会長にドワンゴ・川上氏、社長にKADOKAWA・佐藤氏

司会:それでは統合持ち株会社・代表取締役社長に就任予定の佐藤より、この度、両社が経営統合に至った経緯やストラクチャー、今後の展開についてご説明させていただきます。

KADOKAWA取締役相談役・佐藤辰男(以下、佐藤):本日はお忙しい中、多数の方にご参集たまわりまして誠にお礼申し上げます。ただ今ご紹介にあずかりました佐藤でございます。冒頭、私からこの度の統合の概要につきましてご案内を申し上げます。

株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴは、両者対等の精神に基づきまして共同株式移転により両社の完全親会社となる株式会社KADOKAWA・DWANGOを設立する方法により、経営統合することについて合意に達しました。本日それぞれの取締役会の決議に基づき、統合契約を締結するとともに、統合持株会社設立のための株式移転計画書を策定いたしました。

新設する親会社の概要は、称号が株式会社KADOKAWA・DWANGO。資本金200億円、資本準備金200億円。本店所在地はKADOKAWA本店所在地である千代田区富士見(二丁目13番3号)でございます。

就任予定の役員は、代表取締役会長に川上量生(現ドワンゴ代表取締役会長)が就任し、代表取締役社長に佐藤辰男(現KADOKAWA取締役相談役・ドワンゴ社外取締役)。

取締役相談役に角川歴彦(現KADOKAWA会長)、取締役に荒木隆司(現ドワンゴ社長)、取締役に松原眞樹(現KADOKAWA社長)、取締役に濱村弘一(KADOKAWA)取締役に夏野剛(ドワンゴ)、取締役に小松百合弥(ドワンゴ)、社外取締役に船津康次、星野康二、麻生巌となっております。

世界に類のないコンテンツプラットフォームの確立を目指す

佐藤:さて、KADOKAWAは1945年の創業以来、時代の変化に対応しながら成長を重ね、中堅出版社から業界をリードする地位を築き、今日に至っています。平成25年10月にはグループ傘下の出版8社を合併いたしましてワン・カンパニー化を実現しました。

その目的はIP(情報提供)を核とした多種多様な事業領域をカバーするメガコンテンツパブリッシャー、デジタルコンテンツプラットフォーマーという、デジタルネイティブ時代において確固たる地位を築くことにあります。そして今、この時点でドワンゴと出会いまして、コンテンツプラットフォーム企業へ進化を遂げるところまできました。

一方、ドワンゴですが、歴史で表現すれば3つの時代に分けることができます。1997年にオンラインゲームのシステム開発会社として設立され、iモードの普及に合わせハイクオリティな着メロ、着うたフル(R)で一世を風靡いたしました。

そして2006年12月にニコニコ動画をスタートし、扱うコンテンツの独自性やユーザー同士のコミニュケーションから生まれる創作文化が圧倒的な支持を受け、次世代ネットワークエンターティメント分野で独自の地位を築いています。

ニコニコ動画は、平成26年3月末現在で、登録会員数3,936万人、有料プレミア会員223万人を有するプラットフォームに成長してまいりました。そして今、ドワンゴも次のステップを踏もうとしている、と理解しております。

本経営統合の目的は、デジタル化とインターネット技術が進展する中で、ドワンゴの有する技術力、及びプラットフォームと、KADOKAWAの有するコンテンツ、及びリアルプラットフォームを融合させ、ネット時代の新たなるビジネスモデルとなる、世界に類のないコンテンツプラットフォームを確立することを目指すものです。

また、中期的には進化したメガコンテンツパブリッシャーとして、ネット時代に新たなメディアを築いてまいります。

次に経営統合の日程にとしては、本日(5/14)の取締会の決議を経まして、KADOKAWAは6月21日に、ドワンゴは7月3日に予定されています株主総会において承認いただきまして、今年、平成26年10月1日に新会社がスタートするということになっております。

統合の5つのポイント

佐藤:統合の意義について、5つの視点でお話をしてみたいと思います。

ひとつめはグループのあり方として、IP(情報提供)創出企業KADOKAWAと、IT企業ドワンゴの融合により、技術を持ったコンテンツ会社が誕生する。これがひとつめの意義と理解しております。両社が保有する最先端のネットプラットフォームと、魅力あるコンテンツを融合させてニコニコを強化する。

それから、ただ今、KADOKAWAはデジタル対応を急いでおります。その中でドワンゴのエンジニアリング力をグループに内製化していく、これが計り知れない武器になると考えております。エディターの隣の席にエンジニアが座っていて、一緒に仕事をするというイメージを持っていただければと思います。すなわち、コンテンツとテクノロジーが融合するインパクト。これがひとつめだと思っております。

2つめは、コンテンツ視点から申しますと、KADOKAWAが持つプレミアムコンテンツを生み出す編集力、それとドワンゴが持つ、デジタルネイティブ時代のUGC創出力、この融合を図るということであります。

UGCとは、ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ。ユーザーが作る、あるいはユーザーが参加して作る作品ということで、ニコニコでは初音ミク、カゲロウデイズといったコンテンツが次々と生まれています。

ドワンゴのプラットフォームの上でUGCとして創出される多様なコンテンツを、KADOKAWA側の優れたコンテンツ編集力を活かしてプレミアム化していく。メディアミックスを含めたKADOKAWAの販売、流通施策を通じて、コンテンツ販売事業を最大化できると考えております。

3つめはプラットフォーム視点から。出版・映像コンテンツのプラットフォームを構築しているKADOKAWA、現在、BOOKWALKER、dアニメストア、ムビチケといったプラットフォームを作っております。リアルプラットフォームとして書店、イベントといったものもございます。

ドワンゴの方ではニコニコ動画、超会議、あるいは町会議などリアルの世界でもプラットフォームを構築しており、これが融合することによって、国内のECサービス、あるいは海外へ物販・配信といった新たなことが生まれてくる、そういうシナジーを期待しているということであります。

マスメディアを補完する、新しいメディア像の構築

4つめは情報メディア視点から。一般論としてコンテンツは、アグリゲートすると。ネットメディア、ニュースのまとめサイトなんかもそういうことだろうと思います。従来のネットメディアに対して、既存のメディア、つまりKADOKAWAの情報取材力・編集力を取り込んで、新たなネットメディアに転換するための融合、ということでございます。

ドワンゴのネットプラットフォームにおける情報展開力と、KADOKAWAの情報取材・編集力を活かして、他のマスメディアを補完する"ネット時代の新しいメディア"を構築する。

それから、これは大変期待していることでございますが、両社の紙媒体とネットメディアの融合により生まれる莫大なPV/UUを背景にして、新しい広告のメニュー/サービスを増設していく。そのことによって飛躍的に広告収入を伸ばしていきたい、というふうに考えております。

最後に、グローバル視点として。ニコニコのような新しいメディアと、KADOKAWAのようなクールジャパン・コンテンツホルダーが融合して起こる化学反応ということを期待しております。世界的なトレンドとして、キーワードはヤングアダルト。それからUCG、これが小説、漫画、アニメの世界で非常にトレンドなっていること。この傾向は、これからも続くと思っております。

欧米ではヤングアダルトの小説や漫画がハリウッドを侵食している。あるいは日本でも当然のことながら、KADOKAWAを中心としてライトコミック、ライトノベルが非常に売れております。それからアジアでも軽小説という名前で大変もてはやされておりますし、UGCも非常に盛んで、これがひとつのトレンドであります。

私たちのプラットフォームを"オールジャパンプラットフォーム"とし、その上で、我々は世界を舞台に"進化したメガコンテンツパブリッシャー"を目指していきたい、というふうに考えております。

まずはゲーム情報事業の独占を目指す

こうした統合の意義を速やかに具現化すること、すなわちスピードが大事だと私たちは考えました。両社が経営資源を持ち寄って、互いの強みを活用して補完性を高め、既存事業の強化、あるいは新規事業創出を実現させる、ということをスピード感を持ってやっていこう。こういうふうに考えております。

持ち株会社の各事業の概念ですが、KADOKAWAはKADOKAWAとして既存事業を大事にしながら、ドワンゴのネット事業の中で新たな表現方法を作っていく。ドワンゴはドワンゴとして既存事業を大事にしながら、コンテンツを作るプラットフォームへ進化していく。

そして両社の間に、このようなシナジー事業を想定しております。互いにリソースを持ち寄り、両社単独では実現できない事業を具現化していこう、と思っております。

これらの事業に多少触れさせていただきますと、これからの協議にもよりますが、一番目はゲーム情報ポータル事業。これはゲーム雑誌というレベルで、KADOKAWAはほぼ独占的な状態であります。この占有率と、ゲーム実況などで非常に盛り上がっているドワンゴのゲーム分野における、紙とネットの融合の先にある事業がゲーム情報ポータル事業ということであります。ぜひ楽しみにしていただきたいと思っております。

二番目にゲーム事業ですが、KADOKAWAには角川ゲームス、ドワンゴにはスパイク・チュン、最近グループ入りしたMAGES、これからグループ入りが決まっているフロムソフトウエア。いずれも強いブランド力を持ち、個性豊かな事業を展開しております。各社とも個性的な会社ですので、今まで通りの体制で進めてまいりますけれども、各社ともゆるい連携を模索していこうと思っております。

自然体でも4社合わせると150億円くらいの事業規模になりますが、これは新たなゲームでの勢力が生まれた、とご理解いただければと思います。

それから電子書籍事業。ここにドワンゴの技術力を注入していく。電子書籍の新しい体験をもたらすサービスのフロントエンドを、ドワンゴへお願いしたい。これもしっかりと時間をかけてやっていきたいと思っております。

UGCクリエイタープラットフォーム事業と地域情報プラットフォーム事業につきましては、すでに両社が紙でもネットでも実績をあげている事業でございます。どうしたらシナジーを高めることができるのかこれから協議してまいりたい、というふうに思います。

最後に、両社事業の強みを相互に活用し、補完性を高めて既存事業の強化、新規事業の創出を実現させることができれば、私たちはネット時代をリードする世界に類のないコンテンツプラットフォーマーになりうる、と考えております。

今日ご出席の皆様方においては、この新生KADOKAWA・DWANGOに多大なるご支援をいただきますことをお願いします。以上をもって私の挨拶とさせてもらいます。ありがとうございました。

川上氏「出版社はリアルな世界でのプラットフォーム」

司会:ありがとうございます。それでは次に、統合持ち株会社の代表取締役会長に就任予定の、株式会社ドワンゴ代表取締役会長の川上よりご挨拶をさせていだきます。

株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長 川上量生・現ドワンゴ代表取締役会長(以下、川上):ただいまご紹介にあずかりましたように、新会社でも会長を務めさせていただくことになりました。今回こういう発表ができて、非常に興奮してワクワクしております。

KADOKAWAとドワンゴの合併、新会社がどうなるのかということを、両社を良く知っている方が客観的にどう見ているかというと、多分こういうふうじゃないかなあと思うんですけれども。

KADOKAWAでは一旦退き相談役という役職に就いた(角川)会長が本当に経営の一線から今後も退いたままなのか、とか。ドワンゴではスタジオジブリの鈴木プロデューサーに弟子入りして、今、私はNHKと一緒に、宮崎吾朗監督とアニメを作っている訳なんですけれども、そんなドワンゴが本当に経営を引き受ける気があるのか、とか。こういう2社の合併じゃないかな、と思われているんじゃないかと。

2つの会社が合わさったときに、その会社を一体誰がどうやって運営していくのか、というところを、訝しく思う方も多いんじゃないかなと思うんです。大体その懸念は当たっているんじゃないかなと僕は思っています。

(会場笑)

この新会社はプラットフォームのドワンゴと、コンテンツのKADOKAWA、この2つが合わさったと理解されていると思いますけども、この理解は少し違うんじゃないかと思っていまして。実はもともと両社とも、コンテンツとプラットフォーム、両方を目指してきた会社じゃないのかな、というふうに思います。

KADOKAWAさんも、出版社というのはリアルな世界でのプラットフォームだと思うんです。リアルな世界のプラットフォームで、例えば書店では角川の棚がある訳ですけれども、書店に対しての販売網というのは、これも実はネットのプラットフォームと同じように対比されうる、リアルなプラットフォームだと思います。

つまり出版社というものも、リアルな世界でのプラットフォームとコンテンツ、両方を扱う業態というのが正しい理解じゃないのか。そして僕らも、普通ネットの世界ではプラットフォームだけを提供する会社が多いんですけが、実は僕ら自身もコンテンツを常に作り続け、新しいコンテンツを作ろうとしてきた。そういうIT企業じゃないかと思っています。

実際、今日(5/14)、日経新聞の一面に(統合発表)記事が出て、僕もそこに描いてある図を見て、ちょっとびっくりしたんですけれども、KADOKAWAさんのところに出版会社と書かれてまして、ドワンゴの方にはイベントと書かれていました。我々はIT企業じゃなかったのかと(笑)。

(会場笑)

(ドワンゴは)イベント企業だと日経さんには認識されているんだな、とびっくりした訳なんですけれども、これは非常に光栄なことでもあると思っていまして。僕らの方もGWにニコニコ超会議というイベントをやりまして、これが非常に印象に残って書いていただいたんだと思うんですけれども。実は(ドワンゴというのは)ネット企業の中ではずっとコンテンツを作り続けてきた会社なんです。

ネットの世界とリアルの世界でそれぞれ、コンテンツとプラットフォームを両方提供してきた会社というのがひとつになる。それが非常に相性が良いんではないのかと思っています。

川上氏「囲い込むための経営統合ではない」

川上:普通ですと、ネット企業は専業で、ひとつの事だけに絞って行くというのがこれまでの趨勢でした。それが正しいのか、ずっと僕には非常に疑問でして、例えば昔はパソコンといえば、コンパック、デルというPC(メーカー)の世界であって、それはパソコンだけを作っている会社です。それがOSとハードを両方を作っているアップルという会社よりも優れていると言われていたんですね。

ところが現時点でITの覇者はどこかというと、これは立場が完全に逆転していて、垂直統合のアップルが完全優位になっている訳です。

専業で行くのか、組み合わせていくのかというのは、時代の流れはあるでしょうし、もしくは周りの環境で、たえず変わるものだと思っています。おそらく日本でコンテンツをネットで展開していく上では、コンテンツ・プラットフォームを両方提供するモデルが、僕はベストなモデルじゃないかなと思っています。

実際に日本で、プラットフォームを作っているところで一番成功しているのは任天堂さんと思うんです。今、若干、状況は厳しいかもしれませんが、ただトータルで見ると、日本で非常に成功している。唯一世界で通用するプラットフォームを作っているのが任天堂さんだと思うんです。

なぜ競争力を持っているかというと、それはプラットフォームとコンテンツ、この両方を持ち、その上で競争をしている。そして競争の仕方を、絶えず軸を変えながら生き残ってきた、ということだと思うんですね。

新しい会社では、コンテンツとプラットフォームも融合することによって、他の会社と直接競争することを避け、新しい世界を切り開くことができるような体制を作れるんじゃないか。そういうふうに思ってております。

ドワンゴとKADOKAWAが一緒になるということの意味なんですが、これは決して、コンテンツもプラットフォームも囲い込むという話ではない、というのがひとつ大きなポイントだと思います。

これは双方に言えることだと思うんですが、当然KADOKAWAさんはコンテンツを作るところとして、これからもYouTubeさんにもコンテンツを提供するでしょうし、我々ドワンゴも、KADOKAWA以外のコンテンツもやっていきます。

基本的には囲い込むための経営統合ではなく、基本的オープンな統合なのです。

そしてシナジー効果が発揮されるのは新しいコンテンツ、プラットフォームを組み合わせて何かを生み出すというところ。ここに、この新しい統合持ち株会社の意味があるんじゃないか、というふうに考えています。

この新会社の方に皆さんご期待いただきますよう、よろしくお願いいたします。

角川氏「ニコニコは海賊版や模倣品の排除に誠意を見せた」

司会:ありがとうございます。続いて統合持ち株会社の取締役相談役に就任予定の株式会社KADOKAWA取締役会長角川(歴彦)より、ご挨拶をさせていただきます。

株式会社KADOKAWA・DWANGO代表取締役相談役 角川歴彦・現KADOKAWA取締役会長(以下、角川):本日は皆さま忙しいところ、このように多くの方にKADOKAWAとドワンゴの統合発表にご出席くださいましてありがとうございます。私のほうから一言二言、申し上げたいと思います。

KADOKAWAは出版社から出発し、映画、アニメ、ゲームとメディアミックスの先駆者としての役割を果たしてまいったと思っております。コンテンツIPで幅を広めて、最終的にはネット企業になりたいと努力してまいりました。

先ほどからお話にありましたよう、ドワンゴは3,900万人のファンを持つニコニコ動画という、大変な資産を持つ優れた技術集団だと認識しています。日本を代表するネット(ドワンゴ)と、日本的な多くのIPを持つKADOKAWAという両社が、コンテンツ視点でのプラットフォームを作ろう。これは先ほど川上君が言った通りであります。

両方ともプラットフォームを持っている。しかしその両方共が補完関係にある。いわば日の丸プラットフォームだと。それを両社で作ろうということだと思います。

もうひとつは、21世紀の新しいメディアを作りたいと思ってます。このメディアという言葉を川上君はあまり好きじゃないらしくて、めったに言わないんですけれど、私はニコニコ動画はメディアそのものだと思ってます。

日本から世界のYouTubeに対抗できるメディアが生まれたということが、私にとっては大変うれしいことで、KADOKAWAとドワンゴの共通テーマというのが、それがサブカルチャーだと。そこに(両社は)基盤を持っている。我々は文化が違うように見えて、実は同じところにあると思います。

今の流行の言葉で言ってみれば、クールジャパンというのをリアルな立場から推進してきたKADOKAWAと、それからネットの世界から推進してきたドワンゴが一緒になろうというので、異質の両社ではあるけれども、実は企業文化は共通で、その膠の役を果たすのが、(サブカルチャー、クールジャパンという)共通の目的だということだと思います。

現に新会社の社長に就任する佐藤君は、ドワンゴで十何年来の社外役員をやっていました。川上君もまた、KADOKAWAの貴重な意見を言ってくれる役割を務めてくれたので、その点ではまったく違和感はない訳です。

この2社が一緒になるのであれば、我々は21世紀のイノベーションを実現できる。しなけりゃならないと思っています。このイノベーションはどんな形になるのか、ワクワクし、期待しているところであります。

私は未来志向のビジョンで、川上君と完全に一致をみました。思えば、YouTubeが日本に上陸したとき、私はYouTubeをJASRACに紹介し、日本の市場で、海賊版などを排除したきちんとした存在になって欲しいと話しました。この話はgoogleにもしました。

そのとき、川上君は軌を一にしてJASRACに入り、そして彼の方がはるかに誠意を持って、海賊版や模倣品を排除した訳です。

海賊版や模倣品を排除してニコニコが非常に品の良い、業績の良い、行動の良い動画サービスになったことから、期せずして新しいコンテンツ、若いクリエーターが輩出しはじめた訳です。これを川上君は計算していたのか、そうでないのかは、天才川上君のことですから、それはゆっくり話を訊いてみたいと思っている訳です。

(壇上笑)

新しいコンテンツ、新しいクリエーターが多数輩出されるようになって、それがKADOKAWAのリアルな紙、出版物の重要な部分を占めるようになってきています。これもまた、統合への大きなきっかけになったと思います。例えばボーカロイド小説というのはですね、角川文庫の非常に重要な一角を占めるようになってきております。

角川氏「ようやく、川上君という若い経営者を手に入れた」

角川:最後に、川上君が複雑系の発言をしていましたが、皆さんが理解しにくいところを翻訳し、伝えるのが私の仕事だと思っております(川上、佐藤両氏苦笑)。それが相談役の立場であります。

しかし本当のところ、冗談でなく真面目な話を申し上げれば、統合化といった新しい企業形態で社員数は3000人を超え、コンテンツ業界の中では本当に大きな所帯となりました。襟を正して臨まなければなりません。考えてみれば、KADOKAWAとドワンゴの3000人以上の社員諸君に生き生きと仕事がしてもらえるように、私はようやく、若い川上君という経営者を手にしたんだと思っております。

川上君が単に"ニコニコを作った"で終わらないように、新しい仕事をはじめたいんだという気持ちを大事にしながら、KADOKAWAとドワンゴの所帯の大きさを認識してもらって、これからの時代の変化の中で大洋に乗り出し、行く先を示していく経営者となっていくことを、私は信じています。

川上君が最後に言ったオープンな統合、プラットフォームとは、読者の囲い込みも、コンテンツ事業者の囲い込みも、コンテンツそのものも囲い込まない。オープンなプラットフォームを作っていくという夢のことです。KADOKAWAとドワンゴがその夢をどこに活かしたのかというのは、ぜひ直接、志を訊いて欲しいと思います。

この会社は本当に色々な可能性を持っている。Win-Winの関係という言葉だけでは済まない。大きな期待を皆さんに持っていただけるようお願いいたしまして、私の言葉に替えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。