新しい基準・規範を意味する「New Norm」

池澤あやか氏(以下、池澤):それではゆるゆると始めさせていただきます。New Norm Consortium第1回目のオンラインイベントになります。 今回、司会を務めさせていただきます、池澤あやかと申します。今回の発起人となった株式会社tsumugにてソフトウェアエンジニアとして働いています。

さっそく第1回目のセッション1を始めたいと思います。セッション1では3人に登壇していただいて、プチ・ライトニングトークみたいなかたちでやらせていただきます。

さっそく紹介させていただきます。最初の1人目、京都芸術大学教授、さくらインターネット株式会社フェローの小笠原治さん。続いて、経済産業省、mokuba共同代表の水口怜斉さん。そして、グレートジャーニー合同会社代表の安川新一郎さんです。どうぞよろしくお願いします。

まず最初は小笠原さんに、このコンソーシアムのタイトルにもなっている「New Norm」とは一体なんなのかと思っている方も多いと思うので、こちらの説明をお願いします。

小笠原治氏(以下、小笠原):最近、New NormやNew Normalという言い方が出てきていると思うんですけど、New Normalというのは「次の新しい当たり前の状態」のことです。「こうなればいいね」「こうなったね」という状態なんです。 New Normというのは、新しい基準・規範などの意味合いで「その新しい当たり前にするための、新しい基準をコンソーシアムメンバーと考えていけたらいいな」ということで、集まりました。

でも、新しい基準というと変なんですけど、今回のコンソーシアムは4月6日に「明日から非常事態宣言が出るぞ」と言っているときに、みなさんに声がけし始めて、発表したのが4月16日です。

たった10日、すべてオンラインでロゴ入りのプレスリリースまで出せるのは、たぶん大手企業の広報とかと付き合ったことがある方からしたら、ちょっと異常なスピードです。もうすでにいろいろ変わってる感があるんですよね。

池澤:しかもメンバーが大きな企業も多いですね。

小笠原:そうですね。それこそリコーさん、シャープさんみたいなメーカーさんもいれば、電通さんだったりとか。金融系のグループ会社でJapan Digital Designさん、日本総研さんとか、そういうところもどんどん入っていただけましたね。

池澤:きっかけはあったんですか? 

小笠原:そうですね。きっかけになったことはいくつかあるんですけど、僕らはアクションプランということで、7月ぐらいにはNew Normというマークを出したいと思っています。

「コミュニケーション手段の選定」が重視される

小笠原:これは基準の話になっちゃうんですけど。やっぱりオンライン前提の働き方になったときに、みなさんいろいろ迷うし、どう取り組んでいいかよくわからないことがあると思っていて。

例えばそのときに「この場合ならこういう機材、こういうサービス」もしくは「こういう取り組み方」。オンラインはすごくソロワークになりやすいみたいな、メンタル的な話もあるので。

そういう取り組みまで含めて、新しい基準を作っていこうみたいなものを考えていたときに、今年度、政府がリモートワーク、オンラインワークとかの補助金をきっといっぱい出すじゃないですか。

そのときに、よくわからない補助金ブローカーの人たちが「こういうのを買っておけばいいですよ」みたいな話で、変なものが広がるのは嫌だと思いました。これ自体は小さい話ですが。

オンライン前提になるということは、このオンラインのツールの選び方とか、どうやってコミュニケーションをとるかは、職場や働く場所を作るのと同じぐらい大事なことです。そういうことを一緒に考える仲間が欲しいなということ。

今日、tsumugという会社で「TiNK VPO(ティンクブイピーオー)」をリリースさせていただきましたけど、小規模の分散型オフィスを企業専有で気軽に作れるものです。気軽といっても、テナントを借りるよりかは気軽という意味ですけどね。そういったものの構築・運営ができるSaaSを発表させていただいた。

そういうことにちょうど取り組もうとしていた時期だったので、みなさんにもお声がけをしていきやすかったですし、イメージもしてもらいやすかったです。

池澤:なるほど。このコンソーシアムのゴールは、どういったところを考えているんですか? 

小笠原:うーん。だいぶラフが売りのコンソーシアムなので、延々と続けてそうですけど。

1つ考えているのは「どこかの企業がお金を拠出して」とか、そういったことに縛られないように、自走できるようなコンソーシアム。自分たちでも取り組み、サービスまたはプロダクトを世の中におすすめしていくことで、ちゃんと自走していくような……。

NPOほど非営利に縛られる必要はないと思うんですけど、もう少し気軽にビジネスに関しても話し合えるような場所として自走できる。要するに、お金を少し稼いでいけるようなかたちを目指していて。ゴールがない状態にどう持っていくか、ということだと思いますね。

池澤:(笑)。常に暮らし方や働き方を改善して、どこに改善ポイントがあるかということを探していって、新たなゴールをどんどん達成していくみたいなのが良いなと。

小笠原:そうなんですよね。今はちょうど「withコロナ」という言葉をめっちゃ使っていますけど。そういうのも、過去の事例を見たり、これからのことを考えると。新型コロナ前提という意味だけではなくて「withウイルス」みたいな感じで。今回の在宅勤務の様にオンラインワークがまた前提になったときに、どうなっていくかということを考え続けていきたいなと思っています。

コロナ禍を「世界大戦」と表現する、各国首脳

池澤:というわけでこのコンソーシアム。第1回のオンラインイベントなんですが、さまざまな方がゲストに来てくださっています。豪華なメンバーが続々と、今後、登壇するわけですけれども。

小笠原:今日は安川さんが来てくださっていますけれども、ちょっと前にコロナの記事でものすごくバズっていたおじさんなので、さっき言った「withコロナ」みたいなことも、わかりやすく伝えてくださるんじゃないかな? と期待しています。

池澤:じゃあ安川さんに、来たるべきwithコロナ時代に向けて、いろいろもの申していただきたいなと思います。プチライトニングトークみたいな感じで、バトンを渡しちゃいます。

安川新一郎氏(以下、安川):はい。僕自身、グレートジャーニーという会社をやっているんですけど。 もともとグレートジャーニーというのは、東アフリカで人類が誕生した後に、5万キロかけてユーラシアからアメリカ大陸を渡ってフエゴ島まで、ずっと拡散していく旅のことなんですけど。

そういう大きな人類史的な視点で、経済とか幸福とか人間の健康とか、国家のあり方とかを考えていきたいと思い、それら人類の課題を最新のテクノロジーで解決するということをテーマとして研究したり、そういった分野の投資を行なったりという会社をやっています。

今回のコロナ禍というのは各政府、首脳が言っていますけど「世界大戦」という言い方なんですね。

これは戦争はしていないんだけれども、おそらく大戦を経験した人からすると「世界が同時期に、全員が戦っている状態」。要するに兵隊さんだけじゃなくて、子どもも親も奥さんも、政治家も国民も一体となってそれぞれがそれぞれの戦い方をしているという意味において、世界大戦と言っているのだと思います。

なので、このコンソーシアムに小笠原さんから声をかけていただいたのも、最初は正常化バイアスじゃないですけど「2週間我慢したら、また日常に戻るかな」とか。「最初の2週間ぐらいは家にいるのもいいかな。会社に行かなくていいかな」みたいな感じでしたが。

でも「どうも、そうじゃないぞ」という思いがでてきて、僕なりに思うところをnoteに書いたりしてました。3連休に緩んだあたりで、ちょうどニューヨークの友人から、ニューヨークがものすごい勢いでパンデミックになっていると聞き。「これはひょっとすると、東京でも同じことが起きるかもしれない」という危機感から、たまたま始めていたnoteで、まったく医療の専門家ではないわけだけれど発信をしたら、120万人を超すいろんな方に読んでいただいて賛同していただいたりしまして。

そこから、ある種新型コロナにわか専門家みたいになって。いろいろ詳しく自分も調べているうちに、いろいろなことを見えるようになったという感じです。

今日このオープニングトークでなぜNew Normと言っているのか。これが収束したら元の日常、普通の資本主義とか社会生活に戻るんじゃないかって、僕も思いたいし、思っている人も多いと思うんですけれども。「どうもそうじゃないんじゃないかな」というあたりのところをお話しできたらなと思っています。

このあとちょっと感染病の歴史を振り返るような話もしたいんですけど。最初のイントロダクションはこれくらいで、次の方の自己紹介に移ってもらえたらなと思います。

若手&ベテランのタッグが目指す、全世代でのイノベーション

池澤:ありがとうございます。もう1人のゲスト、水口さんご挨拶をお願いします。

水口怜斉氏(以下、水口):みなさん、こんにちは。経産省の水口と申します。今回は小笠原さんに声を掛けていただきました。withコロナみたいな話で言うと、政府の中もかなり変わっていっているなというのは、個人的にひしひしと感じています。 先日、私を含めた省内の何人かのメンバーと、あとは民間のメンバーも交えて「官民若手イノベーション論ELPIS」という活動の一環で、産学官一緒にレポートを出しました。産学官一緒にここまで膝を突き合わせて作ったレポートって、たぶん過去にあまりないんじゃないかなと個人的には思っているんですけど。

こんな感じで、「企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台」というレポートを書きました。僕もこれを出そうと思っていたときは、まさかこんな(コロナウイルスが世界的に広がる)状況になるとはまったく予想だにしていなかったです。

なので、状況を見ながら書き加えていきました。「感染症」とか。リリースは先週でしたが、(リリースの)3日前とか4日前とかに今まさに映っている部分を書き上げたので。そこは若干タイムリーです。

このレポートで言いたかったのは、今って「若手は若手」「ベテランはベテラン」みたいな、潜在的な世代同士のギャップみたいなのが、もしかしたらあるのかもしれないということ。

実は若手って、ベテランの方々と話したくないかというと全然そんなことは思っていなくて。むしろベテランの方にしかできないこともあるし、若手には若手にしかできないこともあるので。両者がタッグを組んで、全世代でいろんなイノベーションを起こしていくことが重要だと考えています。

この1週間でけっこういろんな方からお声がけいただいて、もう何回かトークセッションもやっているんですけど。最近、本当にオンラインの可能性を感じています。

これもたぶんリアルイベントでやろうと思ったら、まずこういう場をセットするのにかなり時間がかかっただろうなと思いますし。そういった意味でこのレポートを出すタイミングとしては、変な話、もしかしたら変化が起こっている中だからこそいろんなことができるのかなと思っていて。

今ちょうど「5つの価値変化」というスライドで、今の若手はこういう価値観に共感していますということを書かせてもらっています。

まさに1番の「個人のレベルでのコミュニティの在り方が、フォルダ型からハッシュタグ型になるよ」というのは、withコロナの状況においては、そもそも会社に行かないみたいな状況もそうだし、こういう変化がより顕在化しているのではないかと思います。

この数週間だけではあるんですけど、けっこういろんなプロジェクトが今、動いていて。今までいろんなところでプロジェクトベースと言われてきたものの、本当に目の前でこういう社会になっていくんだろうなということを、私も政府の中に身を置きながら感じているところではあります。

すみません。長くなっちゃいそうなので私もこれくらいで、また後ほど議論させてください。

小笠原:でも、本当にそうですよね。オンライン前提で働いていると、フォルダ型ってなかなかしんどいですもんね。

水口:しんどいです(笑)。

小笠原:ハッシュタグ型。プロジェクトベースで参加するという意志ありきじゃないと、なかなか難しそうですよね。

水口:そうですね。時間的なところもありますし。

僕も、もともとシビックテック界隈の方々とは、前からコミュニケーションは取っていました。東日本大震災のときもそうだったと思うんですが、このコロナ禍でも民間のパワーやテクノロジーを使って……たぶん我々政府側がパンクしている中で(笑)、どれだけ自分の意志を持ってプロジェクトを進めていくのかという動きが、本当に加速しているなと感じますね。

小笠原:たしかに。

過去の歴史から、現代のコロナショックを考察する

池澤:ありがとうございます。今回のセッション1では、まずこのコロナが流行っている今を見つめ直す話を安川さんにしていただいて。そんな状況下を若者はどう考えて、どう乗り切っていくかみたいな話を水口さんにしていただこうと思っています。

小笠原:いいですね。

池澤:というわけで、さっそく安川さんお願いします。

安川:じゃあちょっと画面を共有して。急に画面が中世なんですけれども。全世界的に「100年来」「第3次世界大戦」などと言ってるのは、実際にこれまでの歴史も被害が欧米で相当大きいこともあります。彼らはペストなどを経験してるんですね。帝国主義でアフリカから大量のマラリアや天然痘が持ち込まれたりとかかもあった。そのへんは僕らよりも感度を持ってるなと思います。 今回、New Normということで社会を大きく変えるために、過去の感染症でどういうことが起きてたのかを紐解くと、これが非常におもしろかったです。

3,000年という歴史を遡ると、イラクのメソポタミアで最初に10万人の大きさになったウルという都市があるらしいんです。どうも麻疹は10万人を超えると再生産率が2を超えて、パンデミックになるらしいんですね。

それまで人類は感染症というものを経験しなかった。パラパラ住んでるから病気になっても家族の誰かが亡くなったりで終わってたのが、都市になって初めて大パンデミックを経験した。そのときから農耕社会では、都市化が課題だったんだと思います。ここ100年くらいで急に東京が大きくなったとか、グローバル都市になったのは最近のことだと思うんですけど、人類史でみるとけっこう根深いことみたいなんですよね。

もう1つおもしろかったのが、戦争は昔からたくさんあったんですけれども。実はほとんどの戦争において戦死者よりも戦病死、戦争に関連した感染症の死が上回っていると。要するに、軍隊は塹壕を掘ったり船で移動したり、いわゆる三密空間なんですね。

若い男が濃密にいる中で、あっという間に死んでいる。私のひいおじいさんも何人かそうなんですけど。戦争に行って死んだというよりは、どうも病気で船の中で死んでいたり、そういうことが多いらしくて。そういう意味においては、実は感染病は戦争と不可分な歴史であったりします。とにかくものすごく大量の人が死んでいる。

感染症の拡大により天才が生み出した「新しい当たり前」

安川:今回おもしろかったのが、ペロポネソス戦争を僕ら歴史で習うんですけど。実はアテネが負けた理由が、最後に篭城戦になった時、篭城している間に市民も含めて3分の1くらい人が感染症で亡くなったとうことです。

負けた年がソクラテスが65歳でした。最後に(スライドを指して)こういうふうに「お前はなにも知らない」と、若者に説いています。5年間くらいのソクラテスの偉業は、戦争のときに感染症が大爆発して、アテネ市民の3人に1人が亡くなっちゃったときの深い反省と洞察のもとに、新しい哲学を説いていたことがあったと思うんですよね。

あと、ロンドンでもペストが起こりました。これはみなさんけっこう知ってる人もいるかもしれないですけども。「ニュートン驚異の年」とか「奇跡の年」とか言われているんですけど。1655年にペストが流行ったとき。ニュートンがちょうど大学4年生卒業してM1の修士に入ったその年に、パンデミックになって強制的に田舎の実家に戻らされていると。その間暇している時に万有引力や微積分、プリズムなどの三大業績のほとんどを思いついているんですね。

ということでソクラテスの哲学も万有引力のニュートンのような天才も、いわゆる今回のNew Normみたいに「これは新しい当たり前を考えなきゃいけない」「人は死ぬ」「俺も死んだかもしれん」という時に思いついたんじゃないかなと。個人が大きく変わったんじゃないかなと思いました。

もう1つ個人だけでなくて社会も大きく感染症で変わります。ローマ帝国が崩壊したのも大きなペストが……人口のだいたい半分くらい死ぬんですね。昔は感染症対策もワクチンもないので。都市でペストはきついです。人口の半分くらい死ぬと。

これがローマ帝国が崩壊して、ちょうどイスラム勢力が台頭してくる流れの転換点になった。これも今回アメリカとか、ヨーロッパとか西洋が非常にまずい状況になって、中国やアジアがけっこう感染拡大を押さえているという、Westlessnessというか脱西洋化の歴史の転換点になるんじゃないかと言うことを思い出したりします。

あと当時なので詳しいことはわからないですが、一番有名な黒死病(ペスト)で、ヨーロッパの人口が半分くらい当時亡くなっただろうということなんですけど。

人口が半分亡くなると農民がいなくなります。特に北イタリアとか一部では8割くらい亡くなっています。まず荘園がなくなって、この時期に森林面積が、地球が始まって以来の拡大をしたらしくてですね。

環境も大きく変わったし、荘園制度自体も変わったと。また、結局教会はなんのあてにもならない、神様に頼んでも何もいいことがないというので後の宗教改革に繋がったり。最後に生き延びた人が人口が半分くらいになってしまって「俺は何のために生き延びたんだろう」というような、深い思索の時間ができて。それが100年後なり数十年後のルネッサンスに繋がったようなところが、あるみたいなんです。

小笠原:そうですよね。昨日もリハのときにこの話しようと思ったんですけど、宗教のところって、金融の問題と感染の問題の両方で倒れたじゃないですか。まさに今ですよね。

安川:そうですよね。だから、僕も最初は新しい働き方とか、Zoomで働いたり、いろいろおもしろいことが身の回りで起きているねという、日常的なところからコンソーシアムに入ったんですけど。

一方でこういう歴史を見てみると、やっぱり今、世界中で社会全員に影響を与えているんですね。子どもも遊べない、学校も行けない、家族は全員家にいる。飲食店の人も厳しい思いをしていると。政治家だってほとんど寝ないで働いていますよ。

だからこういうときは、東日本大震災で世界が(日本を)助けてあげるとか、リーマンショックでアメリカが大変だとか、金融業界の人が大変だとか世界の一部が大変な時ではなくて。世界中が大変だというときに、やっぱり“新しい当たり前”を全員で考える。そのすごく重要な機会なんじゃないかなと思います。

池澤:こういった流行病が、けっこう歴史の転換点になっていることが多いんですね。

安川:そうですね。感染症だけではなくて、当然ほかの歴史的な要因が重なっているんですけれども、ただ不思議なほど感染症に関しての歴史は残っていないんですね。特別な本以外は、教科書では習わない。ペストがあったことぐらいは聞きますけど、ペストがどういうふうに社会に影響を与えたかということは、あまり試験に出てこなかった。

ただ、戦争といったものは国家が正史として扱うんですけど、感染症対策に失敗したというのは、昔から国家や教会が残したくなかったんだろうなと(笑)。

強制的に「思考する時間」が与えられた今は、チャンスである

池澤:時間もそろそろ差し迫ってきたので、ちょっとここで、水口さんの未来のお話を聞きたいなと。

(一同笑)

安川:そうなんですよ。そういう意味ではちょっと……今回の30分は早い。

水口:早いですね。

小笠原:あと6分。

池澤:早い。じゃあお願いします。

水口:今の安川さんのお話を聞いていて、若手で話していたときに、すごく似た議論があったなと。当時はまだコロナとかが出てくる前だったので、時間的な余裕がないよねという議論があって。

昔の哲学者の方は、ベースの給与というか生活基盤がしっかりあったうえで、思考する時間があったからこそ、けっこういろいろな研究や哲学の検討が進んだけど、今は目まぐるしくいろんなことが進んでいて、そもそもそういうことを考える時間的余裕がない。

だから、そういう意味でもベーシックインカムみたいなものは、学術分野とか、社会を一歩進めるために意外と重要なんじゃないかなという議論があったことを思い出して。

(今のコロナによる状況変化は)ベーシックインカムとは議論が違ってきましたけど、今この時代において強制的に時間ができたというのは、けっこうチャンスなんじゃないかなと個人的には思っていて。

小笠原:めっちゃチャンスですよ。さっきのニュートンみたいに。

水口:(笑)。そう思っています、本当に。

安川:やっぱり、こういうことがないと勉強しないので。

小笠原:今、天才児たちが学校に行けなくて、いっぱいいろんなことを考えていると思いますよ。絶対今ね、家でやることがないし、昼間は親がいるからあれですけど、一時期は親は仕事をしていて、子どもは休みという状態があったじゃないですか。たぶんこれからもそういう状態があると思うんですけど。ものすごく変わったやつが出てきますよ。

水口:うん。

安川:うん、たしかに。そういうふうにとらえることもできるんじゃないかなと。時間があって命がある限り、いろんな人生は切り拓いていけるし。

小笠原:いい話だ。

安川:今回みたいな新しい取り組みに僕も参加させてもらって、部屋にいるのに1ヶ月で急になんだか20人くらいの新しい人たちと繋がったり。

水口:うん。

小笠原:新しい仲間ができましたよね。

安川:今日、僕自身もこれからいろんな話が聞けるのを楽しみにしています。

小笠原:セッション1はイントロダクションだったので、聞いている人は消化不良かもしれませんが、21時からの「awabar.online」で、もしかしたら続きを喋ってくれるかもしれないので(笑)。

安川:はい、あんまり長く喋らないように(笑)。

世界は繋がろうとしている

小笠原:最後、すごく象徴的なアレがあるんでしたっけ?

安川:はい。最後ですね。G20の写真を見て「やっぱり世の中変わるぞ」って思ってですね。 G20って(スライドを指して)、こういうイメージがあって。ここで首脳がいろんなこと決めてるんだろうなと思うんですけど。 (次のスライドを指して)これが、今のG20っていうふうになってるんですね(笑)。これは、会場のみなさんがウケてるのかわかりませんけど。

小笠原:これは役所としては、ロジが楽そうだなって感じですよね(笑)。

安川:これでいいじゃんって(笑)。外務省も「これにしましょうよ!」って、ならないかな?

小笠原:ぜひ8Kテレビでやってもらいたい(笑)。

安川:これはこれで、巨大テレビでかっこ良くやるようになるのかもしれないけど。要するに、こういう絵って普段の日常だと見られないと思うんですね。でも今世界はお互いに繋がろうとしてるし、なんとか首脳たちは解決しようとしてるし。

僕らも今日のディスカッションを通じて、なんかこれに近いような……一瞬笑っちゃたけど「ひょっとしたら、これがイノベーションかもしれない」「これが新しいニューノームかもしれない」っていうのを、みんなで議論できたり、こっから始められたらいいなと僕は思ってます。

池澤:はい。やっぱり30分のセッションって、すごい短いですね(笑)。

安川:でも、ちゃんと収めたような気が(笑)。

小笠原:だいぶテンポよくいかないと(笑)。

New Norm Consortiumが目指すもの

池澤:ありがとうございます。最後に何か一言ずつあれば。

小笠原:じゃあ、水口さん。

水口:冒頭に申し上げたとおりなんですけど、この紹介した(産学官若手の)活動も時間ができたからこそ、ふだんは(自分が)絶対に話せないであろう経営者の人が、会食がなくなったおかげで夜にけっこう時間がある、みたいなことが起こっていて。

小笠原:わかります(笑)。

水口:それで先週も、十数人とお話してきたんですけど。まずはこういうディスカッションをいろんなところでしていきたいし。政府ってどうしてもクローズドな感じだったんですけど、もっとオープンにしていきたいので、これを機にどんどんオンラインで話していきたいです。

池澤:ありがとうございます。じゃあ、オガさん。

小笠原:さっき水口さんが言ったみたいに、最近、今までと違う人たちと夜にオンラインで飲んでるみたいなことが、けっこうあります。やっぱりすごい楽しいんですよね。「この人とサシ飲みすることなかったな」とか。それだけでもだいぶ変わってきたし。

さっき言ったような、大きい会社がこういうコンソーシアムに気軽に(参加できる)みたいな部分の変化もあるし。新しい当たり前みたいなものは始まりかけてて。これがもう1ヶ月、2ヶ月。また3ヶ月になるかもしれない状況なので、ある程度は習慣化すると思うんですよね。

その間に、「これが新しい当たり前なんだ」っていう基準みたいなものを(作りたい)。できるだけ心地よい、定性的な基準でみなさんに届けていけるようになったらいいな、と思ってます。

池澤:ありがとうございます。最後に安川さん、お願いします。

安川:僕はもうさっき言ったので(笑)。今日、本当にいろいろとおもしろい話が、これから何が聞けるか、何か生み出されるといいなって、ワクワクしてます。

池澤:ありがとうございました。セッション1「What is "New Norm"?」でした。