工期の長さは一般的なものだったのか

記者17:東京新聞のツジフクと申します。先ほど平居副社長が「工期がナーバスだったかもしれない」ということをおっしゃいましたけど、一方で前田社長は住民説明会で、工期が長かったというようなニュアンスのことをおっしゃってると思うんです。

今回の4棟で473本の杭を打ったっていうことですけれども、今回のときと同じような条件の地盤で、この3ヵ月間でこれだけの杭を打つというのは、工期の長さが一般的なのかどうか。

一部報道でありましたけれども、深度不足が出てる8本については、最後の2月の下旬に行ったうちに含まれるという報道がありましたけれども、それは確かなのか。

偽装の見つかった70本というのも、時期的に何か偏りがあるのか。それを教えてください。

前田富弘氏(以下、前田):住民説明会で私がお話しした「工期が長かった」というのは3ヵ月間ぐらいかかったということで、長引いたとかそういうことではございません。

予定よりも非常に長引いたということではなくて、工期が3ヵ月間ぐらいかかる。私どもでは非常に大きな物件であったと。そういう意味でご理解いただければと思います。

それから、今回一番話題になっている8本につきましては、おっしゃるとおり最後の工事でございます。

それから70本については、ある時期に集中してるわけではございません。よろしいでしょうか? 470本を3ヵ月っていうのは、普通の工期だと考えております。

平居正仁氏(以下、平居):先ほど「工期がナーバスだ」と申し上げたのは、この物件に関してではございません。

「あの時期はそういうことがあったかもしれない」と申し上げたつもりですので、今回の物件についてそうだったと申し上げたつもりは全くございません。よろしくお願いします。

支持層への未到達の認識

記者16:もう1つなんですけど、「支持層に未到達なのにやめる」ということをもし決めたとすれば、現場代理人以外の方で何人ぐらいの人がそれに了解しないといけないか、知りうる立場にあるのか。この6〜7人の内で一般的にいうと。

平居:チームの全員でなければできないでしょうね。だから、現場でヒアリングしている限りではそんなことあり得ない、起こりえない。だから、到達したというふうに誤認することはあるんですね。

まだ手前の薄い層で、少し支持層があるところにバンって当たって「当たった」と誤認することはあるかもしれませんが、チーム全員が揃って「未到達だけどやめた」というふうには想像しておりません。それについては、調査を進めた上で改めてご報告したいと思っております。

前田:ちょっと補足をさせていただきます。1点は、何度もお話してますように、支持層への到達を確認しないまま作業を終了した。

これは先ほど平居副社長が申し上げたように、本当に1人の判断だけでできるだろうかというと、決してそういうことはないだろうと思っております。

それから、2点目。みなさんもお聞きになられてるかどうか。これ、支持層が非常に急しゅんだったというのは間違いないんですね。

最大で約40度ぐらいの急しゅんな支持層だったと聞いておりますので、「誤認」ということも考えられないことはないと思ってるわけです。

いずれにしましても、どちらも断定はできない。ただし支持層に未達だったということは、現在の調査ではそういうふうな形になっておりますので。

それをもとにしますと、支持層に未達だった理由がなかなか説明がつかないので、先日私が住民説明会の後でお話した内容の中でも「断定はできないけれども、そこについては何らかの意図があってやった可能性はある」と申し上げたわけです。

いずれにしましても、先ほど平居副社長が何度も申し上げましたように、もう一度正確に調査をさせていただかないとわからないということでございます。地盤に関しての調査資料は全て元請けさまからいただいているわけでございまして。

今度は私どもも一緒に入って、そこの部分についてしっかりと調査、分析をさせていただきたいということでございます。

現場代理人以外も「支持層に当たった」と発言している

記者17:毎日新聞のイマダと申します。今の話ですが、現場代理人の方だけでない人もヒアリングをされてると思うんですね。

特にボーリングを担当されたオペレーターの方、先ほどの説明ではドーンという音がするとか、そういう反響があって支持層に到達したということがわかると。現場の代理人の方は電流計でそういうのを確認すると。

でも手応えの感じるのはオペレーターの方だと思うんですけど、その方のヒアリングの状況はどうなんでしょうか?

平居:先ほどから申し上げることと同じなんですけど「あの現場では支持層に到達しなかった記憶はない」とみんな言ってますから。みんな「支持層に当たった」と言っています。

ただ、その信憑性も含めてまだわからないんです。どう言ってるかといえば、(支持層に当たったと)そう言ってます。

記者17:そうしますと……先ほどから、「事実と違うことを言ってるのは現場代理人1人の可能性がある」とおっしゃってますけど、「1人だけでできることではない」っておっしゃってもいますので、チームがおかしかったということも考えられる。

平居:それも、ありうるかもしれない。それも含めて考えたいというか、その決め手は杭がどうなってるか事実を見ることからしかできないだろうと思ってるということであります。

データの転用を行った理由

記者18:週刊ダイヤモンドのオカダです。事実関係の確認なんですけども、「支持層に当たった」とヒアリングでは現場代理人なりオペレーターは言っていると。記録されたデータを転用したことも彼ら認めているわけですよね?

平居:そこが微妙なんです。

記者18:微妙?

平居:微妙な……。だから彼らはデータを転用した行為については一部認めているんですけど、「最後にまとめてやった」ってことも認めてるんです。

だけど「ここの部分をやったか?」ということについては、個別にこの杭っていうふうには認めてないんですね。

記者18:「転用」という行為をしたこと自体は認めているわけですね?

平居:はい。

記者18:その理由については……。

平居:その理由については、先ほどから申し上げてるように、「紛失した」「最後にまとめてやったからどっかまとめていっちゃった」「休んだ日に代わりの人にやってもらったらデータがなかった」みたいなことはポロポロ言ってるんですけど……。そういう意味です。

記者18:事実として、現場代理人が病気で休んだ時期があったのか、なかったのか。

平居:ありました。

記者18:どのぐらいですか?

平居:3日間。

記者18:3日間?

平居:はい。

記者18:3ヵ月の間のどのぐらいの時期かっていうのはわかりますか? 序盤かとか終盤かとか。

平居:最後だよね? え!? 真ん中? 真ん中辺りのところ。

記者18:はい、わかりました。

今後のチェック体制と現場代理人の雇用形態

記者19:日経ビジネスのヒロオカと申します。3点教えていただきたいんですが、今でも杭をいろんな現場で打っていらっしゃると思うんですけれども、この問題を受けて、今やってらっしゃることについてはチェック体制をどう改善しているのか。

それからその現場代理人の方は、正社員なのか、契約社員なのか。

最後に、調査委員会と外部調査委員会という、社内と第三者みたいなものを両方やるということなんですけれども、拝見しているとだいぶやることがかぶっているようですし、まあ普通は第三者委員会のほうが信頼性が高いであろうと。

居住者の方もそういう要望を出されたと思うんですが、この2つを並べてやり続けるというのはなぜなのか?

前田:ご質問の最初の「杭事業の個々のチェック体制」でございますけど、当面すぐ私どものほうでこの事実が発覚して、とにかく当たり前のことなんですけれども、仮に記録が取れなかった場合はそれを隠さずちゃんと報告をしなさいと。これはもう当たり前のことですけれども、そういうことを指示を出しております。

まずば杭を設計どおりに製造しまして、その杭を打つわけですけれども、今回のような形で「支持層に到達したかよくわからない」もしくは「しない」と。

要するに、設計支持層よりも実際の支持層がずいぶん低いところにあるという場合には、今回も本来そうするべきであったことなんですけど、ゼネコンさんの現場監督なりに言って指示を仰ぎなさいと。

この2点については早急に指示をいたしております。ただし、これ以上のことにつきましては今後の調査とか原因究明によって考えていきたいと思っております。

それから現場代理人の身分につきましては、当時は出向社員ということでございました。今回の現場代理人当該当人につきましては、当時は向こうからの出向社員と。

向こうというのは、下請けからの出向社員ということでございました。それから現在は私どもに所属をしている契約社員でございます。よろしいでしょうか。

平居:あと、「委員会2つもつくってどうするんだ?」っていうお話でしたよね。本来であれば私が委員長としてやっている調査委員会で、全てを進めていきたいと考えているんです。

しかし「旭化成がやることが信用できるか」という声がございますから、外部委員会をきちっとつくって、我々の発信に対する信憑性を少しでもカバーしていただきたい。そういう意図でございます。

記者19:それは、外部委員会の指揮下に入って?

平居:いやいや、外部委員会の指揮下に入ることはありえないです。

記者19:外部調査委員会が発足したら、社内の調査委員会をそちらに発展的に統合すれば居住者の方も、みなさんの求められる信頼性も十分にできるんじゃないかと。

社内で甘いんじゃないかみたいな疑惑も払拭できるんじゃないかと思うんですけれども。社内の調査委員会がどうしても必要だというのはどうしてなんでしょうか。

平居:外部調査委員会は本当に外部の人でありまして、調べようにもどこにどんな情報があって、何をどう調査したらいいのか。これはいったいどんな事業構造になのか、どんな指示命令系統なのかを全く知らない人たち。

知っていれば外部と言いにくい。そういう人たちでありますから、現実には我々の内部の調査委員会がそれぞれの専門知識を持って、きちっと情報を集めて整理・分析し、「それらの情報の集め方、整理の仕方、分析の仕方はこれでいいですか?」と確認をしていただく。

そういう意味でございまして、外部の人だけで構成した調査委員会であれば、調査にものすごく時間がかかると思っております。

支持層の誤認はどのようなケースが考えられるのか

記者20:テレビ朝日のマツモトといいます。いくつか確認なんですけれども、支持層に届いたと誤認したかもしれないっていう場合は、どういった誤認が考えられるんでしょうか。何か別の似たような固い層があったとか、そういうことですかね。

前嶋匡氏(以下、前嶋):先ほども前田からご説明を差し上げだと思うんですけれども、当該エリアが土丹層という支持層なんですが、土丹層特有の、非常に急しゅんな斜面になっているケースが多くて、例えば急しゅんな斜面に杭の施工をいたしましたときに、何か固いものに当たったというときに、本当はもう少し掘らなければいけないんですが。

ちょっと説明しにくいんですけれども、斜面に当たったところを支持層に当たったもの、平坦な斜面に当たったものと誤解をして、先ほど申し上げましたセメントミルクを注入して根固め層を造築するという作業を行ってしまうと。

少し根固めの部分が根入れ不足っていう言葉になってくると思うんですけれども、そういった誤認をして支持力が十分に足りてない施工を行ってしまった可能性があるということが考えられます。

記者20:ということは別の層を勘違いしたというよりは、支持層の一部に不十分に当たったというか、そういうことですか。

前嶋:推定の範囲なんですけれども、そういったことも考えられるんではないかというふうに考えております。

記者20:先ほど現場代理人の身分の話が出ましたけれども、今回、杭打ち作業されていたのは、さらに下請けの会社さんということなんでしょうか。

前田:おっしゃるとおりです。私どもの下請け会社ということでございます。

記者20:それはどちらかというのは。

前田:名前は公表を差し控えさせていただきたいと思います。

記者20:最後1点だけ確認なんですけれども、今後の調査で過失がどれぐらいあったかとか、意図があったかっていうことがわかるということなんですけれども、調査によってどういうことが出てくれば、その辺が明らかになるんでしょうか。

平居:今一番大事なことは、今日現在あそこの現場に刺さっている杭のうち、データが流用された70本の杭が、地中でどんな状態になっているかっていうことが明らかになることが大事だと思います。

それがわかれば本当に、情けない話ですけど、レシートを捨ててしまったみたいな、なくしてしまったみたいな、おそまつな話……本当に申し訳ない話なんですけど、そういう話なのか、何らかの形で、その話は消えませんけどね、そもそもの話は全く消えませんけど、何らかの誤認であろうが何でろうが、おそまつな話、消えませんけど。

何らかの形で誤認が起こって、支持力不足の杭をつくってしまったのかもしれないですし、おっしゃるような形で、今証言してるのは10年前のことですけど、どこかで嘘をついてということかもしれません。

私はですけど、杭の現状がどうなっているかということによって、相当なレベルで確認できるんじゃないかと考えているということであります。

記者20:要はサウンディング調査で、今8本が不十分だと言われてますけれども、実際に杭を調べて本当に未到達だった場合には、嘘をついている可能性があるということですか。

平居:サウンディング調査は支持層までの深さを測ってるだけでありまして、杭そのものがどうなっているかを調べているわけではございませんので、杭そのものを調べたいということでございます。

制作協力:VoXT