最近の組織は「働きやすさ偏重」になってきている?

斉藤知明氏(以下、斉藤):上村さんありがとうございました。ではここから、ディスカッションに入っていきます。最後の「経営者が無関心になっちゃうとだめだよ」っていうのは、非常にドキッとしましたね。

「事業成長をやんないといけない!」ってなってると、「無関心にしたい」とか「どうでもいい」と思ってるわけじゃないんだけれども、どうしてもそっちにフォーカスしてしまって。結果として、ひっくり返す感じになってるということ、よく起こってしまうなと思いました。

上村さんのパートでの、4つの「伝えたいこと」。その中でも、あらためてこの3項目「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」がどんなバランスになってるか? これをちゃんと見極めて進んでいくことが重要だと。

特に、最近は「働きやすさ偏重」になってきているのでは? というお話がありました。自分自身の組織が「今どの状態なんだろう?」「こっちにもなってるし、こっちにもやりすぎてる部分もあるし」と、みなさんの中で、お聞きしながらグラグラしていた部分もあるのかなと思います。

自分たちの組織が「どんな状態だ」というのは、どうやったら把握できるんでしょうか。

上村紀夫氏(以下、上村):人事の方はわりと空気で感じちゃうと思うんですよ。「これは!」っていう感じで。なので、ここはもう言葉じゃない部分もたぶんあると思いますね。

あともう1つは、みなさんにコメントでいただきました「変化への拒否反応」とか「変化を受け入れない・避ける」という部分が出てくると、けっこうしんどくなってくるかなと思うので、このあたりは(要素として)あるかもしれないですね。

それが出てくると、やっぱり「働きやすさ偏重」になってるというか「個の意識が強くなってるな」って思っていただいたほうがいいと思います。

早期離職を促す「労働価値」と「会社が提供できる価値」とのズレ

斉藤:なるほど。例えば「この会社は給与もちゃんと出るし、残業も少ないし、楽チンだから」という組織は、かなり「働きやすさ偏重」になってる。一方で「達成したいこと」はみんな語れるけど、業務量がパツパツだったりメンタル不全が出てきてしまってるようなところだと、「働きがい偏重」になっちゃってるんじゃないか? というところなんですか?

上村:そうですね。「『働きがい』と『働きやすさ』のバランスが悪い」っていう表現ですよね。もしくは採用の話になってきますが「心身コンディション」の部分で、もともとストレス耐性の低い方を雇いすぎちゃうとか。そういったところの採用ミスとか、会社の文化でフィットができないなんてことも、要因としては考えられるかもしれないです。

斉藤:上村さんは産業医としても、14万人の従業員・200〜300の組織を支援されてらっしゃるとのことでしたが、採用のタイミングで「こうしたほうがいいですよ」みたいなアドバイスもされてらっしゃるんですか?

上村:そうですね。ストレス耐性に関しては、具体的に「どういったかたちで見るか?」ということをお話ししています。

雰囲気的に「メンタル的に弱そうだな」と思う方を見極めるのは、たぶん人事の方はけっこうイージーにできると思います。意外と過剰防衛……例えばストレス耐性が低い方は、わりと攻撃性が出たりすることもけっこうあるので。そういったところをどうやってあらかじめ見抜くか? というところが、ストレス耐性の見抜き方の部分ですね。

もう1つ重要なのが、最初のほうに出しましたけど「労働価値と、会社が提供できる価値との違い」。このズレがけっこう怖くて。会社が提供できない価値であるにもかかわらず採用時にその価値をアピールしてるケースは、わりとミスマッチが起こりやすいので、その後に痛い目に合うことがあります。だからそのあたりは注意しないと、早期の離職を促すというか、会社の文化を痛めることが起こりうると思いますね。

斉藤:(スライドを指して)この青い棒が、言ってみれば「期待値」ですよね。そしてオレンジの棒が「実際の提供価値」。だからこそ、入り口(採用時)で期待値を上げすぎるとマイナスになっちゃう。「ちゃんと等身大のアピールをするべきだよね」っていうのが、ライフタイムで見ると重要だと。

上村:そうですね。

「優秀な2が抜けたら、新しい『優秀な2』が生まれる」と思ったらダメ

斉藤:ありがとうございます。「ぶら下がり率6割の我が部署は泣きたいです」っていうコメントもいただいています。これはまさに「働きやすさ偏重」になってしまうとそうなってしまうんでしょうか?

上村:そうですね。あと大手さんはこれまでの文化の中で守られてきてるので、そのあたりもあると思います。でも「ぶら下がり」の問題の解決は本当に難しいですよね。

斉藤:ご講演の中で「『ぶら下がり』の中から、最初に『パラダイス』にするか『ステップ型』にするかが議論の分かれるポイントだ」っておっしゃいました。世の中的にはたぶん、(スライドを指して)白いほうの矢印(「ぶら下がり」から「パラダイス」へ)のアプローチとってると思うんです。でもそうじゃなくて、先に「荒野」にしちゃうんですね。

上村:(「パラダイス」にするのは)絶対だめです。「荒野」にしたほうがいいです。そうしないと、一時的にはいいんですけど、中長期的には難しいでしょうね。

斉藤:つまり「荒野にする」っていうのは、例えば極端に言うと「ぶら下がり」でパフォーマンスが落ちてる人の給料を下げちゃうとか。そういうところも含めてなんですか?

上村:たぶん人事評価制度は一番大きいと思うんです。あとは人材育成部分での整理が重要になってくると思います。そのへんの部分は、人事や他の施策も合わせたかたちで取り組む必要があると思います。あとは「働きアリ」ですね。

斉藤:ああ、話題に出てきましたね。事前にも「これって、どうなんですかね?」って話しましたけど。

上村:「働きアリ」つまり「2:6:2の法則(組織は『優秀な2割、平均的な6割、能力の低い人が2割に分かれる』という法則)」ですよね。2:6:2の部分でいうと「優秀な2が抜けたら、新しい優秀な2が生まれる」と思ったらダメ。きついですね。優秀な層がどんどん失われる中で、簡単には「優秀な2」が新たには出てきづらい。

逆に「ぶら下がり」の2がいなくなると、新しい「ぶら下がり」が生まれるか? っていうところでいうと、そのあたりはわからないんですが。それがたぶん、本来の働きアリの理論。「余裕・バッファーとして持つ」ということなんですけど、2:6:2の法則でいうところのバランスは、たぶん会社によってかなり比率が変わってくるので。働きアリの法則で考えると危険な気がしますかね。

斉藤:同じ2:6:2だとしても、そのレベルの高さ・低さが……。

上村:そう。平均レベルが下がるだけなんですよ。なので、その中(平均値が下がった状態で、改めて)で2:6:2が発生するんですよね。

斉藤:「ぶら下がり」から1回「荒野」にして、その分でマイナス感情を減らしていくことで「ステップ」にして。そこから従業員満足度を上げていくってことなのかなと思いました。

「働きやすさ」と平行して「働きがい」を生み出せるか

斉藤:あらためて、このコロナのタイミング。おっしゃったとおり、環境・外圧変化に「心身コンディション」が影響を受けやすかった。だからこそ「働きやすさ偏重」になってしまった。その結果として「ぶら下がり」「個人主義」が加速していったという現状だと思うんです。

今後、戦略的にバランスをとっていく必要があるっておっしゃってましたが、実際にはどういう手順で進めていけるものなんですか?

上村:1つはやっぱり、働き方改革の流れは変わらないと思うんです。ある程度、やはり採用においても必要になってくると思うので。ですが、どうやってモチベーション・エンゲージメントのほうに変えられるか? っていうと、最初からテーマに出てましたけど「変化」のところなんですよね。

変化をどうやって安全に、かつ有効にさせるか? でいうと、だからこそ今は心理的安全性が重要になってるかなと思っています。ですので、適切な変化を上手に与えていって、「働きやすさ」と平行して「働きがい」を生み出すことが、業務上できるかどうか。

このへんの設計が非常に難しいんですけど、そこが勝負どころ。うまくいく会社とうまくいかない会社の分岐点になりそうかなと思います。

斉藤:上村さんが今まで見てきた中で、うまくいってる組織の従業員とか経営者の状態にはどんな特徴が挙げられますか?

上村:会社名は挙げられないですけど、すごく生き生きしてる会社さんを例に出しますね。コロナになる前からチャットとかリモートをけっこう活用されてる企業さんです。。例えば研修とかをやると、みんな好き勝手チャットを書いたり、社長さんをイジり倒すとか。そういった感じがあるんです。

また、仕事の中には「自分のプロとしての意識がしっかりしてる」ということと、その中でも「チーム意識もしっかり持ってる」という、この両輪が発生してると思うんです。このへんがうまくいってる組織はうまくいってますし。うまくいってない会社さんはたぶん、リモートになって個の意識が強くなって、帰属意識が下がって、ますますパーソナルスペースに人が入るのを嫌がる。みたいなかたちですね。

「画面をオープンにしない」とか、そういったことが起こるという流れだと思うので。そのへんの差かもしれないですよね。

今後、より必要になってくる「出戻り制度」

斉藤:そういった組織をイメージすると、周辺のパラメータも知りたくなってきました。例えば、その組織における離職率ってすごく低いのか? さっきおっしゃってたみたいに、個で完結しない時代だからこそ……とはいえ、ある程度の(離職の)パーセンテージがあったりするものなんですか?

上村:もちろん「0」ではないですね。やはりどうしても、ストレス耐性の低い方はいらっしゃって、転職後の環境変化の連続に適応できないケースはあります。そこで言うと、何もしなくてもメンタルダウンが起こってしまう、というのは1つあります。

もう1つは、会社さんの文化って特徴的なので、その文化の特徴に合わない人は、どうしても一部は発生する。今お話してる会社の採用担当の方はすごく上手にやられているので、この率が非常に少ないんですが、それでもやっぱり発生します。

「文化のミスマッチ」と「ストレス耐性の低さ」というところでの離職は、ある一定数はどうしても発生するかなと思いますね。

斉藤:逆にその会社は「すごく文化と合っていて、個人の強みも発揮できる状態の人は定着し続ける」みたいな。そういう二極構造になってるんですか?

上村:今はそんな感じですね。おそらくもう少し成長してくる、もしくは技術的に個人が成長しだすと……IT系の会社さんなんですけど、ある程度、個人の技術力が飽和すると、その会社で学べること・試せることに限界があると思うんで。そこでの積極的離職はどうしても発生すると思います。

その点でいうと、IT企業さんで最近流行ってる「出戻り制度」。僕は「放流制度」って言ってますけど(笑)。鮭の放流みたいに1回放して帰ってくるのを待つ「アルムナイ制度」とかも含めて上手にやっていくことが、やはり必要になってくると思いますね。

斉藤:どこかの記事で、たしかDeNAの南場(智子)さんが書いてらっしゃいましたよね。「優秀な人ほど外に出せ」って。

上村:それが効果的だと思いますね。

斉藤:どんどん起業させて、どんどんやっていけって。最後、彼女自身のファンドで支援するケースもありますけど、DeNAの子会社化するケースもあったり、一緒に連携するケースもあったりっていうので。「結局、総量が増えるんだ」みたいなことをおっしゃっていて。まさにそこが、さっきおっしゃっていた「出口戦略」のところ。

上村:そうですね。放流ですね。なので出戻り制度を上手に使うとか、そのためには所属してる間に「この会社いいな」と社員が思えないと、たぶん無理なので。まず「いいな」って思いながらも積極的離職をしていく人たちを、会社がちゃんと応援してあげる。

斉藤:そうしないと戻ってこないですよね。喧嘩別れみたいになっちゃうと、復縁しづらい。

上村:絶対に戻ってこないです。その後のフォローとかも、上手に設計されてる会社さんと、設計できてない会社さんがあるので。このへんもしっかりとやっとかないと、なかなか出戻り制度ってのは難しいでしょうね。

斉藤:なるほどなあ。たぶん「働きやすさ偏重」な組織になってしまうと「ぶら下がり」社員が生まれていってしまいますね。コメントでもいただいてますが「優秀な人ほど出て行っちゃって、そうじゃない人ほど残りすぎちゃう」。いわゆる「ぶら下がっちゃう」状態になるし、もちろん出ていった人は戻ってこない。

逆に「働きがい偏重」になっていってしまうと、さすがに「働きづらかった」とか「心身コンディション的に一度トラウマになっちゃってる人」は、外に出てからあらためて戻れるチャンスがあったとしても、戻ってこない。だからこそ、さっきおっしゃっていた「結論としてはバランス」っていう話になると思うんですが、そこが重要だとあらためて解釈しました。

上村:戻ってくることを前提にする制度もありますし。あとはリクルートさんのように、退職者がタンポポの綿のように色々な業界に旅立ち、その後、古巣と新しいビジネスを発生させる……という風に「きれいに飛び立たせる」方法もありますしね。いろんなかたちがありますけど、離職を上手にやっている会社さんが最終的にけっこういい感じで伸びていくんだろうなって。それがいいか悪いかは別として、伸びていくんだろうなと思います。

製造部門は可能な限り「パラダイス」で保たなければいけない

斉藤:難しいですね。(スライドを指して)今この4つの象限で「ステップ・パラダイス・荒野・ぶら下がり」ってありました。チャットを見ていると「(自社の問題点は)おそらく『ぶら下がり』です」という状態の人たちが、今ご参加いただいている中では多いのかなぁとお見受けしました。みなさまの中で「今、うちはこうです」みたいなご意見があれば、コメントいただきたいです。

「異種の方を求めすぎているのでは」「ぶら下がっている人は多いです」「荒野へ移行期の最中のぶら下がりです」と。

上村:(コメントを指して)あぁ、製造部門ですね。製造部門は離職対策が他の部門と比べるとちょっと異なります。例えば、製造部門知や技術の蓄積を財産として持って行くことから、軽々しく「ステップ」にしちゃだめで、可能な限り「パラダイス」で保たなければいけないんですけど、これが難しいんですよね。

斉藤:なるほど。

上村:あと、営業の「ぶら下がり」はキツいですね。

斉藤:外資系は「ぶら下がり」が少ないですね。「アップオアアウト」って、まさに「『荒野』なのか『ステップ』なのか」。

上村:そうですね。外資系は「ステップ」と「荒野」の間でぐるぐる回る感じですよね。一部は「パラダイス」にいきますが。

斉藤:医療従事者は「ぶら下がり」が起きてしまう。そうなんですか?

上村:いやぁ、僕も医療従事者の一員なんでなんとも言えませんけど、そのとおりで(笑)。まあ「ぶら下がる」か、もしくは文句を言って「荒野に行くか」のどっちかですよね。

「求めるもの」によって変わってくる、目指すべきところ

斉藤:ありがとうございます。少しずつコメントでご意見いただきましたが、やっぱり「ぶら下がり領域」とその他の領域を行ったり来たりしているところが多いのかな? とお見受けしました。

この「ぶら下がり」から「荒野」になっていくのが難しいというお話がある一方で、次に「荒野」から「ステップ」にいった後に、「ステップ」から「パラダイス」を目指すべきところと、目指さないほうがいいところがあるとおっしゃっていましたよね。

そうした時に、それは業種・業態によって「パフォーマンスの観点で、こっちのほうがいいよ・悪いよ」ということなんですかね。

上村:あと「求めるもの」によって、ちょっと変わってくるんですよ。例えば営業職とかだったら「ステップ」でもいいと思うんです。でも先ほど言った製造業とか、技術やブランドの継承なんてことが発生する場合(職種)だと、変に「ステップ」にしちゃうと技術が継承されなくなるリスクが出てくる。もしくは漏洩するリスクが出てくるので、そこは「パラダイス」にしなきゃだめなんですよね。

ですので、モノ作りなんかはわりと「パラダイス化」させたほうがいいです。一方、わりとホワイトカラーというか……どこでも使えるパーソナルスキルといったら変ですけど、そういったものを活用する業種に関して言ったら「ステップ」のほうがいいだろうと思いますね。

斉藤:複合的な役割が連携し合っている状態が生まれやすいのは「パラダイス型」の組織であって、ある意味で「競争的にスコアを伸ばしていくんだ!」みたいな状態だと「ステップ」(が望ましい)ってなるんですか? ちょっと解釈が違います? 

上村:そうですね。競争性も当然ありますけど……難しいな。確かに競争性は大きいかなぁ。でもそれに関係せず、基本みなさん「ステップ」だと思っていただいたほうがいいと思います。今の時代ってだんだん、やっぱり「パラダイス」から「ステップ」に変わったと思うんです。でもコメントでも書かれているとおり、「ステップ」と「パラダイス」が混在している状況だと思うんですよね。

その中で製造業でいうと、特に現場なんかは転職という意識があまりないので。そこで言うと、そもそも離職……いわゆる「荒野化」が本来は発生しづらいんです。

そうすると「ぶら下がり」になるか、もしくは「パラダイス」になるか。(スライドを指して)右側で発生する話になってくるので。

斉藤:そうですよね。

上村:左側に落ちづらいというのも、あるかもしれないですね。

「ぶら下がり」から「パラダイス」に直接いくのは、かなり難しい

斉藤:なるほど。あらためて、ここの「ステップ」の定義は「会社を(次への)ステップとして捉えている」という意味の「ステップ」。

上村:そうですね。「ステップアップ」というかたちも含めて、次へ移動するというところで、そういった従業員が多い会社さんですね。

斉藤:さっきおっしゃったみたいな、技術力で「これ以上チャレンジできることがないから、次に移っていこう」が「ステップ」。帰属意識・定着スコアも高い状態で、満足感・エンゲージメントも高い状態が「パラダイス」ですね。

上村:コメントでいただいている「IT系は製造業の要素もけっこうあるので、そこで言うと『ステップ』になりやすい」というのはわかりますよね。

斉藤:ちなみに「ぶら下がり」から「パラダイス」に直接いく方法って、やっぱりないもんなんですか? 

上村:かなり難しいですね。というのは「ぶら下がり」は「パラダイス」からそのまま直で落ちたものではないので。

斉藤:なるほど。

上村:大抵の場合は、先ほど言ったみたいに「荒野」に1回落ちてます。それを上に上げた状態が、優秀人材が抜けた後の「ぶら下がり」なので。「パラダイス」にはなかなか行きづらいですよね。そこに大きな壁があると思います。

斉藤:つまり比率としても明確に「ぶら下がり社員」が多くなってしまっているところの、この優秀人材の比率がぐっと上がった状態で。「働きやすさ」も共存していて、しかも優秀人材が「この組織で伸ばしていくこと」を選んでいる状態が「パラダイス」だとしたら。

すごく聞こえが悪いかもしれないですけれども、「ぶら下がり」から「荒野」にする時に、その「ぶら下がり社員」が「このままじゃだめだ!」という危機意識を醸成して、あるいは人が辞めていくも仕方なしで危機意識を醸成してぎゅーっと押された時に、そこの圧力があるから「優秀人材にならなきゃ!」という状態を作り出すのが、「荒野」の次の「ステップ」。

「荒野」になった時の業務継続性の問題

上村:そうですね。次の「ステップ」ですね。だからそれが社内の人なのか社外の人なのかはわからないですけど、そこで言うとコメントにもありましたけど、ここで「荒野」になった時の業務継続性の問題が出てくるんですよ。

なので、業務継続性をどうやって乗り切るか? というのも、技術的には必要になってくる。この計算を社内の人材だけじゃなくて社外も使ったかたちでイメージしておかないと、「荒野化」に持って行きづらいんですよね。

斉藤:確かになぁ。人が減っちゃったケースで回るのか? っていう話ですよね。

上村:はい。なので、それが例えば「一時的に派遣社員さんを使っていくのか」とか「業務委託を使っていくのか」とかを、ある程度の設計をした上で「荒野」にいかないと、あとで大変なことになっちゃうので。そのへんのバランスが絶対的に必要ですね。

斉藤:下手をすると、より「ぶら下がり」が加速しちゃうケースがありますよね。優秀な人のほうが残ってて。

上村:むしろBCP(事業継続計画)的な感じになると思います。「ぶら下がり」がどうこうのレベルを越えて業務継続性でヤバくなると思うので、そこを慎重にできるかどうかが腕の見せ所かもしれないですね。

斉藤:なるほど。ありがとうございます。そこの人材流動性でいったら、そうですよね。市場の力学的にも「ここにいたらお金がもらえて楽チンに働けるんだ」という状況の会社の数が少ないほうが、個の成長意欲がトータルでも上がっていくはずだという原理だと思うので。

いったん「荒野」に回して「ステップ」「パラダイス」にしていくという流れを日本企業全体がとっていけると、また大きく日本人の底力も上がっていくというのが、なんとなく頭で浮かんできました。ありがとうございました。

「称賛の“し合い”そのものが重要だよね」という意識の醸成

斉藤:なかなか掘りがいのあるテーマですが、ここでUniposのご紹介を挟ませていただいて、その後にQ&Aに進ませていただきます。

我々はピアボーナス、Uniposというサービスを運営をしていまして、これは「組織を変える行動を増やすためのWebサービス」だと申し上げています。どういうことか? というと、まずピアボーナスというのは、AさんからBさんに対して「こういうことをしてくれて、ありがとう」という言葉と一緒に、少額の給与を支給することができる仕組み。ピアツーピア、仲間同士で送り合うボーナス、ピアボーナスということをやっております。

仕組みとしては「称賛を送る人」「もらう人」「それを見る人」の3者がいます。「送る人」は会社から付与された、自分のお給料にはならないけど送ると相手のお給料になるポイントを基に、メッセージを送ります。

メッセージをもらった人は、そのポイントを基にさまざまなリワード……給料だったりAmazonギフト券だったり、会社が設定したノベルティーだったりに交換できます。またそれを見た従業員のみなさんは「パチパチパチ」って「拍手(いいね)」をするんですが、拍手(いいね)をすることによって、さらに「投稿・称賛をもらった人」と「送った人」にもポイントが給付される。これを通して「称賛の“し合い”そのものが重要だよね」という意識の醸成と、称賛を送りやすい環境作りを行っております。

この「『組織を変える行動を増やす』増幅装置」がポイントだと思っています。僕らってよく誤解されるんですが、「ぬるま湯の組織を作りたい」と思ってやってるわけではない、というのがポイントです。

「Unipos(のポイントが)全員に行き渡るんですか?」と言われると、実はそうじゃないです。なにか行動してる人、誰かのためになるような行動をとった人。つまり「日々、当たり前のことを当たり前にこなし、それをやり続けることが尊い」というポジションの人はもちろんそれも大事なんですけれども、少しチャレンジ・挑戦した人だったり、何か工夫した人にポイントが集まりやすい仕組みになっていて。よく起こるのが、せっかく誰かのためにやった行動がみんなから無視されて総スカンされて「あぁもうやんなくていいや。この組織にいるの疲れた。もう抜けよう」と離職が起こってしまうとしたら。

その起こったポイント(誰かのためにやった行動)って偶発的なんですよね。仕組み的に起こせるものじゃなくて、偶発的に起こった誰かのための行動が「いいね」「それすごく良かったね」って、恩恵を受けた同僚から直接メッセージをもらうことができます。周りの人や、それを見てた知らなかった人からも拍手が届くんです。

例えば社長とかから拍手が集まってくると「あぁやってよかったな、これ」って思えた、というお声もいただきます。そのサイクルを回すことで、どんどん自分がやった行動がよくなっていくような、そういう仕組みでございます。

ぜひ、Uniposを通して「組織を変える行動を増やす」ということにご興味をお持ちの方は、お問い合わせいただければと思います。先ほどの議論になぞらえますと、この「ぶら下がり」になってしまってる状態から「荒野」になった後かな。「荒野」から「ステップ」になるタイミングで「じゃあどういう行動がいいんだろう?」というのを、みんなに浸透させていく時などにお役立ちできるのではないかと考えています。ぜひご検討ください。

Uniposのご説明はこれぐらいにしておきますが、さまざまな組織でご導入いただく中で、組織作りの実践ウェビナーというものをUnipos社として開催をしています。「エンゲージメントの高い組織作りってどうやっていくの? どうやって働きがいのところを伸ばしていくの?」という観点。

また「組織風土改革の実践プロセス」。さらに最近ですと「急拡大する組織の一体感を高めるためには?」。そして「マネジメント力」。特に重要になってくる中間マネジメント層は、これからの組織においてどんな役割を果たしていくべきなのか? について、NEWONE代表の上林(周平)さんとご一緒させていただくウェビナー実践編もご用意しておりますので、ぜひよろしくお願いします。

斉藤:上村さん。Uniposのお役立ちポイントについてご意見を伺わせてください。まさにこの「荒野」から「ステップ」になるタイミング、あるいは「パラダイス」になるタイミングで「良い行動ってなんだろう?」ということについて、みんなと分かち合っていくとか、自然とそういう場を作っていくところではないかと思ったんですが、どう思われますか?

上村:それも1つあると思います。あともう1つは、そもそも「荒野」に落ちる前に、「働きがい」とか「働きやすさ」のバランスをとって「荒野」に落ちないというところでいうと。「パラダイス」「ステップ」を保つために使っていただくのが、本来の使い方かな? とは思います(笑)。

斉藤:それは、もう本当におっしゃるとおりですね。戦時に使うサービスではないです。平時に入れて戦時に陥らないためのサービスだというのは、本当におっしゃるとおりだと思います。ありがとうございます。