司会:私どもからの説明は以上となりますので、これより質疑応答に入らせていただきます。

株価に見るドワンゴの高評価の裏付けについて

朝日新聞:角川歴彦会長にお尋ねしたいんですが、まず、合併株主移転比率1:1.16くらいですか。一株あたりの純資産、一株あたりの純損益、あと売上高とか利益の規模でも開きがあると思うんですけれど、かなりドワンゴを高く評価しているように見えるんですが、その点はいかがでしょうか?

角川:おっしゃる通りです。高く評価していますから。そう受けて、ご理解していただければと思っています。具体的な裏付けについては松原の方からご説明いたします。

株式会社KADOKAWA・DWANGO取締役、現KADOKAWA社長松原眞樹(以下、松原):プレスリリースにもはっきりと書かせていただいている通りです。当然のことながら第三者算定機関の算定結果を踏まえて、それぞれ両者の株価水準、財務状況、資産の状況、将来の見通し等全てを兼ね合わせて、客観的意見を頂戴して移転比率を作っているということでございます。それを各々の取締役会が承認した上で比率決定合意に至った、というふうにご理解いただければよろしいかと思います。

過去のメディア統合の失敗をどう見るか

朝日新聞:それともう一点、角川会長に。伝統的メディアと新興メディアの統合というのは過去にAOLとタイム・ワーナーのケースとか、実現しなかったですがTBSと楽天、ライブドアやニッポン放送と、色々あったと思うんですが、中々難しいというか、色々と試みはなされてきたんだけど、成功例はないという印象を受けるんですが、今後その点をどうご覧になっているのか、過去の様々な事例の失敗については、どうお考えになっているんでしょうか?

角川:先ほどの説明にも入っていると思うんですが、まず、敵対的な合併を目論むと大概ダメになると思います。ですから、今のご質問例の半分はそういう形だったと思います。タイム・ワーナーとAOLについては、今日になってみれば歴史的な、時代的な評価として無理だったということにあると思います。

その点では、KADOKAWAがリアルなプラットフォーマーとしてきちっとした成果を出したいというときに、ドワンゴがいたわけです。また、ドワンゴが自身のプラットフォームから配信している若きクリエーターたち、UGCたちには、もうひとつ上を卒業するような可能性、才能を持った人たちが、またKADOKAWAの舞台で仕事をしてくれる。これが積み重なっていけば、異質と思われた会社同士が、実は一卵性双生児だった、と思っていただける日が近いと思っております。

川上氏の結婚式に角川氏も出席していたが、関係は?

朝日新聞:最後に、昨年、川上さんは経済産業省のクールジャパンを担当されている女性官僚と結婚されたとうかがいましたが、そこに来賓の角川会長が出席していたと思うんですが、その結婚あたりから、今回の統合話が出てたんでしょうか?

川上:全く関係ありません(笑)。実はドワンゴには、上場する前の社員数が十数人のときから、(新会社の社長となる)佐藤氏に役員として入っていただいてまして、役員としての歴史が一番長いのが私、二番目が佐藤社長ということです。本当に昔から気心の知れた仲だった、というのをお伝えしたかったんですが。(結婚とは)全然関係ありませんので(苦笑)。

資本提携に留まらなかったワケ

日経新聞:まず川上会長に、イベント会社にしてしまってすみませんでした。

(檀上笑)

あと、角川会長にうかがいたいんですけれども、両社は2011年から資本提携という形を結んでいたと思うんですが、そうではなく、経営統合という形を採った意味はどいうことかというのが一点と、いつ頃から経営統合が視野に入ってきたのか。というのをうかがいたいと思います。

角川:2011年に持ち株をはじめたのは非常に大きかったと思います。その折もやはり、ドワンゴは株価が高くて辟易としたんですけれども、それを受け入れる中で、ドワンゴは大きな可能性を持っていると。現場で色んなプロジェクトチームを走らせて、今日に至ったわけです。

ですから、本丸に行くまでに外堀も埋めたし、内堀も埋めたし、手続きは取ったと思っておりますので、意外だと思う社員は全くいないと思います。明日はKADOKAWAの社員総会がありますし、今日はドワンゴさんの社員総会があり、会場では拍手が上がったという話ですから、明日も同様になるんじゃないか。と思います。

本当のところ、3年くらい前から、事業提携もあったし、そろそろ一緒に(経営統合)した方がいいんじゃないかと川上君には言っていました。しかしドワンゴも問題を抱えていたし、KADOKAWAも9社の事業統合をしなきゃいけない問題を抱えていた。今日の発表がひとつの目的になっていて、自分のモチベーションにもなっていた。それがまた、一緒にやろうという社内の空気が出来上がった要因でもあるというふうに今、思います。

司会:具体的な両社の協議はドワンゴ荒木社長から……。

株式会社KADOKAWA・DWANGO取締役、現ドワンゴ社長 荒木隆司(以下、荒木):私がドワンゴに入ったのが2年弱前で、入った頃も川上の方から、角川会長からお話をいただいている。とうかがっていましたが、具体的な交渉にはなっていませんでした。当時ドワンゴは利益の出ない体質だったり、色々ございまして、その解決が先決だということと。KADOKAWAさんの9社統合がございまして、我々の方でもマネージメントしっかりやろうとやってまいりました。

今年の1月半ばくらいに、正式に、具体的な検証をしましょうというお話をいただきました。当初は検討して、来春だとか秋口だとかあったんですが、あんまり長くなっても……と話しているうちに、3月くらいですか。もう思い切って、GW明けくらいに発表したらどうかといただきまして。もう決めたのだから動きましょうと、今日こうしてお集まりいただいたということに至っております。

旧来のしがらみから「オープンな統合」が実現しないのでは?

フリー記者:川上会長、角川会長から、オープンな統合と強調されていました。ご両社がされてきた事業からはまず間違いはないんだろうと感じるんですけれども、やはり今回規模が大きな会社ができるということで、例え新会社がオープンな考えを持っていたとしても、業界的に果たして周りからそう見てもらえるのかと思うんです。

平たく言うとドワンゴだから、この動画も、このコミックも提供したけど、KADOKAWA・DWANGOとなるとKADOKAWA系列と見られて、ドワンゴの立場からすると、コンテンツを逃してしまう懸念は従来から比べると高くなる、というのは川上会長になかったんでしょうか?

川上:多分、そうはならないと思います。競争はグローバル化しているんです。この新会社がある程度の規模になったとしても、世界的に見てどうなんだというと、世界的にはごくちっぽけな存在な訳です。その中で日本のコンテンツ業界等含めて、グローバル化をどうやろうかというのが現在の状況ですので、多分、懸念された状況にはならない。

むしろ信頼されるプラットフォームになる方が、色んな協力を受けられるんじゃないか、というふうに思っています。

資本比率について

TBS:今回の統合によるシナジー効果。これは金額としてどれくらいの規模を目指しているのか、それと出資資本比率に関して、資料にはありませんが、一部報道にあるようにドワンゴが51%、KADOKAWA49%というので間違いないでしょうか?

佐藤:KADOKAWAは非常に意欲的に中期計画を既に発表していて、これはチャレンジングの方向です。それからドワンゴさんの将来的な成長も非常にチャレンジングだと思います。

間でやる事業につきましては新規事業が多くて、かなり投資もしていくことになります。いずれにせよKADOKAWA・DWANGOと真ん中でする事業は、数字で表すと非常に難しいんですけれども、かなり成長していく。成長が両社の合併の大きな成果になるだろう。と思ってます。

松原:法的に言いますと、今回は共同株式移転という形を採っていますので、まったく対等、平等ということで、どっちの比率がどうということでは全くございません。会計処理上どういう方法を使うかによって、その比率が変わるということで、今回はパーチェス法を使うということでドワンゴさんの方が会計上、取得企業になるという形になる。と、このようにご理解いただければよろしいかと思います。

統合でドワンゴにはどんな具体的メリットが?

アドバンスリサーチ:株式事業という立場で質問させていただきたいんですが、事業規模で言えばKADOKWAの方がはるかに大きいですが、株式市場の評価という意味ならドワンゴの方がはるかに高いのは明らかです。

なぜ高いかといえばニコニコ動画のメディアパワーがここで急速に増し、動画広告とかマネタイズ方法も新たに出てきて、先の成長に対する高い期待が今のバリェーションに結び付いていると考えているんですが。

それがKADOKAWAと一緒になることで、KADOKAWAサイドのメリットは分かるんですが、ドワンゴがKADOKAWAと一緒になることのメリットがよく分からない。株式市場から見ると成長率が鈍化する。ドワンゴサイドから見てのメリットを明確にご説明いただきたいです。

川上:まず、メリットはある、と思っています。全てのコンテンツは今後、ネット化、デジタル化していくと思っているんですよ。KADOKAWAグループにもBOOKWALKERという電子書籍の部署があるんですが、コンテンツを持っているところでもプラットフォームを持つことで実際の収益が得られる。プラットフォームがない場合、おそらく従来よりは収益は減ると思うんです。

そのときカギになるのは、デジタルプラットフォームをネットワークで開発する部隊というのを、自前で持っているのか、外注に依存せざる得ないのか、というところで大きな差が出ると思っています。そうすると電子書籍においても、プラットフォームを自前で持っていることによってKADOKAWAのデジタル自体の価値というのは大きく変わると思っていまして、そこにドワンゴは貢献できるんじゃないかと思うし、成長も得られる。

実際に評価の差はありますけども、そのこと自体がポテンシャルを生んでいると思っています。

アドバンスリサーチ:今のような緩やかな資本関係だとダメなんですか。完全に経営統合しなきゃダメなのか、その辺がどこにギャップがあるのか分からないんですが?

川上:それは自前のコンテンツなのか、そうでないのか。そういうことの違いだと思いますね。 (以上)