずなんで、日本語でしゃべらず英語でしゃべるということをとにかくやり続けて。

普通にブロークンでもなんでもいいから、自分の考えていることを伝えられるところをまったく意識せずにできるまで頑張ってください。これが1点目。

2点目はエンジニアリング。たぶん、ここのみなさんはほとんど……。エンジニアの人います?

(会場挙手)

いいね。残りの人、ぜひエンジニアリングやってみてください。C言語でもPHPでもRubyでもなんでもいいです。身近の今、手を上げた人をナンパして「教えてください」でもいいです。とにかく、インターネットがどうやって動いているのかというのをしっかりと勉強してください。

自分で試しになにかやったときに、「お前、何できるの?」と言ったときに、「プログラム少し書けます」と言ったら、インターンシップだろうがなんだろうが、たいがいのことは受け入れてくれます。

逆に、何もできない人間で「やる気だけはあります」という子は取りません。だから、エンジニアリングをやったほうがいいです。そこは文系・理系関係ないです。インターネット業界で活躍したいんだったら、ぜひやってみてください。以上です。ありがとうございました。

琴坂:ありがとうございます。

(会場拍手)

Google、Appleというエベレストを超えるために

赤坂:千葉さんが明日から使えるという感じのことだったので、もうちょっとアバウトかもしれないですけど。僕も小泉さんと一緒で、学生のとき何もしてなかったので。今思うのは、時間が愛おしいというか、ないこと自体がすごく反省点としてあります。まあ、後悔してます。

25歳で会社を始めたので、25歳で社長って、それでも若いかなと思ってたんです。でも、今(中川)綾太郎なんて27歳でしょう、「MERY」の社長で27歳ですよ。僕もう33歳ですからね。なので、もうどんどん若くなっているということを考えると、みなさんがもうすぐ3周目、4周目と言いましたけど、3周目にたぶん立たなきゃいけない年齢なので。「今、授業受けてる暇ないぞ」というのが、僕が一番言いたいことです。

といったときに、「じゃあ、やろう!」と思ったときに、いきなりコロプラ作れるかといったら、そんなビジョン見えないじゃないですか。そうなったときに、僕がいいなと思ったのが、今回IVSに来て(メルカリCEOの山田)進太郎さんとも話したし、KLabの真田(哲弥)さんの話も壇上で聞いていて、結局みんな(会社が)小さいときは景色が見えなかったんですよね。なので、今からAppleが見えるはずもないわけですよ。

メルカリの進太郎さんの(話で)一番いいこと言ってたと思うのが、まあ、社長さんですけど「グローバル、最初から見据えてたみたいな話してましたけど、本当に見えてた?」というような話をしたら、「いや、ぶっちゃけメルカリやる前は見えてないよ、まったく」みたいな。

メルカリがなんとなく伸びてきたから、海外本当にいけるなと思ったし。海外でダウンロード数伸びてきたから、『Snapchat』ぐらいだったら、捉えられるんじゃねと、ぶっちゃけ本気で思ってきたし。『Snapchat』捉えられるなら、Facebook、Googleでもいけんじゃねと思える気がする」と言っていたので。結局、改善なんですよ。

1段あがらないと、1個あがらないと、そのステージから見えない。もう1個あがって初めて富士山ぐらいになるのかな? エベレストなんですよ、AppleとかGoogleとかは。

なので、そこにいくには1個ずつ山を制覇していかなきゃいけないというのが、一番若い人たちには重要です。山の制覇には時間がかかるので、1日でも早く山を登ることに進んでいったほうがいいかなと思います。

琴坂:すばらしいね。ありがとうございます。さて、もう(プログラム終了)時間になってしまいました。みなさん、はるか遠くに見えたかもしれませんが、少しずつでも山を登っていくということが大事です。まずは、とりあえず単位はとってください。最低限すべきことをして、上を見ながら歩き続けてください。ありがとうございました!

(会場拍手)