練習はやればやるほど裏切りません

中村仁氏(以下、中村):リハーサル。リハーサルしない人多いよね。すごく多いと思う。コンペだけではなくピッチ大会とか行っても練習してる人、少ないよね。

よく話すんだけど、ピッチ大会は、「5分でやってください」とか、「10分でやってください」とか時間が決まってるわけです。時間ぴったりに終わることのできないやつが、どれだけ多いかっていう話なんですけど。これ、ちょっと見ましょう。

基本的に、練習していれば絶対に時間内に収めることができるはずなんです。だって、外敵もいないし。自分の資料使って自分で喋るだけで、誰も邪魔しないし。

絶対に時間内に終わらせることができるはずなのに、誰もできないというのは、練習が足りないんだねっていうのを、すごく思います。ピッチ大会ですらそうなんだから、毎日毎日プレゼンを次から次へとやんなきゃいけない営業じゃ、もっと多分リハーサルしないといけないはずだし、実際そういう人は見受けられますということです。

じゃあリハーサルをどうするかっていうと、僕、基本的に2つあると思ってます。セルフリハーサルと人前リハーサル。この2つがあります。リハーサルが大事なんだけど、それぞれ役割が違います。

まずセルフリハーサルは何かっていうと、自分1人のリハーサルです。自分1人でリハーサルをやる場合っていうのは、自分が説明をするときに、その資料に載せる流れ、ページの順番だとか、そこに書いてある説明の表現とかっていうことと合わせて、自分が実際にプレゼンをしてきて、自分のなかでしっくり、快適に話ができるか。

ちょっと突っかかって、うまく説明できないとかがないようにすること。あと自分で時間を計る。大きな流れに問題がなかったか確認をするっていうのがセルフリハーサルです。

人前リハーサルっていうのは、自分でいいと思ってるやつを人に聞いてもらって、「どう? わかりやすい?」っていうことを確認する作業です。僕はいつも、だいたいセルフリハーサルが10に対して人前リハーサルが1ぐらいかな、多分。それくらいの感覚でやっています。人に付き合ってもらうの大変だしね。

なので、ほとんどセルフリハーサルで終わってることが多いです。ちょっと内容に自信が持てなくて、これちゃんと伝わるかなとか、結構シビアで失敗が許されないときとかに、人前リハーサルに付き合ってもらうという感じです。

なので時間をちゃんと計って身体にたたき込みましょう。実際ストップウォッチを持ってやると、だいたいこのぐらいのスピードで、このぐらいの資料をこのくらいの早さで話すと、このぐらいの時間なんだなってわかるじゃないですか。これをちゃんとやらないから、本番で時間どおり収まらないねっていう話です。

あと、できるだけ本番に近い環境でやりましょう、と。こうやってモニターがあって、手前で自分の発表したスライドを見ながら話ができるのと、iPadしかなくて、お客さんの前でメモもなしで、いきなり全部暗記してやんなきゃいけないのとは全然違うじゃないですか。

なので、どういうふうにプレゼンするかによって全然違いますから。当日の本番のときに、どういう環境でプレゼンをさせてもらえるかってちゃんと聞いて、それに近い環境で試してみるっていうのが大事です。

面倒くさいかもしれませんけども、プレゼンの練習は絶対裏切らないので、これはやればやるほど絶対に質は上がっていくので、これはやらない手はないと思っています。

なぜかというと、さっきも言ったけどちゃんとリハーサルやってる人って少ないんだよね、思った以上に。だから自分がちゃんとリハーサルすると、それだけで結構有利に立てるんだよね。

他社さんの営業が1回しかリハーサルしてなかったら、こっちは50回すれば絶対勝てると僕は思ってます。なので、リハーサルはちゃんとしましょう。それによって一番確実に差別化できますということです。

起承転結は退屈なプレゼンになりがちです

6番。いろんな説明方法を試してみましょう。僕の経験で言うと、起承転結はダメです。説明の仕方っていうと、だいたい起承転結から入るんですけど、比喩としてはいいんですけど、本当に起承転結でやると、すごく退屈なプレゼンになります。

なぜかというと結論が最後じゃん。結論、最後まで教えてくんないって、結構イライラするんだよね。冗長になるし。途中で飽きるし。転の意味ないし、別に。話、転結する必要ないでしょう。

なので起承転結はプレゼンでは機能しない。こういうのって調べると結構ネットにも、やり方が転がっているんですが、いくつかそのなかの代表的なものをご紹介していきます。

PREP法。これ知ってる人? PREP法って何かというとPoint、Reason、Example、Pointっていう、この4つで構成しましょうっていう考え方で、Pointとはつまり結論です。最初に結論を言う。次に、その理由を言う。

で、実例を挙げる。「これは実際に」という話ですね。そして最後にもう1回違う言い回しで、結論を繰り返して締める。結論を最初と最後に入れるっていう。それで理由と事例を挟む。そういう構成です。

具体的にトレタを説明するなら、こういうふうになります。まず最初に「トレタを使うと繁盛する」と、言い切ってしまう。わかります? 言い切っちゃう。「なぜなら予約の機会損失を防ぐためです。実際に○○さんでは店舗間送客で100万円売上がアップしました。トレタを入れる店は繁盛しますよ」って、こういう展開です。

これをやると、最初にお店の人が一番興味のある課題点、皆さんが調べたお店の困ってることを最初にそこらへんを解決しますよって言えるので、「お、そうなの?」って、最初からちゃんと聞いてくれるということです。

概略で挟み込むSDS法

次、SDS法というのがあります。これは何かっていうとSummary、Details、Summary。最初に概略を話して、次に詳細を持ってくる、そして最後にまた概略を持ってくるケース。これも挟むパターンなんですけど。

「トレタには利益を出す2つの特徴があります」って最初に言うわけです。これがSummaryです。その次に具体的に、これを言います。「2つあります。コストを下げることと、常連さんを増やすことがあります。トレタを使っているお店は儲かっています」というような展開ですね。

それから、ちょっと複雑になってくるんですがDESC法というのがあります。Describe、Express、Suggest、Consequenceという、この4つで構成をするんですが、Describeって何かというと「現状を説明する」という意味です。

そしてそれによってどうなるかっていう自分の意見を述べます。Express。こうなるでしょうっていう。それに対して、こうしたらいいと思いますっていう提案を言います。最後、それについてどういう結果がもたらされるかっていうことを説明します。

トレタで例えると、最初に「飲食店の現場は予約管理で悲鳴を上げています」と、現在の状況を説明します。そしてExpress、「このままではネット予約は普及しません」。続いてSuggest「トレタで予約管理を効率化したらどうでしょうか」。最後に結論。「そうすると現場がハッピーになって、繁盛店になりますよ」っていう流れで説明するわけです。

これを基本的な大きな流れとしておいて、プレゼン資料として肉付けをしていくということですね。

結論と共感で相手の心を掴む

今のを読んでいて、なんとなく皆さんわかってくると思いますが、最初に「つかむ」って大事なんですよね。やっぱり最初にいかに相手の心をつかむかというのが大事です。その、つかみについて考えてみます。

つかみだとやっぱり一番多いのは、結論でつかむ。「あなたの課題はこうですよ。これちゃんとやったら解決しますよ」。最初に言っちゃう。最初に結論を言っちゃった上で細かい説明をした方が、相手はちゃんと聞いてくれる体勢ができます。

あるいは共感でつかむ。共感はもう一歩手前でつかみます。「こういうことで困ってますよね。わかります、大変ですよね」っていう相手の課題点をわかってますよって共感を示す。それで「お前、わかってんな」「じゃあ、話聞いてみようかな」というふうになる。

あるいは実体験とか事例。これは、わかりやすいね。「売上100万上がるケースがあるんですよ」とかね。

あと、この辺はおまけね。実際の自分の失敗談とか恥ずかしい話みたいのを話すことで親近感を持ってもらうとか、ギャップを感じるような話をする。すごくガタイのいい、酒の強そうな、ラグビーやってましたみたいな男なのに、実は酒一滴も飲めません、みたいなところで相手の興味をひいてっていうような手もあります。

資料作りも練習も人の真似をしないこと

それと中途半端にパクらない。会社としても、個人としてもやめましょうっていう話です。

基本的に、人の作った資料を「これいいな」と思っても、それをそのまま流用する、コピペするっていうのは手抜きが伝わりますからね。なぜかっていうと、自分の作ってる資料と人の作ってる資料って、絶対に一貫性がないので、切り貼りでやると相手にそれが伝わります。

さらに言うと、それを使って説明しようとしても、ほかの人がまとめた資料ですから自分の言葉で喋れないことが多いんですね。借り物なので。そうすると説得力がなくなり、人は動かない、となります。

これでは意味がないので、いいなと思ったら自分のなかで1回消化をして、考えながらもう1回、自分で書き直すという作業をしたほうがいいですね。

たとえば、自分なりに喋りやすい表現に変えるとか、そのぐらいはやってもと思います。なので安易なパクりはやめましょう。

時計を見ながら時間を意識、準備を整えておきましょう

テクニックの最後。説明者用の手元画面をうまく使いましょう。非常に細かい話ですけど。たとえば僕が今どういう画面を使ってるかと言うと、こういう画面を使っています。

だいたいいつもこれです。左が今喋っているページ、次に何が来るかっていうのが右に表示されていて、下にノートがあって、言い漏らしちゃいけないこととかが書いてあります。シートをシンプルにすればするほど数字だけ出したりするでしょう、「この数字何だっけ?」ってならないように、この数字は何のことだよ、とメモしてたりします。

この画面を自分なりに使いやすくカスタマイズすると、プレゼンのやりやすさは格段に違うので、ここは工夫する価値があるかなと思います。僕は基本的にプレゼンは暗記しません。ほぼ行き当たりばったりで、このシートを見ながら説明していく。

ただ、次にどんなページが来るかっていうのは手元で見ているので、次のシートにつながるように、今のシートの説明の説明を組み立てることができる訳です。

その場その場でちゃんと考えながら、お客さんの反応を見ながらこれを説明するので、これ僕の感覚なんだけど、言葉とか生きてくるっていうことですね。暗記で話すのと違って。なので僕は基本的にできるだけ暗記しないようにしています。

あとピッチとか、お客さんが20分でやってくれっていうと20分に収めなきゃいけないんです。これは。25分かかってもお客さんは文句言わないかもしれないけど、だけどちゃんと20分に収めるっていうことは、信用という意味でも、ちゃんと仕事できますよって意味でも大事だと思います。

お客さんは別に許してくれるかもしれないけど、ちゃんと収めるようにしましょうっていう意味では、経過時間、残り時間が必要なんです。

よくピッチ大会とかだと目の前にタイムキーパーがいて、「残り1分」とか出すんだけど、残り1分のところで聞かされても遅いんだよね。残り1分って言われても、もう時間調整できる余地はほとんど残ってないわけです。

なので、そういうタイムキーパーとかではなく、もっと話し始めのところから、今1分経ったけどどうだ、2分経ったけどどうだみたいなことを考えながら、話すスピードを速めたり遅めたりしながらプレゼンをしていくっていうのが、時間内に収めるには一番。

ちょっと余計なネタ1つ挟んじゃったから、ちょっと巻きで喋ろうかなみたいな部分も時計を見ながらってことです。はい、ここまでいいですか?

プレゼンの悲劇的な事例

ということで、このあとちょっといくつかプレゼンとして、あんまりこれ良くないねっていう、ちょっと悲劇的なケースをいくつか事例を。まずこれ、よくあるケースです。

(会場笑)

中村:文部科学省の。こんなの作るんだよね。お役所ね。読まないでしょう。これ見て説明されてもわかんないよね。でね、彼らはどうするかっていうと、今ここ説明してますよっていうポインターをつけるわけです。レーザーポインター。

レーザーポインターを使って、ここを読んでますって説明しなきゃいけないようなプレゼンになってる人いたらダメです。これ僕だったら多分20枚ぐらい必要になります。

ということです。こういうの絶対よくない。これ使ってるってことは読んでないってことだからね。

制作協力:VoXT