『THE TEAM』で読み解く、人が働く4つの動機

山口公大氏(以下、山口):2つ目は、これ(日本法人立ち上げ時の採用のワナ)です。私はここにすごく苦い思いがあるので、このお話をもらったときにぜひ話したいなと思っていたトピックです。

次のスライドです。外資系の日本のベンチャー、日本の法人として立ち上げるときに一番感じていたことは、採用すべきではない人が来やすい構図になっていること。

これに気づいたときには、1社目のときには時すでに遅しでしたね。だいぶ苦労しました。何かというと、(スライドの)右側にリンクアンドモチベーションの麻野さんという方が出した『THE TEAM』という本があります。説明しやすいので、その中から抜粋しました。人には働いている動機が4つあると。

THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)

その4つのどれか、もしくはその中のバランスで仕事を選んでいる。1つ目はPhilosophyですね。これは会社の理念とか方針、ヴィジョン、目標です。それが素晴らしいからこの会社にいると。2つ目はProfession。これは活動、成長と書いてあります。業務内容などですね。なので、自分のスキルが活かせる領域の話です。

3つ目は人、風土ですね。人が好きなんです。「あの人がいるから」というモチベーションで入ってくると。最後が待遇、特権ですね。これは報酬とかお金、あとは役職といった、外から見えるハクですね。

外資の職能文化と採るべき人材のミスマッチ

外資のベンチャー立ち上げをやっていて、あとから気付いたんですけど、来やすい人は、職能や技術を活かしながら、成果が出たらめっちゃ金くれという人が集まるんですよ。やっぱり外資は職能文化があって、ジョブ・ディスクリプションを極めていくんです。

1つの職能の中で、どんどんどんどん深く入っていって、ある程度深く入ったら転職をする。そこで給料を上げて、また深く入っていって、給料を上げてということを繰り返していくんですね。なので、自分の能力を上げて、給与を上げて、転職してさらに伸ばしてという考えの人たちが多いんですよ。

けれども、外資のユニコーンのベンチャーといっても、日本法人を立ち上げるのはゼロからなので、最初は実際に業務の中で何があるのかわからないんですよ。なので、そのタイミングで採るべき人間は、スキルを活かしながら会社のヴィジョンや目標を達成するところに向かっていく人たち。右上(Profession)から左上(Philosophy)に向かっていく人たちが極めて大事だし、活躍するんです。

転職マーケットでは圧倒的に、右上(Profession)から右下(Privilege)を狙ってる人が多いんですよ。これがすごくわかりづらいところで、間違って右上から右下にいく人を採り過ぎると反乱が起きます。

来やすい人を採った結果、1年間の内乱状態に

当然スタートアップなので、急にやっていたことをピボットしたり、やめたりすることはあるんです。また、人事制度がしっかりしていなかったりもします。けれども、この来やすい人たちを採ってしまうと、実際に事業をする中で、「僕は成果を出したよ。だからこれだけお金くれ」というような話になるんですね。

事業上それがどうしてもできないときに、仲間を引き連れて村を作り始めるんですよ。実際に経営者批判をし始めて、そこから壊れていくということが、実際に起きていました。下に結果を書いています。ハクをつけてホッピングをしていくタイプだったり、「給料を上げろデモ」みたいなものが起きたり。

あとは権威の奪い合いが起きたりするんですね。(スライドには)沈静化まで1ヶ月と書いてあるんですけど間違いで、本当は1年かかったんですよ。大きなロスをしているんですね。なので、本当にここはすごく気をつけなければならないところです。

外資の立ち上げをしているときは、英語を話せる人に甘くなるんですよ。日本では英語が話せる人はマーケットに少ないので、上げちゃうんですよ。なので、そこで判断してしまって、来やすい人を採るということが、実はけっこう散見されます。そういうところが注意点です。

会社が荒波や困難の中にある状態でも許容できるか?

次のページに行ってもらっていいですか。私はだいぶこれで痛い思いをしたので、前職のときに本当にいろんな人に「こんな会社に入れやがって」とか「あなたがそういう意思決定をする人だとは思わなかった」とだいぶ言われたんですけど、それをなくしたいなと。

どうやったらそれがなくなるんだろうと、当時ずっと考えていました。出た答えが、結局私が最初に一緒に働いていたDeNAの南場さんがよく言っていたことに戻りまして、「エントリーマネジメント」でした。

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