自分が想像する未来のイメージや目標を持ち続けるには

小林雅氏(以下、小林):今回(のスタートアップ・ピッチ2)はバラエティに富んだ、生活に密着したり、広告だったりというサービスだったと思います。さっそく質疑応答にいきたいと思います!

(会場挙手)

質問者1:私は、芝浦工業大学の大学院で修士2年になりました。みなさん、MBAは知ってると思うんですけど、その下のMOT(技術経営)というところで今勉強しております。よろしくお願いします。

お三方は10年前、僕らが想像しきれなかったような未来を作ってきたんだなと思っていて、そこで質問なんですが……夢を見たり、未来を想像するというのはものすごく簡単なんですが、それを継続して頭の中で想像していくというのはものすごく努力が要るし、それがなければ目標が途中でプツッと切れて存在しなくなるということがあると思うんです。

みなさん3人に(お聞きしたいのですが)、自分が想像した未来を継続していく仕組みというか、どういうふうにやっているのかなというのが気になりまして。

小林:なるほど。(田中氏に)そもそも、ビジョンって「地球を変える」でしたっけ。

田中弦氏(以下、田中):「地球の未来を創る」ですね。

小林:「地球の未来を創る」って発想したり、それを思い続けたり、実現するにはどうしたらいいかという質問でいいですかね。

質問者1:はい。

田中:でも、起業家としての基本動作だと思うんですけど。ひたすら自分の会社の未来とか社会の未来を「どうなんだろうな」って(想像する)。基本動作だと思うんで、努力してる感じも僕はぜんぜんないですって感じで。

小林:ほぼ習慣としてそれを考えてるような気がするんですけど、吉田さんはずっと21世紀の、まあ21世紀なのか22世紀なのかわからないですけど(笑)、働き方をずっと考えてるわけですよね?

ゴスペラーズや宮藤官九郎から受けた刺激

吉田浩一郎氏(以下、吉田):そうですね。前段となるのは、自分の人生の10代とか20代では好奇心があっていろんなことをやってみたんですけど、極められない。中途半端になってしまったという。

私は早稲田生じゃなかったんですけど、早稲田大学の演劇に出入りしていて、そこに当時ゴスペラーズがいて。アカペラが認知される前だったんで、「楽器が弾けない人たち」くらいの扱いだったんですよね。ゴスペラーズと一緒に演劇をやってたんですよ。

私はそこで演劇を挫折して、そのあとは趣味や仕事をしながらやってましたと。そしたら20代が終わる頃には、ゴスペラーズは誰でも知っている「アカペラというひとつの文化を作った人」になったわけです。

そういうことが、宮藤官九郎さんでも(あった)。私は宮藤さんが今もやっている劇団「大人計画」の照明スタッフをやってたんですよね。あのときの宮藤官九郎さんは、普通の人にしか見えなかったわけですよ。それが今や、NHKの連ドラもやって、知らない人がいないという感じになったじゃないですか。

ああいうのを見ていくと、自分のコンプレックスとしては「同じ時間を生きてて、なんでああいう人たちは何かを成し遂げられて、自分は何も成し遂げられなかったんだろう」という。そのことに対してすごくコンプレックスを持ったというか、悔しいと。

「じゃあ、自分は何だったらそんな形で世界に貢献できるんだろう、世界を変えられるんだろう」ということをずっと考えて、出会ったのがこれ(クラウドワークス)だったんですよね。

私の中では……頭の中の片隅ですよ? ぜんぜん会ったこともないですけど、ゴスペラーズのみなさんとか、宮藤官九郎さんを見ていて、「私がいない間、今もずっと頑張ってるんだろう」と。そのようなことを思うと、自分自身としてはひとつのことをきちんと極めていきたい。その思いを強くしてますね。

会社のビジョンに対する考え方

小林:金谷さんはどうですか?

金谷元気氏(以下、金谷):同じ夢を追い続ける原動力というのは……僕は多趣味で、いろんなことをやりたいと思うタイプなんですけど、今までで本当に同じ目標に向かえたのが、今のビジョンの「“なくてはならぬ”をつくる」というのと、「サッカーで成功する」という2つです。

「“なくてはならぬ”をつくる」というのをなぜ続けられているかというと、良いアイデアを「思いついた!」となったときって、その日はすごくいいんですけど、次の朝起きたら「イマイチだな」と思うことがあると思うんです。本当にずっと続けられる目標って、寝ても覚めても、何回寝て何回起きても「良い」と思うんですよ。

たぶんそういったものだと、ずっと追い続けられるんだろうなと思います。僕はそういったものじゃないと追い続けられないというか。

小林:いいですね。田中さんはどうですか。

田中:僕は3回ビジョンを変えてるんですよね。

小林・吉田・金谷:(笑)。

田中:でもね、会社が大きくなってきたり、例えば新卒社員がけっこう成長してくると、できることが増えるんです。だから、僕は変えちゃっていいのかなと。そのときはそれを目指す。ただ(現ビジョンの)「地球の未来を創る」といってもなかなか創れないと思うので、しばらくは変えないかなと思ってますけどね。

小林:宇宙とかにならないですか?

田中:「銀河系じゃないんですか?」って役員に言われたんですけど、銀河系は次世代に譲っておけばいいかなと思って。

小林:まずは地球からってことですね。(質問者に)答えになってますかね?

質問者1:参考にさせていただきます。なかなかとっつきにくいテーマで僕も恐縮してるんですけど。やはり夢を描くというのは、正解がないからこれでいいんだと思います。ありがとうございます。

(会場笑)

グローバル社会の働き方

小林:じゃあ続けて、質問してない人! 元気がいい真ん中の人、いきましょうか。

質問者2:桜美林大学の○○と申します。先ほどビジョンのお話をされていた中で、僕自身、これからグローバル化されていって国境というものがどんどんなくなっていくと感じています。日本という国で、日本独自の技術であったり文化というのをもっと良くする、日本だけの文化を海外に発信していくという思想でいくのか。

それとも、仕事に関しても思想に関してもグローバルに、それこそアメリカの思想に寄ったほうが今はいいんじゃないのかという考えで、これからビジネスをやったほうがいいのか。自分自身もちょっと悩んでる部分があって……お三方にお伺いしたいと思うので、よろしくお願いします。

小林:質問としては、グローバル化についてどう考えているか、もしくはどう行動しているか。そういう考え方でいいんですかね。じゃあ、地球の未来を創る田中さんはどうですか?

田中:ウチの会社の役員で尾原(和啓)というのがいて、彼は役員で部下も持って売上責任も負ってるんですが、普段はインドネシアのバリに住んでるんですね。(仕事を)どうしてるかというと、自動走行できるロボがあって。それは勝手に自分で起動して、会社中をバーッと「元気か?」って歩いてるんですよ。二輪車みたいなやつなんですけどね。

なので、そうなるとあんまり関係ないなと。どこで仕事してようが。その逆もしかりだと思っていて。例えば、どこで営業しようが関係ないなと思ってるんで、グローバル化というよりはそういうのは全部なくすという方針で。10年後は全員ロボで出勤してると僕は思ってます。

小林:(金谷氏に)どうですかね。

金谷:まさしく僕も同じで、場所はあんまり関係ないかなと思っていて。もちろんサービスをどこまで広げるかというのは(海外の)いろんな国も入ってますけど、やる場所は……例えばakippaは、今までほとんどの会社が「東京じゃないと成功できない」となってたんですけど、別に大阪でやっててもぜんぜん不利なことはないですし。

展開するところに何人かずつ置けば世界を広げられるかなと思っているので、拠点とする場所はずっと大阪でやっていこうかなと思ってます。

小林:少なくとも、働く場所に関してはそんなに国境とか(関係ない)。例えば、海外にいる日本人が日本の仕事をするということもある。そういうのは吉田さんが一番詳しいと思うんですけど、そんな感じですよね。

吉田:そうですね。おっしゃるとおり、国はぜんぜん関係ないというか。例えば、クラウドソーシングの事例でも、NASAが火星上陸の課題を解決しようというので(詳細を)見せたんですけど、ロシアの技術者でも中国の技術者でもアクセスできちゃうんですよね。

昔だったら、宇宙開発競争なんで「NASAで課題を解決すること」が正解だったんですよね。ところが、このスタイルから「NASAで」が取れて「課題を解決すればいい」になった。これからの世の中は、課題を解決することができればなんでもいいという形におそらくなっていくので、「日本である」とかそういうのはあんまり関係なくなると思いますね。

実際、我々は130ヵ国くらいで会員登録がありますけど、これからは国や企業によってラベリングされるんじゃなくて、インターネットによって個人がラベリングされる時代になってくる。

なので「どの企業に属しているか」ではなくて、例えばFacebook上でどういうふうに「いいね!」が押されてるかとか、LinkedInでどんな人がおすすめしてるかとか、あるいはヤフーオークションで98%が「安心です」とか、そういう形でいろんなサービスごとに自分の信用情報がどんどん付いてくる時代なんですよね。国というよりは、インターネットの個人で世界が再構築されていく。そのような印象を持ってますね。

小林:(質問者に)答えになってますかね?

質問者2:ありがとうございます。ひとつお伺いしたかったのは、日本の文化的なサービスだったりとか、そういうのをこれから推進していくべきなのか。日本特有のサービスというものを海外に発信することによって、グローバルの市場を手に入れるほうが……。

小林:それは具体的にいうと、アニメとかそういうイメージですか?

質問者2:そうですね。アニメとかゲームとか、ある意味もっとグローバル的に考えて、先ほど言った世界的に解決する問題に対して日本もコミットする形で、世界規模で考えていったほうがいいのかなという。そういう質問だったんですけども。

田中:どっちでもいいんじゃないですかね。

小林:結局、「やりたいかどうか」ってけっこう重要なんですよね。だから、自分自身で「アニメを世界の人に見てもらいたい」というビジョンを掲げたらそれをやればいいし。「それを海外の文化と融合してもっとグローバルにやりたいんですよ」という人もいるだろうし。やりたいかどうかじゃないですかね。あんまり深く考えずに、やりたかったらやればいいじゃないかという。

吉田:その「○○すべき」というものの主語が誰になるかってことですよね。日本がそうやるべきなのか、私がそうやりたいからそうやるべきだと思ってるのかが重要なんで。おそらくそういうのって非常に意味があることだと思うんですけど、それを自分でやりたいかということに尽きるんじゃないかというのは同意見ですね。「日本がどうか」はあんまり関係ないじゃないですか。政治家じゃないんで(笑)。

小林:けっこう多いんですよ。実は「日本が」「日本企業が」(という前置き)って、自分じゃない人がやるべきだと思っていて、自分と関係ないという話も多いんですけど。基本的に「自分がやりたいか」という観点で、やるべきだと思ったらやったほうがいいんじゃないかな。そう思いますけどね。