これから先をどう考えるか? 山崎氏の取り組むフロントエンド

司会:では次に、ここからどうしていくかという話です。先ほどもお話した通り、これからエンジニアの数は増えていかなければいけないと思います。あとは海外との比較の中で日本はどうあるべきか、と言うと大きい話しですけど、そういった部分について、今お考えになっていらっしゃることを教えていただければと思います。

山崎大助氏(以下、山崎):取り組んでいることというと、まさにジーズアカデミーでやっていることですね。

昨年辺りからずっと、フロントエンドという言葉が出てきていまして。今まではデザイナーとスクリプターと分かれてたんですけれど、今はどっちもできなきゃいけない。

どっちか秀でているものがあれば、プラスアルファでJavaScriptを覚えなければいけないですし。Scriptが当たり前のようにできる人は、CSSやHTMLは当然できないといけない世の中になってきています。

それプラス、自分たちで何かやりたいなと思ったら、当然企画もしなければいけない。企画が立てば基本設計ができると思うので、基本仕様も取れます。そこから画面設計してしまえば、項目は見えてくるので、詳細設計的なこともある程度理解はできるのかなと思うんですね。

今までのように紙で作らなくても、モックアップの画面さえ作れば、詳細の細かいことは分かると思います。DB設計くらいはExcelでやったほうが間違いはないと思うんですけど。

企画から何が作りたいか。先ほど言っていたメンターのところで、企画書とかいろいろ作れるかと。

まず企画して、どういうものを作りたいのか。それを自分の頭の中で考えたものを実際にプロトタイプとして作り、さらに動かすところまでいって。動かすところがないと、ただの絵に描いた餅なので。それだと意味がない。

実際にそこでJavaScriptを使って簡単に動かせれば、動きを見て「こうじゃないよね?」「実際に作ってみると違うね」となる。

そういうすべてを補った教育をしていかないと、これからの時代は厳しいかなと思っています。

何を作りたいかをまず考えさせる教育で、1人でできる人材を

山崎:なので、ジーズアカデミーへの入学時に「アイデア試験」というのがあるんですね。「IQ試験」と「アイデア試験」の2つがあります。

現状1期生が卒業して、2期生が今度卒業するんですけど、見ていて思うのが、最初から「何かを作りたい」と思っている人のほうが、はるかにスピード感がありますね。でき上がりも速いですし、学ぶスキルアップの幅が全然違うんです。

IQが高くても、まだ何も作りたいものが決まっていないという人は、たとえJavaScriptの経験があったとしても、あっという間に抜かれるんです。

まず、自分で何を作りたいのかを一番最初に考えさせる教育って、実は重要なんじゃないかなと思っています。

ジーズアカデミーでも、最初にIQが高くても何を作ろうかと考えているのであれば、まずはアイデアをとにかく詰めさせて。何を作りたいか、というイメージを持った上で、組んでいかないと。

「このif文は、どこで使うんだろう?」「このrandomって、どこで使う?」「loopは、どこで使う?」

実際にいろんな関数があるんですけど、頭がいい人に限って、「こんなの使わないでしょ?」みたいな。そういう教育って意味ないんですね。何が必要なのかっていうのを体験してもらわないと意味がない。これからの学校には大事なことです。

「何を作って、それには何が必要で、じゃあこうやって作ればいいよね」というのが1人である程度できるようにならなきゃいけない部分が、僕の場合はジーズアカデミーで取り組んでいくことなんです。

えふしん氏の会社での取り組みは、社員と共に成長を共有

藤川真一氏(以下、えふしん):ジーズアカデミーのメンターもさせてもらってますし、「エンジニアtype」で連載させてもらったりしています。

僕ができることっていうと、今いる会社のメンバー、うちにジョインしてくれた人たちをいかに一流にするかっていうところですね。

スタートアップとかベンチャー企業と言われる会社は、正直大企業よりも給料が安いんですよ、当然。その分を何で補うのかと言ったら、やっぱり志を共にした人、一緒にビジネスをやっていって、それを実装で形にして、ビジネスが伸びるっていう、一緒に成功体験をするところこそが大事で。

そこで、さっきも言った裁量労働制みたいな話で言うと、その人が自分でこういうことしたいとか、もしくは自分でいつまでにこれを仕上げるんだとか。しっかりそこの価値観を持った上で働いてもらわないと、僕らも適切な優れたマネジメントシステムがあるわけでもないですし、教育システムがあるわけでもないので。

そうやって一緒に成長していけるのかなと。組織自体、僕自体も学びみたいな話で、全体が学びの中で、事業をキックする。筋のいいビジネスモデルで、いい形でみんながジョインしてくれて、成長が伴ってやっていける時間を共にするみたいな。そういったところが1つですかね。

どれくらいの基礎力をどれくらいのスピードで入れるか

えふしん:日本全体のエンジニア教育で言うと、初心者向けの技術の本ってあるじゃないですか。あと、「オライリー」みたいな上級の何が書いてあるのかわからないのがあって(笑)。

「この2つの違いって何かな?」って思ったら、結局のところ、本というパッケージはだいたい似たような厚さなんです。サイズはもちろん違いますし、数も違うけれど、1ページ当たりの進捗というか、書いてあることが違うんですね。1ページ当たりに書いてあることを400倍にすると、初心者向けの本なのか、「オライリー」になるのかが分かれると。

そう考えた時に、1冊の本を読んだ到達点が変わるってことじゃないですか。400倍した時に。基礎力がどのくらい、どこで注入ができているのか。

小学校、中学校、高等教育、大学……、と同じで、どのように基礎力を身につけさせるかが、結構大事なのかなって思っていて。

正直、そこから始める、22歳で初めてプログラムをやり始めました、だと、1日っていう時間は24時間みんな平等なので、24歳までにできることというのは、何となく見えてきちゃうわけじゃないですか。

それを、どのくらい圧縮するかというときに、「こういうことやりたい!」と、実戦で詰め込んでいくのかなと。それとはまた別に、どれくらいの基礎力を、どれくらい早くから、どれくらいの密度で、どういうスピードでやるかで、最終的なゴールが変わってきますよね。

それが職業選択の中での選択肢と、新卒で入ったりとか、最終的には30何歳までにどこにいるか、そのあとのキャリアをどうするかという中で、結構効いてくるんじゃないかなと思っています。

子供向けエンジニア教育について

司会:今のお話に付随してお伺いします。最近、子供向けのエンジニア教育をやりましょうという話しがすごく出てきます。ジーズアカデミーは、今の段階では職業教育としてのエンジニア教育をしていますけれども、(ここでは)ちょっとジーズアカデミーの話は置いておきます。

子供向けのエンジニア教育で最近言われていることについて、何かお考えのことはございますか? 基礎力を早く付けるという意味合いと、プログラミングを触らせるということは、果たして繋がるのだろうか?など。

えふしん:(山崎氏は)どういう派ですか?

司会:お子さんの教育には熱心な山崎先生としては(笑)。

山崎:最近、Scratch(スクラッチ)をやってみまして。すごい否定派だったんです、実は。スティーブ・ジョブズも、「子供にはiPadなんか触らせない」みたいなことを語っていたと思います。

でも実際にScratchを触ってみた感じでは、非常にさせてみたくなりましたね。

例えば、繰り返し処理とかもブロックでこんなのがありまして(手でブロックの形を表して)。繰り返し処理のブロックの中にパーツを入れると、それをずっと繰り返して、動き出したりするんです。

最初は子供の感覚値だけで進めていくんですけど。その考え方って、意外に後々のプログラミングに紐づくなと、実際体験して思ったんですね。

逆に言うと、他の大学でも教えていますけれど、大学生にやらせたいなと思ったり(笑)。そういった子供用のツールっていうのは、意外にいいような気がしています。

楽しければ自然と身につく幼児教育

えふしん:結局、楽しくやれればいいかなと思っています。子供の頃からピアノをやらせるとか、絵を描かせるとか、スポーツをやらせるとか、選択肢のうちの1つじゃないですか。別に、万人がプログラムを書けるべきなんて思ってなくて。グルーポンみたいに、ミュージシャン目指してきて大人になってからIT起業家になって、おもしろいサービスつくるっていう人たちもいるので。

別に、画一的にあるべきだと思ってはいないんですけれど、1つだけダメなのが、その時に嫌な思い出が残るっていう(笑)。成績がついて、一生懸命勉強しなきゃいけないみたいな。それさえなければいいかな。

それこそ、学級新聞をみんなで作る時にHTMLで作るとか。それがきっかけでHTMLを学んでいく。そういう子供的自己表現の中にScriptで何かを自動化してみるとか。要するに、これで何が起きるかというと、宿題をExcelでやる子供が出てくるんですよ。

(会場笑)

えふしん:結構、ありがちなパターンで。僕が公文をやっていた時に、計算機使って「めんどくさいな」と。さっきの「理屈は分かっているから、こんなのやってられっか」っていうひねた少年だったので、計算機を使うんですけど。それじゃダメなんですけどね。今はScriptだったら、もしかしたらいいかもしれない! Excelで、マクロで、みたいな。

そういう子供は評価されないですよね。でも、ある側面からすると賢いわけで、そういう子供が、社会からはみ出しているけど、すごいことをやるかもしれないので、そういった部分、それが教育なのかな、よく分からないんですけど……。そういう感じですかね……?

(会場笑)

山崎:でも、小学校でよく分からない授業とかありますよね? 「みんなの時間」みたいな(笑)。何やってるのか分からない時間があったりする。

えふしん:カリキュラムに落とすと、ちょっと難しいのかなっていうのはあります。ただ、「読み書きそろばん」のそろばんが、「ExcelマクロとVBAでもいいじゃないか」みたいな。「PHPでいいじゃないか」みたいなのは、分からなくもないです。

山崎:幼児教育は楽しければOKということ?

えふしん:そうそう。英語だって変なトラウマを身につけちゃったら、それで一生英単語嫌がるかもしれない。それが楽しければ、自然と受け入れるかもしれない。

山崎:そうですね。

エンジニア教育についての総括

司会:そろそろお時間になってきたので、最後に一言。エンジニア教育について総括といいますか、今後こういうことをやっていくべき、もしくはこう思っているみたいなことをお願いします。

山崎:プログラミング教育は、学術的に教えるのはダメだ、というのは、何となく分かったことです。トレーニングだと思いました。

1センテンスごとに1つずつ作ってしっかり結果を出していくことが、小さな成功体験を積み重ねることが、1番のスキルアップだなと思っています。プログラミング教育はトレーニングだな、と思います。

その後にやる気が出ればいくらでも難しい話はできると思うので、最初のうちはトレーニングが大切かと。

司会:ありがとうございます。

えふしん:何も考えてなかった……!

(会場笑)

えふしん:物を作る力って、要するにホワイトカラー、ブルーカラーみたいな話。昔はブルーカラーと呼ばれる人たちと、頭を考えてうまくやればいいよねっていうホワイトカラーの時代、それは終わっているかなと思っていて。正確に言うと、ホワイトカラーの人も物作るという話なんですね。

その部分で言うと、その基礎力っていうのが実装力で。今の大学教育は、別にそういう人たちを育てるつもりでやっているわけじゃないですよね。そう考えた時に、実装力をどうポジティブに身につけていくのかがすごく大事で。そういったカリキュラムがあるといいかなって思います。

司会:ありがとうございます。

ということで、短い時間ではございましたが、以上で「世界を変えるエンジニアを育てるTech教育」というテーマでの時間を終了にしたいと思います。

アジャイルディベロップメントラボとは?

司会:最後にジーズアカデミーでは、ジーズサポート法人会員を募集しております。今現在サポート会員として、14社さんにご参画いただいておりますが、これから先こういった議論を一緒におこなっていただけるようなパートナー企業様を募集しております。

最後に1つだけインフォメーションということで、1〜2分お時間をいただきます。

デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科のご紹介をしたいと思います。

デジタルハリウッド大学院は、ICTとビジネス、クリエイティブという3本柱で、デジタルコミュニケーションマネジメントという修士号を出す学校でございます。学発ベンチャーとしては全国14位の実績を誇っておりまして、その中でも特に私大では早稲田、慶應に続いて第3位という実績でございます。

こういった部分を踏まえまして、デジタルハリウッド大学院ではアジャイルディベロップメントラボという新しいコースを2016年に始めます。こちらのご担当が山崎先生ということですので、簡単にご紹介をお願いします。

山崎:来季2016年4月から、アジャイルディベロップメントラボをはじめます。内容としては、Webアプリケーションです。まさに、さっき言っていたことなんですね。学校に入ってきた人たちに自分の作りたい物のアイデアを出させて、それを自分たちで最初3カ月くらいで取り組んで作っていくと。

そこでダメだったら、仲間を見つけて一緒に取り組んでいくこともできます。それをまず半年間くらいで、必ずリリースまで漕ぎつけるということですね。

リリースしたあとに、そこからグロースハックをしていくと。そこがやっぱり重要になってくるので。実際に効果測定をして、なぜダメだったのか。それを毎月毎月やりながら、いいサービスを作っていく。最終的には、その経験を踏まえて世の中で活躍していただくということですね。

大学院で研究しながら、実際のサービスリリースまでを体験して、もしかしたら皆さんの会社で活躍してくれる人材を育てていく、そういったラボになっております。

司会:ありがとうございます。

(会場拍手)