外国人が見た「日本でもっともクールな場所」

麻生太郎氏:この「3本目の矢」の1つに観光産業、その中の一部にアニメ、コンテンツ、いろいろ書いてやって努力をしておられるのだと思いますけれど、今までの製造業と違って、いわゆるコンテンツとかソフトを飯の種にして伸ばしていこうという話なんですけれども。

海外から日本に来る人、観光というところに関して、「クールジャパン」という言葉が流行り始めてかれこれ数年経ちますけれど、「最もクールなジャパンの写真を見たことがあるか」と言われたことがあって……。あれはNHKの番組だったと思うんですが、見たことがあるんです。

岩場のところにいきなり自動販売機がぽつんと立っていて、それに金を入れたら出る、という写真が「これが最もクールなジャパンの写真だ」と言うわけです。どう考えてもクールに見えないから、何だこれと思って見ておりましたら、「これがどこだかわかるか?」と言うから、「わからないけど、鬼押出しか?」と聞いたら、「そうだ」と。軽井沢の奥の鬼押出しだと。

全く人のいない、ずーっと溶岩の続いていたところに、いきなりポツンと自動販売機がある。「金を入れたら出る」と言うから、「当たり前じゃないか」と言ったら、「いや、金を入れたら出るということは、あの中に金があるからじゃないか」と。「そりゃそうだろう」と。「どうして盗られないんだ?」「盗らないよ、盗ったら罪だろう」と言ったら、「それはアメリカでも罪だ、世界中どこでも罪だ」と。

「しかし、この国では自動販売機が24時間365日外に立っている。あんたはいろいろな国に住んだことがあるみたいだけど、海外で自動販売機が屋外で24時間365日立っている国を、日本以外に見たことがあるか?」と言われるまで、私はあんまり気が付かなかったんです。

へぇ、と思って見ていたのですが。その人はイギリス人だったんですが、「全くこういうことは考えられない。しかし軽井沢でこれを見たときにショックで、思わず写真を撮ったら、これが最もクールなジャパンになった」と。

我々の考えている良いところと、外国人が見た良いところというのは、たぶん違うんですよね、これは。だからこういったところの何が良いのかというのは、むしろ向こうの人たちに聞かないと、こっちが「これはどうですか?」と言っても、全然興味がなかったりしますので。そういったところはいろいろと考えないといかんところです。

日本人が得意な非言語のコミュニケーション

我々はアニメの話をよくしますけれども、アニメーションの中で、ずっと続いて今でも売れている、人気のアニメーションはたぶん「ポケモン」「ドラえもん」「ワンピース」だと思いますけれども……。

(議場の一部から笑い)

麻生氏:これで今笑えた人は、もうわかっている人たちなんですよね。ところが問題なのは、これを聞いても笑えない人がいっぱいいるんだな、これが。「ポケモン」のいちばんの良さは、一言もしゃべらないんですよ。「チュウ」と「キュキュキュ」しか言わないんですから、ポケットモンスターっていうのは。でも、「言葉なしでもコミュニケーションができる」という、この文化を世界に植えつけた最初のものだと思いますね。

「ドラえもん」や「アストロボーイ」、これは鉄腕アトムのことですけれども、これも同様に、「ロボットは人間が困ったときに助けてくれる」という概念を日本人に植えつけたがゆえに、日本では世界でいちばんロボットが普及した。ヨーロッパでは普及しませんでしたから。「ロボットが人間を使う」という話になって普及しなかった。

「ワンピース」は、あれだけのキャラクターがワチャワチャ立ってるやつなんですけれど、徹底しているのはたった1つで、「困ったやつは絶対助ける、仲間は絶対助ける」という哲学なんですよ。この3つが普及するということは、日本の文化がサブカルチャーを通じて世界に広まっていくということですので。

こういったものが良い、といって日本に人が来るというのは、少なくとも活字文化ではなくてこういったものから入ってくるというのは、外国語とか英語があまりうまくない日本人にとりましては、絵で通じるというのは非常に大きい。我々は昔、鳥獣戯画に遡って絵を描いて、マンガを描いてきている。マンガのルーツは高山寺の鳥獣戯画に遡りますので。

いろいろな意味で、こういったものは今後とも自信を持ってやっていくのが観光等々にもつながっていくんだ、と私自身の独断と偏見ですけれど、そう思っております。