上場しないで自前でやっていけることの幸せ

冨田阿里氏(以下、冨田):「亀っちの昔の苦労話を聞きたい」っていうのもあります。

亀山敬司氏(以下、亀山):昔の苦労話はね……。

冨田:あんまり外で言えない話とか、おもしろいのあれば、ぜひ。

亀山:おもしろいの?(笑)。おもしろすぎて、今度まとめて言うよ。

(一同笑)

冨田:じゃあ、第2回があるということで。

冨田:「スタートアップの戦略として、スタート時にスモールビジネスで資金を貯めるのはありですか? 会社とは別にやるべきですか?」。

亀山:ぜんぜんあるんじゃない? 人の金に頼ってなくって、とりあえず自分で稼いで自分の金で事業をやっていくと、一番自由だからね。俺は上場してる会社の社長から「幸せもんですね」って言われるけど、はっきり言って上場しなくても自分でやってけることほど幸せなことはないからね。

株主総会で謝んなくていいから。ちょっとでも業績落ちると、どんなに大きい会社になっても謝んなきゃいけないからさ。人生を考えたときは、自己資金でやれるもんならやってくのが一番だ。

冨田:次は「家賃」。3人の。

亀山:家賃? そんなもん言わねえよ!

(一同笑)

高宮:ぼくは中古マンションです。

冨田:中古マンション。おー。

家入一真氏(以下、家入):俺も中古マンションです。

亀山:賃貸、賃貸。

(一同笑)

水道屋やラーメン屋には「調達」なんて言葉はない

冨田:「今の起業家と昔の起業家を比較したときに、何が足りていて、何が足りないと思いますか?」。足りてるものってなんですか?

高宮慎一氏(以下、高宮):足りないというよりは違いという意味で、やっぱりさっき家入さんが言っていた、自己実現がドライバーになっている起業家は多い気がしますね。ひと昔は「一山当ててやるぞ!」みたいなのがやっぱり強かった気がしますけどね。

冨田:「違いを知った上で、僕たちに何かできますか? 私たちは何をしたらいいかな?」みたいなところ、何かありますか?

亀山:でも今の起業家は、基本「どっかのベンチャーキャピタルとかへのプレゼンが上手になって、金集めるところから始めよう」みたいなとこはあるよね。でも、たぶんITしか金は集まってないからね。グロービスもITしか出してないだろ。

「ラーメン屋出します」とか言っても、誰も金出さないし。でも、世の中のビジネスで、ITなんて10パーセントもないんじゃないかな。ほとんどは「小さい水道屋やります」とかね。そういった起業が中心なんだよ。

ここにいる人たちはVCから「調達」とかって言うけど、水道屋には「調達」って言葉がなくて「借金」だけ。だから、それで言うと、「今と昔」よりも、「ITと非IT」の違いぐらいのほうがもっと全然違う比較かなって気はする。

エロを消して、著作権違反を無視するYouTubeの戦略

冨田:「勝つためにどこまで攻めるべきでしょう? アングラな行為やグレーな行為など」。表に出てこないようなもので、こういうのはありだよっていうのがもしあれば。

亀山:グレーは俺ならもうバンバンいくけどね。今はいけなくなったんだけど。でも若いころは、ビットコインだろうがそんなもん、法制が整う前にやんなきゃ間に合わないような気がするんだよね。

家入:グレーにもね、ありますよね。

亀山:そうだね。グレーっていうのは法的なって話で、社会的に受け入れられないといけないし。もともとGoogleなんてグレーだし、YouTubeなんて著作権無視だしね。基本的にエロはYouTubeにいっても出てこないわけ、いくら探してもね。

でも、テレビとか著作違反はバンバン出てくるわけよ。本当は両方消せるじゃない。でもエロしか消さなかったのは、社会はエロは認めないけど、著作権違反は許してくれるんじゃないかっていって、グレーを責めたわけよね。それで本当は消せるのに、「言われたら消します」とかってぬるいこと言ってるわけ。

冨田:だから、社会が受け入れるグレーはOK。

亀山:社会はそのほうをむしろ支持したからさ。

高宮:でもそれも、たぶんどこを目指すかによって違う。IPOを絶対したいとか、IPOを目指す前提で機関投資家が入ってるVCファンドから出資を受けたい、みたいな話だと、もう法律を守るのは当たり前。さらに法律を越えて、社会性みたいな、自分たちでどう考えるかみたいなところが大事だと思います。

亀山:でも昔、AirbnbみたいなものをDMMでやろうかと思ったけど、その時の法律じゃ日本でやるのは無理だったんだよね。でも結局はエアビーはくるじゃん。そのあと法律ついてくるじゃん。だからスタートアップはその頃やってたら、そこにいける。

高宮:でもそのタイミングで僕らが投資できたかって言うと、できない。

家入:それはね。

高宮:事業を支えるためのファイナンスは、手金で、またはキャッシュフローちゃんと回してとか、気にしないエンジェルからとかっていうかたちになっちゃいますよね。

亀山:それかアメリカとかブラジルとか逃げて、そこからやればいい。日本向けにね。

テクノロジーはそもそも反体制である

家入:基本的にテクノロジーってのは反体制なんですよ。ブロックチェーンもビットコインもそう。基本の国家が把握してるっていうお金の流れに対して、新たな流れを作っている。そういう社会的に意義のある、反体制な活動はぜんぜんありだと僕は思うけど

高宮:おっさんのおもしろくない意見を言うとすると、さっきの「スタートアップブームみたいになってる中で危ない」っていうコンテクストで言うと、たぶん体制側からまた叩かれるリスクっていうものが上がってるような気がするので。

そういう「リスクを取っている」という自覚を持つのと、結局それが黒か白かって決められるのって体制側だったりするんで、自分たちとしては社会的意義があると思っても、勝手に「アウト」って言われちゃうリスクがあると理解しといた方がいいと思います。

亀山:ニコニコ動画とかもそんな感じだったんじゃない? もともとは「アウト」って著作権側から言われたけど、周りが支持したような感じで、そのうち政見放送始まったじゃない。だから、潰されるかギリギリだけどね。チャンスはあるよね、そこには。でも、世間から支持されないような、詐欺みたいなことはだめっていうのは間違いない。

冨田:ちなみに会場の中で「これは」っていう質問があれば手を挙げていただければと思うんですが。じゃあ最後、1問だけ読みます。「社内ベンチャーで起業することになったのですが、スタートアップ……」、あ、「起業家は彼女を作るべきですか?」って質問も同じだ。じゃあ2つ。「社内ベンチャーで起業することになったのですが、スタートアップとの考え方の違いなどございますか?」。どうですか? 亀山さん。

亀山:彼女は作るべきだよ。間違いなく楽しいね(笑)。

(一同笑)

亀山:彼女を作らないってどういうこと? 意味がわかんない。いやいや、起業だけの人生なんかつまんないよ。やっぱ、女の子と付き合ってなんぼかと思うよね。俺なんてモテたくて起業を始めたのに、それがなくなったら何も楽しくないよね。

社内ベンチャーとゼロイチの違いとは

亀山:あとはスタートアップだっけ?

冨田:社内ベンチャーで起業するっていうのと、1からのスタートアップ、違い方はありますか?

高宮:大企業の中で起業すると、大企業のリソースを使えるっていう、一応理論上のアドバンテージがある一方で、大企業が本業をやってたほうが効率良いみたいになりがちじゃないですか。

現場で実際に動いてくれて、シナジーを出してくれる人たちに対して、社内のゼロベースの事業を手伝うインセンティブ設定をどうするかっていうのを、上と握って上に設計してもらわないと、たぶん本当に動かしづらい。

絵に描いた餅になっちゃうって話と、大企業の論理の中で、意思決定が遅くなったりするので。長崎の出島みたいに分けて、違うカルチャー、違うスピード感で事業を進められるように、ちょっと括りだしてもらわないとしんどいかもしれませんね。あくまで一般論ですが。

家入:ほんと、その通り。

亀山:確かにベンチャーっていうよりも、DMMの場合は実績上げて、例えば配信でうまくやったやつに予算いくらまで任すって言ったら、そいつがサッカーチームを買いに行ったりとか、別のところに行ったりする。だから、それはそいつの腕を見込んで許可するみたいな話になるんだよね。

だから社内でやるんなら、ベンチャーでアイディア勝負っていうよりも、結果出して決裁権増やして、自分の予算を増やして、なんか新しいこと自分で勝手にやるみたいな。

だからちょっとベンチャーの考え方とは違うかな。でも、とりあえず社内で飯は食っていけるから、どんどん上がってって決裁が増えるっていうのはあるよね。

単に話を聞くだけじゃなく、つながったほうがきっと面白い

亀山:せっかく来たんだから、みんなコミュニティでさ。別にDMMだけじゃなくて、横も含めてさ、せっかくだからみんな登録してったら。何かしらあるよ。

冨田:Facebookのグループを今私が作りました。今日はそもそもなんでU25ではなくU30にしたかっていうと、私がギリU30だったってところがけっこうあって。

そうそうたる先輩方と私がいろんな仕事でご一緒させていただくと、みんな本当に、その世代の仲間があるんですよね。で、私ギリギリ20代ということで、20代の仲間を作りたくて。作りたいなと思ってそのグループを作ったので、ぜひそこで。

私は今Salesforceっていう会社にいるんですけど、「Salesforce Ventures」っていうコーポレートベンチャーキャピタルになっていて、そこで壁打ちアワーみたいなかたちで、まだアイディアベースだったりとか、「今toCなんですけど、将来toBやりたいです」みたいな相談とかもお受けしてたりします。そういうのを、「こういう時ってどうしたらいいですか?」みたいことを言い合えるコミュニティにできたらなと思っています。

今日のイベントページに「こちらです」っていう案内があるので、そこからリクエストを頂ければ、1個1個手で承認していくので、ちょっと1日くらい時間がかかるかもしれませんが。

高宮:僕らは入れるんですか?

冨田:もちろんです。入ってください。

高宮:オーバーサーティー。

(一同笑)

亀山:俺たち資格ないんじゃない?

冨田:相談者は毎回入れるっていうかたちで、定期的にイベントもやっていったりとか、それこそオフ会みたいなかたちで、「今家入さん六本木にいるらしいよ」みたいなこととかもアナウンスできたらと(笑)。家入さんはTweetを見てたりすれば、私も。

亀山:Tweetに出るの、いっぱい? 「今飲んでるよ」とかやってるの?

家入:はい。あと、「Zenly」。「Zenly」知ってます? 亀山さん。

亀山:知らない。

冨田:「Zenly」って、自分の位置共有サービス。でもそれ、自分も共有しないといけない。

高宮:うっかりしてると、家ばれちゃうんですよね。

冨田:そうそう。

家入:僕、自宅ばれてると思います。

(一同笑)

冨田:携帯番号もさらしてますよね、まだ。

亀山:せっかくだから入って横で繋がってれば、例えばその中の1人が提携したり、会社買収したら、「どうだった!?」って聞けばいいわけじゃない。それが生の声だよ。それが実際問題「良かったよ」って言うか、悪口言われたらそれがそうだと思ったことを広げればいいわけよ。そんなことを繰り返してけば、集まった価値があると思うんで。単に話聞くだけじゃなくて、繋がったほうがおもしろいと思うよ。

冨田:そうですね。オンライン上で「こんなことやってます」っていうのを書いていただければ、私も読んで「こういう人と会ったらおもしろそう」とか、それに適したイベントとかまたできたらいいなと思ってるので。

本当に今日は、1円の報酬もない中で来ていただいて。本当に三者の善意だけで今日は成り立っていて、無料で開催ができているので。三方に盛大な拍手をお願いします。

(会場拍手)