小池一夫氏の漫画塾に入っていた

乙君氏(以下、乙君):一説によると小池一夫さんの漫画塾に行ってたとか。あれはどうなの? 春原ロビンソン氏(以下、春原):あれは『戦勇。』始まったあとで。

乙君:あ、そうなんだ。じゃあもう。

春原:そうなんです、なんか師匠がいないんで。なんか師匠がほしいなーと思って。

山田玲司氏(以下、山田):小池さんはけっこうな師匠だもんね。

春原:だって塾なんてお金払えば誰でも。

山田:誰でも行ける。

春原:ちょうどキャンペーンみたいなのやってて半額だったんですよ。

山田:そんなことなさってるのあの人。

春原:なんか半額キャンペーンで今なら半額で小池一夫に会えるみたいな状態だったんで。

乙君:小池一夫好きだったの?

春原:大御所なんで知ってはいますけど、そんな昔から読んで……みたいな感じじゃないですけど。

乙君:劇的なファンで、会いたくて会いたくて、ではなくて。

山田:小池さんってそういう人だよ。だから、受け入れますよーって。困ってる人どうぞっていうお爺ちゃん。

乙君:だから山本芳翠みたいなことでしょ。

山田:えーっと、どう答えたら良いんでしょう(笑)。よくわかりませんが?

乙君:明治の洋画界でいうところの。

山田:明治の洋画界を持ってこられてもわかりませんがー?

乙君:小池さんとこ行って。

春原:でも、そうですね。麻雀くらいしかやってないですけど。

乙君:え?

山田:そこで戦略を教わったの? 麻雀やりながら。

春原:いや、とくに。なんか教わったかな。でも僕がボンヤリ考えていたことを「それで良いよ」って言ってもらったんで。

乙君:あー! お墨付きをね。

春原:こんな長いこと第一線でやってる人に「合ってるよそれは」って言ってくれたんで、だいぶ手探りでやってたことが「あ、この紐でよかったんだ」って。

乙君:でも行って麻雀ばっかりやってたと。

春原:麻雀を打った。そうですね。

麻雀戦略はあまり役に立っていない

山田:ねえねえ、それで効果あったの?麻雀戦略は。

春原:麻雀は意外と役に立たなかったです。

乙君:あれ?

春原:麻雀から仕事に繋がることはなかったんですけど、まあでも人とコミュニケーションとるツールとしては便利なんで。

乙君:そもそもなんか、人とコミュニケーションとりたい方なんですか?

春原:実際はそんなとりたくないんですよ。

乙君:実際はとりたくないけど、その方が自分にとってはプラスだと。

春原:なんか、人とコミュニケーションとるのって面倒くさいんですけど結果的に家でボンヤリしてるよりは楽しいんですよ。面倒くさいけどやると楽しいんで。頑張ってやってますね。

乙君:あ、頑張ってんだ。

春原:頑張ってますね。

山田:それは俺もよくわかる。

乙君:あんなに人と会ってんのに!?

山田:超めんどくせーよ! 10年間。めんどくさいよなあ。

春原:めんどくさいですよ。座っててみんながローテーションで来てくれる方が楽ですよ。

乙君:ハイ、次の方ーって

山田:次のおもしろい方どうぞー。そして、俺のことに詳しい次のかたどうぞーって。決して俺を否定しない次の方どうぞーサイコーだよね(笑)。

春原:おもしろ話をプレゼンテーションして最後に冊子くれたら良いんですよ。でもそんな人いないんで。

乙君:そうだよね、いくしかないよねー。

山田:行くしかないよねー、相手のこと調べてねー。

乙君:じゃあ、何その、師匠的なものが欲しくて行ってっていうのは1つ戦略じゃないですか。そうじゃなくて自分の心の師匠みたいな、こんな漫画家になりたいみたいな、こんな漫画描きたいみたいなのはなかったんですか。ガツンとやられた幽白みたいな。

ワンピースを読んで漫画家になろうと思った

春原:こんな漫画描きたい……あれじゃないですかね、師匠。僕はあんまタチキリしないんですけど。

山田:しないね。

春原:あれは、鳥山明の真似なんですよ。

山田:鳥山スタイル結構あるよね。

春原:俯瞰に困ったら同じ角度でこうやる、みたいな。あれも鳥山スタイルですけど。漫画家になろうと最初のきっかけはワンピースですね。

山田:え! そうなの?

春原:なんか小学校の時に友達とコンビニ行ったら、ワンピースの1巻が置いてあったんですよ、コミックのとこに。そん時に「あ、漫画家になろ!」と思ったんですよ。

山田:何その。

乙君:運命論的な。

山田:出会っちゃった感じ?

春原:なんかわかんないんですけど、そん時に漫画家になろうって思って原稿用紙が売ってないなと思って、なれねーなって思ったんですよね。

山田:漫画家になれそう、俺にもできそうって思ったってこと?

春原:わかんないです。

乙君:これならいけるぞって思ったってこと?

春原:なんか、漫画家になろーっと思って。

乙君:ふわっと。

春原:ふわっと。

紙とワンピースがあれば漫画家になれる!?

春原:実際しだしたのは中学校の頃ですけど。原稿用紙がなかったんで、原稿用紙があったおかげで。

山田:紙の問題か。

春原:原稿用紙と、ワンピースです。

乙君:原稿用紙とワンピースで俺は漫画家を目指すようになったと。

山田:なんだそれなんだか役に立たない! この話(笑)。

乙君:立つでしょ。

山田:紙とワンピースがあれば漫画家になれますよって話でしょ。

春原:そうですね。

山田:まあそうだよな。

乙君:そうなんすか(笑)?

山田:まあまあそうなんだよ。

最強のライバルは誰か?

乙君:じゃあそれで、ライバルは誰ですか。同世代っていうか。

春原:ライバルは、さっき言ったじゃないですか。

乙君:さっき聞いたけどさ! 良いじゃん! そこはもういいよ!

春原:今は、なんかいないんですよ。いっぱい自分でやってるから。さっき言わなかったんですけど、自分でいろんな作品やってるからAをやってるときはBに負けたくないし、Bをやってる時はAに負けたくないし。

乙君:自分の作品。

春原:自分の作品に負けたくないっていうのはありますけど。最初、僕はあれですよ。『進撃の巨人』の人ですよ、諫山さん。僕より年下の人が頑張ってる! よし、俺も頑張るぞ! と思ったんですけど、もう今どうしようもないんで。もうどうしようもないんでライバルじゃないですね。

乙君:いや、こっからかもしんないじゃないすか。

山田:言っとくか! ナタリーも見てるし。ライバル宣言。 

乙君:ナタリー見てないし。

春原:なんかもうちょっと、「春原さんでも越えられそうだよ」みたいな人を教えてもらえると助かりますね。

乙君:どゆこと?

春原:程よいライバル。

山田:程よいハードルが欲しいと。

乙君:でも裏サンじゃないの? あの、結婚式に来てた。それこそ、だろくんとか。

山田:でも全然系統が違うから。同じ系譜の人がいたら気になるんじゃないかなと思うけど。全然違うでしょ。

ライバルは『鋼の錬金術師』作者?

乙君:俺でも、なんかこの絵っていうか、あのリズム感とか最初にフワっと思ったのが『鋼の錬金術師』に似てんなみたいな。

春原:あー、それすごい言われて。これ描いてる時に読んだことなくて。読んだことはないんですけど、しっかり読んだことはなくて。でもみんなに似てるって言われるから読みました。……おもしろいですよ。

乙君:ろ、ろびくん。俺も読んだ。おもしろい!

山田:俺読んだことないけど。

乙君:出たよ! ハガレンの荒川先生見てるかもしれないですよ。

山田:あー、なんかもういろいろ謝罪だな

乙君:知ってた? 荒川先生女なの。

山田:お前その話いーよ! みんな知ってるよ!

春原:みんな知ってますよ。

乙君:衝撃受けたもん。女なんだー! って。どうりで絵がこんな感じだあって。

山田:それで?

乙君:いや、だからライバルは荒川先生だと思うんです。

山田:じゃあ荒川先生ということにしときますか。

春原:……無理でしょ。

乙君:そんなことないでしょ!農大漫画描けばいいじゃない。

春原:そうですね、じゃあ工業大漫画を。

乙君:ちょうおもしろそう

山田:これから先さ、いろんなジャンルをやってこうみたいなのあんの?

春原:いやー、ないっすね。

エロは恥ずかしいから描かない

山田:でも、育児漫画とか始めてんじゃないの。

春原:あれは仕事にはしたくないですね。多分エッセイ系を仕事にすると描きたくないことも描かなくちゃいけなくなっちゃう、締め切りもやってくるから。そこまではやりたくないなって。将来子供に見られて子供に怒られたくない、みたいな。

山田:エロも描かない?

春原:エロも描かないですね。恥ずかしいんじゃないですかね。

山田:恥ずかしいの?

春原:女の子が、みたいなやつですよね。

山田:なんか、そのー、そっちに寄る人多いじゃない。いかないよね。

春原:なんか、みんな女の子描きますよね。

山田:そうだよね。

春原:いつ、イラスト描く男の人はいつ女の子描き始めるんですかね。

山田:描かないね。

春原:だってはじめはみんな少年漫画だから。ドラゴンボールとか真似して描くじゃないですか。で、小学生ぐらいの時って「女描くの恥ずかしいー!」みたいなのあるじゃないですか。

女の子キャラ描いてるの見られたら、「わー、女描いてるー!」って言われたり、ストリートファイターで春麗選んだら「エロ!」とか。

乙君:あったあった。スピニングバードキック見たいんだろ、お前みたいな。

春原:それなのに気づいたら、僕あのイラストとか漫画仲間とかいなかったんですけど、20歳過ぎて周り見渡すと大体みんなエロい絵描いてんですよ。どこで!?

山田:いつの間に!? って。

春原:僕はずっと悟空やワンピースを描いていたのに。僕はずっともうキラキラした目で描いてるんですよ。「いつ君達はエロ解禁になったの?」っていうのはわかんないんですよ。どこなんすかね?

山田:わかるわかる。

春原:エロ本は読みますけど、でもエロ本描こう! とはなんないじゃないですか。

乙君:まあそうだけど。でもなんか俺、今から適当なこと言いますけど。

春原:じゃあ辞めて下さい。

乙君:なかなかいないよ、今から適当なこと言いますって。

山田:ハードル下げやがって。

乙君:なんかエロ描いたら、とりあえず売れるみたいなこと言ってませんでした?

山田:あの、ルキが出てきた時に、最初。剣がザンッと刺さってフードが。そんで、あの登場シーンで。

春原:『戦勇。』の登場シーンで最初に女の子剥ぐみたいな。

山田:あれは本当に物語の序盤のつかみで、剥いでるシーンをちゃんと描いてる、しかも見開きで。で隠すべきところはちゃんと隠しといてっていうのをちゃんと踏んでるじゃない。あれも戦略的にやったってこと?

春原:そうですね。

山田:しかもドローリーじゃん、あれって。

春原:ほう。

山田:ほう。じゃねーよ! アンタが描いてんでしょ! お前が描いてんじゃねーか! 「だからこれをやれば俺は生き残れるんだ」みたいな決死の覚悟であれを描いたの?

春原:何も考えてないっす。

山田:おい! 絶対ないだろそれは!

キャラが勝手に話作ってる感じの漫画

乙君:でもロビンくんの絵って全然エロくないじゃないですか。

山田:いやいやいや、そんなことないって。

春原:でも、ここでエロ描いたらオモロイってなったら描くと思うんです。エロいことしても良いキャラだったらやりますね。

山田:全然出てこないもんね。でもあのあと、あのおじいちゃんが出てきてからの良い伏線になってるよね。あれは序盤から考えてたの。ロリコンのお爺さんが出てくんじゃん。しつこく絡むじゃん、であのネタでずーっといくじゃん。あれも最初の展開で考えてたの?

春原:はい。全部考えてました。

山田:本当かー!? だからあれ、本当見てて思うのが、これどこまでこの人アドリブなんだろうってう。

乙君:なんかキャラが、勝手に話作ってる感じの漫画だなと思いました。

春原:そうですね、勝手にキャラが動いてる感じで。大まかなストーリーは考えてるんですけど、ストーリーっていか、ここでこうやるみたいな。あとはアドリブですね。

山田:やっぱそうだよね。だからこうやってなんとなーく喋ってて、ズン! バタ……死んでない、みたいな延々とパターンで見せていくっていう、あれはリズムだよなっと思って。

乙君:リズムは本当にすごいですよ。

山田:だから1コマの中でボケとツッコミっていう。

乙君:ついつい読みますもん。

山田:だからあのペースっていうのが、多分この人たちの世代の速度なんだと思うんだよね。だからボケとツッコミが同時にパーン! パーン! と入ってくっていう。

乙君:あと全員がツッコミで全員がボケなんですよね。

山田:あ、そうだね。

乙君:誰も固定した狂言回しがいないっていうか。

山田:うん。

乙君:主人公は主人公で自分に突っ込んだりするし。

山田:あと真顔が多いっていう。

乙君:シュールさとのバランスはね、非常に。