「利き手」は人間に特有のもの

ハンク・グリーン氏:このビデオを見ている10〜15パーセントの人が左利きです。あなたがメジャーリーグのピッチャーでなければですが。メジャーリーグのピッチャーの30パーセントはサウスポーなんです。あなたがアメリカの大統領だった場合も話が変わってきます。直近7名のうち5名の大統領は左利きでした。これは実際重要な事実ですね。

ところが90パーセントの人は──僕も含めて──右利きです。なぜ僕らは片方の手の方が、もう一方よりも使いやすくなっているんでしょうか? どうやって利き手が決まるんでしょうか? 答えはおそらく進化にあります。

利き手という感覚は人間特有のものです。霊長類の中で比較的近いチンパンジーやゴリラにも利き手はありません。イヌやネコのようなその他多くの動物が、片方を好むことはありますが、右利きと左利きの比率はほとんど同じです。

科学的には、利き手を決める遺伝子はまだ証明されていません。一卵性双生児だからといって、利き手が同じとは限らないんです。右利きが進化の過程における協力の副産物だという説はたくさんあります。

2012年に発表された研究は、道具を共有するような協力行動を取るためには、グループ内で同じ利き手を持っている方が便利だから右利きが増えたんだとしています。

利き手は脳の働きと関係している?

もっとポピュラーなのは、利き手は脳の左右非対称性に関わっているという説です。論理性や言語を司る左脳は、右半身の動きをコントロールしていて、空間認識をする右脳は左半身をコントロールしています。

霊長類の脳のつくりはほとんど同じですが、科学的にはヒトの脳は左右非対称性が強いとされています。言語を司る側の脳が、多くの人が言語を書くときに使う手をコントロールしているのは偶然ではなく、自然選択なのかも知れません。左脳が右手に書き方を伝えているからです。

この説は、多くの左利きが言語のプロセスにおいて両方の脳をより平等に使っていて、完全に右脳を使っているケースもあるという研究に支持されています。

つまり左利きは、正確に利き手を継承しておらず、その代わりに神経生物学の左脳におけるバイアスの欠損を継承しているとも言えます。その結果が人口の10パーセントを占め、螺旋ノートのデザインにイライラさせられている左利きなんです。

利き手についてはもっと調べる必要がありますし、研究はいまでも盛んに行われています。左手無しで食事をしたり、タイピングをしたりなんてことは考えられません。左手くん、君は大事な存在なんだよ。