意外と実践的な内容の多い1冊

DaiGo氏:『ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術』、これですね。ハーバードのビジネススクールとMITの。何がハーバード×MITなのかってところなんですけど、ハーバードのロースクールの先生と、MITの教授を40年ぐらいやっている先生が書いたんですよね。難しそうなんですけど、意外とわかります。こんなんです、中身は。結構読みやすいんですよ。

ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則

内容を軽く紹介すると……。でも、まえがきはそんな、まぁまぁって感じでしたけど、例えば第1章なんかは、交渉の土俵に相手をどうやって引きずり込んでいくのか、とか。相手の要求内容とか条件の優先順位を変える方法ってのが結構書いてありますね。

これのおもしろいのは、第1章のいきなり最初に、頑固な相手とか理不尽な取引先たちとどう交渉するのかってことが先に書いてあるんです。

こういうタフな話題を最初に持ってくるあたりが、自信があるんだろうなっていうふうに思ってですね。巨大企業との交渉だったりとかも書いてあるし、あとは、「うちではやらないから」とか「よそ行ってよ」みたいなのあるじゃないですか。たらい回しみたいな。

そういうときにどうやるのかっていうことも書いてありますね。これは、もちろんハーバードの先生が書いているので、いろいろ論文の出典とか科学的な内容がガンガンあるのかと思いきや、意外とね、出典とか論文というのはそんなに、出てこなくてですね。実践的な内容も、具体的にどういうふうにするのかっていうことを中心に書いてあるんで、そこはちょっと意外でしたね。

代理人を立てたほうがいいケース

学者の本っていうイメージを最初持ってたんですけど。社内の対立をどういうふうに改善していくのかとか、そういうのも結構書いてありますね。あとは、交渉のケースっていうのは、例えば、自分が交渉をしない方がいい場合。代理人とか。あとは、複数に交渉したほうがいい場合っていうのもあるんですよ。そういうのが書いてあったりとかします。

例えば、代理人を立てたほうがいい場合だったら、僕なんかは典型的なそのタイプで。テレビとか講演の依頼が来たりとか、企業の役員さんとのコンサル契約とか結んでやるときに、僕が金銭交渉、昔はしてたんですけど、今はほとんどしないんですね。スタッフにやってもらうんです。

なぜかというと、僕は役員の人となるべく仲良くなって人間関係を作ると。お金の交渉の部分だけはスタッフの人にやってもらうっていうのが一番いいやり方。なんでかっていうと、どうしてもお金の部分で交渉すると、人間関係がぶつかることがあるんですよね。そこの部分を、仕事だからって代理としてやってくれるっていうのがすごく大事なんです。

自分にとって、プラスになる信頼関係だったりとか、そういうビジネス上のやりとりみたいなのは、盛り上げるんですよ、自分のところを。お金の交渉になると、結局交渉で有利な金額を取りたいので、これぐらい払ったからとかっていうのが出てくるんで、そこのネガティヴな要素がある部分に関しては、代理人を立てるっていうのは、すごくいいやり方っていうことですね。

だから、やっぱり、いわゆるマネージャーじゃないですけど、秘書だとか代理人っていうのは結構雇ったりしたほうがいいっていうことですね。

あらかじめ最低限の条件も決めておく

結構いろんなことが書いてありますから、実践すれば本体価格1,800円に比べたら取り戻せると思います。夜に飲みに行ったらこれぐらいの金額使うんで。僕はやっぱり大学生のとき、お金が無いときとかは、飲みに行くぐらいだったら、本を買って帰ってましたね。それが今に繋がってると思うんですけど。

あとは、条件の提示の仕方がすごく大事で。交渉するときに、どこにゴールを落とし込むのかとか、自分はここは絶対譲れないとか、ここは譲っていい条件ってあるじゃないですか。そういうのを明確にしない人が結構、多いんですよ。例えば、金額は、絶対この金額以下を落とせないってなったときにどういうふうにするのか。

あるいは、労力。例えば、これだけの人数、3人を稼働したら、この金額以下になっちゃったら赤字になっちゃうから絶対落とせない。そういう具体的な、デッドラインをちゃんと決めとくんですよね。

これはトレードとかやってる人はわかると思うんですけど、自分で、ここ行ったらアウトみたいな。線を最初に決めておかないと、だんだん下がっていくと、もしかしたらいけるかもっていう希望的な観測で、その線を見誤っちゃうことが結構多いんですよね。

だから、交渉する前に決めておくことってすごく大事ですね。交渉する前に、条件を決めておくんです、自分の中で。

じゃないと、相手が例えば、それこそね、相手がメンタリストじゃないですけど、うまく相手の心を揺さぶって条件をその場で上手に変えて、首を縦に振らせる技術を持っている人が相手になったときに、すごく不利な条件で契約しちゃったりする場合もありますから、そういうのは気をつけたほうがいいよって話ですね。

おもしろいのが、技術に関わるメーカーだったりとか企業とか、いろんな例が出てくるんでおもしろいんですよね。4章のところでは、「交渉相手の勝利宣言を思い描け」って書いてあるんですけど、これは何かっていうと、「自分にとって最高の条件を相手に納得してもらおう」ってこの言葉に、全てが入っているようなものですね。

自分にとって最高の条件というのを、どうすれば相手が「それはいい条件だね」っていうふうに、思わせることができるかってことが結構書いてありますね。トラブった場合どうすればいいのかってことも結構書いてあります。

これ多分、ビジネスやっている人とか、サラリーマンの方とか、交渉したりとか、がっつりネゴシエーションまでいかなくても、ちょっとした交渉が多い人が読んでみるとタメになるんじゃないかなと思います。ファシリテーターとか入りましたけど、交渉にファシリーテーションをどういうふうに適応するかっていう話が書いてありますね。

思いついたことはどんどんメモする

この5章の部分って結構おもしろくて、自分の立場を守りながらやらないと意味がないんですよ、交渉っていうのは。僕だったら、役員の人と仲良くなって、仕事が定期的に来ると。それは僕が仲がいい関係を持っておかないと仕事が来ないわけだから、この立場っていうのを守らなくちゃいけないんですね。その立場をどういうふうにやっていくかっていうのが書いてあります。

ちょっと、紛争の話とか出て来て、そこまでね、僕らは紛争に巻き込まれることは今のところはないと思うんですけども。わからないですけどね、ISISとかあるから。そういうのも書いてあって、読み物としてはおもしろいなというふうに思います。

6章の部分は、一般の人はどれぐらい必要なのかなって感じなんですけど、第6章の部分は、リーダーというか、組織を抱える人。組織っていっても社長である必要はない。

例えば、小さいグループとかでも使えると思うんですけど、リーダーとか、組織を動かしていくときに、どういう交渉術が必要なのかっていうことが結構書いてあって、ここは目を通しておけばいいかなって感じです。

最後のほうにコーチングの話もチラッと書いてあって、優れたコーチって、どういうふうに選べばいいのかとかってところは参考になったりします。という本です。

意外と、あんまりAmazon見ても星とかついてなくて、あれなんですけど、結構具体的なことが書いてあるんですよね。薬局長とセールス担当員の会話の一部とか書いてある。結構参考になると思います。

大事なのは、ビジネスの話題が多いので、自分の話題に置き換えて読むっていうのが大事なんです、この本を頭に残したいんだったら。自分だったら、このケースだったら、こうするなとか。このテクニックとかこの流れは、自分の仕事にもあるなっていうのを考えながら読むのがおすすめです。

考えたときに、その思いついたことは、端っことかにメモをしておくといいですね。あるいはノートにとってもいいですけど。直接書くのが嫌であれば。

そういうのが結構おすすめですね。僕はこの本はノートに取っちゃいましたけど。そういうふうにして、実際に試してみるっていうのが大事だと思いますね。なので、信頼関係を壊さないで、交渉術を勉強してみたいっていう人は、この本読んでみてください。

『マネージャーのための交渉の認知心理学』

もう2冊目いきます? 2冊目は、ちょっと玄人向けじゃないんですけれど、勉強が好きっていうだけなんですけど、これは僕の趣味です。ベイザーマン博士っていう人がいてですね。その人の本なんですけど。ちょっと待ってください。出しますね。

この本はいい本だよ。ちょっと高いけど。だいたい僕が紹介すると、中古とか、定価で普通に売ってる本がこの前も無くなっちゃって。あとからメルマガのほうに、「売り切れになっちゃって買えないんで、どうにかできませんかね?」って連絡が来たんですけど、すみません、Amazonの在庫は、ちょっと僕コントロールできないんで(笑)。

申し訳ないですが。無くなっちゃったらすみませんね。一応、紹介するんで。早い者勝ちということで。これは完全に僕の趣味です。僕の趣味嗜好がわかりますね。僕がどういう本を好きで、どういう本を読んでいるか、この本を見るとわかると思います。僕が敬愛するマックス・ベイザーマン博士。定価は2,900円くらい。『マネジャーのための交渉の認知心理学』です。

マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋

高いですよ。高いんですけれども、これはすごくいい! 本当に。一応、これ、有名なオーストウェスタン大学のケログ系大学院の先生なんですけど、マーガレット・ニールさんっていう共著者の人は、スタンフォードの先生です。これがね、本当にいい本で! 僕ね、本当にいい本の場合は、こういうふうになるんですよ。

こうやって、上にちょいちょい書き込みを入れるんです。これは、気に入ってる証拠ってことですね。

これね、すごくおもいしろいのが、ちょっと紹介すると、交渉するときに、どういう交渉の仕方が合理的なのか。

みんな「合理的、合理的」って言うんですけど、結局「それは合理的じゃない」とか、「客観的じゃないですよね」って言うんですけど、相手がそう言ってきた場合に、それは何かっていうと、それは客観的とか合理性じゃないんですよ。自分にとって得かどうかっていうだけなんです。

20ドル札オークション

交渉における本当に合理的な方法とは何なのかっていう話とか。これが、心理学の実験とかがおもしろくて。20ドル札のオークションの話とかって、皆さん……。一応、その前に、合理的な交渉っていうのは何かってこの本に書いてある定義をちょっと話すとですね。

ただ単に、お互いが「じゃあそれでいきましょう」って合意に至ることじゃなくて、最高の合意点に到達する方法を知るっていうのが、合理的な交渉だと。

だから、お互いが交渉したことによって、一番まずいのは、もちろんどっちかが利益を取るっていう場合もまずいんです。

けど最悪なのは、例えば値段を下げ続けていって、どんどん価格が崩壊していくみたいなのと同じで、お互いにとって残念な貧乏くじみたいになる場合が結構あって、そういうのを避けましょうって話とか、結構具体的にこういう行動を取りましょうとかが書いてあるんですね。

コミットとかトレードオフ、自分の判断、伝えやすい情報をどういうふうに使うかとか、相手の視点から学んだりとか、あとは自信過剰になったりとかして失敗する場合があるんですね。「おれは必ず交渉で勝てるんじゃないか」みたいな。有名なサンバースト効果の話も書いてありますね。

20ドル札のオークションっていうのは、何かっていうと、ちょっとおもしろいんで、皆さん、考えてもらいと思うんですけど。20ドル札を出すんですね。20ドル札を出して、この20ドル札をこれからオークションにかけます、と。参加するのか、黙って見るのかは、ご自由です、と。

競り値の付け方は1ドル単位で付けていきます。最も高い値段を付けた人が20ドル札を競り落とせる。っていう実験なんですね。

ちなみに、この今回のオークションは何が違うかっていうと。2番手。例えば、19ドルで落札になったとしたら、2番手、つまり、19ドルの前に18ドルを付けた人ですね、例えばですけど、もお金を払わなくちゃいけないっていう。しかも、もちろん20ドルは貰えないっていうルールです。

例えば、その20ドルに対して、ある人が3ドルを出して、ある人が4ドルを出して、それで競りが終わったら、その差額分を支払わなくちゃいけないんですね、2位の人は。つまり、2位の人は何も貰えないのに、3ドル払わなくちゃいけないってことですね。このオークションに名乗り出ますかって話です。どうしますか? 皆さん、参加しますか?

思いこみから生じる最悪なパターン

これ、何がおもしろいかというと、よくこうすると、「最初に17ドルとか18ドル、19ドルを出せばいいんじゃないか」っていうふうに思うじゃないですか。ところがですね、2番目のルールのせいで、どういうことになるかっていうと、例えば最初に、19ドルを出したら、誰も乗ってこないんじゃないかって思って、言ったとしますよね。

このときに、もし誰かが20ドルって言ってきたら、どうなるかっていうことです。そうしたら、トントンになる人が1人でますよね。19ドルの人は、このままじゃ、19ドルを持っていかれて大損なわけですよ。だったら、「21ドルにして損害を1ドルにしよう」って思うんですよね。これがどうなるかっていうと、最悪なパターンになりますね。

ちなみにこれを実際に実験してみると、この20ドルのオークション。いくらになるかというと、終わり値が30ドルから70ドルの間になるんです。わかります? つまり、引くに引けなくなっちゃうんです、一定金額を超えると。泥沼になっていくんですよ。

「これと同じことが交渉でも起こるよね」っていう話から入ってくんですね。トレーディングとか投資の世界ともすごく関わりがあって、これはじぶんの思い込みとか自信。「相手が降りてくれるかもしれない」とか「自分の条件を受け入れてくれるかもしれない」っていう、思い込みから来るんですね、こういうのは。

こういうわかりやすい例がたくさん書いてあって、この手の本でこの値段だと、すごくカッチリとしていて、わかりづらい本とかあるんですけど、この本は本当にいい本で。わかります?  こうやって、ほとんどのページに書き込みが入っちゃうぐらい、いい本でした。