危ない「あぶな絵」

島貫泰介氏(以下、島貫):最初は(こちらの画で)。

浦上満氏(以下、浦上):これは、錦絵を始めたと言われる鈴木春信なんですね。基本的には、あまり春画には、名前を落款って言うんですけど、入れないんです。これは、屏風のところに「春信画」ってあるでしょ。これ、「隠し落款」と言うんですね。いかにも屏風の作者のようなふりをして入れるんですね。

これも永青文庫(に展示しています)。実は、これは私のものなんですけども(笑)。まだ、いたしていません。こういうのを「あぶな絵」と言います。「危ない」からきている。これも、見たらおわかりですけど、男性なんかが焦ってますよね。女性が煙管の煙をふ〜っとかけて。「まぁ、そう焦りなさんな」みたいな感じで。あぶな絵と言います。

島貫:まだ行為に及んでいないのにあぶな絵って言うんですね。

浦上:だからまだ、あぶ「ない」んです。

会場:(笑)。

島貫:危ないの先があると。

浦上:あるんです。

島貫:なるほど。

芸も売るし、色も売る

浦上:春信が、当時の江戸を席巻しちゃうんですよ。みんなが春信の人気にあやかって、同じような絵を描く。春信、結構早く死んじゃうんですよ。だけど、ほかの人とか弟子とか書いて、みんな春信と信じて疑わない。

これ、今出た人は、春信の弟子で礒田湖竜斎というんですね。この人も春信そっくりに描いて、初めわからなかったけど、本人もそれじゃつまらないっていうんで、ちょっと春信から脱皮して、春信のいた明和の時代が安永という時代になって、安永風を描く。

それはいいんですけど、かなり春信はちょっとメルヘンチックなんです。顔だけ見てたら男か女かわからない。少年少女みたいな感じ。これもちょっとそういう余韻が残ってますけど、結構大胆になってきた。この場合は、「何これ、女性2人?」なんて思う人もいるかもしれませんけど、男性です。それは、ちゃんと下を見ていただくとわかります。

男性で前髪があるの人を「若衆」と言うんでけど、16歳までするんですね。森美術館で10周年の「LOVE展」見られた方いらっしゃる? あの時は、若衆ばっかりだったんです。おもしろかったのは、江戸時代って、本当に早熟って感じもするんですけど、若衆っていうのは当時のファッションリーダーでもあって。若い女の子がきゃーきゃー言ったんですよ。おばさんもきゃーきゃー言った。ついでにおじさんもきゃーきゃー言った。

会場:(笑)。

浦上:芸も売るし、色も売る。そういう人たちだったらしいですね。

これは男女でね、こたつの陰に猫ちゃんがいますよ(笑)。

島貫:なんか、「猫ちゃんが見た」みたいになってますね。

浦上:(次のスライドで)あ、ここにも猫がいる! なんか、怒っているのかな。

島貫:あちらこちらに猫が。

浦上:これは、勝川春章と言いましてね。有名な北斎のお師匠さんです。北斎は、19歳の時に、この人の門下に入って。その春章という人は、役者絵の第一人者だったんですね。元々、役者絵と美人画が出た。

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