働きがい重視のキャリアカウンセラー錦戸氏

渡辺温子氏(以下、渡辺):ここからは錦戸さんのプロフィールをご紹介させていただきたいと思います。

錦戸かおりさんは、キャリアカウンセラーでいらっしゃいますが、コニカミノルタさんで4年間秘書業務に従事された後に、1990年から正社員の転職を支援するコンサルタントとして働き、その後、独立をされています。

現在は、企業が中途採用を行う際のコンサルティングなどをされています。主に社会人女性を対象としたキャリアカウンセリング、企業内でのキャリア面談、キャリア開発支援などを行っておられます。やりがい・働きがいを重視したキャリアカウンセリングを得意としていらっしゃいます。著書などもございます。

働く女性が35歳の壁を乗り越えるためのヒント

では、錦戸さんよろしくお願いいたします。

錦戸かおり氏(以下、錦戸):今ご紹介いただきました、カウンセラーをしております錦戸かおりと申します。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

自己紹介をさせていただきますと、まず先ほどご紹介いただいたように、私が入社したころは小西六写真工業という古い会社でしたけど、今のコニカミノルタさんに入って、その後1990年から主に女性のキャリアに関わる仕事をしております。

最初は人材紹介会社のコンサルタントから始まって、13年ほど企業に人材を紹介する仕事をした後で、お一人おひとりの希望や相談を聞く仕事をはじめて、早いもので25年ほど経ってしまいました。

そんないろいろな方のご相談をもとにして、派遣法の改正が、これからのみなさんにどのように関わってくるか? 派遣法のみならず、これからのみなさんがどのようにキャリアを築いていくのか、ヒントになるようなお話をしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

参加者が派遣社員として働く理由

みなさんにお話をうかがいたいんですけれども、今日参加していらっしゃる方で「今まで派遣スタッフで働いたことがない」、あるいは「半年ぐらいしかまだ経験がない」という方、いらっしゃいますか? 

なぜこれをうかがうかというと、同じグループで固まっていると、情報交換をするときに情報が減っちゃうかなと思って。大丈夫ですね。ありがとうございます。

それからもう1点、今日ここに書かれていますが、みなさんはどんなニーズでいらしたかなというのを知りたいので、質問をさせていただきたいと思います。派遣を利用されてらっしゃる方は、いろんなご希望があって派遣のシステムを使ってらっしゃると思うんですけれど、だいたいこの3つに分かれるのかなと思います。どのタイプに自分が入っていらっしゃるか、教えていただきたいと思います。

まずAのタイプ。派遣をしながら正社員を目指していらっしゃる。

それからBのタイプが、子育てで時間制限があったり、さまざまな職場で仕事体験をしたいという希望から派遣システムを利用している。

それからCが個別の事情。例えばフリーで、結婚式の司会をやられている方とかがいらっしゃるかと思うんですけれども。フリーの仕事をされるにあたって、経済的な補填の意味で、派遣をされてらっしゃる方。だいたいこの3タイプに別れるかな。もしかしたら違う方もいらっしゃるかもしれないんですけど、手を挙げていただけるとうれしいです。

まずAのタイプの方、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。Bのタイプの方?

(会場挙手)

はい、ありがとうございます。Cのタイプの方? 

(会場挙手)

ありがとうございます。今回はわりと3タイプに分れそうですね。ありがとうございました。

派遣会社は本当に直接雇用を勧めてくれるのか?

そうしたらまず最初に、派遣法改正を考慮した派遣会社の選び方、興味津々だと思うんですけど、こんなお話をしたいと思います。

先ほど渡辺さんから、派遣法がどんなふうに改正されたかということをご説明いただいたんですけれど、みなさんにとってすごく働きがあるのはこの2つかなと思います。

一つ目は、雇用安定処置。本当に直接雇用を勧めて推してくれるのか? それから企業さんが直接雇用が難しかったときに、すぐに次の派遣先を提供してくれるのか?

それからもう1点が、キャリア支援ですね。研修やキャリアコンサルティングをしっかりしてくれるのか? どんな内容の研修があるか? キャリアコンサルティングもいろんな質のものがありますので、質の高いキャリアコンサルティングをしてくれるのか? そんなところがすごく問題になると思います。

でも残念ながら……。今日こういうお話をしたかったんです、本当は。「こういうふうに、こういうところを見て、チェックをして派遣会社を選びましょうね」って、みなさんにお話をしたいんですけれども。残念ながらまだ情報がないんですね。

私も昨年10月に改正になってから、派遣会社の方に、実際どうなのか、いろんな人に聞いてみました。そうしたところ、返ってきた答えが「今、必死でどうするかということを検討中です」とか、研修などを「一生懸命どのように何を揃えるかを、今、企画中です」とか。残念ながらそういう回答なんですね。

そうなってくると、「なかなかここを見て選びましょうね」ということを、ご提供できないのが私もすごく「難しいなぁ」「悔しいなぁ」と思いました。

それで、みなさんも期待していらっしゃる通り、実際にこれからの派遣会社がちゃんと考えて、そういうサービスを提供してくれることが一番望ましいです。

「がんばってくださいね」って派遣会社の方に、私もお願いをしているんですけれど。ただ、どうですか、みなさん? 雇用安定処置、直接雇用を勧めてくれるかどうかというところ、かなり期待している方はどれぐらいいらっしゃいますか? 期待しますよね。あまり期待していない方もいらっしゃいますか? どうなんでしょう。期待できないな、って感じですかね。

本当に派遣会社が、取引先の企業さんにきちんとそれを勧めてくれるような力を持ってくれるのが一番望ましいです。

ただ、「本当にそれをやってくれるのかな?」「そこまで力をつけられるかな?」というのが残念ながら私はすごく心配です。

自分で自分を幸せにするという意識

それからもう1つは、ここ(スライド)にも書いたんですけれど、どんなに派遣会社が力をつけたとしても、景気が悪くなると、雇用、求人自体が減ってしまうので、本当に派遣会社がどんなにがんばっても無理という状態になってしまう可能性があるんですね。

それなら「どうしたらいいの?」というところで、これからがんばっていかなければいけないのは、自分がどんな状態になっても、自分がちゃんと自分のある人間になっておかなければいけないなというのが、難しい問題だと思います。

そんななかで、派遣会社を選ぶ材料を今、なかなかまだ整ってないとか、景気が悪くなった時のことを想定して、「じゃあ、どうするの?」と考えるときに、みなさんに意識しておいていただきたいのが、まず1つ目は、自分の幸せは自分で守ることです。

どうしても、「どうにかして」と人に頼ってしまいたくなるんですけれども、やっぱり自分で自分を幸せにするという意識を持っていただきたいなと思います。

それから、これからは、自分で自分の仕事を守っていく。これはもう派遣社員さんだけではなくて、正社員も同じだと思います。自分の方向性に合ったスキルアップをしていきながら身を守る。この2つを意識していただきたいなと思います。

「じゃあ、そのために何をするの?」というお話をこれからしたいと思います。自分で自分を幸せにするために、何ができるか? まずみなさんが、ご自分が何を望んでるかって、お話できますか? 

なぜ、派遣で働こうと思っていますか? なぜ、派遣で働きたい? そう選択をしていますか? 将来的に、どうありたいと思っていますか? どうですか?

自分が望むものを理解していますか

なぜこんなことをみなさんにご質問したかと言いますと、例えば派遣会社の体制がこれからどんどん整ってきたときに、自分が何を望んでるかということがわかっていないと、なかなか派遣の営業さんに言えなくて、どうしても派遣の営業さんの言いなりになってしまうケースがあります。

私は1万人ぐらいの方のキャリアカウンセリングをしているんですけれども、けっこう多くいらっしゃるなと思います。

派遣会社の営業さんは、いろんなタイプの方がいらっしゃいますけれど、わりと押しの強い人が多いんですよね。「これしか今ないんですよね」と言われると、どうしても、「じゃあ、しょうがないかな」というかたちで、その流れに乗ってしまうというというケースがあると思います。

流れに乗っちゃいけないわけじゃ、ぜんぜんないです。なかなかほかの選択肢がないときは、流れに乗っていくことも必要だと思います。

ただそこで、「本当はこうありたいんだ」ということをわかっていて、勧められたものを受けるのか、それとも自分の希望がわかっていなくて、その営業さんが言われたことに乗るのかによって、結果はぜんぜん違ってきます。

自分の希望がちゃんとわかっていれば、例えば「次こういうのが出てきたときに、絶対声かけてね」と、持ちつ持たれつというんですかね、たまに恩を売るというんですかね。そういうことが言えて、営業さんにあらかじめ希望を出しておけますけれど、自分が何をしたいかとか、どうありたいかとかが、わかっていないと、そういう取引がとてもやりづらくなる、やれなくなるんですね。

なので、自分のことを知っていてほしいなと思います。それから自分のことがわかっていると、自分にとって必要なスキルを得るための研修を、これからは派遣会社も、ちゃんと研修を実施しないといけなくなるんですね。

そのときに「この研修は自分にとって受けておいたほうがいいぞ」って選ぶことができます。そのためにも、自分がこれからどういう生き方をしたいのか、どういう方向性で生きたいのか、ということをちゃんと知っていただきたい、作っていただきたいなと思います。

専門的になりますけどね。こういう「自分を知る」ということを自己理解と言います。自己理解を深めていただきたいなと思います。

自己理解しているとチャンスをつかめる

では、自己理解で生きていると、どんないいことがあるのか。

まずチャンスを逃さないです。みなさん、こんなことはありませんか? 友達から、「こんな求人が出てたよ」「うちの会社でこんな求人があるけど行ってみたら?」って言われたときに、「どうしよう、どうしよう、どうしよう」と言ってる間に、そこが終わっちゃったというケースないですか?

自分のことを、わりと「こういうことがやりたいんだな」とか、「こういう方向を目指してるんだな」ということがわかっていると、なにかチャンスがあったときとか、情報が来たときに、ピュッてつかむことができます。

でもそれを知らないと、そのままツーっといっちゃうんですね。なので、いっつもいっつも考えている必要はないけれど、今回みたいにこういう会議に参加してくださったということは、みなさんもきっとなにか節目にある方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

そんなときに、「ご自分がどういう方向性を考えているのか?」とか、それから「どういう人生にしたいのか?」というのを、深く考えてみたらいいなと思います。

それから、自己理解する上で、仕事に不満があるときに、何が嫌なのかということを一度きちんと考えておいたほうがいいと思います。

仕事への不満、その原因を理解していますか

自分がやりたいことと方向性が違うから嫌なのか? それともなにか適性が合わないと思うから嫌なのか? それとも環境が合わないと思うのか? 今、お仕事をされていらっしゃる方であれば、今、自分がどんなふうに感じているか? 「方向性合ってるかな?」「適正合ってるかな?」「環境合ってるかな?」、そのチェックをしてみてください。

そこでなにか合わないものがあったら、「じゃあ、次はこんなことを希望してみよう」ということを考えてみてください。

ここがちゃんとわかっていると、希望が言いやすくなりますね。ここがわかっていないと逆に、希望が言えないので、流されてしまう可能性がありますね。

「なんとなく今の仕事が嫌なので、変えてください」と言っても、言われたほうは何を変えてあげていいのかわからないんですね。なので、腕の良い営業さんでも、そこまではなかなかわかってあげられないケースが多いので、できるだけ自分の希望は言葉にして、具体的に言ってあげると、頭の中に入れておいてもらえる可能性が高くなります。

特に正社員を希望されていらっしゃる方については、ここがわかっていると、正社員になったときにミスマッチがかなり少なくなります。

逆にここがわかっていないと、会社に入ってから、「こんなはずじゃなかった」と思うケースがとても増えるので、この辺はきちんと押さえておいて欲しいなと思います。

日記は自己理解のために有用なツール

それから次、「じゃあ、その自己理解ってどうやったら深められるの?」。自己理解を深める方法。

よく適職フェアとかがありますよね。そういうところで適性検査を受けてみるとか。そうすると自分がどういうポジション、円グラフとかがいろいろ出てきますけれども、どういう人かを客観的にグラフが示してくれたりするので、それでよく自分のことを知る。「あっ、こんなところが欠けているのかな」ということかわかりますね。

それから日記をつける。日記をつけてる人いますか? みなさんに言いながら、私はつけてないんですけどね(笑)。

日記って書いたものをあとから見て、「あっ、私こんなことを考えていたんだな」「私はこんなふうに成長しているな」というのを、客観的に見ることができます。なので、日記はかなり自己理解を深めることに役立つと思います。

それから次は、職務経歴書を書いて、キャリアの棚卸しをする。これはやったことがある方が、いらっしゃるんじゃないかなと思いますね。

深くやる場合、できるだけ詳しく今までやったことを書き出して、ラインマーカーで色分けすることをお勧めします。

どういう色分けかというと、例えば好きな業務と嫌いな業務を赤と青のラインマーカーで引いてみてください。若干好きでも得意じゃなかったりとか、嫌いでも実は得意だったりとかするものがあるので、得意・不得意の印をボールペンかなにかでアンダーラインを引いてみてください。

それをすることで、これも客観的に、「あっ、私ってこういう業務が好きなんだな」ということが見えてきます。

そうすると、例えば私の場合ですが、「私はサポート業務が好きなんだな」とか、「なにか言われてやることよりも自分で考えてやる仕事が好きなんだな」と。そういうことが、客観的に、整理して見えてくる可能性が高いです。

そのときに1つ注意していただきたいのは、環境が自分にとってよかったところと、悪かったところというのを、1つ視点として持ってください。

なぜかというと、例えば、「この仕事すごく好きじゃなかったんだよね」と思うところでも、後からよく見てみると、環境が合わなかっただけで、実は業務としては好きだったという可能性もあるんですね。

逆に環境がすごくよかったけど、実はここの仕事自体はあまり好きじゃなかったな、とかということもあるので。

なので、職場環境と業務内容は、少し分けて考えてみると、より深まると思います。

キャリアカウンセリングで自分の強み弱みを知る

それからもう1つは、キャリアカウンセリングを受ける。連合さんの配布資料の中にも「キャリアカウンセリングが無料」と書いてありますけれど、ぜひ受けていただきたいと思います。

これからはみなさんが希望すれば、派遣会社でキャリアカウンセリングやキャリアコンサルティングを無料で必ず受けられる権利を持っています。

なので、ぜひぜひ受けていただきたと思います。

キャリアカウンセリングも、本当に自己理解を深めるすごくいいもので、例えば私がキャリアカウンセリングをやるときに、職務経歴書を書いていただいて、そこの自分の強みとか、弱いところを知るというキャリアカウンセリングのセッションをすることがよくあります。

こんなかたちで、自分を知るという意味でも、キャリアカウンセリングは使っていただくといいなと思います。

では、これからみなさんにやっていただきたいのは、「ご自分のことをどのぐらい知ってますか?」というお話をしていただきたいと思います。

2人ずつペアになってお話しいただきますが、その前に、自分がどんな5年後を考えているか考える時間を作りますね。時間を3分とりますので、このテーマを、5年後の自分を、どんなふうになっていたいか? どうなりたいか? 考えていただけますか? お願いします。