今、日本の音楽産業が危ない

亀田誠治氏:はい、どうもみなさん、こんにちは。亀田誠治です。よろしくお願いします。今日はこれを見てください。買いたてのTaylor Swift(テイラー・スウィフト)のトートバッグ。中にTaylorのCDが入っています。「どうして亀田さんがこんなものを背負ってやってきたのか」ということは、後のほうになればわかるお楽しみですから、これは手元に置いておきますね。

今回は大げさなことをお話しするようなタイトルですが、今日僕がみんなに話したいのは、今の日本の音楽シーンはどういった状況にあるのか。グローバルな視点から見たときに、日本の音楽シーンは、果たしてイケているのか、イケていないのか。さまざまな角度から検証していきたいと思います。

いきなりのアイスブレイクですが、この中でサブスクをやっている人はいますか。

(会場挙手)

さすがですね。この渋谷のヒカリエに集まるみなさんは、さすが。これ、みんなあれですか? この中できちんと有料でやっている人はいますか?

(会場挙手)

偉い! 優秀です。フリーでチラ見やチラ聞きしている人たちだけが相手だと、今日の話は難しくなってしまうので。今日は、みなさんが今まである程度、定額配信制度を体験している、ということを前提にお話をしていきます。

それでは、今日の問題は、「日本ではCDが売れない」「音楽業界がしんどいことになっているぞ」という話なんですが、(スライドを指して)これ(日本における音楽売上金額のグラフ)を見てください。今、日本のCD。フィジカルはCDと考えて、アナログレコードも入るんだけれども、ほぼほぼCDだと思ってください。このCDの売上が、2013年から2018年までの5〜6年を見るだけでもグイグイ下がって来ている。

一方で、少し前まではダウンロードと言って、「CDじゃなくて1曲単位で買っている俺ってなんかイカしてる」というような感じもあったかもしれませんが、このダウンロードも今は減少方向です。どんどんどんどん減って来ている。

そして、グラフのグレーの部分(サブスクリプションの売上金額)を見ると、2013年には31億円となっています。僕が先ほど言ったサブスクが2018年に10倍、要するにこの6年間で10倍も増している。330億円まで来ていて、日本の場合、今はCDがそれでも75パーセントぐらいは占めているところに、ようやくサブスクが10パーセント~15パーセントぐらいの割合で入って来た。

欧米ではすでに街からCD屋が消えている

ところが、(スライドを指して)ここを見てくれる? これは、アメリカの音楽メディアの浸透具合なんだけれども、CDとアナログレコードは、どんどんどんどん縮小しています。サブスクリプション、ストリーミングというものが、今8.9 US$billionまで来ていて、ダウンロードが2.3 US$billionまで来ています。

それで、この(グラフの)カーブを見てもらってもいいですか? 日本は、右肩下がりになっています。一方、欧米では、V字回復をしているんですよ。

要するに、サブスクリプションの浸透のおかげで、欧米ではもはや音楽産業は底に行っちゃった感から、今は上り調子になって来ているわけです。もう1回、これを数字できちんと言うと、ヨーロッパでは音楽業界の85パーセントの収入がサブスクなんです。でも、日本では15パーセント。ありゃりゃって感じですよね。

この会場では半分以上、3分の2くらいの人たちが手を挙げているけれども、日本全国津々浦々という広い目で見ると、日本ではまだサブスクは浸透していない。それで今日、せっかくBIT VALLEYに来ているのでお話しすると、結局イノベーションというものが起きたときにどう対応するか、どう反応していくかによって、文化や音楽、エンターテインメントなど、技術もそうですが、いろんなことでプラスに転換するかマイナスに転換するかの分かれ道ができてしまう。そういうことを、今日はみんなに伝えたいと思っています。

結局、サブスクリプションがなぜこんなに欧米では浸透したか。ロンドンやパリに行ってごらん。CDショップなんか皆無だから。アメリカにもほとんどない。日本は今でも渋谷にもあるし、新宿にもあるし、こうやってCDを売るという局面があるんだけれども、もう海外、欧米ではまずCD屋さんが無くなっちゃった。

なぜサブスクが数年かけてこんなにも浸透しているのか。要するに、数字が増えているということは、人々が喜んで選んでいるというわけですよ。なぜこんなにも人々の心を掴んできたかといえば、やっぱり一番は、便利でしょ。みんな、サブスクを聴くときはスマホの人、挙手! 

(会場挙手)

PCの人。

(会場挙手)

両方という人もいるよね。とにかく、いつでもどこにいても、好きな音楽を聴けるわけ。しかも、この聴き方が、毎回検索をかけたりする。ただ聴くだけじゃなくて、聴くまでに、自分の中に、サブスクの場合はストーリーがあるわけですよ。「あっ、昨日あの曲を聴いて、そういえばMステにもあの人が出ていたから、じゃああの曲の大元になっている曲を聴いてみよう」などと、また検索をかけて入っていったりする。

そうやってサブスクの中に入っていくと、みんなも知っていると思うけれども、基本的にサブスクの中の世界というものが、音楽博物館と言いますか、アーカイブやライブラリーがもう無尽蔵にある。50年前に遡ることもできれば、まさに今ヒットしている曲も聴けるという。

これからの時代は瞬発力ではなく持続性がカギ

みんなも学校で多分習ったりしたと思うけれども、一番のサブスクの利点は、ロングテールなのね。要するに、ピンポイントで音楽を聴く、その時代時代の、今週の第1位のようなものが、サブスクの世界ではあまり意味が無い。

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。