次の世代にコミットすることの義務化が必要

荒川和久氏(以下、荒川):今、日本の男性の生涯未婚率は20パーセントなんですが、これが2035年には30パーセントになると言われていて、3人に1人の男性は結婚しない時代になります。もはやマジョリティと言っていいくらい人口ボリュームが大きくなっているんですけど、こういう、いつまでも結婚しない男たちに対して、率直に青木さんはどんな感想をお持ちですか?

青木俊介氏(以下、青木):僕の周りにもいっぱいいますけど……。子供は作った方が良いと思いますけどね。別に結婚しなくていいから、子供を作るか養子を取るか。

たぶん少子化というのは最大の課題だと思うので、そこにみんなでコミットするというのは必要だと思いますね。子育てとか、野球クラブの監督するとかでも良いと思うんですけど、次の世代にコミットするというのは義務化する必要があると思いますね。

荒川:いまおっしゃったような、自分の子供は産まなくても誰かの子供たちを育成する役割を担うという考え方って、江戸時代の町民はそうでしたよね。長屋の中でみんなの子供をみんなで育てるというか。

青木:僕、そういうのが一番理想だと思います。今だとワンルームマンションとか1人用家電とかが充実しすぎてますよね。1人は気兼ねないから楽っちゃ楽ですけど、でもそれによって単身世帯がタコツボのように分かれて、人同士の壁がすごく厚いというのは誰も幸せになっていないと思うんですよ。コミュニケーションが取れていないというか。昔の長屋的な感じだと思うんですけど。そういう世の中になっていかないと……。

家に帰った時くらいは1人になりたいソロ男

荒川:ソロ男の問題として、誰かと生活するのがストレスで、家に帰った時は1人になりたいというのがあるんですね。別にそれはコミュ障なわけではなくて、会社ではちゃんと仕事はするし、コミュニケーションもとれるし、友達もいるんですね。ただ、家に帰った時くらい1人になりたいみたいな。

だから今シェアハウスって昔の長屋的な感じがありますけど、ああいう所に住める若者たちは結婚できる人たちなんですよ。誰かと一緒の生活が苦にならないわけですから。でも結婚しない男とか女はシェアハウス自体が嫌いなんですよね。「なんで家に帰っても他人がいるの?」と。

青木:あっはっは! そうなんですね。

荒川:意外に知られていませんが、日本は実はものすごくソロ国家なんです。単身世帯数でいうと日本は中国、アメリカに次いで世界3位ですからね。そして、20代から50代の未婚者では男の方が女より300万人も多いという男余り現象になっています。

中国でも男余り現象が進んでいて、人口が14億になろうとしているなかで将来的には5000万人の男が余ると予想されているんですって。もはや一国分ですよね。韓国とかと同じ人口ですよね。男だけが余っているんですよ。全世界的にも、男だけが億の単位で余るという状況になっていて、これどうするの?ということなんですよね。

青木:そうなんですね。おもしろいですね。

江戸時代も男余り現象が起きていた

荒川:先ほども言いましたけど、江戸時代の江戸も男がかなり余っていて、女性の倍いた時期もありまして。

青木:そうか! 参勤交代で全国から男が集まってくるから。

荒川:そうですね。武士だけじゃなく、町民も一旗あげに江戸に集中したんですよ。そうすると男だけが余るんですけど、逆にそのおかげで吉原や浮世絵といった文化ができたという見方もできるんです。ある意味文化って、そういう本能や欲求を刺激したり、遊びの中から発生するものじゃないですか。

それでその後、男余りが続いたかというとそうではなくて、やがて男女の人口が同じに落ち着いていったんですよ。淘汰されたわけですよね。そしてみんなが結婚する明治時代になった。江戸時代のソロ男たちは、子供を残す代わりに、そういった文化を生み育てて役割を終えたみたいな……。

青木:なるほどね。当然、自由な時間があればいろいろな文化が発展するじゃないですか。ニューヨークの『セックス・アンド・ザ・シティ』もまさにソロの話ですよね。

ソロ男は消費で幸せを感じている

荒川:ソロ男たちって1人で暮らしていて、彼女も7割はいないわけですけど、そうすると「結局孤独でしょ?」とか「不幸なんでしょ?」という目で見られがちなんですよね。でも、この人たちって不幸でもなんでもなくて、自分の趣味に没頭していて、何に幸せを感じるかというと、消費で幸せを感じているんですよ。

いわゆる奥さんとかお子さんがいたときに感じられるであろう「承認欲求」とか「達成欲求」を消費によって得ているので、実は寂しくない。あと、今はネットがあることで見ず知らずの人と繋がれる時代になっているので昔ほど孤独感を感じないというのもあります。

そうなってくると「孤独でもないんだから結婚しなくてもいいよね」となってきていて。この未婚率の急激な上昇って、インターネットの普及もそうですけど、やっぱりテクノロジーの進歩と密接に関係があるんだろうなと思うんですよ。1990年くらいまでは男の未婚率もそんなに高くなかったですからね。

そう考えた時に、テクノロジーの進歩は今後どう彼らと関与していくのかな、と。ソロで居続けることに対する満足感を与えるのか、ソロでいることから家族みたいなコミュニティに向き合う方向へ誘導させられるのか、それはわらかないんですけど、何らかの形でテクノロジーって関与してくるんだろうなと。

青木:それはそうでしょうね。

荒川:エロ話で言えば、漫画『ルサンチマン』みたいな世界もあると思うんですけど、これ意外と深刻な話で、全世界的なこの男女比のゆがみを考えたときにこの性の問題って無視できないよねというのもあるし。

青木:まあ、そのあたりはDMMさんが頑張ってくれているから割と大丈夫なんじゃないですかね(笑)。

子供を見守るBOCCO

荒川:はい(笑)、そうですね。その御社が作っているものって、コミュニケーションをするためのツールじゃないですか。ああいうかたちのコミュニケーション、直接人と会わなくてもコミュニケーションが取れるというのは、1つの未来のかたちとしてあるなあと思うんですけど、そのへんの話とかうかがわせてください。

青木:家族用のBOCCOはスマートフォンと連動していて、例えば誰もいない家に帰宅した子供と外出先の親がメッセージのやり取りができるロボットで、子供を見守ってくれるコミュニケーションツールです。

これがまずセンサーになっていまして、誰かが返って来た時に、ドアが動くとスマホに通知を送ってくれます。なので、例えば家族が返ってきたことがわかるとか。

荒川:こっち(センサーの方)が家にあるんですか?

青木:ロボットが家にあります。ロボットとセンサーがセットになっているんですね。センサーが動くとロボット経由で、これがWi-Fiに繋がっていてスマホに情報を送ってくれるんです。さらにここから専用のアプリがありますので、これでメールを送るとロボットが読んでくれるという機能があります。

スマートフォン使える人はいいんですけど、スマートフォンを使いづらいというお年寄りとか渡したくないという子供の世代では、そういうコミュニケーションロボットが活躍できるところがあるんじゃないかなと思っています。

あとは、スマートフォンはあくまで個人のためのメディアなので、家族とか複数人が一緒に住んでいる時に、みんなが別々のスクリーンを見ているとなるとコミュニケーションを阻害してしまいますが、ロボットの場合はしゃべったことが皆に聞こえるので、複数人がいるような場所では音声のインターフェースの方が向いているんじゃないかなと思っています。

こういう風に「冷蔵庫にカレーがあるから食べてね」って伝言を送ったりとか。

荒川:これはLINEでつながって文字でやりとりすることとは違うんですね。

青木:LINEと同じ使い方ができるんですけど、読みあげてくれるので子供とかお年寄りも使えるのが売りになっています。

荒川:返事もできるんですか?

青木:はい、ここで録音ボタンを押して「もしもし、カレー美味しかったよ」というと、これがスマホに届きます。これを文字にするっていう機能も今月リリースを予定しています。BOCCOはこういった機能がありますね。

おひとりさま用ロボット「iDoll」を開発中

青木:実は、おひとりさま用のも作っていて、博報堂monomと共同開発した「iDoll」という踊るやつですね。これは完全おひとりさま用というか。家に帰ってきてドア開けた時に「おかえり」と言ってくれたり。

荒川:これは、会話ロボットではない?

青木:会話ロボットではないですね。歌って踊ってくれたり、ニュースをしゃべってくれたり天気予報を喋ってくれたり。Pepperは会話をメインにしていますけど、そこは違いかなと思っていますね。あくまでコマンドなので自由な会話はできないんですよね。決まった問いかけには答えてくれるので、ロビと同じような。

荒川:これはもう発売されたんですか?

青木:発売に向けて準備中という状態ですね。まだ商品化の予定は決まっていないです。

本当はペットを飼いたいけど飼えない人の需要

荒川:今後、いわゆるペット的なロボットの未来はどうなっていくと思いますか?

青木:いや~、ニーズはすごく増えるでしょうね。というのもうちの親が実際そうなんですけど、今犬が死んじゃったばっかりで、また犬飼うとなると、もう高齢ですからこれから10年先、20年先自分たちが生きているかもわからないし、死んだ時も辛すぎるから、生きている犬は飼いたくない、ロボットの犬が欲しいってすごく言っているんですよね。

荒川:うちの母親も全く同じこと言っていますね。ロボットとまではいかないんですけど、寂しいんだけどもう生の犬猫は飼いたくない。自分の方が先に逝っちゃうので、すごく欲しいけどもう飼えないって嘆いてました。そういうジレンマはあるんでしょうね。

あと、単純に仕事や生活の都合上でかわいそうだから飼えないという人もすごくいますよね。本当は飼いたいけど自分は飼ってはいけないと自重している人。

青木:忙しい人はそうですよね。

荒川:昔は、一軒家に住む家族で飼うペットって子供の情操教育の面がありましたけど、今はマンション暮らしだから飼えないという人もいっぱいいる。そうすると、ペット型ロボットの需要はありますよね。

青木:相当あると思います。やっぱり、「おかえり」って玄関まで来てくれるだけでかわいいですよね。そんなに高度なものじゃなくても。それはね、欲しいですよね。

荒川:スターウォーズのBB-8みたいなサポートロボットって、1人に一台付く時代になっていくんじゃないかなともちょっと思うんですけど。ああいう形状かは別にして。

青木:そうですよね。Pepperも、Pepperと会話を楽しんでいるという人はそういないんですよ。自由に動き回ったりしなくても、据え置き型でそういうロボットは必要になるのかなと思いますね。

毎朝必ず起こしてくれるとか、自分の音楽の好みも全部知っていて、かけてくれるとか。たぶん、そうですね、けっこう近い将来どんどん出てくると思いますね。そこが僕たちも一番注目しているところですね。

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