忙しくなりすぎて失うもの

西野亮廣氏(以下、西野):最近すごいおもしろい文章読んで、例えば、江戸時代って喧嘩とか火事ばっかりだったじゃないですか。

そのときに、朝から夜まで働いてる人は、喧嘩とか火事を見に行けないじゃないんです。喧嘩とか火事を見に行ける人って暇な人じゃないですか。

「俺、暇やから見てくるわー」と言って、喧嘩とか火事を見に行って、それを持ち帰ってきて、「こんなんやったで」と話す。このときに、この人は超価値がでるなと思って、暇だったらからこれができたわけじゃないですか。

僕らは、すぐにスケジュールを埋めちゃうじゃないですか。やっぱり不安だから。それこそ、朝9時から夜の22時ぐらいまでスケジュールを埋めちゃう。でも、それによって暇があんまりできないですよね。暇ができなかったら失うもんがあるなと思ったんですよ。それで、今年から週に2日とか3日だけ働いて、1回暇になってやろうと思って……。

のぶみ:暇になってやろうと思ってるんですか。

西野:暇になってやろうと思ったんですよ。

のぶみ:絵とかも描かないで?

西野:それはするんですけど、つまり芸人としての露出を1回ガーって減らして、その余り余った時間を使って作品を作ったりするんですけど。でもやっぱり、そのときは怖いですよね。

のぶみ:いや、怖いよな。わかる。

西野:例えば、今ずっと絵を描いてるんですけど、10ヶ月かかるんですよ。僕1冊の絵本を作るのに3年とか4年かかるんですね。それを生業としてたらもうちょっと。本分(芸人)をやってるから安心はしますけど、別に本業でもないものに10ヶ月とかかけていて。

それで、僕のライバルの人たちは、毎日いろんなところに出ていってるわけじゃないですか? 芸人としてテレビとかライブとか。

でも、それをずっと繰り返しても、あまり大したことにならないなと思って。じゃあ、時間割をがっつり変えてやろうと思って、今がっつり変えてるんですけど、その間はやっぱり怖いですよね。みんながこう活躍してる……。

おもしろいと思うお笑い芸人

山田玲司氏(以下、山田):テレビは観る?

西野:テレビ観ます、観ます。ぜんぜん。

山田:今、誰がおもしろい?

のぶみ:芸人さんで。

西野:え~。

山田:みんな虫?(笑)

西野:いや、本当に僕好きです。みなさんむっちゃ好きですけど。

山田:虫の中では?(笑)

西野:いや、違う、違う。本当に僕、芸人さんめっちゃ好きなんで。

のぶみ:僕、サッカーの中村憲剛さんに同じ質問をしたことがあって。「中村憲剛さんから見て、今のサッカー業界で誰が一番うまいと思いますか?」と聞いたら、「う~ん……」って言って。

中村憲剛さんの奥さんが「遠藤さんじゃない?」とか言って。「遠藤さんだと思ってるでしょう?」と言ったら、「う~ん……それは俺だと言いたい」と言ってましたね。

やっぱり僕もそうで。ほかのやつ(の名前)を振られると「俺だと言いたい」って。絵本作家の中では、やっぱり自分がおもしろいなとは思ってますけど。

構成作家トンボ氏(以下、トンボ):芸人は本当に好きですもんね。

西野:好き好き。

トンボ:若手のネタだって劇場の袖で一番見てますもんね。ネタとか。

のぶみ:マジっすか。

西野:むっちゃ好き。

トンボ:どんだけお笑い好きやねんっていう。

西野:たぶん僕、芸人の中で一番好きですよ。でも、一番笑っちゃうのは東野さんですね。テレビ観てて腹かかえて笑っちゃうのは。

のぶみ:東野さんか。

西野:東野さん超おもしろいの。

のぶみ:この前『ワイドナショー』で一緒に出てましたよね。

山田:悪意の使い方のバランスが絶妙ですよね。

西野:むっちゃおもしろいですよね。

山田:なんかこう、庶民の立場でいながら、ものすごくマックスで悪意を出していくところがあの人のすごいところだね。

西野:東野さんも好きだし、それこそ『ゴッドタン』のレギュラーの方とかもめっちゃお世話になってるんで。

山田:誰が好き?

チームラボ・猪子寿之の魅力

西野:おぎやはぎさんも劇団ひとりさんも超好きですよ。そういうテレビの技術論みたいなことでバーって活躍してる人もすごく好きなんですけど。

そうじゃなくて、「こいつ何しでかすかわかんないな」みたいな人というのは芸人じゃなくて。

山田:こういう人?(笑)

西野:それこそ、のぶみさんとか。

のぶみ:変な人ね。変人枠(笑)。

西野:チームラボの猪子さんとか。

山田:ああ!

西野:猪子さんと喋ってるときに。

山田:わかる。兄弟みたいだもん!

西野:次にどんなカードを切るかよくわからないじゃないですか。僕が子供のときは、そういう役目も芸人さんがやってくれてたんですよ。

山田:ああ、なるほどね。

西野:それは、僕がテレビしか知らなかったからかもしれないですけど。「次はこの人、何しでかすの!?」とか。ダウンタウンさんがCD出しはったとか。小説出したとかいうときって、「うわっ! 次は何すんの!?」みたいな単純にお笑いの技術とまた別のところで、すげードキドキさせてくれたんですね。

のぶみ:意外性みたいなね。

山田:結局、そういうマルチな人が好きなのね。

西野:次の手が読めない人が。

山田:憧れるんだ。

西野:そうですね。

のぶみ:好きな人とか憧れてる人は未来の自分だと思ってるので、やっぱり西野さんもそういうふうになってみたいというのがあるという。

たぶん、見てる人は西野さんが「俺が天才だ」と言う人だと思っている人も多いと思うんだけど。でも、西野さんってふだん会ってるとそんな感じなんですよね。けっこう(ほかの人のことを)褒めますよね。会ってる人の悪口は聞いたことないし。もちろん、テレビの振りとかではあるかもしれないけど。

山田:自信があるからでしょう?

西野:あるんですかね。まあ、そうかもしれないです。ないことはないですね。

山田:おいっ。あふれてるじゃん!

西野:自信がないということはないです。こうやったら、おもしろくなるなという。

あと1週間で死ぬとしたら……

山田:ねえねえ、あと1週間で死ぬとしたら何する?

西野:1週間っすか。

山田:うん。1週間だけ。

のぶみ:キラークエスチョンですね、これ。

西野:何死ですか?

のぶみ:何死っていうの大事なの?

山田:うーん……じゃあ、飛行機が落っこちたとか、突然死で。

西野:突然死ですか。パタンっていきなり死ぬんですか?

のぶみ:交通事故ですね。

山田:避けらんないの。

西野:だったら、おもろい葬式の打ち合わせですよ。

山田:自分がいないのに?

のぶみ:素晴らしい。

西野:1週間かけて、もうとにかくおもしろい葬式の台本書いて。

のぶみ:棺桶の入り方とか。

西野:棺桶の形とか。「棺桶ちょっと長ないか?」とか。そういう打ち合わせ。

山田:誰にツッコませるの、それ?

西野:たぶん「ちょっと長ない?」とか「あいつ、こんな長かった?」みたいなことを、そこに来た人が……。

山田:自分いないんだよー。

のぶみ:棺桶が長かったりするのね。

山田:それ、おもしろいね。自分がいなくても、残った人たちが自分をネタにして笑ってくれればそれでいいの?

西野:ぜんぜん。

山田:あ、ちょっと好きになった。

のぶみ:だから、世界に「おもしろい」を増やしたい人なんですよ。それは本当に純粋なんですよ。

山田:最後の1週間だよ?

西野:でも、そっちのほうがおもしろくないですか。

山田:結果わからないんだよ? だって、死んじゃうから。

西野:そうですよ。でも、会議とかおもしろそうじゃないですか。打ち合わせとかみんなでキャッキャ、キャッキャ言いながら。

のぶみ:こうやったらめっちゃ笑うよねーって。

西野:「写真これちゃうやろ」みたいなのっておもしろいです。

山田:のぶみくんは何する?

のぶみ:俺はもう震えながら子供を抱きしめますね(笑)。

西野:ご家族がいらっしゃる。

トンボ:泣きながら?

のぶみ:「お父さんは、お前が好きだった~」

西野:山田さんは何するんですか? 1週間。

山田:1週間か〜。感謝祭(笑)。

のぶみ:なんで感謝祭にすんの?(笑)

山田:だってほら、世話になったもん。だからできる限りのおもてなしをして「みんな楽しんでね、じゃあ俺行くわ」って言って、人知れず死にたいよね。2日前ぐらいにいなくなって。

西野:いいですね。

イノベーターとしての空海の姿勢

のぶみ:ちょっと聞きたかったのが、TBSの話をしてくれるって言って……。

西野:さっき本番前に言ってたやつですか?

のぶみ:僕はFacebookで見たんですけど。TBSのスタッフの人と話してるというのを聞いたのでちょっとだけ。

西野:TBSはちょっとだけ噛むというぐらいなんですけど。空海という人が開いた高野山で、曼荼羅を奉納してくださいと言われたんですよ。高野山のお坊さんに曼荼羅を描いて、宇宙の広がりみたいな。

のぶみ:曼荼羅を描いて?

西野:そうです。曼荼羅ってあるじゃないですか? もしよかったら、あれを描いて奉納してくださいと言われていて。「おもしろそうだな」と思って。

のぶみ:なにその話。すごいじゃん。

西野:空海が、あいつけっこうおもしろいやつで。

のぶみ:いや、僕も大好きですよ。

山田:あいつ?(笑)

西野:あいつおもしろいんですよ。

山田:あいつおもしろいよね(笑)。

西野:真面目とははまたぜんぜん違って、超イノベーターで。

山田:式神飛ばすもんね。

西野:そうなんですよ、あいつ。例えば、僕がやってるクラウドファンディングとか、「当時、空海がやってたようなことですよ」と言われて。

トンボ:「空海っぽいよね」っていう。

西野:「空海っぽいよね」って言われて、お坊さんに。

のぶみ:あんま言われないよね。「お前、ちょっと空海っぽいよね」って。言われないよ、そんなこと。

西野:「曼荼羅描いて」というのは、実は何ヶ月も前から振られてたんですよ。

曼陀羅はみんなこれまで絵だったんですけど、空海は立体曼荼羅みたいなことで、もう空間で成立させちゃったんですよ。仏さんをバーっていっぱい立てて立体で3Dの曼荼羅を作っちゃったんです。

それで、空海が1200年とか1300年くらい前にそんなことをやってるのに、今更また自分の番が回ってきたときにまた紙に書くのやだなと思ってたんですよ。

空海の受け継がなきゃいけないことって、あの人の技術とかそんなことじゃなくて、「おもろいことをしようぜ」とか、「こっちのほうがよくない?」というカードをずっと切っていったあの姿勢だなと思って。

この姿勢をちゃんと次の世代に渡さないといけないなと思ったときに、「絵じゃないな」と思って。1200年前に立体をやられてて、「う~ん、どうしようかな」と考えてたときに……あんまり詳しくは言えないんですけど。

360度カメラを使った新しい企画への挑戦

西野:でも、4月に春から360度カメラの会社を立ち上げるんですよ。僕じゃないですよ。ある部署が、どこを見ても見れる、360度カメラを立ち上げるんですね。

のぶみ:すごいですよね。これね。

西野:その人が立ち上げて、「360度カメラを使った企画なにかないですか?」というところに話がきて。「そういえば、曼荼羅の世界観って360度だよね?」となって。

のぶみ:そうですよね。宇宙ですからね。

西野:じゃあ、360度カメラを使った曼荼羅を作っちゃおうといって、それにちょっとTBSが噛んでるという。

のぶみ:ちょっと放送とか回したりする可能性もある?

西野:します、します。TBSの角田陽一郎という超天才がいるんですけど、その人と一緒に進めてます。

のぶみ:深夜の番組でやっておられる?

西野:そうです。『オトナの!』という番組があるんですけど。

のぶみ:ユースケサンタマリアさんといとうせいこうさんの。

西野:それですね。TBSのやつというのは。だから、そういうことをしようと思ったら、やっぱり時間が超いるんですよ。週6とか週7で働いてたら、それはできなくて。

実際に高野山に1回行って、ある程度そこでちょっと進んで、そういう機材とかをやらなきゃいけなくて。やっぱり今の時間割では無理だなと思って、変えなきゃと思って。

のぶみ:「ちょっと時間を作ってみようかな?」っていう感じですよね。

山田:西野さんにとっての仏(ほとけ)って何?

西野:え~。

のぶみ:そうだよね。そこけっこう大事なとこですよ。曼荼羅は。

西野:そうなんすか。

のぶみ:うん。

山田:ヘイヘイ、空海、空海!

西野:おもろいやつが仏になってるなみたいな、あるんですよ。空海とかも。これはごめんなさい、有料で言いますわ。ちょっとあんまり言えないところがあって。

のぶみ:そうですね。切り替えますか。それでまたちょっと山田さんに話してもらいますので。

山田:みんな、本当にありがとうございました。

のぶみ:山田さんはすごくい人なんですよ(笑)。うん、山田さんいい人なんで。じゃあ有料に切り替えましょう。

山田:水曜日な。またな。

のぶみ:じゃあ、また。はい。

山田:またね、ありがとうね。