蚊は2種類しかいない

蚊が嫌いではないと断言できる人は、まずいないでしょう。例えば、耳のそばで飛びまわる羽の音はたいへん嫌なものです。すべての生命体が、生態系のなかで大切な役割を果たしているのは事実ですが、人間の立場からいうと蚊は最低です。

蚊を憎むべき理由は「刺されるととても痒い」など、いくらでも例をあげることができます。少なくとも、3つは思いつきます。

基本的に、蚊には“飢えた蚊”と“あまり仕事熱心でない蚊”の2種類しかいません。世界には3千種の蚊が存在しますが、そのほとんどが人を襲いません。しかし、それでもじゅうぶんに厄介です。

人を襲うのはメスの蚊だけ

人を襲うのは、メスの蚊だけです。これは卵を産むために、動物の血中にあるイソロイシンというタンパク質を摂る必要があるためです。そこで、1か月ほどしかない寿命のうちに活動し、速やかに栄養を蓄えなくてはいけません。

そのことからメスの蚊は、貪欲にエサである血液を探し、ありとあらゆる脊椎動物の血を吸い出すことに短い一生を費やします。

しかし、その一方でオスは、ほとんど何もしません。オスの蚊の平均寿命は10日ほどで、数秒ほどメスと交尾をする以外は、ぶらぶらして植物の花の蜜を吸ったりして過ごします。

蚊にさされやすい人の特徴

蚊を憎むべき理由として、彼らがいやらしい差別主義者だということです。蚊が、ほかの人には見向きもしないで、あなたばかりを狙っていると感じたことはありませんか? 蚊は、相手のプロフィールにもとづいて、血から栄養をとるためのターゲットとなる人を決めます。

蚊が、二酸化炭素や体温に惹かれると聞いたことがある人もいると思いますが、まさにそのとおりです。蚊は、みなさんが呼吸をして脈拍を打っていれば、血を持った生き物がいるな、と感づきます。

なかには、ほかの人よりも体温が高く、より多くの呼気を排出する人もいます。研究では、妊娠した女性は体温が高いことから、蚊に感知されやすいとされています。また、肥満した人は、身体が大きいため単純に二酸化炭素を多く排出するので、蚊に刺されやすくなります。

蚊は、人間が牛乳を代謝する時に排出する乳酸や、特定の脂肪酸を摂取したあとに分泌する、アルコールの一種である1オクテン3ノールなど、人間が無意識のうちに排出するさまざまな化学成分を検知することができます。

蚊が行う識別方法で、最も驚くべきものがあります。それは人間の血液型に基づくものです。

人間の血液型は、赤血球上にある抗原と言われる化学的なマーカーによって定められているのですが、遺伝的にこの血液型抗原が体内を循環し、皮膚から分泌され、すべての体液に含まれている人がいるのです。

人間の80%は分泌型と呼ばれるタイプで、この型の人であれば、蚊は遠くから相手の血のニオイを感知するだけでなく、血液型さえもわかってしまうのです。

いくつかの研究を行った結果では、非分泌型よりも、この分泌型のほうが蚊に刺されやすいことを示唆しています。また、理由はわかっていませんが、蚊は僕のような血液型が0型の人間をより好みます。これを差別と言わずに何と言いますか?

蚊はいちばん多く人間を殺している生物

しかし、蚊を最も憎むべき理由は、彼らが地球上のどの生物よりも人間を多く死に追いやっているということです。その吸血の習性と数の多さから、蚊は世界で一番の病気を運ぶ媒介動物と言っていいでしょう。

例えば、アフリカと南北アメリカ全土で、年間3万人が蚊に刺されて感染する黄熱病で死亡しています。この小さないやらしい蚊の群れのせいで、デング熱が南北アメリカで流行の兆しを見せています。ほかにも、マラリア原虫という寄生虫が引き起こす、不治の病と言われるマラリアが挙げられます。これは、蚊によってのみ伝染します。

世界規模でマラリアは1億以上もの症例があり、毎年60万人が亡くなっています。ほとんどの犠牲者はアフリカなのです。

試算では、蚊に媒介される病気によって、年間100万人が犠牲になっていると言われます。この事態を何とかしたいとお考えの方は、「malarianomore.org」にアクセスして科学の世界を探索してください。最新のニュースを入手し、蚊に媒介される病気の蔓延と戦い、文字通り世界から苦しみを減らす手段を探してみてください。