バイクのヤマハが四輪車事業に参入

堀潤氏(以下、堀):さぁ、野田さん。テーマの発表をお願いします。

野田稔氏(以下、野田):私は、「ヤマハ発動機四輪進出!?」を選びました。ヤマハ発動機といえばバイクのメーカーさんですよね。この頃は、ラグビーの五郎丸さんでも有名になった会社ですが。なかなか元気がいい会社です。

(テーマ「ヤマハ発動機四輪進出!?」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):バイクメーカーのヤマハ発動機が四輪車事業への参入に強い意欲を見せていることがわかりました。2019年にもヨーロッパ市場で小型四輪車の発売を検討しており、実現すれば、日本企業では9社目となる乗用車メーカーが誕生することになります。

:二輪の名門ヤマハの歴史と挑戦ということで。

1955年、オートバイ製造部門を日本楽器から独立させて、ヤマハ発動機株式会社を設立。二輪車を主軸にスタートしたんですが、現在の稼ぎ頭はボートや船外機などのマリン事業だというんです。

ヤマハは新しい成長戦略として、四輪車、三輪車、ロボット技術などの分野に3年間で1,300億円を投資する計画を打ち出しています。

日本の大企業が抱えるジレンマ

野田:この記事を読んだときに、「やっと日本企業も、大胆な成長戦略を始めるんだな」と思いました。

:成長戦略。

野田:成長戦略は企業にとってとても重要です。

企業には、人と同じような発展・成長の段階があります。(フリップ)左下から。最初黎明期から急成長期に入り、安定期を迎えます。

:企業の立ち上げ。

野田:ところがずっと成長してきて、上までくると「あまり変えたくない」という気持ちが出てくるんですね。

:「利益も上がっているし、従業員のスキルも上がってきた。安定してきた。出てるじゃん、利益」と。

野田:このままやりたいなと思うんですけれども、どんな企業でも点線のように必ず下がる。どんな企業でも、です。

:日本の電機メーカー見てるとね……。

野田:そこで思い切って、まだ利益の出ているうちに、赤い矢印のように1回大きく投資して。ということは、一時的に売り上げや利益も下がる可能性があるんですが、次の事業にいかなきゃいけない。

:確かに。

野田:これができないで、「イノベーターズジレンマ」に陥る企業がたくさんあります。成功すると過去の栄光にこだわってなかなか次に行けないという状態です。また同時に「ゆで蛙」状態を併発する企業も多いです。徐々に徐々に悪くなってくるんだけれども、もうちょっと待とうと思っているうちに手遅れになっちゃうなんてことがよく起こる。

富士フィルムの再生と躍進

:日本のフィルムメーカーでも、業態を変化して躍進した企業がありますよ。

野田:今堀さんが言ったのは、富士フィルムですね。昔、「写真」がくっ付いていたんだけど、取った。

あれは大変なことでして。コダックという、世界のガリバーの写真フィルムメーカーがあったんです。そこは、富士フィルムのようにうまく変えられなくて、潰れちゃったんですね。現実問題。

:昔は、それこそハリウッドにコダックのシアターがあって

野田:富士フィルムはどうやって再生したかというと、なんと化粧品事業とか、いろいろな多角化に成功したんですね。

写真フィルムで儲かっていたんだけれども、写真フィルムはデジタルカメラに押されていましたから、そこで思い切って化粧品事業に出ていったということが、成功の秘訣でした。

:富士フィルムが、化粧品って。まったくイメージつかなかったですけれども。

野田:最初聞いたときに、「なんと無謀なこと」って思った人がいっぱいいたと思うんですよ。

:「餅屋は餅屋なんだよ!」みたいに言う人もいたでしょう。

野田:でも無茶苦茶になんでも新しいことをやったら潰れちゃうんですね。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフという経営戦略に長けた経営学者がいます。

:アンゾフ。

野田:アンゾフ。彼の成長マトリクスというのがありまして。

既存の製品をこのまま展開するのか、別の技術や新製品を展開するかの軸と、既存の市場で戦うのか、新市場で戦うのかの軸があって、これで4つ、2対2のマトリクスを作るんですね。

既存の製品で既存市場で戦うのは、「市場浸透」ですから、広告を売ったりしてやる。ステイ、そのままということです。

同じ市場に新しい製品を開発する。これは、販売チャネルなんかが使えるわけですけれども、これが「新製品開発」。

:例えば、ハイブリッド車を出すとか。水素ガスの車を出すとか。同じ市場で新製品。

野田:同じ製品を新市場。海外に出るとか。「新市場開発」。

:なるほど。

野田:やっぱり、新製品で新市場を開発しなければならないのが「多角化」ということで。これは、一番リスキーなんですよ。

:そうですよね。ある意味ゼロからやるのかなと思いますよ。

野田:この多角化のなかにもいろいろとありまして。同質的な技術を使って、同質市場に行くのか、異質市場に行くのか。

:どういうことですか。

野田:例えば、先ほどの富士フィルムの話で言うと、コラーゲンの技術が写真フィルムで使われていたんです。

フィルムって、感光剤をつぶすとコラーゲンが作れますよね。そのコラーゲン技術なんですよ。

:そうなんですか。ベースにあるわけですね。

野田:なにもないと右下にある「飛び地」と言って、これは危ないんですけれども。

ちゃんと技術の同質性を守りながら、それを新しい市場に展開していったのが富士フィルムの化粧品なんです。

:ということは、富士フィルムが同質技術で異質市場。「垂直型」ということをやった。

野田:今回のヤマハ発動機のものも、技術のベースはあるわけですよ。

:ヤマハ発動機は。

野田:輪っかを4つくっ付けるのか、2つくっ付けるのかの違いであったり。

:駆動装置の問題ですもんね。

野田:あと、発動機というところで同質性があったりということで。外から見ているほどには危険性がないと思うんですね。

:なるほど。そうかそうか。

野田:さらに新しい技術として、「MOTOBOT」なんて作っているんですよ。

:何ですか?

野田:ロボット。モーターサイクル、バイクを運転できるロボットを作っているんですね。

まったく新たな技術と既存技術を組み合わせて使いながら、「新しい超小型市場に出るのではないか」と言われていますけれども。非常におもしろい。

:まさに、多角化で同質技術を使って異質市場に出て行く。そうか、おもしろいですね!

野田:実は、テレビ局もこれからは多角化を考えていかなくてはならないと思いますが、その話はまた次!

:楽しみですね!