保険に総額いくら払っているのか?

藤川里絵氏:では、3つ目です。保険の法則ですね。これは月いくらではなくて、総額いくらで考えていただきたいんです。

日本人は保険好きと言われますので、だいたいなにかしらの保険に入っていると思います。「どんな保険に入っているか」って聞くと、「月いくらの保険に入っている、月5000円、月1万円の保険に入っている」と答える方が多いんですが。「その保険は総額いくら支払うの?」って聞くと、「わからない」って方が多くいらっしゃるんですね。

例えば、毎月2万円で30年間掛け続けている保険だとしたら、トータルで総額720万払うことになります。720万ってけっこうな大金だと思うんです。高級車1台買えると思うんです。だから、保険っていうのは、月々いくらの保険に入るって考えるんじゃなくて、720万円の高額商品を分割払いしていると思って欲しいんです。そう考えると、保険に入る時に慎重になると思うんですね。

保険の欠点っていうのは、流動性が低いことです。その掛けている途中に、もし急にお金が必要になって解約しなきゃいけなくなった場合に、恐らくみなさんが掛けたお金が満額で返ってくることはないと思います。掛けた金額よりも少なくなることがほとんどなんですね。それを知っていると、貯金で対応したほうがいい場合もたくさんあると思います。

リスク対策は保険以外にもたくさん

「リスクに備えるために保険に入るべき」ってよく言われるんですけど、じゃあリスクに備えるための方法って保険しかないかっていうと、実はそうじゃないんです。リスクに備える為の優先順位っていうのはこんな感じになっています。

まず1番最初のミクロの輪は、貯金ですね。もし貯金がみなさんに1億あったとしたら保険に入らないと思います。1日1万円保障してくれる医療保険が必要かって言うと、おそらくないと思うんですね。これが1番最初。

それから2番目は予防ですね。「2人に1人が癌になる時代なので、癌のリスクに備えるために保険に入りましょう」って言われます。じゃあ、保険に入ったら癌にならないかと言うと、それは関係ないと思います。ですので、まず最初に考えなきゃいけないのは、癌やほかの病気にならないことです。ふだんの生活習慣を整えるのが1番大切かなって思います。

ただ、気をつけていても病気になったり怪我をしたりする場合があります。ですので、この次に来るのは知識です。もしみなさんが病気になったら、どれくらい入院しないといけないのかな、どれくらいお金がかかるのかな。そういうのを調べておくっていうことなんですね。

例えば、今入院されている方のなかで、60日以上の入院をする人の割合は5パーセント程度です。そんなにいらっしゃらないんですね。70パーセント程度の人が2週間程の入院ですんでいます。ということは、入院保障が120日や90日の長期保障は必要ないと考えたほうがいいです。保障期間が長ければ長いほど、支払われる保険料は高くなりますよね。

それから、みなさんが国民健康保険、健康保険、こういう公的な保険に入っていれば、高額療養費制度っていうのが適用されます。高額療養費制度をご存じですか? 聞いたことある方はいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

ありがとうございます。半分以上はいらっしゃいますね。これ知らない方はぜひ覚えて帰っていただきたいのですが。保険適用の範囲の治療であれば、どんなに高額の医療費がかかったとしても一般的な家庭で月8万円程度ですむというふうになっています。日本の保険ってものすごく手厚いんですね。

なので、例えば、保険の外交員の方に、病気になったらこれくらいお金がいりますよと提示された金額を鵜呑みにするのではなくて、自分で調べるっていうのがとっても大事かなと思います。

最後にくるのが保険です。保険は万が一の場合に入るものなんです。万が一なので、起こる確率は万が一です。滅多にないんです。なんですが、万が一起こってしまったら、ものすごくお金がかかると。自力ではカバーできない。そういう時のために入るのが、保険の正しい使い方だと思います。

例えば、自動車保険、火災保険、自転車保険などです。もし事故に遭って誰かを怪我させたり、死亡事故なんかになったら、高額な賠償金が必要になりますね。そういうのは入っておいたほうがいいと思います。

もし一家の主が亡くなったら残されたご家族が生活できないっていうのであれば、生命保険に入ったほうがいいと思います。逆に、自分が亡くなったとしても、特に路頭に迷う家族がいない場合は、生命保険は必要ないっていうことですね。これが保険の法則です。

私たちの脳を惑わす「値札マジック」

では、4つ目。買い物の法則ですね。みなさん、買い物大好きだと思います。私も大好きなんですが、これにも法則があります。値札マジックに惑わされないってことです。

みなさんお買い物をする時に、値札を必ず見ると思うんですが、実はこの値札を高いと感じるか安いと感じるかっていうのが、これは販売サイドにコントロールされていることが多いんですね。

この素敵な赤い靴、値札がこういうふうについていました。2万8000円です。「素敵だな、欲しいな。でも2万8000円か。質もよさそうだし、これくらいの値段が妥当かな。ちょっと迷うな」と思ったとします。

もう一方で、こういう値札(スライド左)が付いていたらどうですか? 5万8000円が2万8000円になっていると。「お買い得じゃないの」と。「むしろ買わないと損じゃないの」と思っちゃうんですね。これはそう思っても仕方がないです。私たちはそういう心の癖を持っているんですね。

実はこれはアンカリング効果といいます。アンカーというのは船の碇のことです。船はその碇を起点に動きます。私たちはその元になる数字を起点に、物事を判断するんです。5万8000円という元の数字に対して、2万8000円というのが安いんじゃないかと考えてしまうんですね。こういう癖があります。

心の癖を理解して失敗をなくす

1つ余談なんですけど。私、先日お誕生日を迎えたんですね。私には2人娘がおりまして、上の娘が中2なんですけども、嬉しいことに誕生日プレゼントをくれました。こんな素敵な時計です。

娘がお友達と原宿にお買い物に行った時に、アクセサリー屋さんで店頭に並んでいる商品が「閉店セールなので、12時までだったら1万円の物でも2万円の物でも全部1000円ですよ」と言われて。娘は、12時までにあと10分しかないと。だから、「ママに似合う物を急いで選んで買ったんだよ」と。「よいお買い物したでしょ」ってすごく嬉しそうに言うんですね。

私はその気持ちに水を差したくないですし、もちろんものすごく嬉しかったので、「ありがとう」って言いました。それ以上のことは言わなかったんですけど。

実は私の職場は原宿にありまして、毎日そのお店の前を通っているんですね。もちろん閉店していません。まだ開いています。私が原宿に通い始めた4年間からずっと閉店セールって言って、毎日毎日やっているんですね。

これも販売の手法の1つなんですよね。もともとの値段が1万円、2万円の物が全部1000円って安く感じちゃいますよね。娘にこの時はなにも言いませんでしたが、成長していく過程のどこかのタイミングで教えてあげないといけないと思います。お金の法則を教えてあげないと、いつか大きな失敗をするかもしれません。こういう小さな買い物だったら別にいいんです。ちょっとした火傷をするくらいのものだと思ってください。

なんですが、これが大きな買い物。例えば、マイホームを買うっていう時に、こういう心の癖に引っかかってしまうと、これは低温火傷みたいに、ジクジクジクジクいつまでもみなさんを痛めつけると思います。

これは私、先日ラジオで耳にしたんですけど。今マンションの販売って好調ですよね。新築だけじゃなくて、中古マンションも特に都心だと売れているそうです。中古マンションのすごく優秀なセールスマン、販売員の方が直接お話をされていました。

こういうことをやるそうです。「今日、3軒物件を見に行きましょう」と。「3軒ともお客様の要望に沿った物件です。ただ残念なことに、この3軒目っていうのが、申し込みがもう入っているんです。なので、買えない可能性が高いんですけど、とりあえず見てみましょう」と言う。で、3軒見るんですね。3軒目に、申し込みの入った家を見ます。そうすると、大抵の方はこの3軒目に惹かれるんですね。

「あのマンションがよかったな」と。「もし申し込みが入ってなかったら、うちが申し込むのに」とおっしゃるんです。実はこの申し込みというのは入っていないんですよね。

それから3日間くらい放置します。そして電話をして「お客様ラッキーです。申し込みを先にしていた方がご本人たちの都合でキャンセルになりました」と言います。そうすると、大抵の方が3軒目のマンションを買うってなるんですね。

3軒目のマンションは、販売サイドが売りたかった物件ということがほとんどです。ご本人たちが気に入ったのでそれでもいいのですが、もしかしたら、後々後悔するかもしれないんですね。なので、こういう心の癖を知ることでも、みなさんお買い物をする目が厳しくなると思います。ぜひ覚えておいてください。

年収よりも大切なこと

次です。婚活の法則ですね。これから結婚なさるって方もいらっしゃると思うので、ぜひこれも覚えていただきたいんです。なにかっていうと、年収より支出の内訳を見るっていうことなんです。

結婚相手の年収ってとっても気になると思うんですね。年収ももちろん大事ですが、それよりも大事なのは、なににお金を使っているかということだと思います。もし収入が高かったとしても、その方のお金の遣い方が雑であれば、多分お金は貯まらないと思うんです。

収入が多くてもギャンブル的な投資をしていたとしたら、逆に借金を作ってしまっているかもしれません。

それから、自分は食べ物にはお金を使いたい、ちょっと贅沢してもいい物を食べたい、美味しい物をゆったり食べたいと思っていたとしても、そのお相手が食べ物はお腹を満たすだけのもの、安くてもなんでもいいって考えていたとしたら、恐らく一緒に暮らしていくのは辛いと思います。

お金の使い方にその人の価値観がものすごく反映されるんですね。その価値観が違っていると、やっぱり結婚生活っていうのは厳しくなってくると思います。一般的には収入が高いと豊かな暮らしができると考えがちですが、一概にはそうは言えないと思うんですね。

私の友達でこういう方がいました。日本酒学校で友達になりました。離婚しちゃったんですけど、元旦那様は外資系の銀行にお勤めでした。ですから、収入はものすごく高いんですね。

なんですが、結婚してからけっこう大きな借金がある、消費者金融でお金を借りていることが発覚したんです。これはなんで借金していたかと言うと、ギャンブル的な株式投資、要は信用取引で大きく損をしちゃって、消費者金融でお金を借りていたんですね。

これが発覚した時に、彼女も協力して借金を返すことにしました。彼の銀行口座も全部彼女が管理するようになったんですね。月々の返済を定期的にちゃんとしていて、ボーナスが入ってこれでまとめて返済しちゃおうとなりました。彼女がそのお金を消費者金融に返しに行こうとしたら、彼がこう言ったわけですね。

「女の子がそういうところに行くのは格好悪いから自分が行く」と。そういう理由でお金を彼が預かって彼が返しに行くことになったんです。なんですが、そのままお金を返さずにまた株式投資をやっちゃったんですね。それで愛想がつきて別れるということになりました。

なので、収入が高いだけで判断できないんですね。これは極端なお金の使い方だと思いますが、ここまで派手にお金を使わなくても、じわりじわりとお金がなくなるということはあります。

これは、去年の女性誌だったと思うんですけども、「年収800万でも貧困化する」っていう記事が出ていたんですね。年収800万って上位30パーセントに入ります。日本の会社員の方の平均年収はだいたい400万ちょっとなんですね。なので、それの倍以上を稼いでいるので、年収は十分高いんですけども。

例えば、都心でマンション、家を買う。車を買う。子供を私立の学校に入れるっていうことをやっていると、いつの間にかお金がなくなっちゃう。ということがけっこうあります。なので、そういう収入が高い方と結婚したから安心というわけではないんです。

やはり収入に見合った、身の丈にあった支出ができるかどうかっていうのが結婚相手の大事な条件じゃないかなって思います。

リボ払いには近づくな!

では、次に参ります。借金の法則ですね。借金は必ず悪いわけではないです。よい借金もあるんですが、絶対にやってはいけないのがこちら。リボ払いです。リボ払いに近づくなってことなんです。

リボ払いってどういう支払い方法かっていうと、買い物した支払い額には関わらず、毎月決まった金額、5000円とか1万円とかを返済していくっていうやり方です。クレジットカード会社だとよくこのリボ払いをすごくお勧めするんですね。優しい支払い方法、返済方法ですよとものすごく勧めてくると思います。

これは私のクレジットカードの明細書なんですね。「明細が届いた後でもリボ払いに変更できます」って書いてあります。自分が思った以上に支払額が高かったら、ついついリボ払いしちゃおうかなって思っちゃいますよね。

なんですが、リボ払いは絶対にしてはいけません。これは悪魔の借金と思っていただきたいんです。

なぜかと言うと、1つ例をお見せしますね。憧れのブランドバック、リボ払いなら払えそうと思うかもしれません。バックの代金が30万円です。月々の支払いが毎月6000円。金利は14.52パーセント。だいたいこのくらいだと思ってください。

じゃあこれの支払い回数、支払い総額、金利の支払い額ってトータルでどのくらいになると思いますか? 

30万円の商品の代金に対してどのくらい最終的に払うか。35万円、40万円、45万円。ちょっと聞いてみましょうか。

30万円に対して35万円くらいって思う方? 40万円くらい? 45万円くらい? 

(会場挙手)

ありがとうございます。これ実際どれくらいかというと、ちょっと見てみますね。リボ払いで完済するまでの遠い道のりと書いていますが。1回払いなら30万円で済みます。例えば、10回の分割払いにしたら、10回で1年未満で終わりますので、分割の手数料っていうのは、1万5000円。31万5000円なんですね。

なんですが、月々6000円のリボ払いをすると、トータルで46万3319円。金利だけでも16万くらい払うと。もともとのバッグの値段の50パーセント以上を金利で払うことになります。

支払い回数は78回です。6年半かかっちゃうんですね。もし皆さんが30歳でこのバッグを買ったとしたら、完済する頃には36歳を過ぎている。もしかするとそのバッグをもう使ってないかもしれないですよね。ものすごく長いですよね。

しかも、これはこの6年半の間、このカードでほかのリボ払いはなにもしていない場合に限ります。もしこの途中でなにかほかのお買い物をしてリボ払いをしたら、6000円の月々の支払い額は変わりませんが、当然、完済する期間は後ろにずれますね。支払わないといけない金利がどんどんどんどん後ろに伸びちゃうんです。

これがリボ払いのものすごく怖いところなんですね。支払い金額が変わらないので、ついつい買い物をしちゃうと。これが地獄の借金だと思ってください。リボ払いは絶対しちゃいけないと覚えておいて欲しいんです。