「子育てしながら働きやすい世の中」への3つの課題

小安美和氏(以下、小安):よろしくお願いいたします。では大久保さんのすてきなお話を踏まえながら、お二方にお話を聞いていきたいと思います。

私たち、このiction! プロジェクトの中で、「子育てしながら働きやすい世の中を共に創る」というゴールを掲げているんですけれども、そこに向けて3つの課題テーマを置いています。

妊娠・出産時に辞めなくてすむ。第一子出産後に辞めた人の4割の方が後悔してると答えているというところから抽出しています。

そして育児と仕事の両立によるストレスがあるという方が8割いらっしゃるんですね。このストレスを減らしていきたい。

そして3つ目、無理なく始められる仕事をつくる。仕事をしたいという主婦の方の実に8~9割の方が、尋ねれば働きたいと言うんですけれども、実際は条件に合った仕事がないということで働けていない方が日本には170万から300万ぐらいいらっしゃるという推計があります。

そういう中でこの3つのテーマについて、ベンチャーズでもこの3つのテーマ、この切り口で皆さんにぜひエントリーしていただきたいと思っているんですが、今日のゲストのお二方にもお伺いしてみたいと思います。

じゃあ綾さんから、ご自身の体験なども踏まえながら。

夫を巻き込んでいくことが重要

伊藤綾氏(以下、伊藤):そうですね。私はどれも切実、今もお二人のお話聞いてもう涙が出そうになるぐらい。私も今も3か月に1回ぐらいは夜、涙が出てきて、それぐらい悩んだりするパパ、ママの方は少なくないかもしれません。

でもその中でも私は3つ目が実感がとてもあります。なぜかというと私自身が専業主婦でしたので。新卒で入った会社を1年間だけで辞めてしまって、そして夫の転勤について引っ越しをして退職をしたんですね。それから4年間弱主婦をしてました。

そして28歳のときに東京にまた戻ってきまして、仕事をしたいな、何でもいいから役に立ちたい。あと、経済的にも安心していたいということで、仕事を探したんですけれど、当時、仕事がなかなかなかったんです。見つからなかったです。

自分がまだ1年しか社会人経験がなくて、自分の場合はそのときにはキャリアが足りず、またブランクだと思っていました。例えば実際にパソコンもほとんどできなかったですし、28歳で仕事としてできるものがほとんどないと思っていたんですね。これが一番私にとっては切実だった覚えがある点ですね。

小安:ありがとうございます。じゃあ甲田さんはどの辺りがちょっと気になっていらっしゃいますか。

甲田恵子氏(以下、甲田):私は辞めざるを得ない環境に置かれてしまう人たちが、仕事を続けられるっていう環境を、どう社会が用意してくのかっていうのがすごく大きいテーマだなと思っていて。

小安さんが最初に「男性をどう巻き込むかっていうのがすごく大事だ」とおっしゃってたじゃないですか。先ほど本当に男性を巻き込むのがリクルートらしさっていうお話をしてたんですけど。

例えばAsMamaっていわゆる正社員が30人いて、パート・アルバイトの地域スタッフが500人ぐらい全国にいるんですが、辞めていく理由の1番が男性の働くことに対する理解のなさなんですね。

どうしても仕事をしていれば家事がおろそかになる。例えば朝ごはんのお皿が夕方までシンクに漬けたままになってなっていて、そこにたまたまご主人のほうが先に帰ってきちゃうとか。専業主婦のときには、夜は夫婦で楽しくテレビを見ながら会話をしていたのに、パカッとパソコン立ち上げてパソコンしなくちゃいけない日だってでてくるとか。土曜日、日曜日に出かけなきゃいけないとか、あるじゃないですか。

そんな中、おそらくご主人はそんなに他意があって言っているわけではないんですけど、「何か最近家が散らかってない?」とか、あと子供の成績がちょっと下がったりすると、「仕事し過ぎて子供の勉強見てあげられてないんじゃない?」なんていう言葉を言ってしまう。

そうすると、女性ってもう生物学的に家庭を守ることを優先したくなる性ですから、ご主人が一番、子供が一番っていうことをどんなキャリアウーマンの人でも考えてしまいご家庭でご主人がそういう一言をぽろって言うたびに自分が働いてることにすごく罪悪感を持つんですね。

まだそんな優しいものの言い方のご主人であれば、先ほどのイラッとナンバーワンに出てくるだけだと思うんですけど、厳しいご主人にしてみると、「そこまでして働いてもらわなくていいよ」、「そこまでして君に稼いでもらわなくても僕の収入で何とかやっていけないの?」みたいなことを言われると、「もう土日の仕事はできません、残業は絶対できません、子供一番です」ってなってしまう女性の、まあ何と多いことかと!

すると、中小企業や、サービス業で働いてらっしゃるような方は多いと思うんですが、そういった方が、特にそこまでして働かなくちゃいけないのかって辞めてしまうことが多いので、そこを何とかできないものかと本当に思いますね。

女性もきちんと稼げるのが大事

小安:ありがとうございます。この男性の皆さんの意見もぜひ伺ってみたいなと思うんですけれども、共感ポイントが大きいテーマなのかなと思っています。

ただ、私も男性をすごく巻き込みたいと思ってるんですけれども、どうしたら単なる「態度が気に入らないのよ」っていう話ではなくて、それがなぜ起きてしまうのか、どうしたら解決していけるのかみたいな話をぜひ皆さんとも話をしてみたいんです。

甲田:きちんと稼げるっていうのは大事だなと思うんですね。女性が一生懸命働いて、「私もこれだけちゃんと収入を得て家計簿支えてるよ」って言えるようになるのが1つ。

もう1つ、子育てしながら働くことが今すごく何か美的にとらえられたり、世の中的には後押ししてくれてるところはあると思うんですけど、子育てしながら働くって周りに迷惑かけることもたくさんありますし、その人自身が会社にどれぐらい貢献しようとしてる人なのかによって受けられるサポートって変わるべきなんですね。

子供がいることが免罪符みたいになってしまってはいけないので、そこの部分の教育だったり、そこの部分の質の高さというか品位を高めたり、収入だったり、やりたいことができるっていうことがどう標準化されてくるのかが、次に求められるものなんだろうなと思っています。

小安:この状況って、具体的にどこで誰が仕掛けをしてけばいいって思われますか?

甲田:すごい難しいですね。ただ、中小企業ができることじゃないと思うんですよ、女性の育成だとか。育成とか教育って一番お金がかかるところだし、中小企業だとそういうノウハウそのものがないので。

むしろ大企業だからこそ、いろんな視点で育成するだとか、人を育てる文化をつくるノウハウっていうのがあると思いますから。

特に皆さんの周りにありそうな「うちの会社では当たりまえだけど、こういうことが世の中一般的には当たりまえじゃないんじゃないか?」みたいな種を外にアウトソースしてくれるようになると、例えば「リクルートの中では当たりまえに女性が活躍してるよ」みたいなのが、世の中の当たりまえになってくるんじゃないかなと思います。

結婚式を「家族のスタート」と考える新郎が増えた

小安:綾さん。

伊藤:はい。特に男性のところでいうと、私3月までゼクシィにいたので、この10年で一番変わったことのひとつは男性だと思うんですね。新郎が変わった。

どう変わったかというと、不安定かもしれない未来に対して新婦と一緒に気持ちを表現する新郎というか、感じさせる新郎が増えた。

結婚式って時代時代の価値観や家族観が出るんですよね。例えばあるお婿さんとあるお嫁さんで、いい結婚したねとか、いい奥さんもらったねとか、昔は恋愛のゴールとしての意味性が強かったものから、今はゴールではなくて家族のスタートである、という意識が感じられる。

なかなか確実な未来が見えづらい中で、、どういう夫婦になろうかとかどういう家族になろうかっていうことを考えていこうとしている。それは幸せだけど心細くもある。なので、結婚式で求められる演出も、ほっとさせるような、「見守ってくれてありがとう」「これからもよろしく」「ずっと見守るよ」と、ゲストと一体になるものが多くなっています。

披露宴の最後のムービーに全員の名前が流れる。「ずっとこれからも一緒にいようねといった気持ちを確認して終わるっていうのが増えてきたんですね。ちょっと話がそれちゃった。

(会場笑)

つまり男性もスタート地点で以前以上に様々な感情があるのだなっていうのが、特に結婚していく新郎の若い男性を見て思って。

そして、ワークライフバランスの観点でもふたりで「ありたい家族像」を考える時代。そんなとき、例えば「もしパパたちが「じゃあ、定時に帰れますか?」って言ったときに、会社の中で本当に帰って子育てをできるかっていうと、そこはまだ女性以上に難しい面も多い。

そこを変えるにはどうしたらいいかって考えたときに、本当にパパとママだけでいいのか、全体の働くことがどう変わると、結果的にママも救えるのかっていうことの視点も大事なのかなって思いますね。

小安:まさにこのテーマなんですれども、最初、「解決する問題は女性に関することなのかな」と思う人が多くて、外部の方にお話をしても、何か「女性活躍の話ですか?」とか「経済的な労働力の話ですか?」って言われるケースが多かったんですけれども。

このプロジェクトでは男性、女性という主語を抜いています。誰もがこの育児というものに必ずどこかで、子供がいるいないにかかわらず、必ずどこかで関わってくる問題だと思いますので。このようにテーマを「iction!」って置いたところから、実は男性の方から全然違う反応が返ってきたりとか、このテーマだったら何か一緒にやりたいって言っていただけるようになりました。

女性の不を解消するではなくて、ぜひ男女ともに解決していくみたいな話をしていきたいなと思います。

甲田さん、何か1番、2番とかで何かそんなアイデアとか、こんなサービスがあったらいいなとかってありませんか?

ワークライフバランスは一通りではない

甲田:そうですね。自社サービスのPRみたいになってしまうとあれなんですけれども、本当にたくさんの子育て世帯を見ていると、各家庭によって価値観って全然違うんですね。

なので例えば小さい子供がいらっしゃるご家庭で、今は頑張って夫婦でお金を貯めて子供に医者、大臣じゃないですけど、「いい教育を受けさせてあげたいんだ!」みたいな家庭もあれば、割とのんびり田舎に引っ越しして、家族で一緒にいる時間っていうのをこれから20年はゆっくり持ちたいんだっていうご家庭もあって。

だから、行政だとかが大上段に「ワークライフバランス、全員5時に帰るべきだ!」とか言い出すこと自体が各家庭には大きなお世話なんじゃないかと。

この家庭はめちゃくちゃ働いてお金稼ぎたいっていうときに、子供を安心して預けて働けるっていうことも必要ですし、「いやいや、私は会社で働いたりせずにのんびり地域の中で自分のマイペースで働きたいんだ」って思う人たちが、そういう選択を持ちながらも社会と関わったり、ありがとうって言われるような経験をしながら、子供たちも社会性や多様性を学び大きくなっていく環境整備が必要なんだと思うんですね。

だから、この1番も2番も各家庭によって何がストレスかっていうときに、働きたいときに働けないことがストレスだったりとか、逆に働きたくないのに働かなきゃいけないのがストレスだったりするので。

この多様性にどう対応していくのかを考えたときに、困りごとがある1人に3人の助けてくれる人がいると85%何とかなるっていうのが例えば子育てシェア内での実績値なんですけど。

これを法則と考えると、助けてほしい1人に支援候補の3人をどう付けていってあげるのか、自分が助けたい側だったらどう援助候補者の1人になるのかっていう仕組みができれば、この1、2、3は一挙に解決するんじゃないかなと思ってます。

人のハンデを“価値”とみなすのがリクルートらしさ

小安:綾さん、いかがですか?

伊藤:2つの側面があるかなと。つまりこの3つのことって両立がとても大変、子育ても時に大変というリアルな不があると。

もう1つの側面は、今おっしゃったような多様性と関係するんですけど。じゃあ子供がいるママとかパパっていうのは、仕事をする上でハンデなんだろうか。

もしくは仕事をこれから始めたいと思っている主婦の方々は、主婦でずっと15年間仕事してないことが本当にハンデなのかっていう、要は一人ひとりの可能性の発見みたいなところが大事なのかなと思うんですね。

それは何かリクルートでもできたらいいなと思っていて。なぜかというと、私はずっと専業主婦で仕事がみつからなくて、いろんなところでもう断られる、落ちてしまう。で、そのときに「あなた、そんな4年間主婦を頑張っていたら、平日の午前中のカスタマーの気持ちがわかるでしょう?」と言ってくれた。

そういう会話をしていく中で、「その観点ってカスタマー観点だから、絶対に私たちよりもそれがあるからあなた活かされるよ」って言ってくれたのは、リクルートの先輩だったんです。

そういう全てにおいて、人をキャリアの観点でハンデや制限がある人とかではなくて、どんな価値があるのかっていう応援の視点もあると良いなって思いました。

小安:まさにリクルートのお話が出ましたが、ぜひ甲田さんから見てリクルートに、このテーマにおいて期待することとか、こんなことをやってほしいみたいなものがあれば。ぜひお話しいただければ。

甲田:そうですね。起業してると、ベンチャーの社長って半分ぐらいはリクルートさん出じゃないかなって思うぐらいリクルート出身の人が多くて。日本のゼロイチってかなりリクルートから生まれてるんじゃないかなって思うんですね。

ただ、ものすごい数の起業家が出てくるのに、なかなかソーシャルインパクトというか、世の中にムーブメントを起こすっていうところまでいかせるのはすごく難しいんです。でもきっとそのノウハウが、リクルートさんの中にはあるはずなんですね。

だからこの「iction!」でベンチャーズから出てきたものを、大きいものも小ちゃいものもみんな紡いだら、本当に今行政が何とかしようと思ってもできない文化、「子育てっていうのは1人でするんじゃなくてみんなでやるものなんだ」っていう文化をリクルートさんがつくるんじゃないかなって思って、すごく楽しみにしてます。

小安:綾さん、何かありますか?

伊藤:そうですね。何か私は本当にリアルに、本当にこういうこと困ってるんだってリアリティをどれぐらい追及できるかっていうのを自分でも心がけたいなと思ってます。

もう1つは、過去の先輩世代が何をしてきてくれたんだろうっていうときに、例えば女性でも働き続けられるっていうことを開拓してきた世代もあれば、そのあとは女性でも子供を産んでも辞めないっていうことが段々増えてきた世代に続く。今だと働いて子供がいて、さらに例えば夕ご飯を一緒に食べられるようになってきたとか。

じゃそのあとってどんな世界つくるんだっていう視界で、今の不の解決と、「こうなったらいいな」っていう世界をみんなで考えられるといいのかなと思っています。

iction!を誰もが知ってるプラットフォームに

小安:ありがとうございます。たぶん皆さん、甲田さんに聞きたいことがいっぱいあるんじゃないかなと思うので、ぜひ会場から言っていただけるといいかなと思うんですが。先ほどのビジネスとか「どうやって最終的にはもうけるんですか?」みたいな話とか、いろいろあると思うんですね。

司会:そうですね。質疑応答のお時間に移らさせていただきたいと思います。どなたかご質問ある方いらっしゃいますでしょうか? 挙手いただいたらそちらまでマイクをお持ちします。いかがですか? 感想でもです。

小安:なんで今日このテーマで来ていただいたかっていうことでもいいですし、たぶん皆さんそれこそ多様性って話ありましたけれども、このテーマで来られたことの課題感って、本当に一人ひとり違うんじゃないかなって思っています。なので、ぜひそんなこともシェアをしていただく場にできるといいかなと思っています。

参加者1:お話しいただきましてありがとうございます。

少し私のほうから男性の目線から感想をお話しさせてもらえればと思うんですけど。なかなか最初はお話いただいていたように、あんまり男性が女性に求めるところって、家で安心して家庭をつくってほしいみたいなの、結婚してないんで妄想なんですけどちょっとあって。

(会場笑)

そんな中でも女性が家にずっといたら退屈してしまうんじゃないかなというか、ずっと家にこもりっぱなしっていうのは何とか変えてあげれないかなっていうことをちょっと私の中で思って、こういう「iction!」に参加させていただいたんですけど。

その中でも甲田さんがやられてるビジネスは、女性が社会進出していくことをすごい後押ししていただけるサービスだなと思って、ただただもう、こんなサービスはあったのに知らなかったっていうのがちょっと自分がまだ勉強不足だなと思った1日でした。

私もまた「iction!」で何か考えていければと思っておりますので、またよろしくお願いします。

甲田:はい、ありがとうございます。そうなんです。こういうサービスが知らなかったって言われることが一番残念で。

子供がいるママだけじゃなくて子供がいない方も、もう子育て一段落した方も、「ああ、知ってる、知ってる!」って。

救急車って皆さんほとんど乗ったことないですけど知ってますよね。それと同じようにみんなにとって知ってるプラットフォームになりたいなと思ってます。どうしたらなれるかちょっと教えてください。

(会場笑)

司会:ありがとうございます。では他に。

子供の成長とともに社会の課題を忘れてしまう?

参加者2:甲田さんにご質問なんですけれども、先ほどの事業かライフワークかというスライドが非常に響きまして。

私いま子供が小学校1年生なんですけども、そのときそのときの悩み事とか、こういうのがあったらいいのにっていう思いは、良くも悪くも子供の成長とともに変わっていって、一人っ子だし忘れてっちゃうんですよね。

そのときはすごい困って、本当に真剣に思うんですけれども、いつの間にか成長によって95パーセントぐらい解決されたりして。

そういった中で、これは事業としてやらなきゃいけないんだっていう、たぶん甲田さん自身も自分のことと事業としてって、意識して切り分けてる瞬間がきっとあるんじゃないかなと思うんですけども、何かこう考えていますというのがもし掘り下げてお聞きできたらと思ってご質問しました。

甲田:私自身は実際子供が本当に一番大変だった2歳、3歳の時はめちゃくちゃ仕事していて。猫でもいいから保育園まで子供を迎えに行ってほしいなと思いながら仕事してた感じだったんですね。

そんな仕事人間は今大なり小なり変わらないので、子育てが大好きだからっていうよりも、この問題を何とかしなければいけないと思ったからこそ、これに取り組んでいるっていう感じです。

今の自分の子育てに関していうと、どうやったら宿題をさせられるようになるかみたいなこととか、次、中学受験しないのかなとかいうところが関心事なんですけど、それと事業は完全に切り分けて考えるようにはしてます。

逆に自分の子供が10歳ぐらいになってくると、AsMamaのサービスは1歳から12歳がターゲットなので、4年生の子供をもつ親の気持ちっていうのはわかるんですが、2、3歳の子供をもつお母さんたちの気持ちっていうのからだんだん離れていってしまったり、私の2、3歳の子育てのときの感覚に寄り過ぎてしまって今の時代の未就学児を持つ母親の気持ちがわからなくなってしまうので、いつもいつもターゲットの声を聞く機会を定期的に意識してつくるようにして、市場のアップデートを自分の中で図ってます。

怪我をさせたらどうしよう? 男性はリスク意識が強い

参加者3:僕が質問しちゃいけないかもしれないんですけど、甲田さんに質問したいんですけど。聞きたいのは、最近レポート読んでたら、アメリカはダディートラックっていうのが非常に流行っていて、マミートラックならぬ。つまり育児に専念したい男性層がやたらと増えてて、また別の角度から問題になってるみたいなんですが。

日本でも育児にちゃんと携わりたいって思ってる人たちが急速に増え始めてきている気がするんですが。そのサポーターの中にはあまり男性はいないんでしょうか? というか男性がこの問題に入っていく流れとか感触はどんな感じなのかをお聞きしたいんですけど。

甲田:支援者として活躍する男性も一部います。一部いますけれど、どうしても男性のほうが他の子どもを預かるということに対するリスク意識がすごく強くて、怪我をさせてしまったらどうしようとか先んじて考えてしまうから躊躇してしまうという傾向がありますね。

ただ、自分の子どもの子育てに携わりたいっていう思いをもった男性は非常に多くなってきているなというのは感じます。

司会:ありがとうございます。では最後にあとお一人くらい。

参加者4:今28歳です。産んでからのサポートもそうなんですけど、産む前にもうちょっと自由に人生を考えられるようなものとか、そういうのって大学生だったりとか、あとは働いてても労働時間の短縮だったりとか、コミュニティ形成みたいなところで。

もしかしたら少し変わっていくのかなと思うんですけど、その辺お考えをもしお持ちでしたらお聞かせいただきたいと思いまして、質問させていただきました。

産んだ後と産む前は全然別の生きもの

甲田:はい、ありがとうございます。私たちって子育て世帯にものすごいアプローチがとれるので、いろんな企業さんが「プレママだってAsMamaさん得意でしょ」って言われるんですけど、全然別の生きものなんです。実は産んだ後と、産む前って。

プレママさんは産むことしか考えてないので、いくら産んだあとの話をしても想像つかない。とにかく安全に産むことしか考えられないんですね。で、学生さんとかとお話しさせてていただくこともあるんですけど、興味はあっても想像はできないっていうのが普通だと思います。

私自身、30歳で子供を産んでるんですけど、海外の仕事をしてたので一番最初に妊娠したことがわかったときには、とっさに思ったことは「海外出張どうしよう」っていうことが一番最初に頭に来たぐらいです。

ただ勝手にお腹が大きくなっていって、あちこち痛くなってくると、母親って自然に母親になっていくんですね。だけど母親になる前に当たり前に子どものことやこそだてのことを知っておく機会を持つことは絶対必要だと思うんですね。

例えば生まれたばっかりの赤ちゃんって1日に10回も20回もオムツを替えなきゃいけないぐらいずっとおしっこしてるんですよ。だけど今、そういうもんだっていうことを知らない母親が「うちの子供、ずっとお腹こわしてるんです」って言って病院に連れていくようなケースとか、生まれたばかりのころはずっと寝てることが当たり前なんですけど、「ずっと寝てるんです」って保健師に相談される方とかいるそうです。

他にも意味もなく泣いたりするんですけど、「泣いてばかりいてどこか具合が悪いんだと思うんですけど」っていう相談事のある新米ママの話も割と耳にします。

だから生まれたてはこんなもんだとか、しばらくするといやいや期があって、小学校になったらこんなでっていう発達だとかを自分が子育てを体験するまで知る機会すらないのが、いざ子育てをするうえでの大きな不安になったり、育児うつになったり、虐待につながったりってするので、教育の機会は絶対必要なんです。

子育てには都市伝説みたいなものは数えきれないほどあるんですよ。その時期の子育てを過ぎてそんな話を聞くと、「バカじゃないの」と思うようなことでさえ、その時はわからないから本気で悩んじゃうんですよ。

知る機会っていうのをもっと幼少期の頃から持てれば、結婚することも、妊娠することも、産むこともそんなに怖くないんじゃないかなと思いますね。

司会:はい、ありがとうございます。せっかくなんで綾さんもコメント頂いてもいいですか?

子育て中の家庭に大学生のインターンを受け入れる

伊藤:我が家は大学生のインターンの受け入れをやっていまして。そういうサービスもあるんですよね。

この週末も大学生が15人ぐらい来て、私たちから「こんなだよ、あんなだよ、育児はこんなことがあるよ」みたいな話をする場をもちました。すると、きっと将来また産むか産まないかっていうときにこの話がまたよみがえるかなと思っています。

もっと確かにシニアとの交流だったり、もしくはパパママとの若い人との交流ができると、それこそ甲田さんがおっしゃったようにみんなで育てる時代を切り開けるかなと、いまお話を伺って思いました。

司会:はい、ありがとうございました。全員が当事者であるということ、男性をどう巻き込むかみたいな視点ですとか、あとは産む前ももしかしたら不がありそうなこととか。あとは子供の年齢によって不が異なりそうだな、みたいな視点が出てきたと思います。

改めてお三方に拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

制作協力:VoXT