超人を引き立たせるには普通の存在が必要
西野亮廣(以下、西野):僕はよう言うんですけど、たとえば箱根駅伝あるじゃないですか? 箱根駅伝のランナーの方のスピードって時速20キロなんですって。時速20キロって超早くて、50メートルだと9秒切るんですよ。たぶん我々、今50メートルで9秒切るってなかなか難しいですよ。小学校のときとかで8秒台くらいでしたから、おっさんが9秒切るってむずいですよ。
50メートルを9秒切るって結構全速力で、箱根駅伝のランナーの人ってずっと走ってるんですけど、でも箱根駅伝ってそのランナーの異常な早さ、あまり伝わってこないじゃないですか?
語られるのはいつだって、どこどこの大学が勝ってるとか、タスキが途絶えたとか、往路どこ優勝だとか。そんなことばっかりで、ランナーの方の異常な早さが伝わらないじゃないですか? でも、伝えたほうがいいじゃないですか? むっちゃ早いから、伝えたほうが楽しいじゃないですか?
なんで伝わんないのかなと思って、箱根駅伝見てたら、やっぱまず1つとしてランナーの方の前からカメラで撮ってるから、カメラが同じようなスピードで後ろに下がっていってるから、まずそのスピード感がどうしたって伝わんないです。
でもまあ、それはランナーの方の顔を撮らなきゃいけないからそれは仕方ないです。でも、犯人はこのカメラ位置じゃなくて、このカメラとランナーの間に白バイのおっさんがいるんですけど、この白バイのおっさんがまあ、トロトロして走ってますよ。
(会場笑)
西野:確かに白バイからしたら20キロなんて本当に超低速ですから。でもその超低速で走る分にはいいんですけど、顔まで超低速で走ってますよって。だから、その後ろにいるランナーのすごみがよくわかんない。
あれ、僕提案なんですけど、1回白バイのおっさんには白バイは置いていただいて、ママチャリに乗り換えていただいて、こうやって(こいで)やったら、「ママチャリのこのスピードについていくなんて、あのランナーすげーな!」ってなるじゃないですか?
(会場笑)
西野:そっちのほうが箱根駅伝はおもしろくなるんじゃないかなと。箱根駅伝のおもしろさをちょっとおもしろくなくしてるのは、白バイじゃないかなと思ったんですよ。ママチャリのほうがよくないですか?
これって次の2020年の東京五輪にも何か使ってほしいなと思うんですけど、これをそのままっていうわけじゃなくて。あの人たちって超人じゃないですか? みんなすげー超人じゃないですか?
でも超人を超人たらしめるためには、やっぱ普通の存在がすごい必要だなと思ってて。YouTubeで上がってるから見ていただきたいんですけど、チェ・ホンマンVSボブ・サップ戦っていうのがK1であったんですよ、超でっかい化けもん対決。
身長、ボブ・サップが2メートルでチェ・ホンマンが2メートル18なんですけど、このチェ・ホンマンVSボブ・サップ戦の審判の身長がボブ・サップくらいあるんですよ。
(会場笑)
西野:でかさがよくわかんないですよね。なんであんな凡ミスをしちゃったんだ? と。それこそ審判の身長はなるべく低く、160くらいにしといたらでかさが伝わるじゃないですか? そっちのほうがスポーツとしておもしろいし、画面見てて楽しいし。
僕はスポーツ見てたときに、その取りこぼし結構あるなと思って。2020年の東京五輪ね、わかんないですけど100メートルの、タイソン・ゲイとか早いやついるでしょ? ウサイン・ボルトとか。
何レーンあるんですかね? 10レーンくらいあるんですかね? 11レーン目くらいはサラリーマンのおっさん走らしたら、「こいつらホンマ早いな」ってなるじゃないですか?
(会場笑)
西野:「おっさんがまだこの位置にいてるのに、もうゴールしてるの!」みたいな話になって。この比較が超おもしろいと思ってて、スポーツはまだ改良の余地というか、もっとおもしろくできるなっていうのは。
雨と交通事故をなんとかしたい
西野:こんなもん僕の仕事じゃないっていうのは重々承知なんですけど、僕が今一番クリアしたい、ここをクリアしたほうが絶対楽しいと思う問題が2つあって。1つは、雨。
小谷真理(以下、小谷):あ〜。
西野:雨の日ってテンション下がりますけど、「なんでこんなに振り回されてるんだ?」と思うんですよ。嫌なんですよ、なんか。農家の方とかは「雨きた! ラッキー!」と思ってるかもしれないですけど、基本的には雨降ってきたらテンション下がるじゃないですか。我々こんだけ人がいて、こんだけ脳みそがあるのに、なんで雨にやられてんだと思って。
小谷:確かに。
西野:雨クリアしたいのと、あと、交通事故です。こんだけ脳みそがあって、みんなアイデア絞ってんねんから交通事故ぐらいなくせそうな気、しないですか? ここの超いいアイデアは出したいんですよねぇ。
僕が最近なるほどなと思ったのは、Facebookに書いちゃったんですけど。交差点、横断歩道の横から見たとしてですよ、車が走ってたとしてですよ、こっち(人間が歩く横断歩道)に向かってギューンって入っていったとするじゃないですか。
で、「なるほど、これめっちゃいいアイデアだな」と思ったのが、ここ(横断歩道の横)のアスファルトをちょっと厚めに入れるんですよ。こうするだけで、車のスピードがちょっと落ちちゃう。なんでかっていうと、轢いた時に致死率が下がる。
小谷:へぇ〜。
西野:これだけですよ。アスファルトをたった2センチ厚めに盛るだけで、車のスピードって落ちるんです。単純ですけど、これだけでもしかしたら本当に救えた命があったんだろうなと思ったら、こういうのを思いつきたいですよね。
小谷:確かに。
西野:「それだけでよかったんだ!」みたいな。雨もね、「何だろう?」と思うんですよ。「なんで雨にやられっぱなしなの?」って。で、雨っていったら傘じゃないですか。で、ここに人がいるじゃないですか。これ、すでに集音装置になってるんですよ。僕、1回実験でここにiPod垂らしてみたんですよ。
で、音楽鳴らしてみたんですよ、雨の日に。そしたらね、ポツポツって傘に雨が当たる音がうるさくて全然聞こえなかったです。
(会場笑)
西野:大失敗、これは。雨降ってきて、「きた、雨や!」「これや!」と思ってやってみたら、もう……。傘に雨が当たるって考えてなくて。また話が長くなっちゃった。
学校もエンタメにしてしまおう
西野:で、次何でしたっけ?
小谷:学校です。
西野:僕は今『サーカス!』っていう学校をやってるんですけど。僕、超頭が悪くて、学年でも下から10番目ぐらいだったんですよ、ずーっと。200人ぐらいの学校なんですけど。それで不良だとか不登校だったら言い訳できるんですけど、僕は毎日学校通ってて、ただ勉強ができなかったんですよ。まぁ、まっすぐバカだったんですよ。
(会場笑)
西野:で、勉強なんて全然おもしろくないなと思って吉本に入って、吉本でいろんな芸人さんと話すんですけど、ロザンの宇治原さんの話す歴史の話とか超おもしろくて、ダイノジの大谷さんの話す音楽の話が超おもしろくて。で、帰りに教科書とか買ったりしてるんですよ。勉強してるんですよ。「勉強ってめっちゃおもしろいじゃん」と思って。
「学校の勉強ってなんでこんなにおもしろくなかったの?」ってなったときに、1個思ったのは、勉強はおもしろい。勉強はおもしろいけど、先生のしゃべりが下手だったんじゃないかなと思って。しゃべりの能力が1だったら、知識が10あっても1しか伝わんないから。
じゃあもう「おしゃべりが上手な人だけ呼ぼう」っていうことで、学校を作ったんですよ。学校を作ったっていうか、すでにある場所で3か月に1ぺんやってるんですけど。円形の劇場で。
あと、これもずっと思ってて。例えば、「何かを成し遂げるために今は苦労しろ」みたいなことって言われるじゃないですか、ちょっと我慢するみたいな。「今は耐えて、最終的にやれ」みたいな。わかんないけど、賢くなりたかったらすげぇ我慢して勉強しなきゃいけないみたいなのってあるんですけど。
でも自分のことを考えた時に、俺、『ドラゴンボール』のストーリーって絶対抜けないんですよ。フリーザの前にはピッコロ大魔王がいたり、ここの順番って逆にしないんですけど、歴史とかは逆転したりするんですよ。年表とか。鎌倉幕府が戦国のあとに来たりとかそういうミスってちょっとあったりすると思うんですけど。
「これ、何やろ?」と思った時に、「楽しいことをしたかったら今我慢しろ」って言うんですけど、俺は楽しいことしてる時のほうがインプットしてるなと思う。たぶんみなさんもそうだと思うんですけど、ミスチル好きな人っていうのはミスチルの歌詞抜けないと思うんですよ。