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「高齢社会では”女性の力”が重要」 92歳の現役シニア・アドバイザーが訴える

「高齢社会では”女性の力”が重要」 92歳の現役シニア・アドバイザーが訴える

92歳にして現役のシニア・アドバイザーを勤める先川祐次氏。現代と同じく高齢社会だった戦時中の体験を振り返りながら、"年齢の格差"の解消、そして高齢社会を乗り切る切り札としての"女性の力"を訴えます。

スピーカー
シニアライフ・アドバイザー 先川祐次 氏
参照動画
Time is the Present. 格差を無くして明るい高齢社会: 先川 祐次 at TEDxFukuoka

高齢社会では、年齢の格差が縮まる

先川祐次氏 こんにちは、みなさん。私、こんな経験があるんですよ。休日のショッピングセンターで、向こうの方から顔見知りのお嬢さんが歩いてきて、2人連れなんですね、近寄ってきて。「今日はショッピング? 姉妹でいいねぇ」って話しかけたら、「いいえ、これは母です」って。 日曜日の公園で、坊やが遊んでいる。お父さんと2人だと思ってお世辞のつもりで、「坊や、いいねえ。休みの日にパパと一緒で」と言ったら、「おじいちゃんだよ」。老眼ですからね、私。そんなふうに見えるんですよ。 考えてみれば、高齢社会になったということは、私が勘違いするぐらいに歳の差が縮まっちゃってるんですよね。つまり、年齢の格差が縮まってきているということなんです。だからこう考えてみたんです。高齢社会を明るくするには、いろんな社会にある格差、そういうものをなくせばいいんじゃないか。 今まで私たちが持っていた、型にはまった考え方。もしかしたらそれが、心遣いのつもりだったのが、差別になったり格差になったりしていることだってあると思います。長く生きられるようになったということは、早く死ぬ人が少なくなってきているわけですから。 多くの人が長生きできるということは、私たちが持っている年の格差がなくなってきている。そんな事を思って、ぜひこの格差をなくしたらいいんだ、ってことを考えるんですが、そういうことになったのは、2つ、私に思いがあるからです。1つは、私ごとなんですが、自分の奥さんの話です。 gazou1 私たちは、大陸から引き上げてきました。戦後にここ、博多へ来た時は、無一文でした。でも、私の奥さんは何をしたかったのか、戦災孤児のところへ行って世話を始めたんです。そして私はうまいこと新聞社に入って、それからまもなく海外に出るようになって、イランやイラク、遠くはエチオピアに行っていました。 1年ぐらい家を空けることもありました。それで、帰ってきましたら、奥さんが私に「保育園を作りたいのよ。だからあんたもお金出して」と。私は言いました。「悪いけど俺、金はないけど、精神的援助は惜しまないよ」。 そしたらですね、「あんた、それじゃあ日本のベトナム戦争援助と同じじゃない!」と言われました。それから、彼女は女子大時代の友達と一緒になって、ウーマンパワーで保育園を作っちゃったんです。それから何十年、私は私で海外を飛び回り、私の奥さんは一生懸命保育園をやりました。 「あいつ、女房を働かせてうまいことやってやがる」なんて陰口もきかれましたけど、たった1つ守ったのは、お互い勝手なことをして、相手に干渉しないこと。だから入れ違いもあって、夫婦げんかはいっぱいしました。あんまり頭にきたもんだから、奥さんに「あんたはソクラテスの妻だ!」って言いました。そしたら彼女、「それにしては、あんた偉くならないわねぇ?」。 そう言われて、私、ギャフンと参っちゃったんですよ(笑)。でもある時、彼女が肝硬変になって、救急車を呼びました。その時駆けつけてくれた救急隊員、それは、幼い時にその保育園を出た卒園児でした。その救急隊員は私の奥さんを抱きかかえて、「園長先生、大丈夫だよ!」と、救急車で病院へ連れて行きました。それが最後の旅立ちでした。

「あの人、歳だから……」は差別

gazou2 もう1つあります。ケネディ元大統領が亡くなって、ちょうど今年で50年です。私はその頃はワシントンにいて、特派員として毎日ホワイトハウスに通うのが日課でした。ケネディという人は、とても明るい人、そしてフランクな人ですから、よく突然「今から記者会見」なんてやるんです。だから油断も隙もないんですけどね。 ある時、庭で休んでいたら、例によって「今から記者会見」と。みんなワーっと走りまして、80人ぐらい。私も走りながらちょっと隣を見ましたら、白髪の、年の頃は70を過ぎたぐらいのカメラマンが大きな脚立を担いで……、昔ですからね、脚立も大きいんです。そしてカメラも、スピグラというプレス仕様の大きなカメラを担いで、ふうふう言って走った。 その横を若いアメリカ人の記者が一緒になって走っているんだけれど、脚立を持ってやろうとしないんですね。自分は自分で走っている。私はふと思いました。「日本ではこんなこと先輩にさせないのに」って。 このことが気になったので、後でアメリカ人の記者の友だちに「あれ、どういうことかね?」と聞いたんです。そしたら、「君、あのカメラマンが歳だからできないと言うんだったら、それは差別だよ。彼は、ホワイトハウスのカメラマンだというプライドを持って、一生懸命やっているんだ」。そう言われて私はハッとしたんですね。 この2つのことが、実は私の、自分の考え方のものさしになっているんです。

戦時中の高齢社会を乗り越えた手段とは?

gazou3 これは、アメリカの統計局が作った人口グラフです。ピラミッド型になっていますが、1996年というのは、ちょうど日本が高齢社会になった頃。ご覧のように、ちょうどピラミッドの形をしています。これは世界の人口ですね。 そして右側をご覧になると、2025年、まもなくあと10年余りですが、こういう具合に、ドーム型に世界の人口はなります。青いほうが男性、赤いほうが女性ですね。三角形からドーム型に、つまり世界も高齢社会になるということがわかります。上の方がずーっと太くなってますね。つまり高齢が進むということです。 gazou4 もう1つ、このグラフは日本の国勢調査から作った人口ピラミッドです。左側の、私が生まれた1920年の頃は、ご覧のとおりピラミッドの形をしています。そして最近の2010年になると、塔のような形になってきていますね。これを重ねてみるとわかるように、ピラミッド型の時は安定して見えますが、塔のような形になると、うっかりするとフラフラフラフラします。 ここからわかるのは、「女性と男性、両方ががっちり組んでバランスを取る」。そして「上の方の年寄り、高齢者は、下が重くならないように、身軽になって自立する」ということが、これを安定させることだというのがわかるんじゃないでしょうか。 じゃあ、こういう姿が今まで日本はなかったのかというと、実際はあったんです。それは、70年前の戦争の時。若い人は全部海外へ出てますから、残されたのは女・子どもと高齢者です。特に女性は、みんなで日本国内の日常の生活のリード役をしてました。そして高齢者も、自分にできることはなんでもやろう、と。それをしないと生活が持たなかったんですね。ですから戦争中というのは、高齢社会だったと言えるんです。 今、日本の中では6000万人の人が働いている。労働力が6000万人なんですけれど、そのうちで男性は3500万人、女性は2500万人。今から高齢者がだんだん増えていって、仕事をする人が少なくなれば、男性はみんな働いてますから、女性がもっと働いて、そしてもっと責任のある仕事をしてもらわなければ、この形は持たないということがわかります。 ですから、これからいちばん大事なのは、女性の力をもっと借りること。そして男性と女性の格差をなくして、女性にもっとリードしてもらうような社会にする必要があります。 これにはもう1つ理由があるんです。アメリカの調査でも日本でも、私がはじめに言ったように、女性のほうが長生きするんですよ。5年から10年は長生きするんですから。高齢社会というのは、みんな女性のお世話にならなきゃいけない社会になるっていうことなんですよね。 そしてアメリカでも日本でも、男女とも(誰に)いちばん介護してほしいか、世話してほしいかという調査をしますと、世話は女性にしてほしい、しかも実の娘にしてほしいというのがナンバーワンなんです。たった1つだけ例外は、お姑さんはお嫁さんの世話にはなりたくない。これは日米共通らしいです。 (会場笑)

Today is a gift

いずれにしても、女性がもっと責任ある(仕事ができる)ように、そういうシステムを作ることが必要だということがわかります。じゃあ、そのためにどうしたらいいんだろうか。 ケネディが言いました。私たちはみんな同じ権利、All Civil Rightsと言うのですが、市民権を持っている。みんな平等だと言っていたのですが、そのとおりで。第一に、女性がもっと議員さんになって政治の面に出て、そういうシステムを作るようにすればいいんですね。 ところが今度の選挙でも、52名いた女性議員は38人に減っちゃっているんです。じゃあどうすればいいか。 選挙の時に、各政党が必ず女性の候補者を立てるようにする選挙制度を作ればいいんです。これはすでにノルウェーやデンマークではやっています。そういうことをやることによって、日本でも女性にもっと責任のある仕事をどんどんしてもらえるようなシステムを、制度を作っていく。ということをすれば格差はなくなって、さらに日本の将来は明るくなると思います。 ケネディが言っていました。私たちはみんな同じ惑星の中に住んでいるんだ、と。 最後に、私が大好きな言葉なんですが、第二次世界大戦の終わりにアメリカの大統領夫人だったエレノア・ルーズベルトが残した言葉です。それは、 「Yesterday is history. Tomorrow is a mystery. Today is a gift. That’s why we call it the present」。(昨日は過去のもの。明日は未知のもの。今日は贈り物。) どうか毎日が私たちのプレゼントになるように、格差を無くそうじゃありませんか。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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