ソフトバンクが導入した割賦販売方式

記者:フリーランスのイシノと申します。まず1点目は料金値下げのタスクフォースの件で、安いプランのほかにも、「端末と通信料金が一体化していてわかりにくいのではないか」という指摘もあったかと思いますけれど、そちらについてどのようにお考えなのか? また考えた上でどのような対策を打とうと思っているというのがあれば教えて下さい。

2点目なんですけれど、iPhoneの比率を見ていると、確かにソフトバンクさん3社の中で一番大きいかもしれないんですけれど、過去に比べると若干というか、結構比率が下がってきているような気がするんですが、今後どうしていきたいかお考えがあればお聞かせください。

:我々が参入する前の携帯の業界がどうだったかといいますと、端末は通信の中でほとんど無償に近い形で提供されていると。

したがって、当時の女子高生のみなさんは半年ごとに端末をどんどん乗り換えていくというような風潮がありました。

私はソフトバンクとして新たに事業者として参入して、それはおかしいんじゃないかということで、端末の部分と通信のサービスを分けようということで、端末にしっかりと値段をつけて、割賦販売と。

値段をつけて、お客さんに「5万円、6万円で買ってください」と言っても、当時の常識からして目の飛び出るような価格で、端末は千円とか二千円だと思い込んでる人がたくさんいましたのでね。

我々がメーカーさんから買っている値段は5万円、6万円なのに、それに千円二千円の値段をつけて実際はタダで提供しているという状況が続いておりましたが、我々が端末に値段をつけて、割賦販売という形を取りました。

割賦販売をする代わりに、通信料から値引きをするという形に変えました。これは我々が世界で初めて行った方法だと。

当時はこれがなかなか業界の人にも、一般のお客様にも理解をしていただけなくて、ソフトバンクはなにか怪しげな粉飾決算をしているんではないかとご批判も受けたわけですが。

今はドコモさんもKDDIさんも、そして世界中の多くの携帯事業者がこの割賦販売という方式をとっているわけですね。

ですから、端末と通信のある意味の差は出始めているわけですが、この通信料金から値引くというところが、今でもなかなか通年としてわかりづらいという点はありますよね。

端末の価格と通信の価格を、もう少しわかりやすく区分けするほうがいいんでないかという声があるということは真摯に受け止めて、それをどうお答えしていったらいいのかと今検討を開始したと。

完全にNOというのではなくて、真摯に受け止めて、どういうふうに形を変えていけばいいのか検討を開始したところです。結果がどうなるかについてはまだコメントは時期早々だと思います。

一方、先ほど言いましたように、日本のユーザーにとってはiPhoneが世界一安く提供されているというのは、これは厳然たる事実だと思います。こういうようなメリットも一方あるのだということを時々は思い出していただきたいと思いますね。

iPhoneのソフトバンクの比率は、他社がゼロから始まっていますので、KDDIさんがそのあとに販売に加わり、そのあとドコモさんか加わったと。

結果、彼らのほうが我々よりも携帯のユーザーの数は多いわけですから、当然、累積してきたお客さんにだんだん浸透してくるとそのシェアは平準化されていくというのは理の通りだとは思います。よろしいでしょうか。他にいかがでしょう?

スプリント事業のコストの合理化について

記者:ストックリサーチのイハラと言います。スプリントに関しまして、OPEXを20億ドル、日本円にして3千億ドルくらい削減しようということで、470項目で検討されているということですが、今の孫社長の認識としまして、スプリントのOPEXの水準、アメリカの競合のライバルと比べまして非常に高いんですが、その水準と、日本国内の通信事業のOPEXの水準を比べまして、20億ドルを削減した場合にどういうレベルになるのかと、その比較感ですね。

それと、具体的な中身がなかなか想像しにくいのですが、もし直接の人員削減という場合ですと、労使問題ですとか、そういうことが起こりえないとは言えないと思いますので、そういう可能性があるかどうかと。

それから、国内の通信事業のほうも統合された目的の中に、第一番に、コスト合理化をあげられていましたので、それの大雑把な進捗状況について教えて下さい。

:スプリントを20億ドル削減したあとでも、まだ高すぎる、まだそれよりも絞る余地があると思っています。20億ドルというのは、最低でもこれぐらいは下げられる。

それをさらにもう一歩深く行きたいと思っています。それには人員の削減も含めて行うべきだと思っています。それはすでにCEOとしてマルセロがその方針を発表していますので、彼らがそれを実行していくことになろうかと思っています。

そこで留まるのではなく、さらに頑張ってやっていくと。ソフトバンクは世界の携帯通信事業者の中でも売上に対する経費の比率は非常にコストダウンしながら頑張ってやってってるという会社の筆頭にあると思いますね。

それでも、3社合併できたわけなので、その合併効果、コスト削減効果をさらに進めていきたいと。それは順調に今一歩ずつ進んでいると。宮内から一言コメントをいただきたい。

宮内謙氏:統合効果がどれくらいあげているかというと、実は相当な大きな額になっています。ここでいくらということは申し上げませんが、我々のターゲット、4社を合併させて、そしてそれを1つにして、その統合効果というのは非常に効果が出てきていると思っております。

そういう意味では、他社と比較して、みなさんご存知のように、顧客数は実質半分くらいか、少し少ないわけですね。でも、営業利益段階では結構匹敵するところまで持ち込むことができると。

今年も統合効果のコスト削減やりますけど、来年も継続して、どんどんやっていけると思っております。これは1つは、ニューテクノロジーがどんどん出てきていますので、新しいテクノロジーを使ってやっていくと。

一般的な10パーセントダウンというのではなくて、ネットワークにしても、営業のマーケティングにしても、大幅なコスト削減をすることができるという自信を持っているつもりであります。

アメリカの通信の品質が悪いのは努力が少ないだけ

記者:もう1つ、スプリントのネットワークなんですが、夜の22時から検討されているということで、アメリカは人口が増えてますし、国土も大きいですし、通信の使い方も日本との違いもあると思いますので。

日本で断トツに成功された経験ももちろんあると思うんですが、その中で一番留意されている点や違いとか課題、具体的なところは言えないこともたくさんあると思いますが、何が一番問題になるのかを教えいていただくと勉強になると思いますので、よろしくお願いいたします。

:アメリカだから特に難しいというのは実はたいしてなかったということですね。アメリカが通信の品質が悪いというのは、国が広いからだとか、いろんなことを理由に各社言ってましたけれども、それは全部嘘だったと。そんなことはどこにもなかったと。単に努力が少なかったと、私は今は断言できると思いますね。

ですから、スプリントのネットワークは必ず著しく良くなると。決して、国が広いから接続率が悪くて当然だとか、接続スピードが遅いとかいうことは正当化できないというくらい、アメリカの通信は悪いということをはっきりと断言できると。

そのくらいスプリントのネットワークを改善する自信が出てきたということですね。まあ、あんまり言いすぎるとさらに競争が激しくなりますのでね(笑)。こういうときはやわらかく言っておかないといけないですね。すみません。つい本音で言いました。

アジア・スーパーグリッド構想への思い

記者:日本経済新聞のオオワダと申します。よろしくお願いします。来年、電力小売りが全面自由化されて、ソフトバンクさんも東電と提携されて、セット割などご検討されていると思うんですけど、ネットワークの場合は品質の違いを競争力につなげられると思うんですが。

一方で、電気の場合は品質に違いがつけにくいと思うんですけど、そういう中で組んで、どういう形でお客さんをとって、携帯の販売増につなげていくのか。その辺の戦略を教えていただけますでしょうか?

:ソフトバンクは日本でいち早く再生可能なエネルギーとかいうものにも取り組んでおりますし、これからもそこは強化していきたいと思います。それから通信と電気をサービスとして融合して、スマホで家の外にいながら、家庭の電気代がトータルで安くなるような設定ができると。

外出している時には温度をこうするとか、電気を細かく消していけるようなマネージメントが外出先からもできるとか、そういうようなサービスの融合っていうのはこれから出てくると思うんですね。

ソフトバンクならではの価格のメリットと節電のメリットと、それから自然エネルギーを組み合わせるというお客様の心の希望に寄り添っていけるようにということをしていきたいと思います。

記者:関連でもう1点、再生エネルギーの話もありましたけれども、先日北海道の風力送電網の計画が一部凍結という話もあったと思うんですが、孫社長が以前からおっしゃっていたアジアスーパーグリッド構想に向けた意気込みというか、もうちょっと断念されていることなのか、それとも別のやり方でということなのか。その辺りを教えていただけますか?

:モンゴルを通じてアジア中に電気がつながるスーパーグリッドをつくろうという、この大きなスケールの構想は、50年、100年単位の話で、2、3年でできるような話ではないし、今世界中の通信が海底ケーブルを通じてインターネットがつながっているように、電気も海底ケーブルを通じてさまざまな国がつながっていると。

そしてさまざまな国の自然エネルギーが協調・協和しながらつながっていくという時代が、50年、100年単位で見ればやってくるんだろうと。そういうロマンとビジョンは変わりません。

一方、目先でいうと日本では、我々北海道で電気をつくっても接続してもらえないと、配電できないと。受け入れてもらえるのかもらえないのかは、我々に意思決定権がないと。現在の既存の電力会社が送電網を独占してもっているという状況ですので、これはもう相手次第というところがありますよね。

発電は我々いくらでもできるんですけど、送電してもらわないことには話にならないので、送電と発電の分離を日本の制度として、1日も早く、より深くやってほしいなと思います。

一方でそういう愚痴とか言い訳ばっかり言ってられないので、我々はインドで自然エネルギー、特に太陽による発電を積極的に行いたいということで、今さまざまな準備をしているところです。

地球に対して貢献するのに、1つの国の中だけで貢献しなくてもどっちみちつながっているわけですから。地球のどこかで地球の環境に貢献するということができれば、達成感はあるなと思います。

スプリントのネットワークと海外投資

野村証券のマツノです。2点ありまして、1つはスプリントのネットワーク。もう1つは海外投資ですけれども。ウォールストリートの反応を見てますと、今のスプリントの設備投資は来期の2年間で100億ドル以下、年間50億ドル以下というガイダンスですが、その金額でいいネットワークができるかどうかは、結果を見てみないとわからないという意見が多いと思うんですね。

どういうタイミングでどういう結果が出てくるかなんですが、実際に来年以降どれだけの設備投資を するかっていうのは来期の設備投資のガイダンスが出ればそれでわかるんですが、次はその金額で本当にいいものがつくれるのかという議論になると思うんですね。

T-モバイルさんは別の統計で評価していますし、ルートメトリックさんは独自の調査で別の評価をしていて、正直アメリカのユーザーは何をどう見ていいのかわからないと思うんですね。

消費所のネットワークへの認知を進めていくためには、どういうことをやっていけばいいのか、あるいは何を見ていけばいいのかというところについてはいかがでしょうか?

:スプリントのネットワークは半年前、1年前は最悪だったんですね。それは新しいネットワークに切り替えるはざまで、我々のとった内部データでも目も当てられない状況だと。

今現在はそこよりもずいぶん改善できたということで、解約率がスプリントの携帯事業の開始以来一番低くなったというのは、やっぱり解約の最大の理由はネットワークだったんですね。そこが改善したことで、結果に表れているというのが1点ですね。

これからのネットワークについてはどうなんだということについては、いろんな統計の取り方によっていろんな見方があると。でも、どの統計を取ってみても間違いなくスプリントが一番良くなったなというふうに感じてもらえるようなネットワークをつくるというのが、我々の責務であります。私はそこに責任として、自らを追い込んでいきたいと。

スプリントのネットワークがアメリカでNo.1にならなかったら、それは孫正義のせいだと言っていただいて結構だと。そのくらい自分を追い込もうとしているということですね。そのくらい次世代のネットワークに対して自信が出てきたと。巨大な設備投資をせずにやろうと。

内容については事細かに事前には説明しないと。それは、ソフトバンクがiPhoneを扱う前にiPhoneを扱うということを一切言わなかったと。ネットワークをどのようにするかという中身についても一切言わなかった。結果をとにかく見てくださいということで、我々は示したつもりですけれども。

スプリントも今から2年経ったら、お客さんから相当良くなったと言ってもらえるようなものにしたいと思います。

記者:次に投資なんですけど、この6ヵ月を見てみると、関係会社への出資と子会社への出資、合計すると5500億くらいの投資になっていると。半年で5000億ペースのバランスが続くとも思わないですし、もうちょっとコントロールしたほうがいいんじゃないかとも思うんですけど、この辺りを今後とう考えていくかということについてはいかがでしょうか?

:年間数千億レベルの投資はコンスタントなレベルとしてあると思うんですね。一方で同じくらいのレベルで我々の投資先の売却というのもこれから発生すると思うんですね。ソフトバンクは一回買ったら二度と売らないとおっしゃる方が時々いらっしゃるんですけど、過去の15年間を見ていただくと、実は何兆円規模で売却もしていると。現金化もしているということも事実だと思いますので、そういう意味では投資もすれば売却もするというのはケースバイケースでバランスを見ながら考えていきたいと。

ただこの15年間ぐらいを見ていただいて、投資した金額と得られた結果についての成果はおそらく世界中の大手の投資企業の中では、最も高いリターンを得た会社の1つであろうというのも事実であると思いますので、ぜひ覚えておいていただきたい。

さらに直感だけの私に加えて、より確実なニケシュがいますので、安心して見ていただきたいと思います。

ニケシュ・アローラ氏:みなさん、ご質問ありがとうございました。孫社長もおっしゃったように、年間数千億の投資を検討していますが、もちろん我々の投資と負債とのバランスが必要だと思っています。

例えばターンアラウンドという形での投資であったりとか、アリババのような投資の形で長期で見ていただくとバランスが取れているんだなと。ポートフォリオがより多様化したアプローチを取っているということと、我々がある程度集中しているところだけではなく、業界や地域に関しても多様化していると。それから、今現在は数は少ないかもしれませんが、6ヵ月先に関してはまたチャンスがあるかもしれないと。全体を見たときにはバランスが取れているような形で予想ができるような投資活動をしていきたいと思います。

:では時間になりましたので、締めさせていただきたいと思います。