ユーザーテストをする際に気をつけるポイント

中山陽平氏:皆さん、こんにちは。ラウンドナップ・コンサルティング代表の中山です。今回のノンスペシャリストのためのWebマーケティングラジオは、ユーザーテストというものについてやっていきたいなと思っています。

このユーザーテストというものの名前は、皆さんおそらく相当聞いたことがあるんじゃないかなと思うんですけども。やり方によって効果がある場合と、なかなか効果がでないという場合があります。

ユーザーテストというものを知って実際にやってみて、うまくいった場合もあれば、結局あんまりやった意味がなかったなあ、ですとか、むしろ良くない結果になってしまった、ランディングページが改悪されてしまった、なんていう結果に陥ってしまったケースもあると思います。

そういったものの1つの原因として、ユーザーテストのそもそもの捉え方に問題があることが多いんですね。実際にお客様にユーザーテストやってもらうには、こういうことを必ず気をつけてくださいというポイントが1つあります。今回はそれについてお伝えしてきます。少し長いので2回に分けて配信していきたいと思います。

ユーザーテストをは、必ず競合とセットで

今回のユーザーテストなんですけれども、結論から言ってしまうと、ユーザーテストをやる場合は、「必ず競合とセットでテストしてもらう」。これを必ず頭の中にいれてもらえればと思います。

具体的にどういうことかというと、できるだけお客さんが実際に自分の欲求を叶える時の行動を再現してもらわないと、ユーザーテストはなかなかうまくいかないんですね。

どういうのがうまくいかないかと言うと、例えば「このサイトについて、皆さん率直なご感想などいただきたいので触ってみてください」ということで、サイトのトップページから触ってもらったり、それから特定のランディングページから触ってもらったり。

その人がどういうふうに動いているのかなとか、その人のつぶやきとかを見ながら、改善点を探っていく。これがユーザーテストとして一般的なパターンだと思うんですけれども。

これって、想像してもらいたいんですけれども、皆さんが何かのサービスを探す行動とはちょっと離れていますよね。何が離れているかと言うと、皆さんは最初必ずいろいろなサイトと比べて、そしてどこかのサイトにたどり着く。

そのサイトにたどり着いた後も、いくつかのサイトを見比べながら、自分の要望を最も叶えてくれそうなところにコンタクトを取る。そういった形の情報探索行動を取っていると思うんですよ。

でも、既存の自社サイトだけをテスターに見せる形のユーザーテストは、その前提のところを全部すっ飛ばしてるんですよね。つまり、擬似的に「あなたはまず私のサイトでものを探そうと思っている」という、実験室の中でしかありえないような状況を想定して始めているわけです。

そういう現実離れした状況で行なったユーザーテストというのは、当然現実的に意味のある結果は生み出さない。ということで、そういうユーザーテストを行なって出てきた解析結果というのは、だいたい良い方向にいかないんですよね。

実際のお客さんの行動とかけ離れていては意味がない

これは余談ですけれども、何でそういうふうにやるという考え方が一般的になっているかというと、もともとユーザーテストというものは、ユーザビリティ、つまりサイトの使いやすさですとか、誰でも同じように利用できるというところを突き詰めていくために行なっていたのがスタート地点だったんですね。

使いやすさというものは、別に競合を意識しなくても、考えなくてもいいじゃないですか。自分のサイトが使いやすいかどうか。あるいはアプリケーションが使いやすいかどうか。昔ながらのデスクトップ・アプリケーションが使いやすいかどうか、というのは、別にお客さんがいくつかのアプリケーションを使い比べて、一番使い勝手がいものを選ぼう(というわけじゃない)。

もちろんやってる人もいるとは思いますけれども、すごく大変なので。

「このアプリケーション上手く使おうよ」「でも、ちょっと使いづらいな」。そういうのを改善するためにユーザーテストを行なって、実際にインターフェイスを変えていく。そこからスタートしたのがユーザーテストだったので、Webサイトというものも、Webサイト1個だけを見て、それを改善していくというふうになってしまっています。

でも、それって現実的なお客さんの行動とはかけ離れているので、意味がないんですよね。こういう背景があります。

成果に繋がるユーザーテストをする方法

その前提で皆さんにぜひ行なっていただきたいのは、ユーザーテストを行なう場合には、「必ず競合サイトと一緒にやる」ということを心がけておいてください。

つまり、あなたのサイトの競合サイト、たぶんいくつかあると思うんですよ。3つか4つ。お客さんに、「あなたはこういうサービスで、こういうことを実現したいと思っている。このサイトとこのサイトとこのサイトとこのサイトを見つけた。何か1個選ぼうと思ってるんだけれども、どうしますか?」みたいな状況をシミュレーションしてもらう。

そうすると、たぶん自分のサイト以外でも他のサイトにいったり、あるいはもっと別のサイトに行ったりだとか、それから、もしかしたらそこでさらに検索行動を取るかもしれないですね。

やっぱりそういった行動まるごとを理解しないと、お客さんの本当のニーズとか、本当にあなたの会社に足りないものが何なのかはわからないですよね。

やっぱりお客さんもいくつかのサイトを使い分けて、初めて「あ、私にはこういう情報が必要だったんだ」とか「これはこういうふうに並んでいると使いやすいんだな」とか「このサイト使いやすいな」「このサイト使いづらいな」というのは、他のサイトと比較しなければわからないということでもあります。なので、競合と比較する。

理想としては、検索から始めてもらうんですね。現時点で特定の検索キーワードにおいて上位表示されているんでしたら、もう検索行動から始めてもらったほうがいいですね。

最初にいくつか検索キーワードを叩いてもらって、それも自由にやってもらって。これで自分が上位表示しているような検索キーワードになかなかたどり着かなかったら、ちょっと誘導していいと思うんですけども。

運よくと言いますか、それまでの努力の甲斐あって、あるキーワードにおいて自分と他社が比較されるような状況になれば、そこから検索結果、SERPですね、その中から、自分のサイトは選ばれるのかどうかとか、どういうふうにいろんな情報を行き来きしているのか、いろんなサイトを行き来しているのか。

タブを使っているという人もいれば、別ウィンドウを開いてる人もいれば、全部1つのウィンドウを使う人もいると思います。そういう時に、それぞれに対してどういう探し方をしていて、じゃあ、そういうことをしているんだったら、うちはどうすべきか。こういう文脈で考えないと、サイトというのは改善していきません。

ということで、ユーザーテストを行なうときには「必ず競合とセットで行なう」というところを押さえておいてください。この考え方にするだけで改善のポイントが深く、そして広くなってきます。

出てくるアウトプットの質が大きく変わっていきますので、ユーザーテストは、ぜひそういったリアルなもので作ってもらえればと思います。

ボードゲームの場合で例えるならば

例えるなら、これはブログの記事にも書いたんですけども、ボードゲームにぜんぜん詳しくない人がいたとします。その人に「新商品の、この新しいボードゲーム。これをやってみて、おもしろいところとつまらないところを教えてください」と。他のボードゲームについてはとくに情報を与えない、という商品開発のテストですね。

というものを行なった時に、もしそのターゲットにボードゲームにある程度詳しい人を想定しているんでしたら、このテストからはおそらくろくな結果がでないと思うんです。

何でかといったら、ターゲット層が違いますから、他のボードゲームと比べられないですよね。私も全然ボードゲームよくわからないですけども。「あれと比べてたら、ここはこんな感じのほうがいいよね」とか、そういう意見というのは、当然他を知っていなければいけない。

もしこの会議が、「ボードゲームをやったことがない人に対しておもしろいと思ってもらえるボードゲームを作る」みたいな企画だったらいいと思うんですけれども。

そうではなくて、既存のボードゲームユーザーに対して、新しい商品を投入するというシチュエーションであれば、もちろんボードゲーム好きな人を集めるっていうのは大前提でありますけれども。

そうではなくても、似たような競合の商品として、あるいは今流行ってるものとして、「こういうものがありますと。それでうちはこういうものを出しまして。これとこれとこれを遊び比べてみて、ポイントポイントを出してもらえればと思います」みたいな。そういうふうになりますよね。

これをWebサイトでも同じようにやっていただきたいなということです。

ということで、ユーザーテスト、とにかくやること自体はすごく意義があるんですけれども、競合の存在を忘れたままやってしまうと、方向性が非常にずれてしまいます。なので、競合というものを考えた、競合込みのユーザーテスト。これをぜひ行なってみてください。

ユーザーテストそのものがよくわからないという方は、ラウンドナップ・コンサルティングのほうで公開している「現場で使えるWeb解析入門」というところの第11章ですね。こちらでユーザーテストのやり方を解説しておりますので、ぜひこちらご覧いただければと思います。