国産初のステルス機「先進技術実証機」

堀潤氏(以下、堀):さぁ、高橋さん。テーマの発表をお願いします。

(テーマ「『心神』国産初のステルス機 報道陣に公開 将来戦闘機は国産か日米共同開発か」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):防衛装備庁は昨日、国産初のステルス機「先進技術実証機」を愛知県の三菱重工小牧南工場で公開しました。防衛省は日本独自の技術を活かした戦闘機開発を目指しており、実証機は来月に初飛行を予定しています。 

:実証機の詳細ですが。

全長がおよそ14メートル。全幅およそ9メートル。機体は三菱重工業です。日本のかつての戦闘機と言えば三菱重工。エンジンはIHIが製造しています。開発は2009年度から始まり、開発費用はおよそ394億円。

レーダーに映りにくいステルス性の航空機の飛行が成功すれば、アメリカ、ロシア、中国に続いて世界で4ヵ国目となります。

今後の予定なんですが、今月末の地上滑走試験を経て、来月には愛知県の名古屋空港から岐阜県の航空自衛隊岐阜基地までの初飛行を行うと言います。

3月に実証機を引き受ける防衛装備庁は、今年度に飛行試験を行って、レーダーへの映りにくさ、機動性などのデータを蓄積する予定だと言うんです。

(名古屋に)行かれてきたそうですね。

日本がステルス機を作る目的

高橋浩祐氏(以下、高橋):昨日、三菱重工の「名航」っていうんですね。名古屋の三菱重工の製作所。名航というと、戦時中ですとゼロ戦(零式艦上戦闘機)ですとか、『風立ちぬ』の堀越二郎さんが出てくるあそこのところですね。

昔の技術研究本部という防衛省の組織の中で、愛称として「心神」という言葉で言われていて。心神とはどういう意味かというと、近代画家の大家と言われる横山大観が、日本の魂という意味で心神という言葉を使っていて。

:横山大観さんからきているんですか。

高橋:横山大観は、心神を富士山をイメージして使っていたんですね。そういう意味で、日本の技術の結晶みたいな。堀越二郎の世界です、まさに。

これを何のために作っているか。

いろいろあるんですけど、私が聞いた中では、今日本にレーダーサイトというのは28カ所あるんです。北は稚内から南は宮古島まで。

日本がステルス機を持っていないと、中国とかロシアとかみんな持っている中で、日本にちょろちょろやってくるんですよ。自分のところもステルス機を持っていないと、防空体制がチェックできないじゃないですか。だから、こういう自分のところで。

:抑止力だということですか。

高橋:実証機を作ってテストするためにも必要だと、私は航空自衛隊幹部から聞いたことがありますね。

実際にスクランブル、日本の領空に侵犯するような海外の国籍不明機含めて、2000〜2015年までに、来た数がこんなに増えているんですね。2015年は12月までしか入っていないので、1〜3月期入っていないんですけど。

:とくに2014年、943回ということで。1,000回に近づき、2015年度はまだ途中。3四半期までで567回。

高橋:とくに最近は、中国が多くて。ちょろちょろ防空識別圏へいきなり立てたりとか。そういうので、日本もステルス機を持っていなければいけないと。力の空白があるときには、どうしても野心を抱く人がいますからね。水爆、鍵括弧付きですけどね。ああいうリーダーもいますから。油断はできないと。

各国の戦闘機の開発状況

主要国はどういう戦闘機の開発状況になっているかというと、中国はすでに初飛行をJ20というやつでやっています。このほかにも、J31というのも公開しています。

今そのほかに、アメリカとかフランスとかイギリスとかは、無人ステルス戦闘機の飛行を終えているんです。将来、さっきの心神は有人ですけども、有人じゃなくて、近い将来、心神を土台としたF3という戦闘機ができている頃には、有人の争いじゃないかもしれない。

:そうでしょうねぇ。

高橋:韓国もステルス機をやっています。インドもステルス機をやっています。日本は主要国のロシア、中国、アメリカと比べると遅れているなという感じはしますね。

:なかなか自国だけで作らない、作ってこない国ですからね。

荻原:使えないオスプレイ買うよりは。あれ、3,200億円ですよね。こっちのほうが、まだ使えますよね?

高橋:今回、心神を作るためには、部品メーカー、日本含めて220社のパートナーから供給を受けて。その内の約9割が国産だと言っていました。

自衛隊が保有する戦闘機の内訳なんですけども、F-15が201機、F-4が55機、F-2が92機。

F-15が今中心なんですけど、F-4はベトナム戦争のときから使われているような戦闘機で、退役がどんどん始まっていますね。

F-2というのが1980年代・1990年代、日本が国産でやろうとしたら、アメリカが横槍入れて、共同開発になっちゃったんですよ。アメリカとしては日本でこういう技術持たれると困ると。共同開発にして、日本の素材とかレーダーとか、ああいう良い部分をアメリカが一緒にやることで取ったという部分があるんですね。

金銭面・技術面の課題

今回、将来F-2の代わり、2030年代にF-3というのを配備しようとしている。それは、ステルス性を備えたもの。それをする際に、日本だけでやりたいと。ただし、4兆円とかかなりのお金を使う。今、日本はすごい借金じゃないですか。

なおかつ、技術的にできるかどうか。とくにF-2のときは、日本はエンジン技術がなくてできなかったんですよね。今回、そういうのを跳ね除けて、お金の面でも技術的にもできるかどうかというのが1つ。

:なるほど。

高橋:それから、ステルスというのは、アメリカとか絶対に教えてくれないんですよ。独自で開発しなきゃダメ。日本が「アメリカの施設でステルス性の試験をやらせてくれ」って言ったら、アメリカ断ったんですよね。日米同盟あるのに。

:ということは、防衛費も今5兆円超の予算が概算。日本のこの方針というのは、高橋さんとしては、正しいと。

高橋:個人的には、こういう技術が発展することで、炭素素材とかセラミックとか、日本のいい部分が民間企業にスピンオフするんで。

:なるほど。

高橋:国産でやってほしいんですけど。ただし、予算的には日本の財政は厳しいんで。

:どこまでお金をかけ。

萩原博子氏:オスプレイ17機は止めて……3,200億円ですよ。あれをこっちにしたほうがいいですよね。

:あと用途がね。オスプレイとこのステルス機では、若干違うというところもありますけれどもね。自国できちんと技術を持っておいて。だからこそ。

高橋:そうなんですよ。

:交渉がいろいろ優位に進めたりとか、技術を高めたりとか。

高橋:価格のバーゲニングパワーになりますからね。

:みなさん、注目してください。