テレビ局には24時間しか売り場がない

大堀航氏(以下、大堀):なるほど、ありがとうございます。僕からの質問は以上にさせていただいて、今、大信田さんがチーフプロデューサーをやられてる『チャージ730!』も朝の生活経済情報番組ですよね。

大信田雅二氏(以下、大信田):やってるんですけど、これが非常に苦労をしてまして。

要は、今までアニメの再放送をしてた枠に、情報番組を開拓しようってなったんですね。テレビ局って実は24時間しか売り場がないんですよ。もしマクドナルドだったらいくらでも店舗を作ればいいじゃないですか?

だけどテレビは24時間しか売り場がないので、単価を高めるしかないんですよね。そうすると、そこは視聴率になってくるので。

例えば、今までアニメの再放送をしていて比較的スムーズにいくかというと、「じゃあ、ここをもうちょっと見えるものにして、単価を高めていって」となる。単価というのはそこにCMを出したりして、スポンサーからいただくCM料金になるわけですけども。

そういうのをやろうかとなると、そこをまたテコ入れしていくわけですけど、ただ朝7時半の番組としては、他局にちょっと似ちゃっている部分があって、かなりレッドオーシャンなんですよね。

今、中で話してるのが、テレビ東京らしいもっと経済に振って(いる番組)。今、スポーツの情報やエンタメの情報が入ってたりするんですけど、実はもっと(経済に)振らなきゃいけないなと動いてます。ただ、それで成功するかどうかはちょっとわからないですけど。

大堀:番組としてはすごい、何か斬新というか。内容を見てると、わりと企業情報も扱われてるので、企業広報にチャンスがありそうかなと思うんですけど、どうですか?

大信田:ここはわりとゆるいから、視聴率が低いので広告的な効果があまりないかもしれないですけど。とはいえ、やっぱり一般視聴者が見て「これ何のことなんだろう?」ってわからないようなことはテレビのニュースには不向きなので、そこは少しハードルがあるかもしれないですけど、『ワールドビジネスサテライト』よりははるかにハードルが低いです。

大堀:ちなみに、ここにはどうやって連絡を取れば?

大信田:FAXはありますので。FAX何番だっけな、ちょっと忘れちゃったけど。

大堀:後ほどいただければ、この中だけで共有いたしますので、ありがとうございます。僕からの質問は以上にさせていただいて、皆さんから「これだけは聞いておきたい」というのがあれば、ぜひどうぞ。

大信田:日本人は奥ゆかしいから、ここで手を挙げる人はほとんどいないんですよね(笑)。あ、どうぞ。

ニュース番組にFacebookは有用か

質問者1:ありがとうございます。途中でSNS、Facebookがわりと親和性が高そうだというお話だったんですけど。

個人的な趣味で質問してあれですけど、番組を作るとき、もしくは企画するときに、テレビで流すだけじゃなくて、SNSも使って何か情報発信しようとか、リアクションを見て生かそうみたいな、突っ込んだ試みはされてますか? もしくはやろうとしたことがありますかというのが1つ。

あと、例で挙がったパリのテロ事件とか、わりと旬が下がってきたのが(あったときに)、「(ニュースの伝え方で)視聴率を上げよう」みたいな判断をするとおっしゃいましたけど、その判断は結局どこでするんだろうというのがけっこう気になって。

新聞を見るのか、ネットなのか、「エイ!」というプロデューサーの勘なのか、その辺はどういうルール、基準があるのかというのが気になったので、まずその2つを。

大信田:2番目の質問に先に答えると、ニュースの判断はデスクがします。さっき8人いると言いましたけど、それは他の人がどう伝えているかを見るんじゃなくて、それぞれのメニューの担当者が自分で判断をするんですよね。

そうすると、結果として似てるときもあるし、違うときもありますよね。だから、新聞のいろんな各紙の朝刊で同じタイトルが踊ってるときもあれば、ぜんぜん違うときもあるじゃないですか? あるいは同じニュースなんだけど、タイトルの取り方が違うときってあるじゃないですか?

それは、それぞれのメニューを自分で判断する。テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』の場合は『ワールドビジネスサテライト』のデスクが数人いて、今晩の担当が1人いるわけですけど、その人間がこのニュースをやるかやらないか決めて。

会議するときにプロデューサーも出てますから、プロデューサーも「これおもしろくないよ」とか「次こっちにしようよ」とか、「今日、こういう画が撮れたからこれでいきましょう」とか相談をしながらやるんですけど、完全に独自に判断をします。

最初の質問ですけど、SNSは、例えば『ワールドビジネスサテライト』とFacebookのつながりで言えば、ある種番宣的に1日3つとか4つとか、ちょこちょこと事前に「こんなとこに取材に行きました」というのを出してます。

『ワールドビジネスサテライト』とFacebookが比較的早い段階から好評をいただいたのは、キャスターに一人称で書かせたからですね。

ネットってすごく無機的に見えるかもしれないけど、あの向こうに人間が見えるかどうかってすごく大きくて。例えばさっきの相内というアナウンサーが「トレたま」をやってますが。

「相内です」って書いてあって「今日こんなところに行ったんですけど、こんなんでした」って相内の写真が出ているのと、番組名で誰が書いてるのかわからないのとでは、反応がすごい違うんですよね。

男性キャスターが書いたときと、女性キャスターが書いたときは、女性キャスターが書いたときのほうがはるかに反応が多いんですけど(笑)。

そんなこともあって、そうやって事前に少し宣伝をするという使い方をしたり、あとはコメンテーターへの質問をFacebookで募集したりというのが今ある。これは、ある種双方向ですね。

あとは通常はやってないんですけど、『ワールドビジネスサテライト』の年末特番みたいな、いつもと違うイレギュラーな番組をやったときに、Twitterで来たものを下に出すとかやってましたね。ただ、今はそれはもう下火だと思うんですね。

あれが始まったのは、もう2年か2年半ぐらい前ですかね。Twitterを下に出すと、なんとなく双方向っぽい感じがしておもしろいなというのがありましたけど、なんとなくそれもちょっと飽きたというか。

あれはけっこう難しくて、変なツイートが出ちゃうと大問題になっちゃうんで、放送禁止用語みたいなのがバンバンきちゃうので、スクリーニングするわけですが。

LINEも公式アカウントを作ってるんですけど、こっちからプッシュ的にいくのあるじゃないですか? あれをあんまりやっちゃうとすぐブロックされちゃうので、めったなことではやらないですけどね。

質問者1:それも大信田さんが見られてる? 直接担当されてるわけじゃないですけど、どんな感じかは追いかけていらっしゃる?

大信田:番組のFacebookをときどき開いて見たり、番組のTwitterを私もフォローしてるので、Twitterを開いたときに番組が今どんなのを出してるかというのは見れますけど。

質問者1:ありがとうございます。以上です。

大堀:他に質問ありますか?

大信田:ぜんぜんくだらない話でもいいですよ(笑)。

記者発表のお知らせは、いつ出すのがいい?

質問者2:うちは記者会見のお知らせを1週間くらい前に出してるんですけど、そもそもそのスケジュールでいいのか……。

大信田:1週間くらい前だとわりといいと思いますね。2週間前に出しても記者連中は1週間後に忘れてるので(笑)。だから、一応うちは紙できたものを分類する箱があって、曜日別になってるんですけど、1週間くらい前だと『ワールドビジネスサテライト』的にはいい感じですね。

あとは先ほどの質問でいうと、「(リリースを)その前に言って(番組に)取り上げられるんだったら、事前に取材できますよ」ということはときどきあって、ただこっち側としては、そういうふうに言ってくるネタは大きくないことが多いですね(笑)。

大きかったらどうせ取り上げるので、そこはケースバイケースの判断なんですけど、内容的におもしろいと判断すれば、事前に十分取材をしといて、発表の日と同時にやるということはありますね。

こっちとしては、『ワールドビジネスサテライト』を見ると何か新しいものが……。やっぱりニュースって新しさが大事で、いろんな業界で、いろんな新しいものが出てくる。

他よりも一番新しいもの、毎日見てるとふっと新しいものが出て、しかも詳しく載っているというのがとても大事なことなので、そういう場合もありますね。数は多くないと思いますけど。

質問者2:会社としては、「一定の企業名が『ワールドビジネスサテライト』に出るように」と言われているので、とても参考になりました。ありがとうございます。

大堀:ありがとうございます。他いかがですか?

取り上げたことによる経済効果を気にするのか

質問者3:2つございまして、1点目は皆さん興味あることだと思うんですけど、さっき「ITやネットサービスが取り上げられるかどうか」というお話がありましたけど。

もし取り上げられた場合に、その後の反響の測り方として、例えばアプリが何本ダウンロード増えたかとか、次の日のサービスサイトへのWebのアクセスがどれくらい増えたかとか、例えばそのとき何とかというキーワードで検索が増えたかとか、計測したいと思うんですけど。

そのときに、どういう番組作りで、どういうふうに取り上げられたものはすごい反響があって、こういうものは反響がなかったみたいな事例がもしあればおうかがいしたいということと。

もう1点ですが、私デジタル教育のサービスをやっておりまして、トップはベネッセさんのタブレット教材とか、リクルートさんの受験サプリとか、そういうところが今急に伸びてきていて。

これまであまり変化がなかった教育というビジネスが、私たちはスタートアップで少人数なんですけども、そういうようなネタでワールドビジネスサテライトや、それ以外のテレビ東京さんの番組でもし取り上げられるとしたら、どんな感じになるのか。

例えば「センター試験のタイミングがいいんじゃないか」とか、そういう教育というのが、経済とどれくらいの距離感なのかなというのをお聞かせいただきたいと思います。

大信田:経済ってすごく広くて、子どもにどういう教育を受けさせて、どういう学校に入れてというのも、教育って学費もかかるし、消費活動ではないけれども経済ニュースの中で取り上げていいニュースに十分入ってると思うんですよね。

しかも、アプリで勉強するとかしないとかって、ここはもうある種の消費活動じゃないですか? どこのアプリと契約するかとか、ベネッセをやるかどうかとか。なので、カテゴリーとしては十分取りあげられる可能性があるカテゴリーだと思います。

あとは、そのサービスにニュース性といいますか、新しいことですよね。いったんどこかが宣伝をつけて、(サービスが)一番最初に出てきたときか、プラス2社3社目が似たようなサービスを始めて、利用者が増え始めてみたいなところが、一番取り上げられやすいかもしれないですよね。

それより早すぎると、ちょっとまだよくわかんなくなるし、それがもう当たり前になって、日本全国500万人くらいの子が利用してるというのは、もうみんな知ってることなので、ニュース性がなくなってきちゃうということがある。

始めの頃の「まだぼやぼやして成功するかどうか」という、そこら辺じゃないですかね? 必ずしもセンター試験の近くとか、そういうことでもないかなと思いますね。

それと最初のご質問ですけど、反応は我々放送する側はそんなに気にしないんですよ。それはむしろ取材をされた側、取材してもらった企業が「こんな反応がありました」とあとから教えてもらったりすることはありますけど、別に(こちらから)聞くこともないので。

わかりやすいのは、その会社の株がゴーンと上がるとかですね。

こっちは反応を気にする立場ではないので、ニュースを視聴者に届けるのがこっちの仕事であって、反応が良かろうが悪かろうが、株が上がろうが下がろうが、本当はこっちの基本的な関心事ではないので、あんまりそこは注視してないですね。

反響でサーバーがダウンすることも

大信田:1個気をつけたほうがいいのは、IT企業の場合、『ワールドビジネスサテライト』で取り上げられるとその日の夜にサーバーがダウンすることがすごく多いです。これ「『ワールドビジネスサテライト』砲」ってIT業界の中では言われていて、わかってる人たちは『ワールドビジネスサテライト』に取り上げられるようになるとその日のうちにサーバーの容量をアップするんですって。

何でもいいんですけど、「日本全国のおいしいラーメンをネットで販売する」というのでサーバーダウンしましたとか。

大堀:ありますよね。

大信田:企業だけじゃなくて、(例えば)キャンピングカーの展示会があると。キャンピングカーの事務局があって、Webサイトがあるじゃないですか。それが夜中に1回ダウンしましたとか、そういうことがあるので。

『ワールドビジネスサテライト』にすごくいいように取り上げられそうだなと思ったら、ホームページのサーバーの容量は、技術的なことは実際よくわからないですけど、強固なものにしといたほうがいいですね。

質問者3:最近は、クラウドでオートスケールで耐えられるようになってたりするものもあるので。

大信田:あるんですか? オートスケールというのは、アクセス量が多ければ……。

質問者3:課金も自動的に増えるというのがあるんですけれども、他の部分も増強する必要はあるかなと思うんですけれども。サポートですとか。

大堀:『ワールドビジネスサテライト』砲はけっこうよく聞きます。僕が前職でいたオンライン英会話の会社も、最初に伸びたのは『ワールドビジネスサテライト』砲でしたね。

大信田:いくつかの会社がそうなるのは悪い気はしないですけど(笑)。ただ僕らは、それを目的としてやってるわけじゃなくて「こんなおもしろい会社がある」というのを視聴者に知らしめる。

視聴者がそれを見てどう判断するかは別なんですけど、それを経済番組として、ニュース番組として「すごい役に立つな」と思ってくれるのがいいわけで。

質問者3:ありがとうございました。

大堀:残り、1〜2個。

世に出ていないものは取り上げられない

質問者4:お話ありがとうございました。どちらのタイミングのほうが価値を感じられるかお聞きしたいんですけど。例えば新サービスや新商品の発表のとき、記者発表会にお呼びするほうがいいのかなと思うんですけど。

ただ、商品やプロダクトが物としてあるものであれば、そのときにいろいろ来るものがあると思うんですが、サービスで、「いついつから開始しますんで」という、まだ何もサービス自体の絵が動いていない場合。

記者発表のときのニュースの発表自体に価値を感じられるのか、もしくは(サービスを)開始した段階で取り上げたいですというふうになるのか。

もちろん発表する段階で、他にも撮る絵を考えるという方法はあると思うんですけど、どちらのほうが価値を感じられるのかお聞きしたいです。

大信田:テレビは完全に後者ですね。つまり「こういうアイデアがある」という文言だけでそれを一生懸命作ったとしても、視聴者はわかんないと思うんですね。

例えばITだったら新サービスで「こういう考えに基づいたサービスを来週発表する」と。実物は来週なので、今は絵がない。その文言だけで一生懸命説明するわけですけど、実物がないとすごく伝わらないと思います。

なので、テレビとしてはやらないと思いますね。ただ新聞は違うかもしれないですね。新聞は文字で全部書けるので「これこれこういうサービスで、こういう機能を利用してこういう市場が見込める」とか「これまではこういうのがあったけど、ここが新しい」とか、新聞はいくらでも書けるじゃないですか?

だからメディアによって反応が違う可能性があると思いますが、テレビは先ほども1回話が出ましたけど「映像が撮れるか撮れないか」がものすごく大きいので、たぶんそれだったら、実際に何かしら撮れるものがあるときにやります。

きっと「お話だけ聞いときます」となって、そういう意味で話は聞くかもしれませんけれども、実際にニュースとして取り上げるというところに至らないと思うので、そういうことも勘案した上で、なるべく効果的にリリースを出したほうがいいかなとは思いますけどね。

それと難しいのは「新聞には取り上げられるけど、テレビには取り上げられない状態」があるとするじゃないですか?

その状態で出したと、新聞には取り上げられたとなると、テレビには少し取り上げられにくくなりますよ。つまり、先週出ているニュースなので。

でも実物があるということで少し取り上げやすいんですけど、前に1回、他に出てるのと出てないのでは、出てない新しいニュースのほうが出しやすいので、そういうこともちょっと考えたほうがいいかなと思いますね。難しいですけど(笑)。

質問者4:その場合、むりくりというか、事実と違うことを(言うのも)あれですけど、記者発表の場で何とか画を撮れる素材を用意すべきか、もしくは記者発表より前に「今回のサービスはまだ動いてないですけど、今回のサービスの立ち上げに関わる画が撮れますよ」とか、そういう情報の提供をさせていただいたほうが?

大信田:結果としてそれがどうなるかは本当にケースバイケースなので、今お話いただいた情報だけでは「こっちです」とは判断できないんですけど。

「新しくできるサービスとは違うんですけど、似たものがあります」というのも、ないよりはぜんぜんプラスですけれども。それは内容によっては「これだと画が作りにくいので、本物がちゃんとスタートしたときにやります」という判断になることもありえると思うので。難しいですね、そこは。

質問者4:ありがとうございます。

大堀:そろそろお時間がきました。本日は大信田さん、お忙しいところ本当にありがとうございました。

大信田:こちらこそありがとうございました。

(会場拍手)