女子高生、女流棋士からの授業

竹俣紅氏(以下、竹俣):皆さん、こんにちは。

会場:こんにちは。

竹俣:最初に今日の流れを説明したいと思います。

4時間目ということで、皆さんお昼ご飯を食べて疲れていると思うので、最初に皆さんで少し伸びをしましょう。立っても大丈夫ですよ。

(会場立って伸び)

伸びました? 大丈夫ですか? ばっちりばっちり。

みんな解ける? 将棋クイズ

最初に、楽しくクイズを出したいと思っています。3問出すんですけど、一応賞品があって、皆さんあんまり欲しくないかもしれませんが、こういう将棋の駒のストラップ。これが5個あるので最後に残った5人に差し上げたいと思います。がんばってください。

その次には今日の本題に入っていって、それが終わってから質疑応答で質問の時間、皆さんとの交流の時間が取れたらいいかなと思っています。じゃあ、まずクイズに行きますか。

第1問、「現在の将棋の名人は次のうち誰でしょう?」  

1:はにゅう よしはる 2:はぶ よしはる 3:はねなま よしはる

じゃあ皆さん立ってください。

参加者:「よしはる」は「よしはる」なんだ。

竹俣:そう、苗字の問題。じゃあ1だと思った人手挙げてください。2だと思った人。あ、2多い。3だと思った人。

正解は2の「はぶ よしはる」です。2だと思った人は立ったままで、他の人は座ってください。

参加者:予習が効いてるわ。

(会場笑)

竹俣:予習? 偉い。次行きますね。

第2問、「将棋の駒の産地と言えば日本のどこでしょう?」 

1:日本橋 2:能登 3:天童

1だと思った人手挙げてください。いない! 2だと思った人。あ、いたいた。3だと思った人。3、多い! これちょっと有名でした? 正解は3の天童です。山形県天童市の将棋駒は日本の伝統工芸品としてもすごく有名です。

じゃあ、最後行きますね。結構、人残ってますね。

「将棋盤のマスの数は全部で何マスでしょう?」

1:64マス 2:81マス 3:100マス

じゃあ、1だと思った人。2だと思った人。

(参加者全員挙手)

3だと思った人。やばい! やばいやばい。2でした。

(会場笑)

竹俣:じゃあ私とじゃんけんして、最後5人に絞ります。

参加者:え、引き分けはどうしますか?

竹俣:じゃあ引き分けも座ってください。

参加者:なるほど厳しい。

竹俣:じゃあ行きますよ。最初はグー、ジャンケンポイ。

一同:おおーっ!

竹俣:何人ですか?

参加者:5人になった!

竹俣:5人! 5人ですね。おめでとうございます。じゃあ前に出てきてください。

(会場拍手)

この夏、やりたいことは何ですか?

では、今日の本題『高校生の私たちに「できること」って何? 好きを極めて見つけたこと』に入っていきたいと思います。

高校生の私たちがやりたいことって(なんですか)? この夏やりたいこと。

参加者: 僕は……。

竹俣:この夏、夏休みやりたいこと。

参加者:やっぱりその、自分探し。

(会場笑)

竹俣:すごいですね! いや本格的!

参加者:こういうところに参加できたのも、自分探しのチャンスのやっぱり材料、判断材料。

竹俣:なるほど。いや深い! ちょっとこんな深い答えが返ってくるとは思わなかった。花火大会とか返ってくると思ってて。

参加者:花火大会もやりたいですよ。

竹俣:行く? 他にこの夏やりたいこと。

参加者:宿題を早めに終わらせたい。

(会場拍手)

竹俣:私、終わらせてない! やらなきゃ。そうですね。どうですか進捗は? がんりましょう。私もがんばります! 

やりたいこととしては今挙がったのとちょっと違うけど、部活とか遊びとか勉強とかっていうところが主になってくるかなと思うんです。

私の場合は将棋の女流棋士なので、将棋が本業でありつつ、将棋と学業を両立している感じなので、何て言うんだろう? 遊びのところに勉強が入る感じ?

将棋の研究をしていて、すごく行き詰まってしまったときとかに、学校の課題とかをやったりとか、そういう生活リズムになっているので、ちょっと特殊かなとは思います。

高校生のうちはどんどん失敗できる

じゃあ、次に高校生の私たちができること。できることって何でしょう? あんまり思いつかないですよね? 

できることっていうのは、私は失敗ができると思います。高校生っていうのは、まだ親に養われている状態にあって、しかもまだ若くて、学校っていう小さな枠組みの中で、大人の社会に出るための練習ができると思うんですね。

なので、高校生のうちにすごい失敗しても、それを大人になって成功に生かせば大丈夫なので、どんどん失敗して大丈夫だと思います。

私が将棋の女流棋士になったのは中学2年の時で、業界的にもすごく若かったんですけれども、大人の社会に半分入ったっていうことで。大人の社会に入ってすごく衝撃的なことも結構あって、がっかりしてしまったこととか、そういうこともありました。

大人の社会に必要なスキル「スルーする力」

一番驚いたことは、大人の社会では立場の上の人から言われたことは、絶対守らないといけないということ。例えば自分はこれが白だと思っても、上の人がこれが黒だって言ったら、それに対して「いや白です!」っていうふうに反論はなかなかできない。

けれども、立場が上の人から言われたことを、全部鵜呑みにしなきゃいけないっていうわけではなくて、言われたことの「スルー力」と言うような、受け流す力も多少必要で。

学校だと、意見を出すことがすごくいいとされますよね。意見を出すことでやる気があるとか、クリエイティブみたいに言われるんですけど、ちょっと大人の社会だとそこが違うかなっていうのがあって。

スルーする力みたいなのを付けることが必要になってくる。自分の意見を持ちつつ、軽く受け流すっていう力が必要になってきます。

励まされる本「できる大人のモノの言い方大全」 

その中でやっぱり、、少し悲しいなって思う事とかもあったりはするんですけれども、そういう時に自分を励ましてくれる本がこれ(『できる大人のモノの言い方大全』)。

これ今日持ってきたんですけど。これです。ちょっと読んでみますね。

できる大人のモノの言い方大全

これにはビジネスの時に使えるフレーズとか「ほめる、もてなす、断る、謝る、反論する。覚えておけば一生使える秘密のフレーズ辞典」って書いてあるんですけど。

高校生だとそんなに使わないかなっていうところはあるんですが、例えば「相手のいやみをさりげなくかわすには」っていうところがあって、何かいやみを言われた時どうやって言います? 何て言う? 「何々ですね」って言われた時。

参加者:そうですね。

竹俣:「そうですね」? ああ、大人ですね(笑)。なるほど。この本では「そのような見方もあるんですね。参考にします」とか。あと、「裏のないお言葉ありがとうございます」とか、そういう言い方が載っています。

あと、言い換え表現とかも載っていて、例えば、「誰々さんはせっかちだ」っていうのを、その人に対してせっかちだって言ったら少し失礼じゃないですか? 何て言います? せっかちって言い換えるの。ちょっと難しい? 

せっかちっていうのを言い換えるには「頭の回転が速い」って言い換えるんだそうです。「誰々さんは頭の回転が早いですね」って言い換えるらしいです。でもそれはちょっと褒め言葉に聞こえるよね? 頭の回転が速いっていうのは。

せっかちだと褒め言葉じゃないけど、頭の回転が速いだと褒め言葉になるっていう。そういう本を読んで、その大人の社会を切り抜けてるっていうか、何か言われてもパッと反応する力が付きました。

将棋部のマネージャーになった理由

高校生としての自分の話になるんですけど、私は学校で将棋部のマネージャーをしています。私の学校は中高一貫校なので、私の将棋のマネージャーとしての歩みは、中学入学の時から始まります。

中学校に入学した時、うちの学校の将棋部は、何て言うんだろう? 実質的には活動形態がなかったっていうか、他のゲームをしている部員とかはいたんですけど、将棋はあまりしてなかったんです。

そこから将棋部の活動を始めようということで、同じ学年で将棋に興味がある人とか、将棋できる人とかを集めて活動を始めて、活動がサマになってきた時に、「部長を決めよう」っていうことになりました。普通だったらそれまで一応部員を集めたりしてきた私が部長になるのかなって思うんですけど、私が部長になったわけじゃなかったんですね。

私が部長になるのは普通すぎて、ちょっとセンスがないかなと思って、私はその部員の中で、一番ほんわかした人を部長にしたんですよ。それはなぜかというと、ちょっとホワイトボードを使いたいんですけど。

「仕切る人=リーダー」ではあらず!

もしそれまで仕切ってた私が部長になったら、部員たちに指示を出すだけで、部員はそれは役割を与えられて動くという形になるんですけど、これって自主的な行動じゃないじゃないですか? 言われてやってるだけになってしまうので。

ほんわかした人を部長にすることで、みんなのなかに「この部長を支えよう」とか、「部長のために頑張ろう」っていう気持ちが芽生えて。この人は性格はいいんですけど、ちょっと頼りないんですよ。

なので、この人を部長らしくするために、この部員たちが頑張らなきゃいけないっていう自主的な行動っていうか、自発的に仕事をする。「部長、もうちょっとこうした方がいいよ」とかそういうふうになってくる。

私はマネージャーで、万が一機能しなかった時に、初めて指示を出すみたいな感じのシステムにすることにしました。これは結構成功して、将棋部というチームとしてはすごく温和な、温かいチームになったかなと思っていて。

最近では、東京都の大会で中学校の団体戦で優勝したりですとか、結果も残してきていて、すごくチームワーク、絆として良くなってきているところがあって、なので、仕切る人が必ずリーダーになることがいいかっていうのは、ちょっとわからないっていうのが、ここから学んだことですね。

制作協力:VoXT